専業主婦とワーママ、キャリアと育休など、子育てに関わる全ての人を対立させないTBSドラマ『対岸の家事 ~これが、私の生きる道!~』の魅力とは?

​家事や育児に関するリアルな悩みが描かれている現在放送中のTBSドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』。いまからでも間に合う!ドラマの内容やこれからの見どころなどについて紹介します。

TBS火曜ドラマ『対岸の家事 ~これが、私の生きる道!~』

多部未華子主演のTBS火曜ドラマ『対岸の家事 ~これが、私の生きる道!~』は、子育てをしながら誰かがやらなければいけない“お仕事=家事”をテーマに、それぞれの家庭の葛藤や問題を描いていきます。原作は作家・朱野帰子(あけの かえるこ)による小説『対岸の家事』。​この作品は、2018年に講談社から単行本として刊行され、2021年には文庫版も発売されました。

専業主婦の主人公・詩穂

多部さんが演じるのは、育児と家事に奮闘する専業主婦の村上詩穂(むらかみしほ)。母親を早くに亡くした詩穂は過去の出来事から「家族のために“家事をすること”を仕事にしたい」と専業主婦になることを選択します。ひょんなことから、詩穂の住むマンションの隣に引っ越してきた働くママの長野礼子(江口のりこ)や、育休中のエリート官僚パパ中谷達也(ディーン・フジオカ)などと交流することになり、生き方も考え方も正反対な「対岸にいる人たち」と育児を通じて繋がったとき、それぞれの価値観が大きく変化しはじめます。

ⒸTBS

詩穂は、居酒屋の店長として働く優しく朗らかな夫・虎朗(一ノ瀬ワタル)と、娘・苺(永井花奈)と暮らす“専業主婦”。苺との時間を大切にしたいだけなのだが、以前専業主婦を“絶滅危惧種”と言われたこともあり、自分が選んだ道に不安を感じることも。

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ワンオペで子育てをする働くママ・礼子

また、仕事と育児を両立しながら働くママ・長野礼子は、二人の子どもを別々の保育園に通わせながら、送迎、仕事、家事と毎日大忙し。夫・量平(川西賢志郎)は仕事で遅くなる日が多く、育児はほぼワンオペ状態。それでも「仕事も家事も諦めたくない」と奮闘していますが限界寸前になっていました。

外ではいい夫、いい父を演じる出張続きの量平は、家に帰っても家事をすることがないうえに、日々仕事をしながら家事育児もしている礼子への理解が足りず、二人はついに衝突するまでに発展。
しかし、不器用ながらも量平が家事に参加する姿も垣間見え、理解しあう道を模索しはじめたのですが……。

厚生労働省勤務で育休中のパパ友・中谷

一方、詩穂のパパ友で厚生労働省に勤務するエリート官僚の中谷達也(ディーン・フジオカ)は、現在2年間の育休を取得中。完璧主義の中谷は自分の計画通りに子育てを進めていこうとするものの、思い通りにはならない育児と家事に困惑する日々を送っています。さらに育休の間に同僚が昇進したことを知ると、焦りを感じはじめているようです。

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男性の育休取得率は18~24か月の取得者が0.2%(※)と、育休を2年取る中谷は2025年の子育て界隈ではかなりのレアケース。育休を経験して「働いているほうが楽だった」という中谷の言葉に、家事や子育ての大変さと育休中の孤独感がひしひしと伝わります。

現在1歳半の娘に対して、月齢ごとにさまざまな目標を立てて取り組んでいる中谷には、自身の過去の親子関係が関係しているようで……。妻でバリキャリママの樹里(島袋寛子)にそれぞれのキャリアの隙間を縫うように二人目の妊娠、出産を計画してみても、そんなに都合の良いタイミングは見つけられません。中谷は、外でバリバリ働く妻を見て、自分だけが取り残されているような感覚に陥っているようです。

(※)厚生労働省「令和5年度育児休業取得率の調査結果公表、改正育児・介護休業法等の概要について」記者発表会資料

それぞれの家庭の問題と親の葛藤

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かつて詩穂を「絶滅危惧種」と呼んだのは、今はマンションの隣の家に住む、仲良しのママ友となった礼子でした。詩穂は礼子が働きながら子育てをする姿を見て、自分の選択が正解だったのか自信をなくしてしまいます。

