「杜撰」←読み方わかる? 意外と知らない誤用表現とは? 意味や由来も解説!

「杜撰」とは、「ずさん」と読み、意味は「いい加減で間違いが多いこと」。物事への対応や人への接し方が雑であることをあらわします。何気なく使っている言葉ですが、誤用となってしまう表現も。正しい使い方から言葉の由来まで紹介します。

「杜撰」の意味や読み方とは?

「杜撰」は何と読むかわかりますか? 「杜撰な対応」「杜撰な管理体制」などと使われるこの言葉について、まずは、読み方や意味を紹介します!

読み方と意味

「杜撰」は、「ずさん」と読みます。「杜」は「と」、「撰」は「せん」とも読めるため、「とせん」と読んでしまいそうになりますが、正しい読み方は「ずさん」です。

意味は、「いい加減で間違いが多いこと」。物事への対応や人への接し方が雑であることをあらわします。現在は、この意味で広く使われていますが、ほかに「誤りの多い書物」といった意味もあり、根拠が不確かな文章などをさす場合も。いずれにせよ、「大ざっぱである」「雑である」という意味のため、「杜撰」は、ネガティブな意味合いで使われることが多い言葉です。

由来

次に、「杜撰」の由来を簡単に解説します。「杜撰」は中国の故事がもとになっている故事成語です。語源は、宗時代の詩人「杜黙(ともく)」からきているといわれています。当時、「杜黙」がつくる詩は、詩の規則や形式に沿ったものではなく、型破りとされ、「いい加減である」と批判を受けることも。

この「杜黙」の「杜」と、詩をつくるという意味を持つ「撰」を合わせて、「杜撰」という言葉がつくられたのです。この由来の通り、もともと「杜黙」は、「誤りの多い詩」という意味でしたが、やがて「いい加減で大ざっぱな対応」という意味でも広く使われるようになりました。

誤用に注意!

「杜撰な人」という表現もよく聞きますが、本来の意味を考えると、この使い方は誤りです。「杜撰」は、物事への対応や、人への接し方がいい加減であると説明しました。「杜撰」は、その人の行動や態度について使う表現であって、人をあらわす言葉としては使いません。

「杜撰な人」と聞いても、なんとなく言っている意味はわかりますが、正しい表現をすることが大切です。「大ざっぱな性格の人」「雑な対応をする人」を表現したい場合には、「あの人の仕事のやり方は杜撰だ」「同僚は社内の人に対しては杜撰な対応をする」と、その人の何が「杜撰」なのかまで、説明するといいでしょう。

使い方を例文でチェック!

「杜撰」は、ビジネスシーンだけではなく、普段の生活でも使える言葉です。例文を見て、使い方をチェックしてみてください。

1:「杜撰な対応をすることで有名な先生が、新三年生の担任になるそうだ」

「杜撰な対応」は、「雑な対応をすること」という意味になります。この例文からは、新しく担任になる先生が、提出物のチェックがいい加減だったり、子どもや保護者への接し方が雑であったりすることがわかりますね。「杜撰な対応をする人」は、信用にも欠けてしまうため、周囲の人から敬遠されることも。丁寧できめ細かな対応を心がけて、「杜撰な対応をする人」というレッテルを貼られるのは避けたいものですね。

2:「今回の事件は、杜撰な管理体制が原因だったようだ」

「杜撰」はよく、「杜撰な管理」「杜撰な管理体制」といった表現で使われることも。これらの表現は、ビジネスシーンで使われることが多く、組織の管理体制が甘いことをさしています。被害を被った人が相手を責めるときや、被害を与えてしまった側が謝罪するときなどによく聞く表現です。

3:「同僚はいつも杜撰な仕事をするから、同じプロジェクトのメンバーは大変だ」

「杜撰な仕事」は、仕事のやり方が雑で、いい加減なことを意味します。資料のつくりが荒々しかったり、ミスが多かったりなど、ほとんどの場合、だらしない人に対して使われる表現です。「彼の仕事は杜撰さが目立つ」といった表現に言い換えてもいいでしょう。

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類語や言い換え表現とは?

「いい加減で間違いが多いこと」という意味の「杜撰」に似た言葉としては、「粗雑」や「ぞんざい」「乱暴」などが挙げられます。それぞれの類義語の意味を詳しく見ていきましょう。

1:粗雑

「杜撰」の類語としてぴったりなのは「粗雑」です。読み方は「そざつ」で、意味は、「大ざっぱでいい加減なこと」「物事のやり方が荒っぽいこと」。「杜撰」は、「いい加減で間違いが多いこと」を意味するので、ほとんど同じ意味の言葉といえるでしょう。ちなみに、「粗雑」の場合は、人に対しても使えるので、「粗雑な人」と言っても間違いではありません。

2:ぞんざい

「ぞんざい」は、「いい加減に物事を行うこと」「投げやり」「言葉が乱暴で無礼」といった意味を持つ言葉です。「ぞんざい」も、「杜撰」とほとんど同じ意味を持つ言葉といえますね。使うときには、「仕事をぞんざいに行う」「ぞんざいな言葉づかいをする」などと表現することができます。

3:乱暴

身近な言葉である「乱暴」。その意味をあらためて見てみると、「荒々しい行い」「荒々しい振る舞い」です。丁寧ではない振る舞いをあらわすので、「杜撰」の言い換え表現として使えるでしょう。ただし、「杜撰」よりは「乱暴」のほうが荒々しい印象を与えるので、微妙なニュアンスの違いには注意して使ってください。

英語表現とは?

「杜撰」を英語で言いたいときには、「careless」「sloppy」「slovenly」などを使いましょう。それぞれの使い方を例文とともに紹介します。

1:careless

「careless」は、「不注意な」「そそっかしい」「ぞんざいな」「いい加減な」などを意味する英語です。「杜撰な仕事」であれば、「careless work」と表現できます。

例文:They are very careless about the way they handle personal information in this company.(この会社は、個人情報の取り扱い方が非常にぞんざいだ)

2:sloppy

「sloppy」の意味は、「ぞんざいな」「不注意な」「いい加減な」「だらしない」など。「杜撰な管理」であれば「sloppy management」、「杜撰な仕事」であれば、「sloppy job」と表現できます。このように、「sloppy」は、名詞と組み合わせて使えますが、「杜撰な人」と言いたい場合には、「〇〇 is/are sloppy.」と表現しましょう。

例文:My husband is sloppy.(私の旦那はだらしない)

3:slovenly

「slovenly」も、「ぞんざいな」「いい加減な」「だらしない」といった意味を持つ英語です。「だらしない態度」であれば、「slovenly manner」、「いい加減な話し方」であれば、「slovenly speech」という表現ができます。

例文:Your work is slovenly.(あなたの仕事はいい加減だ)

最後に

漢字にすると難しい「杜撰」ですが、意味は知っているという方も多かったのではないでしょうか。「杜撰」は、たいていの場合、ネガティブな意味合いで使われます。「杜撰な対応をする人」と言われないよう、自分の言動や対応には注意したいものですね。

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構成・文/阿部雅美(京都メディアライン)

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