「種子」とは何か? 種子で増える植物の特徴や、種の発芽条件をチェック【親子でプチ科学】

種子は、植物が仲間を増やすために重要な役割を果たしています。種子の内部構造や、種子を持つ植物の種類・特徴などを学び、子どもと植物観察を楽しみましょう。発芽するために必要な三つの条件や、種子で増えない植物など気になる情報もあわせて紹介します。

種子とは何のこと?

「種子」とは実際に何を指すのでしょうか。種子が果たしている役割や、種子の中身がどうなっているかを見ていきましょう。

植物の種を指す

種子は、いわゆる植物の種(たね)です。めしべの中で作られる胚珠(はいしゅ)と呼ばれる小さな粒が受精して、成熟したもののことを種子といいます。

発芽には温度や水などの条件が必要なので、適切な環境で芽を出すために休眠するのも種子の特徴です。植物は自力で動くことができないため、仲間を増やすために風や動物などの力を借りて、種子を遠くに散布する必要があります。

種子を作り、種子を散布して増える植物の総称が「種子植物」です。その他、種子を作らない植物も存在するため、両者の違いに注意しましょう。

種子の中身について

種子の中にあるのは、植物が発芽するために必要なです。胚は栄養分がつまった胚乳(はいにゅう)に包まれています。

胚と胚乳を包む、種の表面を覆っている皮の部分が種皮です。種皮は、もともと胚を覆っていた珠皮からできており、珠皮が成長することで種皮になります。

このタイプは「有胚乳種子」と呼ばれ、他に胚乳が存在しない「無胚乳種子」も存在します。マメ科やアブラナ科の植物が代表的です。無胚乳種子は胚乳の代わりに、子葉(しよう)という小さな葉に栄養を蓄えています。

種子植物は被子植物・裸子植物に分けられる

種子植物は、胚珠が包まれているかどうかによって、被子植物と裸子植物に分けられます。被子植物と裸子植物の違いや、それぞれの例をチェックしましょう。

被子植物のタンポポ。種は長く風に乗って運ばれるようにパラシュート型になっている
被子植物のタンポポ。種は長く風に乗って運ばれるようにパラシュート型になっている

被子植物の特徴・例

種子植物の中で、胚珠が子房(しぼう)によって覆われているものを被子植物といいます。子房は成長すると果実になるので、被子植物が受粉すると種子と果実の両方ができるのが特徴です。

種子のもとになる胚珠が子房に守られているため、外から見えることはありません。胚珠が外から直接見えるかどうかが、被子植物と裸子植物の見分け方です。

被子植物の例としては、チューリップやタンポポなどの身近な植物が挙げられます。果実の部分が食べられる果物では、バナナやパイナップルなどが代表的です。

被子植物の分類である単子葉類・双子葉類

被子植物は、葉のもとになる子葉の枚数によって、さらに単子葉類と双子葉類の2種類に分類されます。子葉が1枚だけのものが単子葉類、子葉が2枚あるものは双子葉類です。

単子葉類と双子葉類では葉脈や根の形が違っており、見た目もそれぞれ異なります。葉脈が葉に沿って平行になっているのが単子葉類、網目状になっているのが双子葉類です。

単子葉類の植物にはトウモロコシやイネ、双子葉類の植物にはアブラナやサクラなどが当てはまります。

双子葉類には、花びらが1枚ずつ分かれている離弁花と、アサガオのようにくっついている合弁花があるのもポイントです。

離弁花のサクラ
合弁花のアサガオ

裸子植物の特徴・例

胚珠が子房に包まれている被子植物に対して、胚珠がむき出しになったものを裸子植物といいます。裸子植物には子房がないため、成長しても実ができないのが特徴です。

裸子植物には子房がないだけでなく、花びらもありません。そのため、おしべとめしべではなく、花粉を出す雄花と雌花によって受粉が行われます。

マツの雄花が出す花粉を、雌花の胚珠が受けて受粉する。雌花には子房がなく胚珠がむき出しになっている

裸子植物の例としてはマツやイチョウなどがあり、いずれも雄花から花粉を飛ばして種子を作ります。

イチョウの実(ギンナン)は食用にもなっているため、被子植物だと思うかもしれませんが、食べられる部分も種なので裸子植物の仲間です。

種子が発芽する3つの条件

種子が発芽するためには、水・空気・温度という三つの条件が必要です。植物が成長するために欠かすことのできない、発芽の3要素について紹介します。

休眠状態を解除する「水」

およそ1億4000万年前に、すでに地球上に存在していたといわれている蓮。古代蓮には、何年も休眠してから咲くものも多い。
およそ1億4000万年前に、すでに地球上に存在していたといわれている蓮。古代蓮には、何年も休眠してから咲くものも多い

