【子育てにかかるお金大研究!】必要な年収は?「お金がない!」と不安になる理由と対策

子育てにお金はどうしてもかかります。しかも、どの程度かかるのか、いまひとつ、はっきりとしません。「なんだかたくさん、お金がかかりそう」というイメージだけがあります。その分だけ、余計に怖くなってしまいますよね。そこで今回は、子育てにはつきものであるお金の不安を解消するために大切な情報をまとめてみました。

「子育でのお金がない!」と不安になるのはなぜ?

子育てにはお金がかかります。自分が子どもを持つようになると、自分自身をここまで育ててくれた両親が、どれだけ頑張って教育費を用意してくれていたのか、実感として分かるようになりますよね。

子育てで「お金がない!」と不安になる理由は?

現在、筆者には2歳と4歳の子どもが居ます。今度は、自分が子どもたちに立派な教育を与えてあげる番が巡ってきました。しかし、「何とかなるだろう」という根拠のない前向きな気持ちの一方で、本当に「大丈夫かな?」と漠然とした不安を感じる瞬間も、少なくありません。

そこで、さまざまな調査に目を通してみると、子育てに関するお金の不安は、みんな感じているようです。

例えば、ミキハウスブランドを手掛ける三起商工株式会社(大阪府)が行った、『子育てに関する悩み調査』によると、子どもが居る3,973名のうち、44.8%の人が、「お金に対する不安を抱えている」と回答しています。つまり、子どもを育てている人の2人に1人は、お金の悩みを抱えているのですね。

※2018年ミキハウス調べ(全国・子どもがいるまたは妊娠中の4933名調査)

 

では、どうしてこのような不安が出てくるのでしょうか?

ソニー生命保険株式会社(東京都)が行った『子どもの教育資金に関する調査2019』では、大学生までの子どもが居る保護者に対して、「子どもの将来の教育資金について、どの程度不安を感じるか」と聞いています。1,000名分の回答は、次の通りでした。

※ソニー生命保険株式会社『子どもの教育資金に関する調査2019』

 

不安を感じる人の合計は72.6%。子育てをしている人が10人居れば、7人が教育費に不安を感じていると分かります。

この調査では、「子どもの教育資金に不安を感じる理由は?(複数回答可)」も聞いています。その理由は、次の通りでした。

※ソニー生命保険株式会社『子どもの教育資金に関する調査2019』

 

教育資金がどのくらい必要になるのか分からない、と不安を感じている人が半数を超えていることが分かります。

やはりお金の不安に対する備えとしては、教育資金がどの程度必要なのか、しっかり把握する作業から始めるといいみたいですね。

子育てにはどれだけお金がかかる?

参考になる情報として、内閣府の発表する『平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査』があります。

この調査は、“0歳~15歳(中学3年生)の子どもを育てる全国の保護者”を対象にしたリサーチで、回答数は、11,145世帯でした。この調査では、子育てのお金を13種類に分類しています。具体的には以下の通りになります。

  • 衣類・服飾雑貨費
  • 食費
  • 生活用品費
  • 医療費
  • 保育費
  • 学校教育費
  • 学校外教育費
  • 学校外活動費
  • 子どもの携帯電話料金
  • おこづかい
  • お祝い行事関連費
  • 子どものための預貯金・保険
  • レジャー・旅行費

0歳~15歳(中学3年生)になるまで1年ごとに記されており、この1年ごとの金額を合計すると総額で18,995,250円、約1900万円になります。年平均で言えば、1年で118万円ほどかかる計算になりますね。

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【年齢別】子育てに必要なお金

年齢別で細かく見ると、子育てにかかるお金は、以下のようになります。

※内閣府『平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査』

 

子どもが小さいうちは、子育てのお金が比較的少なく済んでいる一方、小学校、中学校と子どもが進学していくにつれて、子育てのお金はかかっていく様子がよく分かります。

内閣府の『平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査』においては、公立の学校に通わせている人が、回答者のほとんどを占めています。小学校、中学校の教育費(学校教育費)に関しては、私立、公立の学校の違いに関係なく、平均で学費が計算されていますので、私立の小学校、中学校に通わせる場合は、この金額よりも高くなると考えておきたいです。

