BRICSの意味とは?
新聞やテレビのニュースなどでよく見かける「BRICS」は、「ブリックス」と読みます。BRICSは、どのような意味を持つ言葉なのでしょうか?
5つの国の頭文字を取ったもの
BRICSは、ブラジル(Brazil)・ロシア(Russia)・インド(India)・中国(China)・南アフリカ(South Africa)の総称、または集まりです。
BRICSという表記が最初に登場したのは、アメリカの大手金融グループ「ゴールドマン・サックス」の金融レポートでした。もともとはブラジル・ロシア・インド・中国を表す言葉で、「BRICs」と表記されていましたが、後に南アフリカが加わりBRICSに変更されます。
BRICSは、ASEAN(東南アジア諸国連合)のような正式な協力機構ではありません。しかし国の代表者が定期的に集まり、経済面や金融面などにおける協力関係を築いています。
BRICSの特徴
BRICSは「新興国」の集まりです。新興国とは、欧米や日本などの先進国よりも、政治・経済が発展途上にある国を指します。成長のポテンシャルを秘めているため、今後の世界経済の発展を担う存在となるでしょう。
BRICSには、以下のような特徴が見られます。
●国土が広い
●人口が多い
●豊富な資源がある
世界で最も国土が広い国は、ロシアです。インドや中国は人口が14億人を上回っており、豊かな労働力と消費力が経済活動を活発化させています。
BRICSの全ての国は、天然資源に恵まれた「資源国」です。特に南アフリカは、貴重な資源の輸出によって経済が成り立っています。
出典:(キッズ外務省)面積の大きい国|外務省
(キッズ外務省)人口の多い国|外務省
BRICSの主要国を知ろう
BRICSには共通点がありますが、政治・経済・文化は多様性に富んでいます。変化のスピードも速く、世界のパワーバランスに大きな影響を与えています。BRICSの主要国の特徴をつかみましょう。
ブラジル
正式名称は、ブラジル連邦共和国といいます。面積は851.2万平方km、人口は約2億1,531万人(2022年時点)で、南米大陸では最大の国です。
ブラジルというと、コーヒーや肉料理を思い浮かべる人が多いかもしれません。農業・畜産業が盛んで、砂糖・コーヒー・オレンジジュース・大豆・鶏肉・牛肉の生産量および輸出量は世界トップクラスです。
原油のほか、鉄・銅・ニッケルなどの天然資源も豊富で、鉱業にも力を入れています。
出典:ブラジル基礎データ|外務省
第6号特別分析トピック:ブラジルの農業とコロナ感染拡大の影響|農林水産省
ロシア
ロシア連邦は、世界最大の国土を有する国です。面積は約1,709万平方kmで、日本の約45倍にも及びます。
広大な国土には石油・天然ガス・石炭などが埋蔵されており、天然資源がロシア経済の基盤を支えているといっても過言ではありません。2022年の石油生産量は、アメリカ・サウジアラビアに次ぐ世界第3位です。
ロシアの資源輸出は、「シベリア鉄道」が担っています。モスクワからウラジオストクをつなぐ全長約9,300kmの路線で、主に石炭や木材、原油などを運んでいますが、人も乗って旅をすることが可能です。
出典:ロシア基礎データ|外務省
ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ
インド
南アジアに位置するインド共和国は、328万7,469平方km(パキスタン・中国との係争地を含む)の国土と、14億1,717万人(2022年時点)の人口を持つ国です。
IT産業に力を入れており、新興国の中では経済成長が著しいのが特徴です。主な貿易相手国はアメリカ・アラブ首長国連邦・中国で、輸出品の上位は石油、宝石・宝飾品、機械・器具が占めています。
インドは、15~64歳の生産年齢人口が多い「若者大国」です。2021年における人口の平均年齢は31.1歳で、日本(47.9歳)とは16.8歳の開きがあります。
出典:インド基礎データ|外務省
-人口統計資料集(2023)-
インドの貿易と投資 | インド – アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ
中国
中華人民共和国は古来から、日本との文化的交流が深い国です。面積は日本の約26倍の約960万平方kmで、人口は14億人以上に上ります。
鉱物資源が豊富で、レアアースや金の生産量は世界トップクラスです。「レアアース」とは鉱物から抽出される17の元素の総称で、スマートフォンやパソコン、電気自動車(EV)などにも使われています。
所得の上昇と消費の拡大によって、中国は「世界の市場」と呼ばれるまでに成長しました。しかし、少子高齢化と人口減少の問題に直面しており、経済は減速傾向にあります。
出典:中国基礎データ|外務省
南アフリカ
南アフリカ共和国は、アフリカ大陸の最南端にある国です。面積は日本の約3.2倍の122万平方kmで、人口は6,004万人(2021年時点)です。
金やプラチナ、クロム鉱などの鉱物資源が豊富で、日本への輸出品目の70%以上は「非鉄金属」が占めています。また、2022年度の金の生産量は、世界第8位の110トンでした。
南アフリカは、オランダやイギリスの植民地だった地域から成る国です。白人による黒人の人種隔離政策「アパルトヘイト」が制度化されていた歴史があり、1991年に政策が撤廃されるまでは、黒人にとっては苦難が続きました。
出典:南アフリカ基礎データ|外務省
南アフリカ共和国の貿易と投資 | 南アフリカ共和国 – アフリカ – 国・地域別に見る – ジェトロ
(キッズ外務省)金の産出量の多い国|外務省
広がるBRICSの輪
BRICSは他の協力機構や経済の枠組みと違い、本部や条約が存在しません。ただし、国の代表者による定期的なフォーラムが開催されており、参加に興味を持つ国は30カ国以上にも上るといわれています。
BRICSに新たに加わった国
2024年1月1日にBRICSに新たに加わった国は、アラブ首長国連邦(UAE)・イラン・エジプト・エチオピアです。世界の原油生産量の多くを占める中東・アフリカの国々が加わったことで、BRICSが世界の経済に及ぼす影響力は増すと見られます。
UAEとイランは、石油関連産業が盛んな国です。エチオピアはアフリカ大陸の北東にある内陸国で、コーヒー・金・切り花などの輸出が経済を支えています。中東と北東アフリカの接点に位置するエジプトには、ピラミッドをはじめとする巨大な石造建築物があり、世界中から多くの観光客が訪れます。
世界経済への影響力を増すBRICSに注目
BRICSは、経済成長のポテンシャルが高い国々の総称です。もともとは5カ国を指していましたが、2024年に4カ国が新たに加わり、参加メンバーは9カ国となっています。参加に興味を示す国は多く、今後もBRICSは拡大していくでしょう。
新興国は政治や経済が不安定な一面もありますが、経済成長のポテンシャルは先進国以上です。BRICSが世界経済に及ぼす影響は大きく、今後も目が離せません。気になるBRICSの国があれば、親子で調べてみるのもよいでしょう。
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構成・文/HugKum編集部