海外に住めば、外国語が話せるようになるのか問題【ハラユキの 「発見!子育てダイバーシティ in バルセロナ」9】

海外に住めば外国語が喋れるようになるのか問題

「海外に住めば外国語が喋れるようになると思ったら大間違い。語学だけは勉強あるのみ!」

これは、夫の転職でアメリカに移住した友人の言葉です。私はスペインが初めて住む海外だったので、引っ越し前に彼女にアドバイスを求めたら、まっさきにこう言われました。

彼女自身、住めば自然に話せるようになるでしょ〜と楽観的に構えていたら、そうでもないなと気づき、そこから勉強を始めたそう。移住5年以上経った今も、英語の苦労をぼやいています。

というわけで、息子の語学力については以前書きましたが、今回は親である私の語学力についてです。語学力低い状態で海外で子育てをするってどーなのよ!ということについて書いてみたいと思います。最初に予告しておきますが、かなり情けない内容です。語学ペラペラママのステキな海外ライフを読みたい方、効果的な勉強法について知りたい方、語学堪能な方は、いまのうちにそっとページから離れてください。ここにあなたが求めることは書いてありません。ていうか、読まれると辛いからお願いだから読まないで!(コラ)

海外で子育てするの面倒くさい問題

ちなみにこれが、約2年前にスペインに来たときの私の語学力です。

 

 

つまりはザ・ビギナーです。ちなみに、夫は仕事は英語と日本語でやっているので、英語は喋れますがスペイン語は喋れません。しかも彼は大変に忙しく、ヨーロッパ暮らしなのに毎日深夜残業(ああ日本人!)、さらに東京での仕事も続行するという変わった赴任形式だったため、月に一度は日本出張に行く生活でした。スペインに引っ越した直後も、早々に夫は2週間の日本出張へ。つまりは基本、海外ワンオペ育児。

そんな状況もあり、引越し当初は必要最低限のスペイン語を身につけるべく必死でした。買いものに行くたびに、「ええと…持ち帰りってなんて言うの?」などと、困って調べては覚え、の繰り返し。しかも、バルセロナの公用語はスペイン語のほかにカタルーニャ語もある。最初の頃は、どれがスペイン語でどれがカタルーニャ語かすらわからなくて、言葉ひとつ調べるのにもむちゃくちゃ時間がかかっていました。

とはいえ、こういう語学の壁にぶつかることは想定内でした。私がビックリしたのは、そういうときの自分の感じ方についてでした。「大変」というより「面倒くさい」がとても強かったのです。

たとえば海外旅行中なら、スーパーで買いものをするのも楽しかったりします。でも、これが生活の一部となると感じ方がガラッと変わる。日本の行き慣れた近所のスーパーだって、子どもが横で「疲れた〜早く帰りたい〜!これ買って〜!」などとごねてる横で買い物するのって面倒くさいですよね。それを外国で毎日やることを想像してみてください。あの日々の繰り返しを、外国語で、外国人相手に、慣れない店や公共機関でやる。生活の基本レベルのことにいちいち緊張が伴う面倒くささときたら…。そして、旅行なら数日でもかなり濃厚に過ごせるのに、生活となると家で地味な雑務をしているだけであっという間に時間が過ぎてしまう。

旅行と生活って全然違う。生活って、海外に住んだって地味で平凡なものなんだ…!

さらに最初の半年は、息子の転校を考えていたので、そのリサーチにかなり時間を取られてしまいました。私は仕事を続けていましたが、日々のあれこれにいっぱいいっぱいで、仕事の時間が取れないことにもあせりまくりました。慣れない国で育児も仕事もするには、私の海外経験値が低すぎる。赴任帯同の奥さんたちは圧倒的に専業主婦が多いのですが、それは合理的な形なのかもと思ったりしました。仕事をいちど辞めた方がいいのかもと悩んだり…。

語学の勉強法についても悩みました。ランゲージエクスチェンジ(語学交換勉強法)をしてくれるスペイン人を見つけようとその手の出会い系アプリを使うも、結局、子どもがいると平日日中しか出かけられないから都合の合う相手が見つからない。しかも変な人に出会ってしまい少し怖い目にもあいました。さらに、引っ越した年のバルセロナは無差別テロやら独立運動過激化などで大荒れで、治安もかなり不安でした。国王の緊急TV会見もかじりついて見ました。でも言ってることは何ひとつわからない。

