『小人(こびと)の靴屋』のあらすじ確認。続きのストーリーが怖くて驚愕【教養としてのグリム童話】

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『小人の靴屋』はグリム童話の一つです。グリム兄弟についてのあれこれや、あらすじ、本当は怖いともいわれる続編についてなどをまとめました。

『小人の靴屋』って、どんなお話?

『小人の靴屋』は「グリム童話集」の中のお話の一つで、貧しい靴屋の靴作りを小人(こびと)が夜にこっそり手伝う不思議なお話です。

グリム童話『小人の靴屋』とは

『小人の靴屋』は、もともとドイツ地方の伝承民話だったお話を、類話等とまとめグリム童話の一つとして1812年に発表されました

原題:”Die Wichtelmänner”または”Die Wichtelmännchen”、英語表記”The Elves and the Shoemaker”
国:ドイツ
発表年:1812年

グリム童話とは

グリム童話とは、ドイツの説話学の創始者であるグリム兄弟(兄ヤーコプJacob Grimm(1785―1863)、弟ウィルヘルムWilhelm Grimm)によって編纂された、主にドイツの伝承や民話を収録した童話集のことです。

1812年に初版が刊行され、以降、数版に渡って改訂が重ねられました。グリム童話には、よく知られた作品として『白雪姫』『シンデレラ』『ラプンツェル』『ヘンゼルとグレーテル』『赤ずきん』などがあり、今日でも多くの国で愛読されています。

1847年、世界初の実用的写真撮影法ダゲレオタイプで撮影されたグリム兄弟(左・ヴィルヘルム、右・ヤーコプ)
グリム兄弟(左・ヴィルヘルム、右・ヤーコプ)Photo  by Hermann Biow, wikimedia commons(PD)

 

『グリム童話』は1812年12月20日に刊行された初版当時は、『子供と家庭のおとぎ話』(ドイツ語原題”Kinder- und Hausmärche”、英語” Children’s and Household Tales”)というタイトルで86話が収められていました。その後の改訂版で、1815年に70話が追加で収められ、『グリム童話』に改められます。1857年まで7回にわたり改訂が繰り返され、最終的には200話と10話の『子供の伝説』(”Children’s Legends”)まで拡大されます。2005年に、グリム童話はユネスコの世界記憶遺産に登録されています。

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あらすじと教訓

では、さっそくあらすじを見ていきましょう。

※以下では、物語の核心にも触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

詳しいあらすじ

働き者だが貧乏な靴屋が、もはや材料を買うお金もなくなり、最後の一足分の革しかなく悩んでいます。

小人がやって来る

靴屋のおじさんは、最後の革を切ると「続きは明日にしよう」と床に就きます。すると、夜中に二人の小人が作業台にやって来て、代わりに靴を作って置いていきます。

 

翌日、おじさんはすでに仕上がっている靴に驚きます。しかも、その靴は、驚くほど手が込んでおり、素晴らしい出来栄えでした。お店に置くとすぐに売れてしまいます。おじさんはその売り上げで革を二足分買い、翌晩また同じように革を切って寝てしまうと、小人たちがまた靴を作ってくれます。

靴の評判はすぐに広まり、お店にはたくさんのお客さんが来るようになり、大繁盛します。

小人を見てしまうと…

「それにしても、不思議なことが起こるものだねぇ」と首をかしげるおじさんとおばさん。ある日、夜中に何が起こっているのか見ていることにします。すると、二人のボロ着の小人が一生懸命靴を作っているではないですか。

おじさんとおばさんは驚くとともに、何かお礼がしたいと思い、次の晩、革の代わりに、小人のために小さい服を作って作業台に置いておきました。小人たちは、革がないことに戸惑うものの、服を見つけると大喜び。

その後、小人らは二度と現れることはありませんでした。それでも、お店は繁盛を続け、おじさんとおばさんはとても幸せに暮らすのでした。

あらすじを簡単にまとめると…

要約すると、貧しい靴屋が小人が作ってくれた靴を売ると、どんどんお客さんが来る人気店になり裕福に。お礼に小人に服を作ってあげる、小人は大喜びするが、それ以降もう現れなくなった、というお話。

教訓

窮地に陥っても、思わぬところから助けが来ることや、また偶然の幸運にも感謝することの大切さを教えくれているのではないでしょうか。

常に他の人に感謝の気持ちを忘れないように、というメッセージが込められているように思えます。

 

本当は怖い2話と3話の内容

『小人の靴屋』は「本当は怖い」とも言われています。実は、心温まる靴屋のお話に続いて、「小人シリーズ」は、2話、3話へとお話が続きます。そしてその内容が怖いと言われているのです。あらすじを見ていきましょう。

