明日は、終戦記念日。絵本を通して「平和と戦争、そして今起きていること」を考えたい

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今年で77回目を迎える終戦記念日。8月は平和への思いを新たにする時季ですね。まさに世界で戦争が起こっている今、絵本を通して、親子で一緒に平和の意味を考えてみませんか。読書アドバイザーの児玉ひろ美さんにセレクトいただいた6冊をご紹介します。

自分を知る、世界を知るために。どうぞ、お子さんと一緒に、絵本を通して考えてください

8月は「平和」と「戦争」という言葉をいつもより多く見聞きし、子どもに伝える必要があるとは思うものの、どう伝えればよいのか迷う方も多いことでしょう。

特に今年はロシアによるウクライナへの侵攻以来、平和や戦争を伝える絵本が注目を浴び、マスコミでも多く紹介されています。確かに、平和や戦争について、子どもに伝えるべき絵本はたくさんあります。でも、それらの絵本について、これまで私は子どもが「自分に繋がること」として納得するのは、難しいのでは? と思っていました。

「いま、自分のいる場所は、これからも安心な場所だ」と感じて欲しい

でも、いま子どもたちは、戦争のある世界に生きています。残念ですが、いまなら、絵本に描かれたことの意味や願いを、子どもも理解することでしょう。でも連日届く情報に、子どもたちは傷つき不安になっています。そんな子どもに対し、まずお願いしたいのは、子どもと一緒に子どもが安心できる絵本を読むこと。

「いま、自分のいる場所は、これからも安心な場所だ」。そう感じてほしいのです。そのうえで、「いま、おきていること」を子どもに伝えるためには、自分知ること、隣人を知ること、世界を知ること、知らないことを知るということ。絵本をきっかけにして、これらを子どもと一緒に考えること。これに尽きると私は思うのです。

『へいわとせんそう』~戦争とは日常が壊されること

谷川俊太郎:文 Noritake:絵 ブロンズ新社

モノクロのシンプルなイラストが見開きの左右に「へいわのボク」「せんそうのボク」と対で描かれています。続く「へいわのわたし」「へいわのチチ」「へいわのハハ」と自分の最も身近な人から日常の風景へと左右対のイラストが展開。戦争は日常が壊されることと思い知らされます。そして最後のシーンには、いま世界が最も忘れてはいけないこと、思い出さねばならないことが描かれています。

『おかあさんのいのり』~母親なら誰しもが思う子どもへの思い

武鹿悦子:文 江頭道子:絵 岩崎書店

わが子が平和な世界で世界を愛すべき場所としてすくすくと育ってくれますように。母親なら誰しもが思う、祈りにも似た言葉が、強く、優しく語りかけます。この可愛い手が、どうか銃など握りませんように。ご自身のためにも、どうぞ声に出して読んでみてください。

大人も子どももいつの間にか蓄積している緊張や不安が、ゆっくり解けてゆきますように。子どもに説明は不要です。ゆっくりと、願いをこめて読むだけで良いのです。

『ぼくがラーメンたべてるとき』~読み進むにつれて世界が広がりつながってゆく

長谷川義史:絵と文 教育画劇

僕がラーメンを食べているとき、隣でミケがあくびをし、隣でミケがあくびをしたとき、隣の…と、ページを繰るごとに、世界が広がり、つながってゆきます。僕がラーメンを食べているとき、世界の子どもは、遊んでいる?働いている?倒れて…!? 子どもは子どもの知っていることを総動員して、自分なりに様々なことを考えます。自発的な言葉に共感し、受けとめてください。

『しあわせなときの地図』~ずっと忘れない楽しかった場所

フラン・ヌニョ:文 ズザンナ・セレイ:絵 宇野和美:訳 ほるぷ出版

ソエは生まれてからずっと、この町で暮らしてきました。でも、戦争のために家族と外国に逃げなければなりません。町を離れる前の晩、ソエは町の地図にそれまで楽しいことがあった場所に印をつけてみようと思いました。自分の家、おばあちゃんの家、学校、図書館、本屋さん、公園・…。ソエはこの先どこに行っても、ずっと、頭の中を駆け巡る幸せな思い出を忘れないと思いました。スペインの作家による美しい絵本。

『せかいいち うつくしい ぼくの村』~実り豊かな美しい村で育って

小林豊 ポプラ社

アフガニスタンのパグマンは美しい村です。春には、スモモや桜、梨にピスタチオの花でいっぱいに。夏には風に揺れる木の実で、村中が甘い香りに包まれ、ヤモと兄さんは競争でかごいっぱいのスモモをとります。でも、今年の夏は、兄さんがいません。ヤモの国では戦争が続いていて、兄さんも兵隊になって戦いに行ったのです。今日、ヤモは初めて父さんと町へ行きます。兄さんの代わりに、市場でスモモやさくらんぼを売るのです。

『盆まねき』~祖父・祖母から語り継がれる、子ども時代の戦争の体験

冨安陽子 偕成社

3年生のなっちゃんの家族は、8月が来るとお盆をおじいちゃんの家で迎えます。たくさんの親戚が集まって、たくさんの思い出話に花が咲きます。なかでも一番楽しみなのは大好きなおじいちゃんやおばあちゃんたちが経験した子どもの頃の不思議な話なのです。「新しい戦争児童文学」と評され10年以上読み継がれている作品です。小学校中学年の読み物ですが、読んであげれば5歳頃から楽しめます。

教えてくれたのは

児玉ひろ美(こだま・ひろみ)

公立図書館司書とJPIC(*)読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。幼稚園・保育園から中学生まで、お話し会やブックトークの実践とともに、成人への講座や講演は年100回を超える。近年は短期大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当し、「202120222023年度ブックスタート赤ちゃん絵本 選考委員」でもある。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)等があり、雑誌やWEBでも連載中。

(*)JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団

Hugkumアーカイブ「子どもの読書のプロ 児玉ひろ美の絵本ガイド

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