ああ、若くて独身のときに留学して語学を習得し、それから今の状態になってたらだいぶ気持ちが違ったのだろうなあ…!!そんなふうに思いましたが、時すでに100万年遅しでした。

そもそもなんで英語がヘタなんだ問題

スペインは、以前に比べると英語を喋れる人がだいぶ増えていて、観光地近辺ではかなり英語が通じます。

そんなこともあり、引越してしばらくは、私がヘタクソスペイン語で話しかけると(親切で)英語で返されることもよくありました。でも、私の英語力だと、その英語がよくわからないときもあるのです。ハイ、情けなさ2倍ドン!!ああ、書いてたらいろいろ思い出して泣きそうだよ。

でもそもそも、なんでこんなに私、英語のレベルが低いの…?

そんなことを思っていたとき、ある友人にこんな話を聞きました。彼女は私がかつて日本で通っていたフラメンコ教室でいっしょで、企業からのMBA留学でたまたま同時期にバルセロナに来ることになった人。バルセロナでの住まいが決まるまで3週間ほど我が家に居候していました。MBAは英語の試験や面接をパスして入学するし、授業も英語。となると日本人の中では英語ができるほうだと思われる彼女が、こんな風に言うのです。

「MBAの授業が始まる前の月に、英語クラスが開催されたんです。でもそれに参加していたのは、私も含め、毎回ほぼ日本人。アジア人もたくさんいるのに、日本人がダントツに英語ができない。中国人も韓国人も台湾人もインド人も英語は堪能。でも、学校にはそれなりの数の日本人学生がいるから、その理由を学校に聞いたことがあるんです。すると、学校の人いわく、”日本人は確かに英語ができない。でも真面目で根気強い。英語ができないという弱点を持ちながらも諦めずに頑張るから、チームの力になるんだよ!”って言われて」

確かに、スペイン生活で会ったアジア人、特に若い子は日本人より英語が皆うまいのです。「なんでそんなに英語が上手なの?」と聞くと「え?だって学校で英語習うし?」とキョトンとされたりする。日本の英語教育ってやっぱ問題が…。

とはいえ、語学堪能な日本人ももちろんたくさんいます。多くは、現地で働いていたり、国際結婚をしている人です。バルセロナは他言語が飛び交う街ということもあって、4〜5カ国語堪能な日本人にだって会うこともあります。そんな人たちに話を聞くと、やっぱりちゃんと必死に努力して勉強した時期があるのです。そういえば、私の今のスペイン語の先生(スペイン&イタリアハーフ)は、10以上の語学に精通し、日本語なんて私の知らない漢字まで書くという語学の変態レベルの人。そんな彼ですら「語学の天才っているんだよね」と言われたとき、「天才なんて言葉で片づけたら、僕の今までの努力がないことになってしまう」と言い返していました(流暢な日本語で)。

なるほど、確かに「海外に住めば外国語が喋れるようになると思ったら大間違い。語学だけは勉強あるのみ!」は本当なんだ…!!

じゃあ、私はどうしよう?

いろいろ考えたけどやっぱり仕事は続けたい。なので語学学校に毎日ガッツリ通うとかはムリだけど、できる範囲で勉強していこう。そう考え、超基本のカタルーニャ語(挨拶と食品名)、基本のスペイン語(会話)から勉強を始めました。

 


すごくわかりやすかったスペイン語のテキスト。青いノートは、一時期、週1スペイン語講座に通ったバルセロナ大学のキャンパスノート。

必要最低限をクリアしたらモチベーション下がる問題

さてその後、なんやかんやで生活に最低限必要な超基本スペイン語は使えるようになり、スーパーや飲食店でいちいち緊張しなくなくなりました。

ところがですね……そうなったとたんに、私の勉強のモチベーションがガクンと落ちてしまったのです。

いったいなぜに?

実は、それなりに日本人がいる都市に住むと、海外でも最低限の語学力で暮らすことが可能なのです。なぜなら、日本人が多いということは、日本人学校はあるし、日本人の通訳はいるし、子どもや自分の習い事も日本人の先生がいるということ。バルセロナよりさらに日本人が多いロンドンやNYなら、日本人経営の子ども塾だって選ぶのに迷うほどあるそう。おまけに、駐在で来た場合、会社によっては役所手続きなどは現地に慣れた社員がサポートしてくれることもある。かくいう私も、フラメンコこそスペイン人の先生に習うようになったとはいえ、息子が日本人学校に通っていたので、かな〜り日本語が多い生活をしていました。病院にかかるときは医療通訳さんにお願いして、病院の紹介・予約から頼っていました。

「必要最低限をクリアしたらモチベーション下がる問題」は多くの人が通る道のようですが、日本人家族と日本語で暮らし現地人相手に働いてない人は、これにかなり早く突入してしまいます。だって必用最低限レベルが本っ当に低く狭いから。スペインに来たばかりの頃、長年海外で暮らしているのに語学力が低い駐在の奥さんに会うと「なんで?」と正直思っていたのですが、私も確実にその道を進み始めていました。ああ、なんてこった!語学、いったいいくつの問題をクリアすればペラペラワールドに到達できるんだ!!