※以下では、物語の核心にも触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

第2話のあらすじ

働き者の女中が、ご主人様のお屋敷を掃除をしていると、小人からの一枚の手紙を見つけます。彼女は字が読めなかったので、仕えているご夫妻に読んでもらいます。

すると、それは女中あての次のような招待状でした。「子どもが生まれたので、女中に名付け親になってほしいので、家に来てほしい」とのことでした。

女中はとまどいましたが、ご夫妻から「小人のお願いは断るべきではない」と言われ、行くことにします。

すると、3人の小人が来て、女中を小人たちが住む高い山の中に案内しました。ここでは、すべてが非常に小さいサイズでしたが、言い表せないほどすべてが美しく優雅な時間と空間でした。

そこで、女中は名付け親の役を果たし、家に帰ろうとしましたが、小人たちは彼女に「少なくとも3日間滞在してほしい」と頼みます。小人たちは彼女を最大限にもてなし、音楽やお祭りを一緒に楽しみます。最後、帰るときには、小人たちは彼女のポケットに金貨をいっぱいに詰め込み、彼女を送り出してくれます。

上機嫌で家に戻った女中は、再び同じ屋敷で働き始めるために、ほうきを手に取ります。すると、何人かの見知らぬ人が彼女に近づいて、彼女が何者で何をしているのか尋ねてきます。

なんと、彼女は3日間ではなく、7年間小人たちと一緒に過ごしており、その間に仕えていたご夫妻も亡くなっていたことが判明するのです。

解釈:浦島太郎的なタイムスリップの物語ですが、怖いと言われるのは、突然招待され、行ってみると時間が飛んでしまっているという点です。なぜ名付け親にえらばれたのか、なぜ3日間いないといけなかったのか、などの理由付けがないため、読み手は小人に騙されたようにも取れ、気味が悪く感じます。

第3話のあらすじ

※以下では、物語の核心にも触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

ある母親が子どもを連れ去られて、代わりに、頭が異常に大きく目がギョロギョロした鬼の赤ちゃんが、かまどのそばに残されていました。

小人による「入れ替え」でした。

困った母親は、近所のおばあさんにどうしたら良いかと相談すると「卵の殻をお鍋の代わりにして、中に水を入れてお湯を沸かしなさい」と言われます。そして「もしその鬼の子が笑ったら、いや多分笑うだろうから、そしたら大丈夫だ」と言います。

母親はさっそく言われた通りにします。すると鬼の子は卵の殻を見て

I am old as the woods,
But from ages of yore,
I never saw shells
Used for boiling before.”

おいらは森と同じくらいの年よりさ
だけど、いままで殻を湯沸かしに使うなんざ
見たことないさ。

と言って笑い出します。すると、瞬く間に、鬼の子と元の子どもが入れ替わります。ただ、元の子が置かれたのは、殻の中でお湯が煮えたぎっている、かまどの上でした。

解釈:卵の殻でお湯を沸かす、というのは愉快なことが大好きな小人の興味をひかせるための行動のようです。それによって、「楽しませてくれてありがとう、じゃあお子さんお返ししますね」ということなのですが、返してくれた場所が煮えたぎるかまどの上、という最後の一文で読者をぞっとさせます。

「小人の靴屋」を読むなら

「小人の靴屋」の人気絵本をページ数順にご紹介します。本によっては「こびととくつや」「こびとのくつやさん」など、表記が違うものもありますが、いずれも内容は同じです。

こびとのくつや (ポプラ社)

すずき えりな 中脇 初枝 (著), 石之 博和 (著) 2018/10/4 28ページ

本文に「教科書体」を採用。また、本文の漢字・カタカナにはすべてルビがふってあるので、はじめてのひとり読みにも最適です。文字が読めるようになったら。

こびとのくつや (小学館)

寺村輝夫  岡村好文  世界名作おはなし絵本 2007/8/1 32ページ

小学生低学年~。漢字あり、ルビ一部。テキスト読み上げ機能がついていますので、読めない漢字をキンドル読み上げ機能で学習することもできます。(機械合成音)

こびととくつや(永岡書店)

グリム (著), 柳川 茂 (著), 照沼 まりえ (編集), 宮尾 岳 (イラスト) 絵本・単行本 1999/1/1 46ページ

可愛いイラストの絵本。易しい漢字少しあり、ルビなし。小学生低学年~。

小人は「レプラコーン」? 想像を膨らませて楽しんで

アイルランドの民話に登場する「レプラコーン」という妖精を知っていますか?

レプラコーンはアイルランドを代表するキャラクターで、全身緑色の服装、フレアに広がった上着とパンツに大きな帽子を赤毛の上から被り、髭を生やしている、小さなおじさんの妖精です。クローバーの模様がついていたり、クローバーを口に咥えていたり、握っていることが多いようです。そのレプラコーンがグリム童話の『小人の靴屋』の主人公とも言われています。

このように、ヨーロッパの人々にとって、こびとや妖精、精霊は生活習慣や文化に根ざした、言い伝えの中の大事な役目を負っています。お子さんと一緒に「どんな妖精に会ってみたいか」「不思議なことがあったら妖精が手伝ってくれたのかもしれない」などと想像を膨らませてみるのも良いですね。

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文/加藤敬子  構成/HugKum編集部

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