令和の性犯罪は「親の子ども時代」と違う!子どもたちが警戒すべき対象は、思わぬところに

性犯罪に巻き込まれないように「知らない人にはついて行かない」「変な人には気を付ける」と子どもの頃に言われてきた30代・40代の親世代は多いのではないでしょうか。かつてのその「変な人」とは、実際に目の前に現れる人が対象でしたが、令和を生きる子どもたちにとって、その対象は「顔も見えない、知らない土地に住む誰か」も含まれるようになりました。
 

今回は、性に関する社会問題の解決を目指すプレイリー株式会社の岩川龍之介さんに、現代の性犯罪と、保護者が注意すべきことについてうかがいました。

他人ごとではない!自分の子どもにも起こりうる事例

例えば、このようなことは身近にも起こりうることです。

(例)

福岡県に住むAくん(10歳の男の子)がゲームのオンラインチャットで、東京に住む中学生のお兄ちゃんと仲良くなった。

次第に「会おうよ」という話になったが、交通費がかかるので、母親に相談した。

母親は「会ってはいけない」と制止した。

もしかしたら、純粋に会って仲良くなりたいだけかもしれません。でも、中には言葉巧みにイタズラ目的で近づく人もいます。

ここが盲点!注目するポイントは2つ

相手が中学生・高校生など年齢が近いと警戒心が薄れがち

相手が未成年・同性だからといって安心してはいけないことを、子どもにしっかりと伝える必要があります。相手が嘘偽りなく中学生・高校生の場合でも、見えない相手に会うということは予想もしない犯罪に巻き込まれる可能性もゼロではありません。はじめからイタズラを目的に、大人が年齢を偽って近づいてくる可能性もあります。

子ども自身が危険性を理解できるようになるまでは、会うか会わないかの判断は保護者がするようにしましょう。

ペアレンタルコントロール機能だけで安心してはいけない

13歳未満はInstagramなどSNSの多くに登録することができません。また、ゲームのオンラインチャットなども保護者が機能を制限することができます。

もちろん、年齢や機能を制限することは、ある程度は子どもたちを守ってくれます。しかし、それだけで安心してしまうのには注意が必要です。

例えばオンラインゲームの場合、保護者が機能を制限していても子どもが設定を変えてしまったり、ハード面の設定だけでなくソフトごとに設定が必要になることを保護者が見落としていたりと、落とし穴はいくらでもありえます。

現在は、13歳未満のSNSを起因とした性犯罪被害は少ないですが、今後スマートフォン保有の低年齢化がさらに進むことで、13歳未満であっても、SNSやオンラインゲームのチャット機能を入口とした犯罪に子どもたちが巻き込まれる可能性が高くなってゆくことは想像できます。

子どもが危険性や対処方法を理解できるまでの「お約束」

「お約束」は最低限に

危険に繋がることはすべて禁止にしたし、子どもはしっかりと守ってくれている…でも、実は影でコッソリ写真を送りあっているかもしれません。実はコッソリ会いに行っているかもしれません。ルールを厳しくすればするほど、子どもは親に怒られないように、心配をかけないようにコッソリ隠れて行動するようになります。

特に、親離れが進む小学校高学年にもなると注意が必要です。あれもこれも禁止したり、チャットをすべて親がチェックできるようにするのではなく、お約束は最低限にしましょう。子どものプライバシーを守り、最低限の約束以外は子どもを信じてあげることも大切です。

「お約束」の意味をしっかり伝える

どの程度が最低限なのか、それは子どもの成長や理解によって異なります。親からの一方的なものではなく、子どもと話し合って決めるようにします。

最低限のお約束を決めるときも、なぜダメなのかその危険性を伝えてあげるようにします。

最低限のお約束(例)

・写真は送らない
・住所を教えない

・本名を教えない

・会わない

写真を送る危険性

送った相手以外にも見られるかもしれないこと。
はじめは顔写真だけを要求されていても、次第に裸の写真を送るようにエスカレートするかもしれないこと。
そして、それらの要求を断れない状況に追い込まれること。

