イギリス式小学校で、アフリカについて学ぶ【ハラユキの 「発見!子育てダイバーシティ in バルセロナ」8】

イギリス式小学校の授業って?

今回のテーマはイギリス式小学校の授業について。

…と、ここまで書いて、けっこう長いこと手が止まってしまいました。なぜに?自分の小学校時代が大昔すぎて日本との比較が難しいから?私は授業のときにラクガキばかりしていてまともに先生の話が聞いていなかったから?学校に友達が少なかったから??

あああ、しょっぱなからネガティブですいません。どうも私自身は「小学校」にそんなにいい思い出がない、ということを久々に思い出してしまいました。あのときはボーッとしてて無自覚だったけど、今になってわかるあのときの私の深層心理。学校とか団体行動が根本的に合わなかったんだなあ。同調圧力にものすごく弱い性格だったしなあ。しょぼん…。ああ、なるべくしてなったフリーランス!!(合掌)

ところで、息子は私と違って、わりと小学校を楽しんでいるっぽいのです。「バルセロナのブリティッシュスクール」という私には全く未知な学校ワールドだというのに。息子が楽しそうなので「どんなことやっているの?」とよく聞くのですが、そこはそれ、多くの男子と同様、まともな情報が息子からは全く引き出せません。学校を出て1分も立ってないのに「忘れた」とか言うのです(んなわけあるかい!)

そんなわけで、前置きが長くなりましたが、(息子以外から情報を得た笑)イギリス式の授業についてです。

 

さて、思い返せば1年半前。転校前に学校見学にいったとき。

「息子(当時5歳。小1に編入予定)は英語が喋れませんが大丈夫ですか?」

夫が先生にこう質問したら、その答えは「ノープロブレム!」でした。

え〜〜〜そうは言っても、英語ネイティブの子だっているのにさ〜!と思ったら、その授業の進め方を見てなるほど納得。イギリス式の授業の基本はこんなかんじだったのです。

 

 

日本の多くの小学校のような「教科書をベースにした一律に進む授業」ではなく、「レベル(習熟度)別に分けたグループごとに勉強する授業スタイル」が基本。

たとえば、学校見学のときにチラリと見せてもらった算数の授業では、レベルのいちばん低いグループは床に座って数字カードを並べているかと思えば(遊んでるような雰囲気)、レベルのいちばん高いグループは机に座って簡単な計算問題が書いたプリントを書き込んでいる(ちゃんと勉強モード)、それくらいのレベル差がありました。ただ、レベルは違えど共通のテーマでやっているようでした。

このグループ分けは教科ごとに違う編成になってて、様子を見てどんどんグループが変わっていく仕組みのよう。つまり、英語が喋れなくても、最初はレベルの低いグループからスタートだから大丈夫、というわけらしいのです。さらに、インターだけあって英語喋れない子に先生たちが慣れている。おまけにyoutubeなど映像系も積極利用。な、なるほど、これなら確かについていけるかも!!(小学校高学年以上の編入だと、さすがに英語ゼロは厳しいので、編入に英語の試験とか必要なこと多いようです)

ちなみに、このグループワークはイギリス式小学校の典型的なスタイルなんだそう。なぜにこんな形かというと、イギリス本国は移民が多いし、生徒のレベル格差が激しいのでそうしないと授業にならない、という背景もあるようです。つまりは教科書で一律に進めたくても現実的には難しいというわけ。なるほど、それで教科書がなかったのか…!

 

 

教科書がないし統一授業じゃないしで、授業は先生たちが準備した教材やプリントで進めているよう。上の写真は学校SNSにアップされてた授業写真なのですが、こんなかんじの教材を使ったり、アクティブラーニングが日本よりは多い様子。けっこういろんな物を使っていて面白そうです(先生は毎回準備大変そうな気もするけど)。

電子黒板、プロジェクター、パソコン授業!

ところで、息子クラスの教室はこんなかんじ。

 

電子黒板とプロジェクターはイギリスでは8割以上の学校で導入されているらしい(余談だけど、実際にはホワイトボードなので、電子「黒」板じゃないよね笑)。

「アクティブラーニングが多くて、ICT化が進んでる」

こう書くととてもよさげですが、個人的には、それだけで「イギリス式の小学校の授業ってすばらしいよ!」という判断は難しいよな〜とも思っています。アクティブラーニングは先生個人のスキルに頼る部分が大きいので、当たるとものっすごくいいけど、外れも大きい世界なんじゃないかな?とも思うからです。あと、ネット素材を授業に取り入れるのはいいことだけど、そのバランスとか量に関しては要注意だろなーと…。

じゃあ肝心の息子の先生はどうやねん、という話なんですが…。

じ、実はよくわからない…!!

