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母乳はいつから出る?いつまで出る?
赤ちゃんを出産すると、すぐに自然と母乳が出ると思っている方がいるかもしれませんが、出産後にすぐに母乳が出るわけではありません。では、母乳はいつから出て、いつまで出るのでしょうか?
本記事では、助産師監修のもと、母乳に関する仕組みなどについても解説していきます。
母乳の仕組みやメカニズム
ママの体の中で、母乳はどのようにして作られ、どのように出ていくのでしょうか? まず、その仕組みやメカニズムについて解説しましょう。
どうやって作られる?
母乳が作られるメカニズムにはホルモンが関係しています。
妊娠中は、妊娠を継続するために必要なホルモンが分泌されていますが、出産して胎盤も体外に排出されると、「プロゲステロン」と呼ばれるホルモンの分泌が急激に減少し、同時に「プロラクチン」というホルモンが分泌されるようになります。「プロゲステロン」は母乳の分泌を抑えるホルモンですが、乳腺を発達させます。「プロラクチン」は母乳を作るホルモンです。この2つのホルモンの影響で、乳腺で母乳が作られるようになります。
どうやって出る?
出産後には「オキシトシン」というホルモンも分泌されるようになります。
「オキシトシン」は、赤ちゃんが乳頭を吸う刺激を受けたときに、母乳を外に押し出す働きがあります。実際に赤ちゃんがおっぱいを吸うことで、母乳が出るようになってくるのです。
母乳はいつから出る?
上記でご紹介してきたように、赤ちゃんが生まれた後、すぐに母乳が出るようになるわけではありません。母乳が出始める時期には個人差がありますが、出産してから2日から5日くらいの間が一般的です。
いつから増える? 軌道に乗る時期は?
妊娠している間から体の中では母乳を作る準備が始まり、さまざまなホルモンの働きによって、ようやく母乳が出てくるようになるもの。
だいたい出産から10日ほどを過ぎると、ママの体の中で母乳を作るプロセスが安定するようになり、産後2~4週間たてば母乳の量も安定して増えていくようになります。
いつから出なくなる? いつまで出る?
ママの体は、赤ちゃんがおっぱいを吸って母乳を必要としていると、母乳をどんどん作ろうとします。諸説ありますが、出産から半年から9カ月程度たつと母乳量は減るとされています。
しかし、赤ちゃんがおっぱいを吸っていれば、量は少なくなるものの出続けます。授乳の頻度が減っていくことで、自然と母乳も出なくなっていきますが、この時期については個人差があり、授乳しなくても半年や1年間くらい母乳がにじみ出るようなこともあるでしょう。
妊娠中や産前に出ることはある?
妊娠中や出産前に、乳頭から母乳が出るケースがあります。出産後にスムーズに母乳が分泌されるように、乳管が開いたサインです。すでに出産経験のある経産婦に母乳が出ることが多く、初産婦であっても母乳が出ることも少なくありません。
初産と2人目以降で出始める時期に違いはある?
初産のときと、2人目以降の出産では、母乳の出方や出始める時期に違いが出ることがあります。一般的には2人目以降のほうが、母乳が出やすくなります。
しかし「2人目のときは産後すぐに母乳が出た」という方がいる一方で、「1人目のときはすぐに母乳が出たのに、2人目のときはなかなか出てこなかった」というケースも。1人目の子どもを見ながらの育児で、2人目に十分な授乳の時間がとれないことなども関係するかもしれません。
母乳が出ない・出にくい原因
ママの中には「母乳がなかなか出ない」「母乳が出にくい」と悩む方もいます。
しかし母乳が出ないことは、決して悪いことではありませんし、「赤ちゃんに授乳できない」「ママとしておっぱいをあげられない」と落ち込む必要はありません。まずは母乳が出にくくなる原因について見てみましょう。
ストレス
母乳が作られるのは、ママの体の中でさまざまなホルモンが働くから。
でもママが精神的に疲れを感じたりストレスを抱えていたりすると、それらのホルモンに影響を与えることが考えられます。慣れない育児に疲れたり、睡眠不足で精神的な疲労が蓄積していたりしたら、母乳が作られにくくなる原因となりかねません。
授乳リズムの乱れ
母乳は、赤ちゃんがおっぱいを吸ってその刺激で外に出てくるようになります。だから赤ちゃんが定期的におっぱいを吸うことが大切です。
でも、赤ちゃんがよく寝ていることで授乳間隔があいてしまったり、ママの体調不良によって授乳タイミングが遅れたり、授乳リズムがくるうと母乳の分泌が減るようになってしまいます。
ママの体の冷え
母乳の元となるものは、ママの体内の血液です。そのため、ママの体が冷えて血液循環が悪いと、母乳が作られにくくなったり、出にくくなったりします。
靴下や腹巻、レッグウォーマーなどを身に着けたり、生野菜のような体を冷やす食事は控えめにして、ストレッチを行ったり、体を温めるような対処を行うといいでしょう。乳房や肩甲骨の間を温めるのも循環が良くなるのでいいですね。
母乳が軌道に乗る前にしておいたほうがいいこと
母乳が安定して作られるようになるまで、赤ちゃんが生まれてから次の3つのことに気を付けておくといいでしょう。
1日8回以上授乳する
出産してから10日間ほどは、母乳を出すホルモンのしくみを整える大切な時期です。この期間に、1日8回以上授乳を繰り返し行うことで、母乳が作られやすくなっていきます。
タンパク質をたっぷり摂る
母乳はママの体の血液から作られます。そして血液を増やすためには、タンパク質や水分の摂取が欠かせません。栄養バランスの取れた食事をとりながら、良質のタンパク質の摂取を心がけておきましょう。
体を温めて血行を良くする
ママの体の血流を良くしておくことで、母乳がより作られやすくなります。育児で毎日慌ただしく過ごすことになりますが、1ヶ月健診で問題ない時には湯舟に浸かって体を温めたり、ストレッチを行なったりして、体を冷やさないように心がけましょう。
母乳の出をよくする方法
母乳の出をよくするために、具体的に次のようなことも気を付けるといいでしょう。
頻繁に授乳しよう
産後1週間〜10日間程はできるだけ多く授乳することが、母乳量を安定するために必要とご紹介しました。これと同じことになりますが、赤ちゃんが何度もおっぱいを吸うことで乳頭が刺激されて、母乳を作るホルモンが分泌されるようになります。
授乳間隔があくときは搾乳しよう
赤ちゃんがよく寝ているため授乳間隔があくようなときや赤ちゃんが飲みきれなかったときは、搾乳して排出するといいでしょう。乳房の中に母乳をためすぎないでいることが大切です。
人と比べず自分のペースで授乳しよう
母乳が出始める時期や、母乳の量、母乳が安定するまでの期間は人によって異なるもの。人と比べると気になることがあるかもしれませんが、他人と比べず、目の前の赤ちゃんと向き合ってみて。
毎日、リラックスして授乳して赤ちゃんとのコミュニケーションの時間を大切にできるといいですね。
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記事監修
看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。様々な診療科を経験し、看護師教育や思春期教育にも関わる。青年海外協力隊として海外に赴任後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。現在はシンガポールの産婦人科に勤務、日本人の妊産婦をサポートをしている。また、助産師25年以上の経験を活かし、オンラインサービス「エミリオット助産院」を開設、様々な相談を受け付けている。
文・構成/HugKum編集部