「時期尚早」「時期早尚」どっちが正しい? 類語や英語表現まで解説

「時期尚早」とは「ある事を行うにはまだ早い」という意味。「時期早尚」と間違えたり、「時期」を「時機」「時季」と間違えるなど、注意が必要な四字熟語です。今回は「時期尚早」の言葉の意味から、正しい使い方の例文、類語、対義語、英語表現まで解説します。

「時期尚早」の意味や成り立ちは?

「時期」は会話でもよく使う身近な言葉ですが、「尚早」はあまり馴染みがありませんよね。まずは「時期尚早」という四字熟語の意味と成り立ちについて、確認していきましょう。

意味や読み方

「時期尚早」とは、「ある事を行うにはまだ早い」という意味の四字熟語。「じきしょうそう」と読みます。「しょうそう」と発音しにくいですが、間違えて「早尚(そうしょう)」「早々(そうそう)」と言わないように注意しましょう。

成り立ち

「時期尚早」の「時期」は、期間や時代など「区切られた時」を意味する言葉です。発音が同じ「時機」や「時季」と混同することも多いため、違いを確認しておきましょう。

「時機」は「ある事を行うのによい機会」という意味で、「時機を見て伺う」というように使います。「時季」は「季節」や「一年のうちで何かが盛んに行われるシーズン」という意味。「時季外れ」「行楽の時季」というように使います。

また、「時期尚早」の「尚早」は、「尚(なお)、早し」訓読みできます。「尚」とは、「まだ、やはり、相変わらず」など、状態が変わらない様子を意味する言葉。「尚、早し」と覚えておけば、「時期早尚」「時期早々」と間違えにくくなります。

使い方を例文でチェック!

読み方や漢字など、間違えやすいポイントが多い「時期尚早」。言葉の意味や成り立ちがわかったところで、自然な使い方も例文で確認しておきましょう。

1:彼をリーダーにするのは時期尚早だ。

「時期尚早」は、「ある事を行うにはまだ早い」という意味であるため、基本的にネガティブなニュアンスで使われます。例文のように、ある物事に対して「時期尚早だ」と言うだけでなく、「時期尚早な」という表現も可能。「時期尚早な判断」「時期尚早な考え」などと言います。

2:時期尚早感がある。

「時期尚早という感じがする」という意味で、「時期尚早感がある」「時期尚早の感がある」と表現することもあります。「時期尚早だ」と断定するよりも、「感」が付くことで柔らかい印象になります。

3:時期尚早ではございますが、来年度について議論したいと思います。

ビジネスシーンやあらたまった場では「時期尚早ではございますが」という表現をすることも。しばらく先の予定について話を始めるとき、「時期尚早ではございますが」と前置きすることで、謙虚な印象を与えます。

類語や言い換え表現は?

「時期尚早」について、「しょうそう」と発音しにくかったり、とっさに漢字が出てこないこともあるはず。類語や言い換え表現を確認しておけば、慌てずに済むかもしれません。

1:早計

「早計(そうけい)」とは、「十分に考えずに、物事を判断すること」。早まった考えを示し、「その判断は早計だ」などと言います。また、「早計に失する」という言葉も。「失する」は「失う」と同じ漢字であることから、打ち消しの意味だと誤解しがちですが、「しすぎる」という意味です。

「早計に失する」は「早計すぎる」つまり「判断や考えが早まり過ぎている」という意味。「失する」を用いた言葉には、「遅すぎる」という意味の「遅きに失する」という表現もあります。

2:拙速

「拙速(せっそく)」とは、「仕上がりはよくないが、仕事は速いこと」。「拙速な仕事」「拙速に進める」などと言います。また、「拙速主義」という言葉もあり、意味は「完璧は求めず、速さを重視する考え方」。

「拙速に過ぎる」という言葉もあります。これは、「ある物事をやるには、時期が早過ぎる」という意味で、「時期尚早」とほとんど同じ意味で使うことができます。

3:見切り発車

「見切り発車(みきりはっしゃ)」は、もともと電車やバスが満員や定刻を理由に、乗客が揃っていなくても発車するという意味。そこから転じて、「十分に議論されないまま、決定されること」という意味を持つようになりました。「見切り発進」とも言います。

対義語は?

日々生活していく中で「時期尚早」と感じる時もあれば、反対に「今こそやるべき」「すでに遅かった」と感じる時もあるはず。そのような場合は、どのような表現が適切なのでしょうか。

次から、「時期尚早」とは対極の意味になる言葉を考えてみましょう。

1:時機到来

「時機到来(じきとうらい)」とは、「ある事を行うのに、都合のいい時機がきた」という意味。簡潔に言えば、「いいタイミング」。

「時期尚早」の言葉の成り立ちでも解説した通り、「時機」には「ある事を行うのによい機会」という意味があります。「時期」ではなく「時機」であることに注意しましょう。

2:機会損失

「機会損失(きかいそんしつ)」とは、文字通り「機会を失うこと」。本来得られるはずの利益を逃してしまうことを意味します。「機会ロス」「チャンスロス」とも言い換えることが可能です。

3:機が熟する

「機が熟する(きがじゅくする)」とは、「ある事を行うのに、ちょうどいい時機になる」という意味。果物が熟して食べごろになるように、物事の状況が整い、実行に適した状態になるイメージです。「機が熟した」とも言います。

英語表現は?

物事にはタイミングが重要であることは、日本だけでなく世界の共通認識であるはず。最後に、「時期尚早」の英語表現も確認しておきましょう。

1:premature

「premature」とは、まさに「時期尚早な」という意味の形容詞です。「His decision was premature.」で「彼の決定は時期尚早だった。」という文になります。

2:It is too soon to 〜

「It is too soon to 〜」は「〜するには早過ぎる」という意味。「premature」という単語がとっさに出てこない時は、このようにシンプルな英語を用いて、「時期尚早」と同じ意味になる文章で表現してしまいましょう。

「It is too soon to quit the job.」で、「仕事を辞めるには早過ぎる」という意味になります。

3:half-cocked

「hail-cocked」は、主に話し言葉で使われる英語で「時期尚早な」「準備不足な」という意味の形容詞です。「go off half-cocked」で「早まって行動する」という意味。「You should not go off half-cocked.」で「早まるべきではない」となります。

最後に

比較的身近な四字熟語「時期尚早」について解説しました。身近であるものの、読み間違いや書き間違いが多く、注意が必要な言葉です。言葉の成り立ちや言い換え表現と関連づけて覚え、正しく使いたいですね。

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構成・文/伊藤舞(京都メディアライン)

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