「きょうだい型人間学」の専門家に訊く、きょうだい・ひとりっ子……生まれ順によるキャラの違いをどう伸ばす?

きょうだいの有無や生まれ順によって、子どもの性格や育ち方にはどんな違いがあるのでしょうか。さまざまな調査結果や心理学的な考え方に基づき、生まれ順による性格などの傾向を研究する「きょうだい型人間学」の専門家に聞きました。

きょうだいの有無や生まれ順は性格に影響する要素のひとつ

子どもの性格は、「生まれつきの気質」と「親の接し方」の相互作用によって形づくられると考えられています。このうち、「親の接し方」に大きく影響するのが、きょうだいの有無や生まれ順です。

1人目の子は妊娠中から「何かあったら大変!」という緊張感の中で育てられることが多いのに対して、2人目以降の子育てはよい意味で“いい加減”になりやすく、そのような違いが子どもの性格にも影響を及ぼします。また、「しっかりした子に育ってほしい」という社会的な期待をかけられやすい1人目は、勤勉で高学歴になる傾向が見られます。

子どもは変わりゆく存在なので決めつけはNG

下記で紹介するように、これまでの研究により「一番っ子」「間っ子」「末っ子」「ひとりっ子」といった「きょうだい型」ごとに共通して見られる性格の傾向があることが明らかになっています。

ただし、性格に影響を与える要素にはさまざまなものがあり、これらの傾向は絶対的なものではありません。子どもは成長とともに変わりゆく存在であり、成長する中でその子ならではの個性が強く表れることもあり得ます。

「きょうだい型」は性格を決めつけるものではないので、「うちの子らしさ」を知る手がかりのひとつと考えましょう。

生まれ順によって親の育て方にも違いが生じる

ここに示したものは一般的によく見られる傾向であり、子どもの気質には個人差があるため、形成される性格も一人ひとり異なります。

1人目

何もかもが初めてで、緊張感の中での子育てになりがち。

子どもはしっかりした慎重なタイプに育ちやすい。

2人目以降

1人目の経験があるので、余裕をもって子育てできる。

子どもは楽観的にのびのびと育ちやすい。

「きょうだい型」によるきょうだい・ひとりっ子 性格の特徴と育て方のポイント

きょうだいの中で一番年上の「一番っ子」、上と下にきょうだいがいる「間っ子」、一番年下の「末っ子」、きょうだいのいない「ひとりっ子」のそれぞれについて、基本的な性格の傾向と育て方のポイントを見ていきましょう。

一番っ子

親の期待を感じ取って「しっかり者」になりやすい

初めての子として親や周囲の期待を一身に背負って育つ「一番っ子」は、その期待に沿えるように慎重に行動することが多く、「しっかり者」になりやすいのが特徴。

成績もよく、高学歴を得やすい傾向にあり、医師や弁護士など社会的評価の高い職業に就くことも少なくありません。

【育児ポイント】

「よくやっているね」とがんばりをほめて

「しっかりした子に育ってほしい」という周囲の期待を敏感に感じ取る「一番っ子」は、期待に応えようと一生懸命になっていることが多いので、「よくやっているね」とがんばりをほめることが大切です。

少しくらい親の期待から外れるような行動をとっても柔軟に受け止めるようにすると、「一番っ子」はのびのびと成長できます。親自身も初めての子育てで力が入りすぎていないかを冷静に見つめ直し、時には肩の力を抜きましょう。

間っ子

バランス感覚があるが周囲に気をつかいがち

きょうだいの中での自分の立ち位置を意識しながら育つ「間っ子」は、人間関係において優れたバランス感覚を身につけます。

きょうだい間のバランスを取るために調和を重視する穏やかな性格に育つことが多く、接客業など人と接する仕事に就くことも苦にならないタイプです。

【育児ポイント】

我慢させすぎずに本音を言える場をつくる

「間っ子」は人当たりがよいので、親は「この子なら大丈夫だろう」という安心感から、つい目を離してしまいがちです。

でも、「間っ子」は周囲への配慮から、いろいろと我慢していることも多いもの。本音を安心して言える場をつくるために、親が定期的に一対一で向き合い、「自分の気持ちを抑えすぎなくていいよ」といった声かけをするのがおすすめです。そのうえで、本人がやりたいことをやれるようにサポートしていきましょう。

