「ODA」とは何? 定義や歴史、日本の実績や失敗例についても詳しく知ろう【親子で学ぶ現代社会】

ODAは「政府開発援助」のことで、開発途上国を支援する政府の活動です。日本の政策の問題点を語るニュースなどで登場する言葉ですが、意味や目的を知っていると、なぜ必要とされているのかが見えてくるでしょう。ODAの定義や歴史とあわせて紹介します。

ODAって何のこと?

ODAは日本の政府が力を入れてきた、国際的な社会貢献活動の一つです。ODAの正式名称や目的など、基本的なことを見ていきましょう。

正式名称は「政府開発援助」

ODAは「Official Development Assistance」の略称で、意味は「政府開発援助」です。開発途上国の発展を助けるために、政府が資金・技術を提供することを指します。

国際機関・NGO・民間企業など、さまざまな組織・団体が経済的な協力をしていますが、政府が開発途上国を援助することをODAと呼んでいることがポイントです。

資金の贈与だけでなく、貸付もODAに含まれます。開発援助と聞くと技術開発をイメージする人も多いかもしれませんが、人道支援や平和構築のためにも援助が行われています。

ODAの目的

ODAの目的は世界の平和や安定、繁栄などに貢献することです。世界196カ国のうち約74%が、経済や産業が十分に発展していない開発途上国とされ、このため多くの人が飢餓や貧困に苦しんでいる現状があります。

ODAを通して問題を解決するのは、国際社会の一員として重要なことです。環境や食料の問題などが解決して開発途上国が豊かになれば、周辺の国も豊かになります。

また、開発途上国への援助は自国のためでもあります。日本は食料自給率が低く、他の国から食料の多くを得なければなりません。日本から遠く離れた国へのODAであっても、めぐりめぐって日本の環境や経済によい影響をもたらすきっかけとなります。

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ODAの2つの形態

ODAは、大きく分けて二種類あります。どのような取り組みなのか詳しく知るために、それぞれの特徴を見ていきましょう。

二国間援助

二国間援助とは、国際機関などを通さず、国が直接開発途上国を支援することを指します。無償で資金や技術を提供する「贈与」、資金の返済を前提とした「政府貸付」に分けられます。

贈与は無償の資金協力のことで、対象となるのは開発途上国の中でも所得水準が低い国です。贈与によって得た資金は、開発に必要な資材・機材・設備などを購入するために使われ、技術協力も贈与の中に含まれます。

政府貸付は、将来返還してもらうことを前提とした資金協力を指します。

多国間援助

多国間援助とは、日本が支援している国際機関を通じて援助することを指します。例えば国連児童基金(UNICEF・ユニセフ)・国連開発計画(UNDP)・国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの国際機関があります。

多国間援助は、各国の国際機関の課題によって配分が決まる仕組みです。援助する国の政策的な思惑が介在しにくく、二国間援助よりもよい援助とされる場合が少なくありません。

日本におけるODA

日本はODAを活用し、諸外国にたくさんの支援を行ってきました。以前は、日本が支援を受ける側だったこともあります。日本のODAの歴史や実績などをチェックしましょう。

日本のODAの歴史

戦後間もない頃、日本は世界の国々から援助される立場でした。諸外国からの支援がなければ、今日のような経済発展を遂げるまでに、もっと多くの時間がかかったでしょう。

支援を受けていた当時は、世界の国々から食料や医薬品・衣料・日用品などが届けられ、国連児童基金からも当時の価値で65億円もの資金が子どもたちのために提供されました。

日本のODAは、1954年にコロンボ・プランに参加したのが始まりです。コロンボ・プランとは、1950年に提唱された開発途上国のための国際機関を指します。

日本ではコロンボ・プランに参加した10月6日を「国際協力の日」と定めています。2024年で70周年を迎え、国際協力70周年記念事業としてさまざまなイベントが行われる予定です。

