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子ども服の概念を変える画期的な服
2017年「“Clothes That Grow” with your child(子どもと共に成長する服)」をテーマに掲げ、ライアン・マリオ・ヤシンさんによってロンドンで立ち上げられたサステナブルファッションブランド「Petit Pli(プチ・プリ)」。
2023年にアジア初となるポップアップショップを東京で開催し、ロンドンの旗艦店とオンラインショップで現在60か国に向けて発売。ブランド誕生からわずか数年で、サステナブルファッションのみならず、デザイン、イノベーション分野などでも数々の名だたる賞を獲得し、多分野の業界で注目されるブランドのひとつとして成長しています。
最大7つのサイズをひとつの服にまとめた伸縮性に優れた画期的なデザインとそのスタイリッシュさに注目されているだけではなく、生産から販売、消費者に向けて働きかける革命的なサステナブルな取り組みに対しても高く評価されているブランドです。
そんなサステナブルファッション業界で今躍進する「プチ・プリ」のCEO兼デザイナーであるライアン・マリオ・ヤシンさんに、「プチ・プリ」のサステナブルな取り組みについて取材させてもらいました。

衣服に対してもサステナブルな選択を
「子どもが成長するごとに服は次々と買い替えられ、サイズが合わなくなってしまった服はすぐに捨てられてしまう…」
環境負荷が非常に大きいとされている「アパレル産業」。衣服の大量破棄問題、そして生産過程で排出される二酸化炭素と水の大量使用による環境負荷は大きな課題として残っています。このようなアパレル産業が抱える環境問題の解決に向けて、「プチ・プリ」ではひとつの服を長く使ってもらうことでサステナブルな環境と社会につなげていくことを提案。
乳幼児期~9、10歳にかけて体のサイズが著しく変化する成長期の子どもが、服を数ヶ月着ただけで廃棄してしまうのではなく、長い期間着ることができるように、エンジニア、社会学者、心理学者、神経科学者、プロダクト/ファッションデザイナーとのチームで研究開発を行っています。
消費者のひとりひとりがひとつの服を長く使い続けることで、衣服の大量破棄の削減、水や二酸化炭素排出量の削減につながるように。そして、生産過程から消費者まで、社会全体でサステナブルな行動に意識が向けられるように、「プチ・プリ」が取り組むサステナブルな商品の開発に向けた工夫とこだわりを教えてもらいます。
機能的でスタイリッシュ:長年着続けてもらうためのこだわりと工夫
構想から商品化するまで、ひとつの新しい商品につき費やす期間は、2年。多くのアパレル生産は、服のスケッチを生産工場に持っていき、それ以後の工程は工場に委託して作ってもらうといったパターンが多いなか、「プチ・プリ」は、生地を作ることから消費者の手に届くまで、すべての工程に携わっています。
サステナブルなことはもちろん、ユーザーがおしゃれに妥協することなくサステナブルファッションを楽しみ、機能的かつスタイリッシュであることにもこだわって開発されています。それを可能にするために、さまざまな分野からの専門家で構成したチームメンバーと共に、長年かけて築き上げたデータを元に改良を重ねて完成させたそうです。
マテリアルテストを繰り返して生み出したオリジナル生地
毎日活発的に動き回る成長期の子どもたちに、ひとつの服を長く使ってもらうためには、耐久性や着心地、使いやすさが必須です。そのためにも、生地と素材には特にこだわって作られており、今まで5000件を超える素材のテストを行い、耐久性のみならず、伸縮性、通気性、耐水性、防滴性などを比較。蓄積したデータから選んだ最高評価の生地で試作品をつくり、モニターの消費者に実際に使ってもらい検証までを行います。
このような工程を繰り返し改良して完成したものが現在商品としてお店に並んでいます。現在「プチ・プリ」で扱っている商品の素材は、4種類(日本では「Versatile(再生ポリエステル100%)」「FLUID TX-TILE (再生ポリエステル100%)」「Knot-Tile®(メリノウール100%)」の3種類)。
なかでも「プチ・プリ」を代表する「Versatile」シリーズで使われているリップストップ生地は、伸縮性、通気性、耐水性、防滴性を兼ね備えた特許取得済みの生地だそう!