住所・本名を教える危険性

教えた相手以外にも拡散され、自宅まで不審者が自分を追ってくるかもしれないこと。
住所・本名を悪用されるかもしれないこと。

親に相談なく会うことの危険性

性的な要求をされるかもしれないこと。
予想もしない犯罪に巻き込まれ、最悪の場合殺されるかもしれないこと。

親に相談できる信頼関係を築くために

親から子への「性教育」を取り入れてみませんか

冒頭で挙げた例では、会う前に親に相談することができたので、実際に会いに行くことなく済みました。しかし、もし同じ県内であれば、親に相談せず会いに行っていたかもしれません。

ハード面での機能設定や、子どもとのお約束を決めることも大切です。一方で、違和感を感じたり、不安や恐怖を感じる出来事に直面したときに、保護者に相談することができる信頼関係を築くことも重要です。当たり前のことかもしれませんが、なかなか難しく、一日で築けるものではありません。

日頃からしっかり子どもの話に耳を傾けること、否定的な言葉を避けて子どもを受け入れること、親が子どもを信頼することなど、ノウハウに関する情報は溢れています。それらに加え、方法のひとつとして、親から子への「性教育」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

性に関する正しい情報を伝えてあげる

「知らない人に股のあたりを触られた」「裸の写真を送ってほしいと言われた」そんな時に子どもは、親に心配をかけたくない、恥ずかしい、自分が悪いのかもしれない、怒られるかもしれない……といった気持ちから親に打ち明けずにいることがあります。

なぜそうなってしまうのか、理由のひとつには「性」に対する無知が挙げられます。また「性」について親と話すことに抵抗があることも理由として挙げられます。

「性」に関する教育をほとんど受けてこなかった親世代には少し抵抗を感じるかもしれません。しかし、性犯罪に対する危険性や身の守り方を身につけるためには、恥ずかしがらずに子どもに伝える必要があります。

いつから始めても早すぎることはありません。子どもが純粋に疑問に思ったことに対して、濁して伝えたり、間違った伝え方をするのではなく、正しい情報を教えてあげるようにしましょう。

「性」の疑問に答える準備を

例えば「赤ちゃんはどうやってできるの?」「どうして女の子にはおちんちんがついていないの?」といった子どもの素朴な疑問には、わかりやすい言葉で伝えてあげます。そこにコウノトリは出てきません。

プライベートゾーン(水着で隠れる部分)を見られたり触ったり、触られたりした時は、はっきりと嫌だと示して大人に相談することや、いずれは避妊のことなど、まずは親が恥ずかしがらずに子どもと向き合って伝えてあげます。

いずれ子どもが不審に思うことがあったり、傷ついてしまったときに親や他の大人に相談してもいいんだと思ってもらうことが大切です。

【紹介】

今回お話をうかがったプレイリー株式会社では「子どものこんな質問にはどう答えるの?」など家庭内の性教育をサポートするためのパンフレットの配布をはじめ、啓発活動やサービスの開発などをおこなっています。
性教育に関する講演や各種啓発パンフレットの設置などをご希望の場合は、代表のTwitterまたはホームページのお問合せフォームよりご連絡ください。

親も恥ずかしがらず、きちんと伝えて

性教育は性犯罪から身を守るためにも、大切なことです。かつては、あまりオープンにされてこなかったため、性的なことは相談しにくく、間違った知識を持ったまま大人になる人も少なくありませんでした。子どもたちがそうならないように、性に関する「現象・メカニズム」と「恥ずかしい気持ち」は切り離して、ごまかすことなく伝えていく必要があります。

ネット社会があたりまえとなり、令和を生きる子どもたちの交友関係は複雑さを増しています。自分の身体を大切にし、自身で責任ある正しい選択をしていけるように、親としてしっかりフォローしてあげたいですね。

記事監修

岩川龍之介さん|プレイリー株式会社  代表
福岡のセックスの人、社会起業家。
SNSを通じた出会いの中でクラミジアに罹患し、「性」を取り巻く社会課題に関心を持つ。それらを解決するサービスや仕組みを作りたいと2020年12月にプレイリー株式会社を設立。
「自分の性を好きになれる世界に」を掲げ、性行為が好きでも嫌いでも、どんな人を好きになってもなれなくても、あらゆる人が自分の性のあり方を好きでいられる世界を作るためにさまざまな取り組みを行う。

取材・文/村上詩織

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