高校進学でかかる子育てのお金

高校生以上になると、どうなるのでしょうか。
残念ながら、内閣府の『平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査』では、子どもが中学校3年生になるまでしか、情報が出ていません。

そこでこの記事では、『平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査』で明らかにされていた中学校3年生の子どもにかかるお金をベースに、教育費(学校教育費、学校外活動費)を調整して、高校3年間で必要な子育て費用を計算してみました。

高校時代の教育費(学校教育費、学校外活動費)については、文部科学省が発表した『平成28年度子供の学習費調査』を参考にします。この調査には、私立の高校、公立の高校に子どもを通わせる保護者の支払った1年間の教育費が明らかにされています。

  • 16歳~18歳の各1年間の子育て費用・・・(公立)1,461,567円(私立)2,050,567円

(※内閣府の調査で明かされた中学校3年生の子育て費用から教育費を引き、文部科学省の調査で明らかにされている高校生の教育費を足した額)

3年間の合計はそれぞれ、公立が4,384,701円、私立が6,151,701円です。中学3年生までの総額と合わせると、子育てにかかるお金は

  • 前者(公立)が23,379,951円
  • 後者(私立)が25,146,951円

 

になります。0歳から高校を卒業させるまでに、子ども1人当たりにおよそ2500万円のお金がかかるのですね。(※ただし通わせた高校が、私立か公立かによって金額は変わります)

大学進学でかかる子育てのお金

大学に進んだ場合も考えてみましょう。

文部科学省の発表した『学校基本調査(平成30年度)』を見ると、高校卒業後に大学(学部)に行く人の割合は、全国の平均で49.6%だと分かります。特に東京を中心とした首都圏、京都を中心とした関西圏の進学率の高さが目立ちます。この辺りで子育てをしている人であれば、わが子が大学まで進むと、あらかじめ想定しておいたほうがいいかもしれません。

大学生の子どもに必要な子育て費用は、年間でどのくらいなのでしょうか。

大学の学費については、さまざまな調査で大まかな金額が明らかにされています。例えば、生命保険文化センターの情報によれば、国立、私立の文系・理系、私立の医学・歯学系の大学に、下宿をさせて通わせた場合の4年間(医学・歯学の場合は6年間)の教育費の総額が出ています。

※セールス手帖社保険FPS研究所「ライフプランデータ集」/2020年版

 

下宿をさせた場合の教育費は、子どもが完全に一人暮らしするわけですから、単純に考えて教育費≒子育て費用と考えて良さそうです。

そうなると、0歳から大学を卒業させるまでに必要な子育てにかかるお金の総額は、次の通りになります。

※記事内で計算された結果をまとめたもの

 

この金額は、あくまでも子どもを下宿させて大学に通わせた場合を想定しています。自宅から通わせた場合は、その分だけお金が節約できますから、これ以上に低い金額になると予想されます。

以上を考えると、仮に子どもが小中高と公立に進み、大学も国立を出た場合、子どもが0歳から大学を卒業するまでに必要なお金の総額は3000万円程度だと分かります。一方で子どもが高校から私立に行き、大学も私立で、下宿先から通った場合は、0歳から卒業までの総額が3500万円ほど。

子どもが私立の医学部や歯学部に進むケースはまれだと考えられますから、大まかに言って子どもを大学まで出すには、1人当たり3000万円~3500万円がかかると考えられそうですね。

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子育ての理想的な年収はどれくらい?

ここまでで、子ども1人当たり大学まで出そうと思ったら、3000~3500万円程度のお金が一般的にかかると考えればいいと分かりました。子どもが2人居る家庭で、どちらの子どもも大学を出そうと思ったら、6000~7000万円程度のお金がかかると分かります。かなりの金額ですね。

「これなら子育て費用がなんとかなる」という年収ラインは?

