「政党政治」のメリットとデメリットを考える。「派閥」問題や各国の政治体制も解説【親子で学ぶ現代社会】

政党政治は、日本でも採用されている政治体制です。政党による政治には、どのような特徴があるのでしょうか? メリットと併せてデメリットにも注目します。また、アメリカ・フランス・中国の政治体制も確認しましょう。

政党政治とは何か

政治体制は国や時代によって異なりますが、現代では政党政治を行う国が多い傾向です。

政党政治とは、具体的にどのような政治体制を指すのでしょうか?  政党の意味や、政党政治の主なパターンを解説します。

政党」は同じ主義・主張を持つ集団を指す

政党は、政治的に同じ主義・主張を持つ人が集まった団体を指します。政治的な目標を持ち、政策の実現のために行動する団体です。

つまり、政党政治とは一つもしくは複数の政党が政治に関わる政治体制のことです。複数の政党がある場合、議会で多数を占める政党が内閣をつくり、政治を行います。

議会で多数を占め、内閣をつくる政党は「与党」、それ以外の政党は「野党」です。多くの政策を実現し、国の政治を行うには、与党として内閣をつくる必要があります。

出典:「政党」って、なあに? | 選挙を知ろう | NHK選挙WEB

政党政治には複数のパターンがある

政党政治の主なパターンとして、一党制・二大政党制・多党制が挙げられます。

一党制は、一つの政党が政治を行う政治体制です。ライバルとなる野党は存在しません。

二大政党制は、二つの政党が政治の中心となる政治体制を指します。多党制は三つ以上の政党が政治を担う体制です。

二大政党制と多党制は、厳密に区別ができないケースもあります。日本の場合、政党政治が始まった頃は二大政党制であったものの、近年は支持を集める政党の数が増えてきています。

日本での内閣制度創設は1885年

日本で内閣制度が創設されたのは、1885年のことです。

明治時代より前には幕府が各地域の藩を統制し政治を行っていたため、当時の政治を担っていたのは幕府と各地の藩主です。

明治時代が始まってからも、内閣制度が創設されるまで、太政官制と呼ばれる太政官を最高行政機関とした政治が行われていました。

日本の政党政治は、大正の終わりごろから昭和初期にかけて、政友会と民政党が交互に政権を交代する二大政党制へと発展します。

出典:内閣制度の創設と明治憲法下の内閣制度

政党政治によるデメリット

政党政治にはいくつかのパターンがありますが、共通するデメリットはあるのでしょうか? 起きやすい問題とデメリットを解説します。

派閥による問題が発生する可能性がある

政党は政治的に同じ考えを持つ人たちの集まりですが、全員が完全に同一の政策を支持しているとは限りません。

それぞれ、基本的な方向性は同じでも、個別の政策に関して異なる意見を持っていることもあるのです。

そのため、政党の中には、「派閥」と呼ばれる「同一の政策や利益に基づいて行動する人の集まり」が存在します。

派閥は議員同士の結束を固め、政策を実現する上でメリットのあるものです。しかし、派閥の存在が悪い結果をもたらす可能性もあります。

派閥に属する人物のみを優遇しなれ合いが起きるなど、集団心理が悪い方向に働いた場合は政治腐敗を招く恐れもあるでしょう。

出典:派閥とは? 自民党総裁選ドキュメント – 日本経済新聞

政権交代が行われない場合民意が反映しにくい

政党政治の中でも一党制は独裁体制になりやすく、民意が反映しにくいといわれます。もちろん、政権を握った政党が常に民意を尊重し、できる限り国民の意向に沿う政治を心掛けていれば問題はないでしょう。

しかし、一党制の場合、ライバルとなる政党が存在しません。もし民意とは異なる政策を実行したとしても、他の政党に政権を奪われる心配はないでしょう。将来のことや、国の利益を考えて民意と異なる政策を実行する可能性もあります。

通常、政党の目標である政策を実現するためには、国民の支持を得て多数の党員を当選させ、内閣をつくらなければなりません。ライバルとなる政党があれば、国民の支持を得るために民意が反映されやすくなります。