ODAを行っている団体や組織

ODAを実施しているのは、関係省庁・国際協力機構・企業・NGO・地方自治体などです。内閣府・総務省・法務省など1府12省庁が、それぞれ担当する分野の支援を実施しています。

中でも外務省は、ODAの中核を担っている存在です。ODAの目的や理念などを決定しているのは政府であり、外務省が国・地域・分野などを考慮して企画や立案をしています。

政府機関だけでは補えない部分があるため、国際協力機構や民間企業とも連携し、全国各地の多くの中小企業もODAに参画しています。

中小企業に求められているのは、政府の支出する資金では賄えない部分に投資することです。企業と開発途上国、どちらにとっても利益があるような事業の促進が期待されています。

日本のODAの実績

外務省が発表している開発協力白書(2023年版)によると、日本のODAの援助額の実績は、2022年にはアメリカ・ドイツに次いで3位になりました。

日本の二国間政府開発援助実績では、アジアの国々への援助が過半数を占めています。開発途上国の人々が事業を持続し、発展できるような協力を行っているのが日本の特徴です。

技術協力においては、主にインフラ支援や企業支援、労働分野の支援などを行っています。これまでにカンボジアのインフラ整備事業や、インドネシアでの母子手帳による技術協力などをしました。

出典:2023年版開発協力白書 日本の国際協力|外務省

日本がODAを行うメリット

ODAによって地球規模の問題解決ができ、日本を守ることにつながる点がメリットです。開発途上国が豊かになれば、日本の経済にもよい影響があります。

例えば、港を建設する資金や技術を援助することによって、現地のビジネスが活性化すれば、日本企業の海外展開への手助けとなるでしょう。

安定的な物流の維持をすることは、人や物の交流によい影響を与え、日本経済の安定にもつながります。開発によって経済的に発展した国が、日本の製品を購入してくれるなどのメリットもあります。

また、ODAによって関係が深まった国と信頼関係を築ける点や、日本の好感度アップにつながる点も無視できません。

ODAの問題点

ODAは開発途上国が利益を得られ、人々の暮らしを改善するために行っているものですが、問題点もあります。どのような問題があるのかチェックし、ODAへの理解をさらに深めましょう。

利益目的の援助になってしまう

ODAによって進められた事業や資材の調達を、日本企業に限定するといった、企業と政治家との癒着が問題視されています。

支援先のニーズよりも、日本政府が実施したい援助案件を推進することがあったため、国外から「自国企業の利益を優先した援助ではないか」と指摘されたこともありました。

援助する側の利益が目的ではなく、援助される側の主導権やニーズに合った支援をすることが求められています。

技術や人材不足で機能していない

開発途上国への支援を行っても、現地で役に立っていない場合があります。インフラ整備を行ってもメンテナンスする技術や人材がなく、使用できなくなっている例があるのです。

例えば、ソロモン諸島の給水事業で浄水装置を整備したものの、既存の送水管の不具合で使用できず無駄になってしまったことがありました。

また、援助される側の政府の希望が、必ずしもその国の人々が求めているものであるとは言い切れない点も問題です。日本のODAは、援助を受ける国の政府を支援するような設計がされており、本当に困っている人々に届かない場合がよくあります。

コミュニティの中で上層部にいる人だけが支援を受けられ、貧困層の生活が改善されないケースがある点も指摘されています。

国際社会の発展につながるODA

ODAを活用することで開発途上国が支援を受けられれば、国際社会がより発展していきます。支援する側である日本にとってのメリットは、イメージアップにつながる点や企業が海外進出をする手助けになる点などです。

支援する側とされる側、双方にメリットがあるようなやり方ができれば理想ですが、現実には支援する側の利益が優先されたり、現地のニーズに合わなかったりして、問題になることもあります。援助額を増加していくだけでなく、問題点を改善し、現地で真に役に立つ支援をすることが重要です。

ODAへの理解を深めれば、日本の国際的な立場や開発途上国の状況を知るのに役立ちます。外務省のホームページなどで、ODAの内容が公開されているので、親子でチェックしてみてもよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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