では、こうした大金を用意していくためには、どの程度の年収が必要なのでしょうか。

参考になる情報が、日本政策金融公庫から出ています。『平成 29 年度教育費負担の実態調査結果』という調査で、子どもを私立・国公立高校に通わせている保護者、私立・国公立大学に通わせている保護者の平均的な世帯年収が一覧にされています。

※日本政策金融公庫『平成 29 年度教育費負担の実態調査結果』

 

  • 国公立高校・・・713.7万円
  • 私立高校・・・854.7万円
  • 国公立大学・・・869.2万円
  • 私立大学・・・915.7万円

言い方を変えれば、この額でなんとかやっていける・やれている金額のラインとも言えるかもしれません。

子育てで「お金ない」と感じないために

以上のように、子どもの通う学校の種類別で、世帯年収が異なることが分かりました。
自分たちの世帯年収を超えるような学習環境を与えたい場合は、収入を増やし、支出を抑える工夫が必要になってきます。

ただ、“収入を増やす”と言っても、簡単ではありません。冒頭でも紹介したソニー生命保険株式会社(東京都)の『子どもの教育資金に関する調査2019』では、お金の不安の悩みとして第2位に、収入の維持や増加に自信がない(37.7%)という回答が出ていました。

そうなると、“支出を抑える”工夫が必要になってきます。日本政策金融公庫の『平成 29 年度教育費負担の実態調査』結果によれば、教育費の工面のために、次の出費を削っている人が多いと分かります(3つまで複数回答可)。

  • 1位・・・旅行・レジャー費(61.1%)
  • 2位・・・外食費(55.3%)
  • 3位・・・衣類の購入費(41.4%)
  • 4位・・・食費(外食費を除く)(33.0%)
  • 5位・・・バッグ、アクセサリーなどの身の回り品や装飾品の購入費(31.1%)

どれもいわゆる、「変動費」と言われる出費ですね。つまり、使った分だけ出ていくお金です。

しかし、変動費の節約は苦しい割に、それほど効果がないとは有名な話。
節約で最もインパクトがあるお金は、「固定費」だと言われています。世帯年収がそれほど伸びない中で、子どもの教育費をしっかりと確保したいと思えば、ばっさりと「固定費」を削る手も考えたほうが良さそうです。

例えば、先ほどは子育ての費用の分類として、衣類・服飾雑貨費、食費、生活用品費、医療費、保育費、学校教育費、学校外教育費、学校外活動費、子どもの携帯電話料金、おこづかい、お祝い行事関連費、子どものための預貯金・保険、レジャー・旅行費があると言いました。

この中で「固定費」と言えば、学校外教育費、学校外活動費、子どもの携帯電話料金、おこづかい、子どもの保険などがあります。習い事や学習塾の月謝、子どもの保険などは、定期的に無駄がないかを見直す作業が大切なのかもしれません。

また、厚生労働省の『平成28年 国民生活基礎調査』を見ると、子育て世帯の53.5%が借金を持っていると分かりました。その平均額は947万円。しかも最多の借金額価格帯は、

  • 2000~3000万円・・・14.2%
  • 3000万円以上・・・7.7%
  • 1500~2000万円・・・7.5%

となっています。この金額帯を見る限り、恐らく「人生三大支出」の1つであるマイホームの購入費用だと考えられます。また、マイカーの購入費も、一部には含まれているはず。

一生のうちに稼げるお金は限られています。収入が伸びていく自信がない中で、「人生三大支出」の1つである子育て費用を最優先に確保したいと思ったら、支出に大きな影響を与える「住宅費」の考え方についても、何か抜本的な見直しが必要なのかもしれませんね。

文/坂本正敬

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[参考]

子育てに関する悩み調査 – ミキハウス

平成28年 国民生活基礎調査の概況 – 厚生労働省

平成29年 国民生活基礎調査の概況 – 厚生労働省

大学生にかかる教育費はどれくらい? -生命保険文化センター

月々の生活費は平均していくらくらい? – 生命保険センター

『子どもの教育資金に関する調査2019』 – ソニー生命保険株式会社

平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査 – 内閣府

結果の概要-平成28年度子供の学習費調査 – 文部科学省

学校基本調査-平成30年度結果の概要- – 文部科学省

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