ユーザーの立場になって開発
実際に服を着る子どもだけでなく、着替えや洗濯を手伝う保護者の立場になって、服の使いやすさや扱いやすさにも焦点を当てて開発をしてきたそう。普段子どもに服を着替えさせるとき、いつ、どんな時、どの場所でどのように着替えをしているか、簡単に着脱できるにはどうしたらいいか…。
「プチ・プリ」を代表する「Versatile」シリーズは、耐久性、伸縮性、通気性、耐水性、防滴性に優れていて、子どもが動きやすく、外出時の着替えの持ち歩きとしても便利な軽量サイズであることも実現。着心地をよくするために、やわらかい肌触りの生地にし、成長で変わるウエストと裾のサイズ変更も簡単に調節できるように工夫されています。また、洗濯機で簡単に洗うことができ、速乾性も装備しているのでお手入れも簡単に。
伸縮性に優れているので、冬はもたつくことなく服を重ね着して使うことができるので、季節を問わず一年中使える子ども服として人気だそうです。
社会全体でサステナブルファッションへの意識改革を目指して
「プチ・プリ」の商品は、ポルトガルにある環境にやさしいグリーンエネルギーのみを使った工場で生産されています。
生産工場では、働く人の労働時間や適正な賃金の管理、健康維持のためのジムの設置など、労働者が健全に働ける環境が整備されているそうです。サステナブルな生産方法とエシカルな商品作りに価値をおき、「プチ・プリ」のユーザーが人や社会に配慮したエシカルな選択と消費ができるように作られています。
それだけではなく、「プチ・プリ」では、生産、リテール、ユーザーの3つの側面でサステナブルな環境につながるさまざまな取り組みが実施されています。
生産:リサイクルの効率化&無駄ゼロを目指して
単一の繊維素材でリサイクルしやすいように配慮
「プチ・プリ」の服は、1着(Versatileシリーズの LittleHumanサイズの上下)につき再利用されるペットボトルの数は11本、69㎏の二酸化炭素の排出を削減し、ごみの削減にも貢献しています。また、ペットボトルから作られた再生ポリエステル100%の生地で作られており、単一の繊維のみを作ってリサイクルされやすい素材選びがされているのも重要なポイントです。
近年衣料品のリサイクルが推進されるなか、混紡・混織など複数の繊維素材を組み合わせた素材の服が増加傾向にあり、効率的なリサイクルができないことが問題視されています。例えば、ポリエステルとコットンを混ぜた素材は私たちが日常でよく目にする素材のひとつ。これらの服は、素材の分離や分解をすることが簡単ではなく、単一の繊維のみで作られた素材に比べてリサイクルするまでにより多くのエネルギーが必要になります。その結果、複数の繊維で構成される衣類は、リサイクルされていないか、ダウンサイクルされることが多くなっているそう。
衣料品のリサイクルの効率化を高めるために、「プチ・プリ」では商品が消費された後のことも考えながら素材選びにこだわって作られています。
無駄ゼロに向けた取り組み
従来アパレルの生産で捨てられてしまうモノに対しても限りなく無駄が出ないように努力されています。例えば、生地を裁断した時にでる布の切れ端は、手作りでひとつひとつつなぎ合わせて「プチ・プリ」のマスコットに変身させて、子どもたちの新たな相棒に!
メリノウール100%で使ったKnot-Tile®シリーズでは、生産過程で無駄がでない作り方を採用。一着のベストにつき出る生分解性ゴミは、わずか2.8gに抑えられています。
リテール:サプライチェーンの最適化と物流の削減
「プチ・プリ」は、7つのサイズを1つの服にまとめることで、サプライチェーンを最適化させ、物流を減らすことにも貢献しています。
アパレル産業では、全体的に返品率が高い傾向であることが指摘されており、消費者は、サイズの違う同じ商品を2~3個買い、サイズが合わないものを返品するといったパターンが多くみられるそう。その返品率は30~40%ともいわれ、それに伴う配送の量も増えています。
しかし、「プチ・プリ」の商品は、ひとつの服のサイズ幅が大きいため、返品率はわずか2%。その結果、商品が行き来するモノの流通量を減らすことができています。
また「プチ・プリ」では、イギリスからのオンラインオーダーの配送は、郵便箱に入る大きさの梱包をしており、再配達によるドライバーの負担軽減や二酸化炭素の排出量削減にもつながるように配慮されています。
ユーザー:次世代との意識共有と無料修理サービス
「プチ・プリ」のサステナブルな取り組みは、生産とリテールの側面だけではなく、消費者の手元に届いた商品のアフターケアにまでいきわたります。モノを再利用して楽しむ方法を消費者と共有し、次世代の子どもたちに「プチ・プリ」の取り組みを知ってもらうことで、サステナビリティに関心を抱いてもらうきっかけを作っています。
例えば、オンラインオーダーで使われている梱包の箱は、「折り紙ジェットパッケージ」と呼ばれ、分解して折りたたむとロケット型のリュックに変身させて遊べるように!(現在日本でも準備中)また、 すぐにゴミ箱に捨てられてしまいがちな取扱説明書の裏側には目盛りが記されていて、それを壁に貼り付けると身長計として子どもの成長が記録できるようになっています。 親子でサステナビリティについて話してもらえるきっかけとなることを願って、説明書には、「プチ・プリ」の取り組みもわかりやすく綴られています。
またイギリスの「プチ・プリ」では、アフターケアサービスとして、購入した商品を無料で修理するサービスを提供(商品購入後90日以内のWeb登録必須)。「プチ・プリ」の商品をユーザーに少しでも長く使ってもらい、そして今後より良い商品開発を行うためにも修理サービスを実施しているそうです。
モノを再利用して楽しむ方法を消費者と共有し、次世代にサステナブルな環境への取り組みが伝わるように、あらゆるところに「プチ・プリ」の思いが詰まっています。
「プチ・プリ」のユーザーが消費者として、「捨てられてしまうモノへの考え方を変え、消費されていくモノを減らす」そして「ひとつの服を長く着続けてもらう」ために。
期間限定「プチ・プリ」のポップアップを開催中!
渋谷と丸の内の「THE SHOP」にて、「プチ・プリ」のポップアップを開催中! ぜひこの機会に、「プチ・プリ」商品の軽量感や肌触り、伸縮性を実際に手に取って体感してみてください。
開催期間:〜2月27日(木)まで
開催場所:THE SHOP SHIBUYA:渋谷スクランブルスクエア8F
THE SHOP TOKYO:KITTE丸の内店4F
※営業時間は、それぞれの商業施設の営業時間に準じます。
「Petit Pli(プチ・プリ)」Japan
URL:https://petitpli.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/petit.pli.jp/
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取材・文・構成/s.Frey