金星はどんな惑星?
金星は明るく肉眼でもよく見えるため、昔から親しまれてきた星です。子どもと夜空を見上げたときに、話題になることも多いでしょう。
金星とはどのような星なのか、大きさや位置、見え方などの基礎知識を紹介します。
日没後、日の出前に見える明るい惑星
金星は地球から見ると太陽の方角にあるため、夜中に見えることはありません。地球から金星を観察できるのは、日没後や日の出前の昼夜が切り替わるときです。
完全に太陽と地球の間に入っているときや、太陽の向こう側にいるとき以外は、西や東の空の高い位置に輝く様子が見られます。
また、金星は地球に接近したときの距離が最も短い惑星です。周囲の星に比べてひときわ大きく、しかも明るく見えることから「宵(よい)の明星」「明けの明星」とも呼ばれています。
地球の内側を回る
金星は太陽から見て地球のすぐ内側にあり、大きさや重さが似通っていることから、地球の兄弟星と呼ばれることもあります。
直径は地球の約95%、重さは約80%ですので、地球を一回り小さくしたようなイメージといってよいでしょう。
さらに、星の内部は地球と同じく、地殻・マントル・核で構成されていると考えられています。大気が存在するのも地球と同じですが、大気中に窒素や酸素はほとんどなく、気圧は地球の約90倍です。上空は厚い雲に覆われていて、地表を見ることもできません。
金星の特徴
金星には、他の惑星にはあまり見られない特徴が三つあることが分かっています。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
スーパーローテーションと呼ばれる強風
金星の上空では、「スーパーローテーション」と呼ばれる100m/sもの強風が吹き続けています。風速100m/sは、地球上ではほとんど観測されていません。
気象庁が最も強いとしている「猛烈な台風」でさえ、最大風速は54m/sです。金星では私たちには想像もできない強い風が、常に吹いているのです。
強風が続く理由は長い間謎でしたが、近年は「熱潮汐波(ねつちょうせきは)」に原因があると判明しています。
熱潮汐波とは、太陽光で温められた大気が潮の満ち引きのように揺れ動く現象です。金星の赤道付近で熱潮汐波が起こり、大気の流れを加速させて強風を発生させていると考えられています。
自転方向・自転周期
金星は自転周期がとても長く、1回転するのに約243日もかかります。太陽系の惑星の中では最長で、2番目に長い水星の約58.6日と比べても約4倍の長さです。
金星の公転周期は約225日ですので、1年経ってもまだ自転が終わらないことになります。
また、金星は自転の方向が他の惑星とは逆です。もし厚い雲に覆われていなければ、金星の地上からは太陽が西から昇って東へ沈む様子が見られるでしょう。
なお、太陽系の惑星の中で、金星だけが逆方向に自転する理由はまだ分かっていません。
二酸化炭素が含まれる厚い大気
金星の上空には、硫酸の粒が雲のように広がっています。雲は厚さ数kmもあり、星全体を覆っているため、地表に太陽光はほとんど届きません。
しかし、金星では地表の温度が、昼も夜も470℃前後に保たれています。太陽に最も近い水星の昼間の温度、約430℃よりも高く、太陽系で最も暑い惑星です。
地表温度が高い理由は、大気の成分にあります。金星の大気はほとんどが二酸化炭素です。二酸化炭素の温室効果が、太陽から届くわずかなエネルギーも逃さず、高温を維持しているのです。
参考:
気象庁|台風の大きさと強さ
「あかつき」、金星大気のスーパーローテーションの維持メカニズムを解明 | 宇宙科学研究所
金星の探査計画
金星の様子は、主に無人探査機から送られる画像やデータをもとに調査・研究されています。金星探査の歴史と今後の予定を見ていきましょう。
複数回の探査が行われている
分厚い雲に覆われて内側の様子が分からない金星の探査に初めて挑んだのは、旧ソビエト連邦が打ち上げた探査機「ベネラ1号」です。
翌年にはアメリカの「マリナー2号」が続きました。両国はその後も次々に探査機を送り込み、金星の様子は徐々に明らかになっていきます。
2000年以降はESA(ヨーロッパ宇宙機関)の「ビーナス・エクスプレス」や、日本の「あかつき」が金星付近に滞在してデータを収集しています。
約30年ぶりに探査が行われる予定
2020年には、金星の大気中に「ホスフィン」と呼ばれるガスが存在することが分かりました。ホスフィンが作られる要因の一つに「生命活動」があります。このため、金星の大気には微生物がいるかもしれないと話題になりました。
金星のホスフィンが生命活動に由来するかどうかは分かりませんが、調べる価値は十分にあるといえます。
この結果を受け、NASA(アメリカ航空宇宙局)では1989年の「マゼラン」以来、約30年ぶりに金星に向けて探査機を打ち上げることを決めました。
探査計画は二つあり、それぞれ「ダヴィンチ・プラス」「ヴェリタス」と命名されています。計画は、2028~2030年に実行される予定です。
美しく輝く金星を探してみよう
日暮れの後や夜明け前に明るく輝く金星は、昔から人々を魅了してきました。20世紀後半からは何度も探査が実施され、雲や大気の成分、地表の様子などが明らかになっています。
地球のすぐ近くにあり、大きさが似通っている金星の謎を解き明かせば、地球で起こる現象についても新しい発見があるかもしれません。探査機からの報告を待ちながら、子どもと一緒に美しく輝く金星を探してみましょう。
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文・構成/HugKum編集部