太宰府天満宮とは
「太宰府天満宮(だざいふてんまんぐう)」は、福岡県太宰府市にある神社です。受験生の聖地とも呼ばれ、毎年合格を祈願する受験生で賑わいます。まずは、太宰府天満宮の御祭神や年中行事を確認しましょう。
菅原道真をまつる「学の社」
太宰府天満宮の御祭神は「天神さま」の名で親しまれる「菅原道真(すがわらのみちざね)」です。道真は、学問に秀でた人物で、わずか5歳で和歌を詠み、幼い頃から神童とたたえられていました。
青年になってもたゆまぬ努力を続けて、最高位の学者になったばかりか、武芸にも励み、百発百中の弓の腕を持っていたとされています。
善政を行った道真は、やがて右大臣に抜擢され、政治家としても活躍しました。
当代きってのエリート・文武両道の道真にあやかろうと、天神さまをまつる太宰府天満宮には、学業成就を願う人が多く訪れます。学業成就のほかにも、天神さまには「至誠」や「厄除け」のご利益があるといわれています。
年間を通してイベントも
太宰府天満宮では、毎月さまざまなイベントが開催されています。そのうちのいくつかは参詣者も参加できるため、開催時期に合わせて訪れるのもよいでしょう。
特に盛り上がるイベントは、7月24日の「夏越祭」、25日の道真の「御誕生祭」が行われる「太宰府夏の天神まつり」です。無病息災を祈る「茅の輪神事(ちのわしんじ)」のほか、神輿(みこし)を担いだ子どもたちが町内を練り歩く姿や縁日を楽しめます。
9月に行われる「神幸式大祭(じんこうしきたいさい)」も見事です。平安時代の雅な古典芸術や、1000本のろうそくが照らす幻想的な風景は見応えがあるでしょう(千灯明)。なお神幸式大祭は、福岡県の無形民俗文化財に指定されています。
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太宰府天満宮の見どころ
太宰府天満宮を参拝する際に見ておきたいスポットといえば、「太鼓橋(たいこばし)」「本殿」「飛梅(とびうめ)」でしょう。この三つの見どころについて紹介します。
心字池にかかる「太鼓橋」
鳥居をくぐって本殿へ向かうと、三つの朱色の橋がかけられた池が見えてきます。これが「太鼓橋」と「心字池(しんじいけ)」です。心字池は、池の形が漢字の「心」をかたどっていることから、その名前が付けられました。
太鼓橋は仏教思想の「三世一念(さんぜいちねん)」を表現しており、手前から過去・現在・未来を表しています。太宰府天満宮は、神社なのになぜ仏教思想かというと、平安時代には神仏の区別なく信仰されていたためです。
三つの太鼓橋には、それぞれ渡り方があります。過去の橋は「振り返らない」、現在の橋は「立ち止まらない」、未来の橋は「つまずかない」ように気を付けるのがポイントで、神前へ向かう前に橋を渡って心身を清めましょう。
国の重要文化財「御本殿」
太宰府天満宮参拝のメインは、楼門(ろうもん)を抜けたところにある道真が眠る「御本殿」です。桃山時代の建築様式で、唐破風(からはふ)や極彩色の彫刻が目を引きます。
901(延喜元)年、左大臣であった藤原時平(ときひら)の政略により、道真は「大宰府」に左遷され、京に戻ることなく、その2年後に亡くなってしまいます。道真の遺骸は大宰府に埋葬され、その上に安楽寺(あんらくじ)の社殿(後の天満宮)が建てられました。
社殿は、これまでに何度か焼失しており、現存する荘厳華麗な社殿は、1591(天正19)年に筑前国主・小早川隆景(たかかげ)によって造営寄進されたものです。社殿は太宰府天満宮の本殿であり、国の重要文化財に指定されています。
伝説の残る「飛梅」
御本殿の横に立つ梅の木は「飛梅」と呼ばれ、風流な伝説が残っています。
道真の都落ちが決まったとき、道真は大切にしていた自宅の梅の木に「東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて 春なわすれそ」と詠みました。