その後、息子がブリティッシュインターに転校が決定したので、その転校直前から、スペイン語と併行して英語の勉強を始めました。でも、転校してしばらくしてわかったのは、ブリティッシュインターに子どもが通っているからといって、親が毎日英語を話す必要はないということ。息子の学校では、学校SNSなどのIT化が進んでいて、親と学校の連絡もメールで済み、連絡プリントはゼロ。クラスのママパパとのやりとりも連絡アプリメインです(そのあたりの詳しくは連載バックナンバーを)。ネット上の読み書きなら、難しいものは翻訳アプリ先生に頼ればなんとかなるし、送り迎えで学校行くときも先生は他の親とは挨拶を交わすくらい。子どものバースデーパーティのときはママパパと喋るけど、そんなの1.2カ月に1回。一学期に一度くらいの保護者会のときは夫同伴です。

あれ、思ったより英語ヘタでもなんとかなる…?

なんと、ブリティッシュインターに息子が通い出してから、私の英語の勉強のモチベーションも落ちてしまったのです。オイオイオイ!!いやだってだって、基本的に日中は家で仕事してるし(日本語)、夜は家で息子の宿題のつきあいだし(日本語。現地校やインターに入ると、むしろ親の大事な仕事は日本語のフォロー)、あああ、またもや必用最低限をクリアしたらモチベーション下がる問題が発生している!!

でも、しばらくしてまた変化が起きました。息子の英語レベルがガンガン上がってきて友達も増えてきたので、私ももうちょっとママパパの輪に入ったほうが、息子の学校生活をよりしっかりフォローしたり楽しくできる気がしてきたのです。でもこの低い英語力でどうしたら?

考えたあげく、人生の時間を語学に注いでこなかった分、私がいちばん時間をかけてきたテクニックを使おうと思いつきました。それはつまりイラスト。それまでも、手のかかったホームパーティに呼ばれたときは、お礼にあとでお子さんの似顔絵を描いて送ったりをしていました。すると、予想以上に喜ばれたのです。

あれをクラスでもっと広範囲でやれば、ごっちゃになりがちな欧米人ママパパの顔と名前も憶えられるし、皆ともっと親しめて一石二鳥じゃない…?そんな計画を立て、あるバースデーパーティのときに、スケッチブックを持参で行きました。

でも、いざやろうとしたら「似顔絵を描かせて」と話しかけるタイミングが難しくて…。

真っ白なスケッチブックを持ちながら、途方にくれていたあやしい日本人の私…。結局、何もできないまま、パーティは終わってしまいました。今まで出たどのパーティよりも口数少なく終わってしまいました。

ええええええええ!!!!!

語学力がない分、せめて勇気を出さないといけないのに私は何をやっているのか。7歳の息子が英語ゼロの状態からあそこまで語学力を上げて友達もいっぱい作っているのに、40歳すぎた親の私が何をやっているのか。情けなさと疲れとむなしさがこみ上げてきました。

 

さて、そんな段階から果たしてどうなったのかというと……それはまたいつか書ければと思います。

 

あ〜書いてたらいろいろ思い出して疲れたよ!!


ハラユキ
イラストレーター&コミックエッセイスト。夫の駐在赴任により、2017年6月よりスペイン・バルセロナ在住。雑誌やWEBなどでイラストやマンガを描いたり、コミックエッセイ書籍を出版。「東京くらし防災」(東京都)のイラストも担当。スペインに住んでからは、「世界の家族の家事育児分担事情から知る、つかれない家族を作るヒント」や現地ごはん情報なども発信中。おいしいごはんと宴会と祭りとお風呂屋さんが大好き。6歳男児の母。家族をテーマにしたオンラインサロン「バル・ハラユキ」も主宰中。Twitterでは日々の生活や考えたこと、instagramでは主に食いしん坊メモを英語とスペイン語つきで発信中。

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