末っ子

負けん気が強い一方で人に頼れる素直さも

周囲から甘やかされがちな「末っ子」は自由奔放に育つことが多く、思い切りと要領のよさから、タレントやスポーツ選手として成功することも。

幼いころは何をやっても上のきょうだいにはかなわないことから負けん気が強くなりがちですが、人に頼れる素直さも併せ持っています。

【育児ポイント】

身の危険がなければ自由な振る舞いを見守る

リスクを恐れずに果敢に挑戦できるのは「末っ子」の長所です。基本的には、「この子は将来、大物になるかもしれない」といったおおらかな気持ちで、自由な振る舞いを見守っていてよいでしょう。

ただし、思い切りのよさがエスカレートすると、羽目を外してしまうことがあるため、親としては注意する必要があります。身の危険があるときや社会のルールを破るような行動をしたがるときは、その場ですぐに止めましょう。

ひとりっ子

愛情をひとり占めできる環境で自信がつく

「ひとりっ子」は、周囲の期待に応えようとして高学歴を得やすい「一番っ子」の特徴を持つと同時に、親の愛情をひとり占めして育つことで自信がつき、親思いに育つことが多いです。

専門職やアーティストといった自分の道を見つけると、その道を究めていく傾向があります。

【育児ポイント】

対人スキルを育てるため同年代との交流の機会を

「ひとりっ子」は、集団生活を経験するまでは同年代の子どもとの交流が少なくなりがちなので、いかにして対人スキルを育てていくかが課題になります。

ママ友・パパ友と子連れで集まったり、いとこなど親戚の子どもと遊ぶ機会をつくったりして、同年代の子どもとふれ合う機会を意識的に増やしていきましょう。無理のない範囲で習い事を始めたり、地域の子育て広場に出かけたりすることも、交友関係を広げるきっかけになります。

きょうだい・ひとりっ子 ここが知りたい!

Q.子どもは1人、と考えているのですが、「きょうだいがいないとかわいそう」と言われて悩んでいます。

A.親が持っている資源(お金・モノ・時間など)をひとりに集中できるのは、ひとりっ子の子育てならではのよさであり、「かわいそう」という周囲の声を気にする必要はありません。
さまざまな習い事を経験させるなど、教育面でも手厚いサポートができることは成長にも有利に作用します。「きょうだいがいない」という点をマイナスにとらえず、ひとりっ子ならではのよさに目を向けていきましょう。

Q.1人目の子育て中ですが、このまま「ひとりっ子」として育つのと、下にきょうだいができて「一番っ子」になるのとでは、どんな違いがありますか?

A.親の期待を感じ取って勤勉に育つのは、「一番っ子」と「ひとりっ子」に共通する傾向です。ただ、「一番っ子」は下にきょうだいが生まれるとリーダーとしての役割を身につけていくのに対し、「ひとりっ子」はきょうだい間の関係がないためマイペースに育ちやすいといえます。
一般的に、男子はきょうだいの有無にはこだわりがないのですが、ひとりっ子の女子は「きょうだいが欲しかった」と思う傾向があるようです。

Q.2人目を産む場合、きょうだいの年齢差は子どもの育ちにどう影響しますか?

A.一般的に、3歳以上離れていると上の子が下の子の面倒を見られるようになり、きょうだい間のぶつかり合いは少なくなります。
1~2歳差の場合は、下の子が生まれると上の子は自分に対する親の愛情が減るのではないかという不安から赤ちゃん返りをすることがあり、ライバル意識も強くなる傾向が見られます。

Q.きょうだいが同性の場合と異性の場合で、配慮すべき点に違いはありますか?

A.異性の場合は互いをライバル視することは少ないのですが、同性の場合は共感しやすい一方で、家族内で「キャラがかぶる」といった意識から強い葛藤が生まれることがあります。
同性で同じ習い事をさせる場合は、成果を競わせるだけでなくそれぞれのがんばりを認めると、きょうだい間のぶつかり合いを緩和できます。

Q.きょうだいげんかにはどう対応したらよいのでしょうか?

A.けんかをすること自体は悪いことではなく、トラブルを自分たちで解決する方法を学んでいるという一面もあります。ケガにつながるような激しいけんかでなければ、無理やり仲裁する必要はありません。
親は「コミュニケーションの練習をしているんだね」とおおらかに構え、双方の言い分を冷静に聞きましょう。

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教えてくれたのは

磯崎三喜年先生
国際基督教大学教養学部名誉教授。博士(心理学)。きょうだい構成や生まれ順が人間の性格や行動に与
える影響を研究する「きょうだい型人間学」を専門とする。

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イラスト/ハヤシフミカ 文/安永 美穂 構成/童夢

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