温暖湿潤気候の特徴とは? 気候区分の定義や分布、衣食住を知ろう【親子で地理を学ぶ】

気候はその土地の文化や生活と密接な関係があります。日本の多くの地域が属している温帯の「温暖湿潤気候」は「ケッペンの気候区分」のひとつです。温暖湿潤気候の特徴や地域分布を確認し、その他の気候区についても理解を深めましょう。

気候区分とは?

世界は地域によってそれぞれ気候区分が決まっています。では、気候区分はどのように決められているのでしょうか。その種類と併せて詳しく見ていきましょう。

ケッペンによる「気候区分」

世界の気候は、ドイツの気候学者のウラジミール・ペーター・ケッペンが考え出した「ケッペンの気候区分」で分けられています。

ケッペンはまず、各地に生息する「植生」に着目しました。植物は移動できないことや、その土地の環境の影響を大きく受けるため、樹木があるかないかで区分したのです。

(日本気象協会)

次に各地の気温と降水量を計測し、世界の気候を大きく5種類の気候帯に分けました。それぞれはさらに細分化され、10種類の気候区分に分かれています。

5種類の気候帯

気候帯には、乾燥帯・寒帯・熱帯・温帯・亜寒帯の5種類があります。

樹木がない地域の中で、降水量が少ない地域は「乾燥帯」、いちばん暖かい月の平均気温が10度未満の地域は「寒帯」です。

樹木がある地域の中で、いちばん寒い月の平均気温が18度以上の地域は「熱帯」、いちばん寒い月の平均気温がマイナス3度未満で、いちばん暖かい月の平均気温が10度以上の地域は「亜寒帯(冷帯)」です。「温帯」はこの中間で、いちばん寒い月の平均気温がマイナス3度〜18度の地域となっています。

13種類の気候区分

気候帯は、さらに13種類の気候区分に細分化されています。

乾燥帯は昼と夜の気温差が大きいのが特徴で、わずかな雨が降る地域は「ステップ気候」、一年中雨が少ない地域は「砂漠気候」です。

寒帯に属し短い夏があり、わずかながら植物が育つ地域は「ツンドラ気候」、一年中氷河に覆われている地域は「氷雪気候」になります。

一年中高温の熱帯の中で、降水量が多い地域は「熱帯雨林気候」、雨季と乾季がある地域は「サバナ気候」、両者の間をとった特徴を持つ地域は「熱帯モンスーン気候」です。

温帯に属し夏は乾燥し冬に雨が多い地域は「地中海性気候」、四季がはっきりしており気温や降水量の変化に富んでいる地域は「温暖湿潤気候」、一年中気温と降水量の変化が少ない地域は「西岸海洋性気候」、夏の雨量が冬の10倍以上の地域は「温暖冬季少雨気候」になります。

亜寒帯に属すのは、一年中雨が多い「亜寒帯湿潤気候」と夏に雨季がある「亜寒帯冬季少雨気候」です。

また、上記13種類の気候区分に属さない「高山気候」もあります。同じ緯度の低地よりも気温が低いことや、標高によって育つ植物が変わるのが特徴です。

温帯とは?

ここでは「温帯」に焦点を絞って、より詳しく紹介します。温帯に属している気候や主な特徴、地域などについて見ていきましょう。

4つの気候区分に分かれる

温帯は一年を通して温暖で、四季があるのが特徴です。最も寒い時期でも氷点下になることはまれで、夏はかなり暑くなる地域もありますが、比較的過ごしやすい気候です。

温帯は四つの気候区分に分かれています。

「温暖湿潤気候」はモンスーンがあり、夏は高温で雨が多く冬は寒いのが特徴で、東アジア・北アメリカ南東部などが属しています。

「西岸海洋性気候」は、北アメリカ西岸やヨーロッパ西岸に分布しており、緯度が高いわりに気温は高めで一年中温度差が少ない気候です。

「地中海性気候」は夏に気温が上がって乾燥し、冬は雨が多いのが特徴で、イタリアや地中海沿岸地域が属しています。

「温暖冬季少雨気候」は、夏に雨季があるのが特徴で、東南アジアやアフリカ中南部などが属しています。

日本も属する温暖湿潤気候

日本のほとんどの地域が属している温暖湿潤気候は、どのような気候なのでしょうか? その定義や分布を紹介します。日本が属しているその他の気候についても確認しましょう。

温暖湿潤気候の定義

温暖湿潤気候は、以下の三つの条件を満たしている必要があります。

・最寒月の平均気温がマイナス3~18度の範囲
・最暖月の平均気温が22度以上
・一年中湿潤

例えば2022年の東京では、最寒月の1月の平均気温は4.9度で、最暖月の8月の平均気温は27.5度であったため、気温の条件を満たしています。

[出典]気象庁データベースより

また日本は、梅雨や熱帯低気圧の影響を受けることもあり、一年を通して降水量が多い地域です。年間降水量も地球全体の平均の約1.5倍とされることから、一年中湿潤であるという条件も満たしています。

Cfaの意味

ケッペン気候区分は、大文字と小文字のアルファベットを組み合わせて表記されており、それぞれのアルファベットには意味があります。大文字の頭文字は、5種類の気候帯です。真ん中と最後の小文字のアルファベットは、温度や降水量などの特徴が示されています。

例えば、温暖湿潤気候は「Cfa」と表示されます。「C」は温帯・「f」は湿潤・「a」は最暖月の平均気温が22度以上という意味です。22度未満の場合は「b」と表され、「Cfb(西岸海洋性気候)」になります。

世界的な分布

温暖湿潤気候は世界のさまざまな国に分布しており、日本では関東・中部・近畿・四国・九州のほとんどが該当します。アジアでは、中国(上海など)・韓国沿岸部・台湾北部などです。