「春風が吹いたら、その風に乗せて匂いを届けておくれ。私がいなくても春を忘れてはいけないよ」という意味です。道真を慕う梅の木は一夜のうちに大宰府へ飛び、屋敷の庭へ降り立ったといわれています。
飛梅は「色玉垣(いろたまがき)」という品種で、早咲きの白梅です。毎年春になると、境内で一番先に花を咲かせ、続いて開花する約6000本の梅の木とともに境内を華やかに彩ります。
太宰府天満宮の楽しみ方
御本殿に参拝するだけでは、太宰府天満宮見学はあっという間に終わってしまい、特に子どもは味気なく感じてしまうかもしれません。そこで太宰府天満宮への旅をもっと楽しむ方法を紹介しましょう。
「御神牛」から知恵を授かる
太宰府天満宮の境内には、11体の牛の像「御神牛(ごしんぎゅう)」があります。その理由は、道真が牛にゆかりが深いためといわれています。
道真の遺骸を牛車(ぎっしゃ)に載せて運ぼうとしたところ、車を引く牛が伏せて動かなくなってしまったため、そこに道真を埋葬することになったそうです(「北野天神縁起絵巻」)。そのため境内にある牛の像は、すべて座り姿勢で、立ち姿の牛は1頭もいません。
牛の頭をなでると知恵が授かり、病気やけがも治るとされているため、長年、人々がなで続けてきた牛はピカピカに光っています。また、楼門の右側にある御神牛は、福岡県の有形文化財に指定されています。
「天開稲荷社」で開運祈願
「天開稲荷社(てんかいいなりしゃ)」は、鎌倉時代末期から続く「九州最古のお稲荷さん」で、御祭神は京都伏見(ふしみ)稲荷大社から分霊された宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)です。
太宰府天満宮の御本殿から、さらに奥まった場所にあり、御本殿から5~10分かけて石段や坂道の多い場所を通るため、スニーカーなどの歩きやすい靴で行くのがおすすめです。
これまで、あまり広く知られてはいませんでしたが、「天に道が開け、運気がどんどん上昇する」パワースポットとして注目を集めはじめています。神秘のパワーにあやかりたい人は、開運祈願に訪れてみてはいかがでしょうか。
太宰府門前町で食べ歩き
「太宰府門前町」とは、境内に入る手前にある、大きな鳥居の立つ参道一帯です。「大町地区」と「馬場地区」に大きく二つに分かれており、それぞれの道の両脇には食事処や土産物店、雑貨店が立ち並び、多くの観光客がひしめきあいます。
太宰府名物といえば、「梅ヶ枝餅(うめがえもち)」という鉄板でカリッと焼いたあんこ入りの餅。ここで、できたてを買って食べ歩きをすることも可能です。
梅ヶ枝餅は、都を追われた道真が、食べ物にも困っている様子を見かねて、老婆が梅の枝に刺した餅を渡したのが始まりだといわれています。
そのほかにも、福岡県のブランドイチゴ「あまおう」を使ったスイーツや、見た目も味もよいカフェなどが多くあり、大人だけではなく子どもも満足できるでしょう。
学問の神、天神さまにお参りしよう
太宰府天満宮は、菅原道真を「天神さま」としてまつった福岡県の神社です。天神さまをまつる神社は全国に多数ありますが、道真自身が眠るのは太宰府天満宮だけです。見どころは、重要文化財である御本殿のほか、太鼓橋や飛梅などたくさんあります。景観も素晴らしく散策するだけでも心が洗われるでしょう。
道真の最期は失意のうちだったとはいえ、道真は抜きん出た頭脳を武器に、政治の中枢にまで上り詰め、「学問・至誠・厄除けの神様」としてあがめられています。これから多くの知識を身に付けていく子どもたちを連れてお参りすれば、天神さまのありがたい御利益があるかもしれません。
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構成・文/HugKum編集部
参考書籍:株式会社メイツユニバーサルコンテンツ「九州 聖地巡礼ガイド 神仏ゆかりの地をめぐる」