「テロってなぁに」子どもに聞かれたら、どう話すのが正解? 定義や国内外の取り組みとともに解説【親子で学ぶ現代社会】

テロが起こると多くの人々が犠牲になり、国際的な問題に発展することがあります。テロとは一体何なのか、何のためにしているのか、子どもにどのように伝えたらよいか、悩む人もいるでしょう。テロの定義や、国内外での取り組み方などを紹介します。

テロとは

テロは世界中で起きており、日本人が巻き込まれることもあります。報道などを見て、どのような事件なのか何となく理解できていても、テロとは何かと問われると明確に答えられない人は多いでしょう。

テロはどのような行為なのか、今までどのような事件が起きているのかなどを紹介します。

目的を達成するための暴力主義的破壊活動

テロは暗殺や暴行といった暴力的な行為で、目的を達成しようとする主義のことです。「テロリズム」を略した言葉で、英語の「terrorism」がもとになっています。

目的を達成するための暴力主義的破壊活動を指し、特定の国家・宗教を指す言葉ではありません。テロ行為の計画や実行をする人物・団体は、テロリストと呼ばれます。

多くはテロを起こすために高度な軍事訓練を受け、実戦の知識や経験を持つ戦闘員でもあることを覚えておきましょう。テロリストは敵対する国だけでなく、自国の政府に対して行動する場合もあります。

多くの犠牲を出しているテロ

これまで、さまざまな国でテロが発生しており、多くの人が犠牲になっています。大きな犠牲を出した事件として、2001年9月11日の「アメリカ同時多発テロ」を思い出す人は多いでしょう。

アメリカ同時多発テロで、ユナイテッド航空175便がツインタワー南棟に突入した瞬間 Photo by  Flickr user TheMachineStops (Robert J. Fisch), CC 表示-継承 2.0,wikimedia commons

日本はテロのリスクが低いといわれていますが、過去には悲惨な事件が発生しています。例えば、1970年に起きた「よど号」ハイジャック事件は日本で起きたテロで、実行犯はテロリストとして国際手配されています。

また、テロ組織に属している人だけを警戒すればよいわけではありません。テロリストが発信する情報に影響を受けた人が、単独で実行するテロも増加傾向です。

国際的なテロへの取り組み

テロは国をまたいで起こることも珍しくないため、国同士の連携が求められます。国際的にどのような取り組みがされているのか、さっそく見ていきましょう。

国連のテロへの取り組み

国連は反テロリズムを掲げ、さまざまな取り組みをしています。2003年に「国連薬物犯罪事務所(UNODC)」が技術協力活動を拡大し、テロ防止のための法体制強化を行いました。

2005年には、38の国際機関と国際刑事警察機構で構成される「テロ対策実施タスクフォース」が設置され、多国間のテロ防止活動を進めています。テロ対策実施タスクフォースの取り組みの一例は以下の通りです。

●紛争の防止と解決
●テロ被害者の支援
●攻撃されやすい目標の保護強化
●テロを目的としたインターネット利用への対策

G8・G7・G20のテロへの取り組み

2001年9月、G8は首脳共同声明で「アメリカ同時多発テロ事件」を非難し、2002年と2003年にもテロへの対策を発表しました。以降も、テロ対策への宣言が出されています。

2014年、ロシアがウクライナに侵攻したことでG8への参加が停止となり、以降はG7による取り組みがされています。G7に公式な定義はないものの、首脳会議に参加するフランス・アメリカ・イギリス・ドイツ・日本・イタリア・カナダの7カ国を指すことが一般的です。

2017年には、G20ハンブルク・サミットで「テロ対策に関するハンブルクG20首脳声明」が採択されました。G20は前述の7カ国に欧州連合、アルゼンチンやオーストラリアなどの12カ国の首脳を加えた枠組みのことです。

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日本国内でのテロへの取り組み

テロは外国での出来事と考えがちですが、いつどこで発生するか分かりません。「家族に何かあったらどうしよう」と、不安に感じる人もいることでしょう。

テロを未然に防ぐことはもちろん、起きてしまった場合にはスムーズに対処できるように、日本国内でもテロへの取り組みが行われています。取り組みの内容を詳しく見ていきましょう。

警察のテロ対策

2013年の在アルジェリア邦人を対象にしたテロ事件や、2019年に発生したスリランカのテロ事件など、日本人が狙われたり巻き込まれたりするテロは現実に起こっています。

警視庁は2015年2月に、「警察庁国際テロ対策推進本部」を設置しました。テロ活動を未然に防ぐ取り組みや、起こってしまった場合は被害を最小限にするための備えをしています。

