「鯉のぼり」はなぜ鯉なのでしょう
大空に泳ぐ鯉のぼり。“元気に育って欲しい”という願いを込めるのにピッタリのダイナミックな姿ですが、“どうして鯉なのだろう“と思われたことはありませんか。子どもにきかれた時には、中国から伝わる故事が元となった「登竜門」のお話をしてあげてください。
昔、中国にある黄河の上流に[竜門]という流れの早く、水の勢いが激しい滝がありました。その水の流れに負けずに登り切った魚は、なんと龍になることができたのです。さまざまな魚が挑戦しましたが、その滝を登りきることができたのは鯉だけでした。竜門を登ることができた鯉は龍になって天に昇っていきました。
というお話です。
こどもの日には、「これから大変なことがあるかもしれないけど、鯉のように元気にいろいろなことに挑戦して欲しい。鯉のぼりにはそんなママやパパの願いを込めているよ」とお子さんに伝えれば、親の願いも鯉のぼりの意味もわかってくれると思います。
今「登竜門」は、出世や自分の願いをかなえるための関門を指す言葉として使用されることが多いですが、昔から続く親の願いとして、鯉が竜門を突破したようにわが子も狭き門をくぐり立身出世できるように、という気持ちが込められているのです。
子どもたち自身が希望する将来の夢。その夢を叶えるために待ち受ける登竜門を無事に突破できますように、という願いも、もちろん込められています。
もう一つは、鯉の生命力の強さが挙げられます。鯉は清流だけでなく、池、沼、湖などにも生息できる生命力の強い魚です。
餌をあげるとき、鯉の姿を見たことはありますか? 他の鯉よりも多く餌を得るために大きな口を開け、すごい勢いで水面より高く顔を出す、その姿からはたくましさを感じます。鯉は子どもの無病息災、立身出世という親の願いを託すのにぴったりの魚です。
鯉のぼりを飾る意味とは
鯉のぼりとは鯉の形をした“のぼり”です。のぼりは漢字で「幟」と書きます。幟は、今と昔で使用する目的が違います。
今、幟を使う主な用途といえば、お店やイベントでの宣伝や広告、スポーツの応援などのメッセージのように、誰かに対して呼びかけ、伝えたいことを示すために使用されますが、こどもの日の鯉のぼりは広告や宣伝で立てているのではありません。
では、昔の幟の利用方法を考えてみましょう。
昔から幟を使用している場所として思いつくのは神社です。
神社で使用する幟は神様への目印の役割や、地元の人の奉納の証、信仰する気持ちを表しています。これを招代(おぎしろ)、神社幟(じんじゃのぼり)と言います。鯉のぼりは、この招代の役割をはたす幟なのです。
神様へ「ここにご加護を受けたい子どもがおります。どうぞお越しください」という目印の意味で鯉のぼりを飾っているのです。
作りに注目してみよう
鯉のぼりは、鯉の部分だけでなく、それ以外のパーツにも一つ一つ願いが込められています。作りによっては回転球や矢車が無かったり、吹流しが一色だったり、そもそも付いてないものもあると思います。
“無いから間違い”ではありません。今回は“付いている場合はどのような願いや気持ちを表しているか”についてお伝え致します。
回転球(天球)
棒の先端にある金色や黄色の球体のものです。神様がお越しになる際の目印とされています。
丸い球体のものもあれば、籠を編むように組んであるものもあります。園で作成した子どもの工作でも、ここは金色や黄色の折り紙で作っていました。神様への目印として作っていたのですね。
矢車
回転球の下にある風車です。写真のように弓矢を組み合わせて作るものもあります。回転するときの音が神様を呼ぶだけでなく、魔除けの役割を担っています。
吹流し(五色)
五色である理由は、昔の中国の陰陽五行説(思想)を用いているからです。
陰陽五行説とは、自然界にあるものは「陰と陽」の二つの気と「木・火・土・金・水」の五つの元素から成り立っているという思想です。それぞれの元素には表す色があります。「木(青・緑)・火(赤)・土(黄)・金(白)・水(黒・紫)」この色が揃うことで自然界のバランスを保ち、魔除けになるという理由から、鯉のぼりの吹流しは五色を使用することが多いです。
また、それぞれの色に意味があるので、願いを限定して一色にすることもあります。吹流しは、鯉のぼりの上に配置することで、自分たちに降りかかる災いを除けるという意味があったのですね。
鯉のぼり
(童謡にはお父さんと子どもたちしかでてきませんが)大きな真鯉のお父さんを先頭に、家族を表しています。上から、お父さん・お母さん・子どもです。
二番目、三番目と子どもが生まれると小さな緋鯉を足していくというお家もあるようです。色とりどりの鯉のぼりは華やかで、見ているだけで明るい気持ちになりますね。
風に向かい、皆で前を見ながら仲良く泳ぐ鯉のぼりの姿を見ていると、家族のことを思います。私たちも“家族を大切にする”という同じ気持ちで、それぞれが元気に泳ぐ鯉のぼりのように日々生活していけたら、と思うのでした。
皆さんも鯉のぼりを見て、笑顔で楽しくこどもの日を過ごせますように。
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赤名 麻由子