環境が整っていなければうまく発芽できないこともあるため、乾燥した種子は基本的に休眠しています。休眠とは、文字通り種子が休んでいる状態であり、発芽したり成長したりすることはありません。

休眠状態を終わらせるために欠かせないのが、水の存在です。種子が周りの水を吸うことで、休眠をやめて発芽に向かう準備が始まります。

植物の種類によって種子の寿命は異なるため、長く休眠していた種子は発芽しない可能性があることに気を付けましょう。ハスの仲間には、長い間休眠した後、問題なく発芽したものもあるようです。

呼吸のための「空気」

植物が発芽するためには、種子が呼吸をするための空気も欠かせない条件です。水を吸い込んだ種子は、成長して葉を伸ばそうとしますが、そのためにはエネルギーが欠かせません。

植物がエネルギーを作り出すために、必要となるのが酸素です。そのため種子を植える際には、土の状態に気を配って、なるべく水はけのよい環境を整えましょう。

土の粒があまりに細かいと、隙間ができにくく通気性が悪くなる恐れがあります。ほとんどの植物は、成長のために空気を必要としていますが、例外としてむしろ空気に触れることを嫌うものもあるため注意が必要です。

種子により適温が異なる「温度」

日当たりの加減と節水栽培でトマトの糖度をあげることができる
日当たりの加減と節水栽培でトマトの糖度をあげることができる

種子の発芽に適した温度のことを「発芽適温」といい、植物の種類によって適温はさまざまです。あまりに寒すぎたり、暑すぎたりする環境では発芽自体が起こらない可能性もあります。

レタスなどの野菜は、20度以下の涼しい環境を好むのが特徴です。反対に、トマトやキュウリは30度程度の高温にも耐えられるため、同じ野菜でも育てやすい環境は異なっています。

土壌作りと水やりをしても種子がなかなか発芽しないと思ったら、温度に着目してみるのもよい方法です。野菜などの種子の袋には発芽適温が書かれているケースも多いため、植える前に確認しましょう。

種子で増えない植物とは?

植物の種類は、種子植物ばかりではありません。胞子植物や分裂で増える生物など、例外を見ていきましょう。

種子の代わりに胞子で増える

胞子植物のゼニゴケ
胞子植物のゼニゴケ

種子ではなく、胞子を作って増える植物を胞子植物といいます。シダ類や水辺に生えているコケ類、藻類などが代表例です。

シダ類には葉や根があり、種子植物と同様に光合成を行うものの、葉の裏側に胞子のうという袋が付いています。この袋に入った胞子を地面に落とすことで、新しい仲間を増やしていくのです。

コケ類や藻類は、種子植物とは違って葉・茎・根をはっきりとは区別できません。根がないため、表面から水を吸収する仕組みになっています。またコケ類には、おしべとめしべの代わりに雄株と雌株があるのも特徴です。

一部には分裂するものも

三日月形の1つの細胞のなかに青緑色にみえる葉緑体があるミカヅキモ
三日月形の1つの細胞のなかに青緑色にみえる葉緑体があるミカヅキモ

藻類は胞子植物ですが、分裂して仲間を増やす種類も一部存在します。ミカヅキモや、ケイソウ類に属するハネケイソウなど藻類の一部が、それに該当します。

ミカヅキモは中の葉緑体が透けて見えるため、全体が青緑色をした植物プランクトンです。ハネケイソウは水中に生息している単細胞生物の総称で、種類がたくさんあります。

こうした単細胞生物は、厳密には植物といえない場合もありますが、一例として覚えておきましょう。

小さな種子に詰め込まれた秘密を確認

めしべで作られた胚珠が受精し、成熟すると種子ができます。風に乗ったり動物に運ばれたりして散布された後に、違う場所で芽を出し成長して子孫を残すのが種子の役割です。

このように、種子によって増える植物のことを種子植物といいます。種子植物には被子植物と裸子植物があり、胚珠が子房に守られているかどうかが見分け方です。

種子が発芽するためには、水だけでなく空気や適切な温度が必要になります。また種子植物の他にも、胞子で増える植物や分裂して増える生物もいることを覚えておきましょう。

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構成/Hugkum編集部

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