複数の政党がある場合でも、政権交代がまったく行われない場合、一党制に近いデメリットが起こり得ると考えられるでしょう。

出典:政権交代はなぜ重要なのか? 政治と民意のずれを埋める – 特集 – 情報労連リポート

党内での対立により議論が進まない恐れがある

政党には同じ意見を持つ人が集まるものの、全ての政策において同じ考えとは限りません。党内で意見が割れ、対立が起きると議論が進まない恐れがあります。

個人同士であれば国民の支持を得ている人の意見が反映されますが、支持されている政党の中で意見が分かれてしまうと、調整や話し合いに時間がかかるでしょう。

また、対立が深刻化すると、政党全体が向かう方向性がまとまらない可能性もあります。

政党政治によるメリット

政党政治には、デメリットだけでなくメリットもあります。国民主導の政治を行う上で、政党政治を取り入れている国は多いのです。政党政治の利点も把握しておきましょう。

政策に対する議論が進みやすい

政党があると、政策実現に向けての議論が進みやすくなります。個人がバラバラに自分の意見を通そうとすると、考え方の違いからなかなかうまくいきません。

しかし、政党内で意見をまとめ、ある程度方向性を同一にすることで、スムーズに話が進むでしょう。

元々似た考えを持つ人たちが同じ政党に集まるため、より政策実現の可能性が高くなります。

出典:政党政治とは?メリット・デメリットや歴史をわかりやすく解説 | スマート選挙ブログ

主義・主張がまとまり分かりやすい

有権者が政治家に投票する上で、候補がどの政党に所属しているかは重要な情報です。政党の多くは、政策や公約をマニフェストとして公開しています。

政党ごとのマニフェストを確認すれば、所属している候補の考えがある程度分かります。主義・主張がまとまっていれば、どの候補に投票するか判断しやすくなるでしょう。

候補者本人の主張を詳しく確認することも大切ですが、所属している政党を見るだけである程度考え方の方向性が理解できる点はメリットといえるでしょう。

出典:衆議院選挙2024 各党の公約 政策別・政党別 -衆院選-|NHK

世界各国の政治体制と特徴

日本には複数の政党が存在し、議院内閣制を採用しています。では、世界ではどのような政治体制を採用しているのでしょうか? アメリカ・フランス・中国の例を紹介します。

大統領制を採用するアメリカ

アメリカは、大統領制を採用しています。大統領は党内で候補者を決め、最終的に有権者の投票によって任命される役職です。

建国当初には政党が存在していませんでしたが、二つの派閥が対立する構造は初期の頃から続いており、早い段階で二大政党制へと変わっています。

現在、主要な政党となっている二党は、それぞれ異なる特徴を持つ政党です。民主党は福祉・人権重視のリベラル派で、共和党は伝統を重んじる保守派といえます。

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共和制を敷くフランス

フランスでは、共和制が敷かれています。共和制とは、国民が選んだ代表を元首とする政治体制です。

フランスには、大統領と首相が存在します。大統領は国民投票で選出された元首で、首相は大統領によって任命されます。

首相を任命する権限を持っていることからも分かるように、大統領の権限は強いといえるでしょう。首相は、大統領の考えや政策を実現するために働きます。

大統領・首相とは別に議会が存在し、大統領が任命した首相に対して、不信任決議を行うことが可能です。

一党制が続く中国

中国では、共産党による一党体制が続いています。他の政党も存在するものの、憲法により共産党による指導が明記されているため、事実上の一党独裁体制です。

中国には共産党を束ねる「総書記」の他に、人民解放軍の「中央軍事委員会主席」、国のトップとなる「国家主席」が存在します。現在、共産党の総書記・中央軍事委員会主席・国家主席の地位に就いているのは、習近平国家主席です。

行政を担う国務院と呼ばれる組織が設けられており、首相(国務院総理)は国家主席によって任命されます。

政党政治のデメリット・メリットを理解しよう

政党政治とは、「政党」と呼ばれる団体が政治を担う体制です。日本でも、政党政治が行われています。

世界的にも、民主主義の国の多くは政党政治を行っています。「政党」があることでデメリットは生まれるものの、国民の代表である候補者を選ぶシステムにはメリットも多いものです。

デメリット・メリットそれぞれを把握して、政治体制について理解を深めましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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