「猪突猛進」とは?
『鬼滅の刃』のキャラクター・伊之助の台詞や、歌のタイトルや歌詞にも使われている「猪突猛進」。イノシシのように突き進むイメージが浮かぶ言葉ですが、詳しい意味を知っていますか? まずは、「猪突猛進」の意味をチェックしましょう。
読み方と意味
「猪突猛進」とは「ちょとつもうしん」と読みます。「周囲や状況を気にせず、一つのことに向かって勢いよく進むこと」という意味の四字熟語です。簡単に言うと、「目標に向けて突っ走ること」。
ただ単に、目標に向かって突っ走るというよりは、“周囲の声や状況を気にせずに”突っ走るという点がこの言葉のポイントです。そのため、全力投球するようすがポジティブなイメージとしてとらえられる場合もあれば、向こう見ずなところがネガティブにとらえられる場合もあります。
由来・語源
「猪突猛進」は、「猪突」と「猛進」の2つの熟語に分けられます。この「猪突」とは、「イノシシのように後先考えず突き進むこと」。「猛進」とは「激しい勢いで突き進むこと」という意味です。この2つをあわせることで、「イノシシのように激しい勢いで突き進むこと」という意味の「猪突猛進」という言葉が成り立っています。
「猪突猛進」な人の性格とは?
「猪突猛進」は性格をあらわすときによく使われる言葉です。ただし、「猪突猛進」は長所にも短所にもなりえます。ここでは、「猪突猛進」な人の特徴をいくつか紹介しましょう。
1:がむしゃらでパワフル
「猪突猛進」な性格の人は、目標に向けて一直線。自分で決めた目的を達成するためには、一心不乱に取り組み、がむしゃらに努力します。行動力もあり、とてもパワフルなので、リーダータイプに多いでしょう。
2:自分を信じる力が強い
「これ!」と決めたら、周りの意見には耳を貸さず、自分の考えを貫くところも「猪突猛進」の特徴です。自分を信じて、粘り強く取り組めるからこそ、目標を達成できるといえるでしょう。一方で、意志が強いあまり、周囲から強引に思われることもあります。
3:後先考えない
「猪突猛進」だと、自分の行動が後にどのような結果をもたらすか、しっかり考えないで行動します。くよくよ悩んでチャンスを逃すことはないので、成功を手にすることも多いでしょう。ただし、先のことを考えない分、失敗や痛い目にあうことも少なくありません。
使い方を例文でチェック!
これまで見てきたように、「猪突猛進」は人の行動や性格に対して使う言葉です。実際に「猪突猛進」を使った例文を紹介しましょう。
1:「猪突猛進するタイプの息子は、志望校合格に向け、昼夜問わず勉強している」
「猪突猛進」は人の性質を表現するときに使える言葉。「猪突猛進するタイプ」「猪突猛進する人」で、「目標に向かって脇目もふらず突き進む人」をさします。
2:「夫は何事にも猪突猛進していて、行動力があるところが長所だ」
「猪突猛進」する人は、思い立ったらすぐに行動に移せるところも特徴です。言葉よりも行動で示せるため、周りから信頼されていたり、一目置かれることもあるでしょう。
3:「上司が猪突猛進だと、周囲の人も大変そうだ」
チームをまとめるリーダーや上司は、良いチームワークを保つために、メンバーや部下の意見を取り入れることも大切です。ただし、「猪突猛進」な人がリーダーだと、自分が正しいと考え、それを周囲の人に押し付けることも多いので、メンバーは大変な思いをすることも。「猪突猛進」のマイナスな一面をあらわした例文です。
類語や言い換え表現とは?
続いて、「猪突猛進」の類義語を紹介しましょう。
1:勇往邁進
「勇往邁進」とは「ゆうおうまいしん」と読みます。意味は、「目標に向かって、脇目もふらず勇敢に進むこと」。もともとは、軍隊が敵に向かって移動することをさしていました。しかし現在では、「勇ましく突き進む」という面にスポットがあてられ、ポジティブな意味合いで使われています。
「猪突猛進」は、しばしばネガティブな意味合いで使われるので、良い言い方で表現したい場合には、「勇往邁進」を使うといいでしょう。
2:直往邁進
「直往邁進」も聞き慣れない言葉ですね。「直往邁進」は、「ちょくおうまいしん」と読み、意味は、「躊躇することなく、まっすぐ進むこと」です。意志の強さや、潔さを感じさせる言葉で、たいていはポジティブな意味合いで使われます。
3:獅子奮迅
「獅子奮迅」の読み方は「ししふんじん」です。獅子が奮い立ち、暴れまわるようすから、「激しい勢いで物事に取り組むこと」を意味します。「猪突猛進」にあるネガティブな印象がないので、奮闘する様子が勇ましく力強い様を言い表すには、この言葉も使えるでしょう。
対義語にあたる言葉は?
「猪突猛進」とほぼ反対の意味を持つ言葉としては、「少心翼々」「深謀遠慮」などがあげられます。それぞれ詳しく意味を説明しましょう。
1:少心翼々
「少心翼々」とは、「しょうしんよくよく」と読みます。「少心」とは「気の小さいこと」「慎み深いこと」、「翼々」とは「用心深いさま」という意味。「少心翼々」で、「気が小さく、いつもびくびくしていること」「細かいことにも気を配り、慎み深いこと」という意味になります。
2:深謀遠慮
「深謀遠慮」は「しんぼうえんりょ」。「遠い将来のことまで考えて、しっかりと計画を立てること」という意味です。「深謀」とは「深く考えて立てた計画のこと」。
「遠慮」は、「言動を控えめにすること」という意味で広く使われていますが、「遠い将来まで考慮し、深く考えること」という意味もあります。つまり、同じような意味を持つ熟語を組み合わせて、その意味を強調した四字熟語です。
英語表現とは?
「猪突猛進する」を英語で言いたい場合は、「rush recklessly」「make a headlong rush」がいいでしょう。「rush」と「make a rush」は「突進する」、「recklessly」と「headlong」は「向こう見ずに」という意味の英語です。
最後に
「猪突猛進」な性格の人は、目標に向かってまっすぐに突き進める点はポジティブな印象を与えます。ただし、向こう見ずな点が、ネガティブな印象を与えるケースも。もし良い面だけを伝えたい場合には、当記事で紹介した類語をうまく使うといいでしょう。
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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)