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3話では、礼子の子どもたちが立て続けにおたふく風邪にかかり、仕事を休めず大ピンチに。会社を休むのに仕事を他の人に頼まなくてはならない申し訳ない気持ちや、「また休むの?」と思われるのではという不安、苦悩が描かれています

ただでさえ礼子は家事と仕事の両立に限界を感じてイライラしたり悪循環に陥ったりしがちで、ドラマの中で何度も落ち込む様子が見られます。

この悪循環には筆者自身もすごく共感してしまい、自分にも余裕がないことが多いなと反省。気がついたら完全に自分もドラマの世界に入り込んでいました。SNSでは礼子の抱える苦悩に共感したワーママも多く、子育てと仕事を両立していくことが難しい実情を考えさせられることもあります。

結局礼子の頼みを聞いた詩穂は子ども二人を預かることにするのですが、礼子は詩穂にお礼として8万円を支払おうとします。詩穂は受け取れないと断りますが、その話を聞いた中谷は、詩穂に子どもを預かることを有償で受けるべきだと進言するのです。

このように、子どもを預かってもらうときや仕事を代わってもらうときに対価は必要なのか? そもそも対価とは? そしてその対価は誰が支払うべきなのか? など、立場やケースが違うと“子どもを預かる”という行為ひとつにしても、感じることや考えることの違いがあるようです。

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5話では、習い事を巡って詩穂と中谷が険悪な雰囲気になってしまいます。詩穂は、娘が自分と二人きりの時間が多く、わが子にいろいろな経験をさせてあげられていないのかもしれない……とまた不安な気持ちになりますが、今一緒にいられるこの時間を大切にしたいと考えて、納得します。

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5月6日(火)に放送された最新話では、詩穂がパパ友の中谷に連れられ、結婚や出産・介護と仕事の両立や復職を支援する「仕事カムバックプロジェクト」のヒアリングを受けるために霞が関にある厚生労働省へ。そこで、詩穂は家計を助けるだけでなく社会貢献のためにも職場復帰した方がいいのかと考えてしまいます。

一方礼子は、社内で行われる講演会の登壇者を探していたところ、会社の“ロールモデル”となる人物として自分が話すことになってしまいます。突然のことで何を話せばいいのか悩みますが、今自分自身が置かれた状況を俯瞰し、ここにいる人たちは誰一人として同じ考えや環境の人はいないので、働き方も違うし、違っていていいということをスピーチします。

子育てに正解はないけれど、解決のヒントが見つかるかもしれない!?

このドラマの一番の魅力は、「あるある!」と共感できる家事の大変さや、家族とのすれ違いなどがリアルに描かれている点です。夫が家事に無関心、子どもが言うことを聞かない、自分の時間がまったくない……、そんな日常に「私だけじゃないんだ」と思わされる瞬間が何度もあります。

毎回それぞれの家族の視点でさまざまなな問題が描かれるので、共感だけではなく、違う考え方もあるよねという気づきも与えてくれるのです。

詩穂のコミカルな考え方や、中谷の不器用で憎めないキャラクターなどでクスっと笑ってしまいますが、ドラマの毎回のテーマは、この社会が抱える問題点を示唆していることも多いので、ドラマを純粋に楽しみながら、身構えずに世の中を知ることができるのも良いところです。

毎週の放送を観るごとに『対岸の家事』は属性の違う不器用な登場人物たちが、“子育て・家事”という共通ミッションに取り組む同志のように見えてきます。困難を乗り越え、解決に向かうヒントを与えてくれるので、観たあとに、「明日も頑張ろう」と前向きな気持ちにさせてくれますよ。ママだけではなくパパにもぜひ、観てもらいたいドラマです。

気になる今後の展開! 7話は5月13日(火)放送

ⒸTBS

専業主婦である詩穂を恨んでいるシングルマザーの登場、礼子の夫の転勤、詩穂が心を許せる話し相手である専業主婦の先輩・坂上知美(田中美佐子)親子の介護問題、などなど、7話以降も課題が山積み! それぞれがどのように向き合い、解決していくのか一緒に考えながら見守りたいと思います。

TBS火曜ドラマ『対岸の家事 ~これが、私の生きる道!~』毎週火曜夜10時から放送
公式サイトはこちら
見逃しはTBS FREETVerなどでご覧ください

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文/やまさきけいこ

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