というのは、息子の学校、学校SNSでしょっちゅう授業内容や授業写真をアップしてくれるのはいいのだけど、授業参観システムがないのです。実際に授業をしっかり見ないことには、先生の教え方の本当のところなんてよくわかりません。授業参観、1年に1回でいいからやってほしいなあ…。ICT化だって、実際に使うところをしっかり見てないとちゃんと効果は理解できない気がしるしさ…。

ちなみに、教科別のことで言うと、当たり前だけど英語教育は日本よりは進んでいて、算数もまあまあなかんじはするけど、音楽と体育に関しては、日本のほうがスキルが上がりそうな印象です(体育については、スポーツデイという運動会的なものがあるので、それを書くときがあったらちゃんと書きたいな)。

 

おまけで学校から支給される各教科のノート。このシンプル感はよい!

ロンドン大火、宇宙、海の動物、そしてアフリカ!

さて、授業の基本システムについては、よさげに見えるけど、その善し悪しについては断言できないな〜でも息子楽しそうだしまあいっか、みたいなかんじなのですが、私が、「このシステムはすごくいいな!日本でも一般的に広がるといいんじゃない?」ということがひとつあります。

それは「トピック(topic)」という授業。

週に一度ある授業の名前なのですが、何カ月もかけてひとつのテーマを多角的に掘り下げて行くという勉強のやりかたのこと。具体的に言うと、まずはそのテーマにあわせた課題が出て、家と授業の両方で進めて行く形(といっても、これは宿題の中では、やってもやらなくてもいいような位置づけ。全部やったら大変な内容なので。うちも余裕あるときしかやらない…)。

たとえば「海の動物(sea animal)」というテーマのときの課題は、

(1)もし海の動物になるなら何がいい?(喋る)
(2)靴箱と想像力を使ってオリジナル水族館を作ってみよう!(工作する)
(3)おもしろい形容詞をたくさん使って海の説明をしてみよう(書く)
(4)魚の入った料理を作ってみよう(料理する)
(5)海を守るためのポスターを作ろう(描く)

などの内容。つまりは、ひとつのテーマでいろんな教科を学習するというわけです。この「海の動物」テーマのときは、授業が進んだころにバルセロナの海洋博物館に遠足に行き、専門家の方にウミガメの生態などについて教わっていました。遠足とも連動させちゃうって、なるほど!!タイミングによっては、トピックのテーマが、スピーチコンテストのテーマにもなったり、カンタンな劇のテーマにもなったりもします。

多角的に学ぶことで、そのテーマへの理解が深まりそうだし、学習方法としてとてもよさそうな気がする…!!

ちなみにこのテーマが幅広いのがまた面白いところ。息子クラスがこれまでにやったテーマは「ロンドン大火」「海の動物」「宇宙」「探検家」「ヒーロー&ヒロイン」そして、いまやっている新テーマが「アフリカ」!

 

 

課題の中に「アフリカの音楽を聴いてみよう」「動物のマスクを作ってみよう」が入ってたので、アフリカンミュージックをかけながら、写真を参考にライオンの絵を描くつい数日前の息子ぽっちん。授業では、アフリカのそれぞれの国についても勉強してるみたいです。アフリカといえば、モロッコを旅行したばかりだし、我が家にとってもいいタイミング。

それにしても、スペインに住んで、ブリティッシュスクールに通って、アフリカのことを学ぶって、これこそまさに多様性…!なんだかとてもいい経験のような気がします。

そんな息子を見ていて、私の小学校時代もこういうテーマ形式の授業があったら、もうちょっと小学校の思い出がよかったかもしれないな、ともふと思ったりしました。なにしろ私、「テーマ」を与えられると燃える性格なので。そしてそんな自分の性質に気づいたのがかなり大人になってからだったので。

私の小学校時代はもう戻らないけれど、息子が大人になったとき、私よりも明るい小学校の思い出を持っているといいなあ…。

そんな風に、ボンゴボンゴと鳴るアフリカの太鼓の音を聴きながら思ったのでした。

 


ハラユキ
イラストレーター&コミックエッセイスト。夫の駐在赴任により、2017年6月よりスペイン・バルセロナ在住。雑誌やWEBなどでイラストやマンガを描いたり、コミックエッセイ書籍を出版。「東京くらし防災」(東京都)のイラストも担当。スペインに住んでからは、「世界の家族の家事育児分担事情から知る、つかれない家族を作るヒント」や現地ごはん情報なども発信中。おいしいごはんと宴会と祭りとお風呂屋さんが大好き。6歳男児の母。家族をテーマにしたオンラインサロン「バル・ハラユキ」も主宰中。Twitterでは日々の生活や考えたこと、instagramでは主に食いしん坊メモを英語とスペイン語つきで発信中。

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