これまでに、情報収集・分析などをしてテロを未然に防ぐ対策や、国際空海港での水際対策・重要施設や要人などの警戒警備・小型無人機対策の推進などを行いました。

警察では官民一体のテロ対策を推進

テロ対策は警察による取り組みだけでは不十分なため、関係機関や民間事業所、住民などとの連携が推進されています。警察と民間企業の危機意識の共有や対処体制の整備などは、テロを起こさないために重要です。

また、テロの道具となる武器を作らせないようにするため、銃砲刀剣類や火薬などを扱う個人・事業所への規制や指導もしています。具体的には、武器や爆弾の道具となる原料を販売する際や、テロリストの活動拠点となる宿泊施設の利用者などの本人確認を徹底するように指導しています。

機動隊の部隊訓練[警察庁], CC 表示 4.0, wikimedia commons

テロの資金対策

テロリストが資金を自由に得られないようにすれば、テロを未然に防ぐことにつながります。

日本は爆弾や武器の製造・購入、テロリストの訓練などに使う資金を得られないようにするため、「テロ資金提供処罰法(正式名称:公衆等脅迫目的の犯罪行為等のための資金等の提供等の処罰に関する法律)」で、テロリストへの資金提供を規制しました。

また、国際テロリストの資産の凍結などを求める「国際テロリスト財産凍結法(正式名称:国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する財産の凍結等に関する特別措置法)」が施行されるなど、テロが活発化しないようにするための法を整備しています。

出典:公衆等脅迫目的の犯罪行為等のための資金等の提供等の処罰に関する法律 第二条 第三条 | e-Gov法令検索
国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する財産の凍結等に関する特別措置法 第一条 | e-Gov法令検索

危険情報やテロへの対処法の発信

外務省では、日本人がテロに巻き込まれないよう情報を発信しています。情報を確認し、危険が訴えられている場所には行かないようにすることが大切です。

海外旅行の際は、外務省の「海外安全ホームページ」を利用し、その国の危険度をチェックするなどして安全面に配慮しましょう。

また、テロに遭わないようにするための対策やテロに遭遇したときの対処法を、公安調査庁が公開しています。滞在国や地域に関する報道を常に入手できるようにし、事件に遭遇した際の避難経路を考えておくなどの対策が紹介されています。

出典:外務省 海外安全ホームページ
テロに遭わないための対策及びテロに遭遇したときの対処法 | 国際テロリズム要覧について | 公安調査庁

テロについて子どもにどう伝えるべきか

 

世界的なテロが起きた際、日本でも報道されるケースは少なくなく、不安に思う子どももいるかもしれません。子どもにテロについて尋ねられたとき、どこまで伝えるべきか悩む保護者もいるでしょう。子どもにどのような伝え方をすべきかを紹介します。

誠実に答えることが大切

大人でも、テロが起こった背景や善悪をどのように捉えるかなど、判断に迷うことがたくさんあります。個人で簡単に解決できる問題ではないため、子どもに聞かれて分からないことは、「分からない」と正直に答えましょう。

子どもの疑問をはぐらかすのではなく、誠実に対話する必要があります。会話をしながら子どもがどのように感じ、何を知りたがっているのかを探りましょう。

子どもが持つ情報を知り、どの程度話せばよいか見極めることが大切です。必要以上に不安がらせないためには年齢に合った情報を伝え、一度に多くを話しすぎないようにしましょう。

詳細な説明で不安をあおらない

子どもを怖がらせるような、具体的な説明は好ましくありません。テロに巻き込まれた人がどのように亡くなったかなど、大人でも聞くのがつらい悲惨な話は伏せておきましょう。

現場の写真や映像などを見ると、大人でもショックを受けます。残酷な場面を、子どもに見せる必要はありません。

子どもに安心感を与えられるように、「遠い場所で起きていること」「具体的にどのような対策が取られているか」などを伝えます。子どもが外に出るのが怖いと感じることがないように、伝え方を工夫しましょう。

テロのない平和な世界にするために

テロは、暴力によって思想を実現しようとする行為を指します。暴力のない平和な世界は、人類に共通する願いです。各国で情報収集や分析を進め、国同士が連携するなど、テロが起こらないように対策されています。

個人としても、海外へ行く際には情報を集めるなど、安全への意識を持つようにするとよいでしょう。子どもに伝える際は年齢に合った伝え方をし、不安を和らげてあげることが大切です。

国内外で、さまざまなテロ対策がされていることを話し、万一の際はどのように行動すべきかなどを話し合う時間を持ってもよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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