その他にも、北アメリカ東部(ニューヨークやアトランタなど)・南アメリカ東部(ブラジルやアルゼンチンなどの一部)・オーストラリア東部(シドニーなど)・南アフリカ東部の一部地域なども属しています。

日本のその他の気候区分

日本列島は南北に長いため、地域によって気候が大きく異なるのが特徴です。

北海道や東北地方は「亜寒帯(冷帯)」に属します。気温・湿度ともに低く、冬は寒さが厳しい半面、夏は過ごしやすいのが特徴です。夏と冬の降水量の差があまりないという特徴もあります。

小笠原諸島や琉球諸島など南西諸島は、ケッペンの気候区分にはない「亜熱帯気候」です。「南西諸島気候」とも呼ばれ、冬でも温暖で昼夜および年間の気温差が少ないのが特徴です。夏は、かなりの暑さになることもあります。

温暖湿潤気候の特徴

温暖湿潤気候は一年中湿潤で、夏は高温多湿で冬は寒いというように一年を通して気温の変化に富んでいます。ただし、熱帯や寒帯のように暑すぎたり寒すぎたりせず、比較的過ごしやすい気候です。どのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。

植生と土壌

温暖湿潤気候の地域では、広葉樹と針葉樹が混在している「温帯混合林」が大きな特徴です。アメリカやアルゼンチンの一部には豊かな草原地帯があり、放牧が行われている地域もあります。

広く分布している土壌は、比較的肥沃とされる「褐色森林土」です。水分と温度など土壌中のバランスがよく、カルシウムやマグネシウムなど栄養分を豊富に含むことから、微生物などが暮らすのに適しているとされています。

また、多くの動植物が生息し、気温や降水量が農業に適していることから、古代より農業や産業が発達している地域が多いのも特徴です。

モンスーン(季節風)の影響

温暖湿潤気候には、モンスーン(季節風)の影響を受けるという特徴もあります。モンスーンによってさまざまな変化がもたらされますが、その一つが「梅雨」です。

北西から吹く冷たく乾燥した冬の風と南東から吹く暖かく湿った夏の風がぶつかり合い、梅雨前線が発生します。ほとんど動かない状態の二つの異なる風がぶつかり合うことで不安定な天候になり、雨が降りやすくなるのです。

夏が近づいてくると、夏の風のほうが強くなり高温多湿になります。反対に冬が近づいてくると、冬の風が強くなり乾燥して寒くなるのです。

その他の変化

温帯には四季が明確という特徴がありますが、温暖湿潤気候はモンスーンの影響を受けるため、温帯の中で最も四季の変化に富んでいます

降水量が多いのも特徴です。モンスーンの影響による梅雨だけでなく、夏から秋にかけては赤道付近で発生した熱帯低気圧が南方から北上してくることで、台風に見舞われることも少なくありません。

秋から冬にかけては秋雨前線が発生し、雨が降りやすくなります。

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温暖湿潤気候の衣食住

人々の生活は、居住地の気候に合うように発展してきたため、地域によって生活様式が異なることも珍しくありません。温暖湿潤気候の特徴を衣服・食べ物・住居の三つの観点から紹介します。

衣服

高温多湿になる夏は、薄手で風通しのよい服が好まれます。日本では、古くから浴衣が夏服の定番でした。浴衣はもともと入浴時に着られていましたが、汗をよく吸い取る綿素材で風通しがよいことから、湯上がりや就寝時に着るようになったのです。外出時に着るようになったのは、江戸時代中期頃といわれています。

現在も夏は涼しい素材の衣服が好まれています。逆に冬は寒いため、温かい素材の衣服が好まれ、マフラーや手袋など防寒具を着用する人も珍しくありません。

春・秋は暑い日もあれば寒い日もあるので、カーディガンやジャケットなどで調節することもあります。

食べ物

高温多湿で雨が多いため、農業が盛んな地域が多いという特徴があります。

例えば、日本では古くから稲作が行われてきました。稲作には多くの水が必要ですが、日本は川が多く水が豊富です。また、稲はもともと熱帯の沼地に生息しており、高温多湿な気候が稲作に向いていたことも稲作の文化が根付いた理由です。

東アジアでも米作りが盛んで、茶の栽培もされています。アメリカ東部では、トウモロコシ・大豆・小麦などの栽培が広く行われています。豊かな草原地帯があるアルゼンチンなどの湿潤バンパという地域では、牧畜と組み合わせた「混合農業」も盛んです。

住居

日本の伝統的住居は木造家屋で、部屋がふすまで区切られていました。夏は高温多湿になるので、湿気に強いヒノキなどを用い、ふすまを開けることで風通しがよくなり湿気が溜まらないように設計されていたのです。

水滴が乾きやすいように、柱や梁(はり)は隠さずに外に出して見せる工法「真壁づくり」も用いられていました。

日本の家屋の屋根は、雨水がはけやすい構造になっており、雨が吹き込むのを防ぐために軒も深くつくられています。欧米の家屋ではほとんど見られない、雨戸が設置してあるのも特徴といえるでしょう。

四季がはっきりして降水量が多い温暖湿潤気候

温暖湿潤気候は、ケッペンの気候区分の温帯に属する気候で、日本のほとんどの地域に分布しています。一年を通して気温の変化が大きく明確な四季があることや、モンスーンや熱帯低気圧の影響を受け降水量が多いのが特徴です。

日本で稲作の文化が根付き、浴衣が着られるようになったのは、温暖湿潤気候と深い関係にあります。それぞれの気候区分によって文化などに違いがあるので、その他の気候区分の生活について調べてみるのも楽しいでしょう。

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文・構成/HugKum編集部

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