プレイデートは謎とドキドキに満ちて【ハラユキの「発見!子育てダイバーシティ in バルセロナ」17】

プレイデートって何?

プレイデート(playdate)って聞いたことありますか?

これ、大人のデートじゃないのです。子ども同士で遊ぶことを指すのです。

日本だと、小学生になると1人で出歩けるので、子ども同士で約束して遊びに行くパターンも多いですが、欧米は小学生が1人で出歩くことが禁止されている国が多い。なので、放課後や休日に遊ぶ場合、親同伴で遊んだり、どちらかの家で遊ぶ場合は親が送り迎えすることになるのです。そのため、親同士がセッティングして遊ぶことになるので、それを英語圏では「プレイデート」と呼ぶのです。

周りから「インターに通い出したら、しょっちゅうプレイデートするようになるよ!」と言われていて「へえ、そういうもんなのね〜。それは子どもにとっても楽しいだろうし、私にとっても息子にとっても英語の勉強になっていいかもね」くらいに気軽に考えていたのですが、実際には、私が想像していたイメージとは違うプレイデートもたくさん経験しました。

というわけで、今回はいろんなファミリーとのプレイデートの思い出を紹介します。

カザフスタン&北朝鮮ハーフくんとのプレイデート

バルセロナのブリティッシュインターに息子が通い出して、最初に仲良くなったのは、ママがカザフスタン人、パパが北朝鮮人の男の子でした。

ええと、カザフスタンってどこだっけ?そして、韓国じゃなくて、き、北朝鮮!???

と思った方も多いのではないでしょうか。ええ、私も思いましたとも。

でも、カザフスタンにとっては日本はわりと身近な国らしいのです。なんでもセーラームーンなどの日本アニメが放送していてとても人気があるとか。そして初めてカザフスタンを世界地図で確認してビックリ。むちゃくちゃ大きいやないの!!(ぜひ地図を見てビックリしてください)

そのパパに直接聞いたところ、カザフスタンはかつていろんな国からの移民を受け入れていたらしく、このパパも3歳くらいのときにカザフスタンに移住したとか。えーと、北朝鮮ってそんなに簡単に国外に行ける国なんだっけ??と思ったけど、お金持ちは出国しやすいという噂を聞いたことあるし、このファミリーはかなりお金持ちっぽかったし、実はバルセロナにはたまに北朝鮮人がいるらしい。そのパパに詳細を聞いても、小さいときのことだから北朝鮮についてはそれ以上わからないとのことでした。

しかも、そのファミリーの家族での会話はロシア語で、息子をブリティッシュスクールに通わせて英語を習わせ、さらに家庭教師をつけてまで日本語や他の言語を習わせているらしい。な、謎すぎる…!さらに、その男の子は英語堪能だけど、ママパパのほうは英語もスペイン語もあまり上手じゃないのです。クラスのママパパたちはほとんどが英語堪能だったけど、特にママのほうは、このヘタな私よりヘタなんじゃ…というくらい英語が喋れない。なので、プレイデートには、両親不在で、彼らと同居する英語堪能な大学生の姪っ子(息子友達にとっては従兄弟)だけがついてくるときも多かったし、セッティングのメールやりとりもかなりその子が担当していました。その姪っ子ちゃんはとてもいい子だったけど、プレイデートとしてはかなり不思議スタイル…。

それにしても、こんな家族といきなりつながるなんて、さすがバルセロナはグローバルシティ!とか思っていたら、海外経験豊富な日本人の友人たちに、

「私、そんな家族会ったことないよ!!」

と驚かれました。

そうなの?ねえねえ神様、なんで海外暮らしビギナーの私に、いきなりそんなレアなファミリーぶつけてくるの?ネタ提供のお気遣い?

と正直思ったのだけど、その子はとてもいい子だったし、謎だなあと思いながらも、バルセロナ滞在中はかなりいっしょに遊んでもらったのでした。お互いの家で遊んだり泊まったり、公園や水族館や科学館に行ったり、バーチャルゲームセンターに行ったり…。途中で、そのファミリーはカザフスタンに帰国引越してしまったのだけど、お金持ちだからなのか、よくバルセロナに遊びにきて長期滞在し、そのたびにガッツリとプレイデートをしたのでした。

近所の公園でプレイデートしたときは、そのママに英語が通じず、会話に滞り、ついに私はロシア語のGoogle翻訳を会話に導入。ちょうどその公園はフレンチスクールの近くでもあり、公園にはフランス語も飛び交っているという状況になったこともありました。

 

 

英語にロシア語にフランス語。でも場所はスペイン。

この連載のタイトルにはダイバーシティ(多様性)という言葉が入っているけど、いくらなんでも多様性すぎやしませんか。みなさん、ついてきてますか。そして繰り返すけど、海外生活ビギナーの私にはいろいろハードルが高すぎやしませんか。だってまさかスペインで、大好きなロシアのアートアニメ「霧の中のハリネズミ」で憶えたロシア語「スパシーバ(ありがとう)」を使うときがくるなんてさ!!

ちなみに世の中には、言葉が通じずともなぜか意気投合してしまう、というハッピーパターンもあるのだけど、残念ながらそのママはそういうタイプでもなく…。むしろ、息子同士が仲良しという共通点がなかったら友達になれなそうなタイプでした。だって、彼女は元医者のクールビューティでブランドバッグを持ちお酒も呑まない人で、こちとら中央線を愛する呑んだくれフリーイラストレーターですよ。ただ、彼女が英語がヘタなのが、不便ながらも妙な安心感は感じていました。

とはいえ、正直に言ってしまうと、息子が英語圏かスペイン語圏のファミリーの子と仲良くなってくれたら、プレイデートで私の語学力も上がるのに…と思ってしまったりもしました。とはいえ、そう思ってしまうのは、人種差別だろうか、とも思ったり…。

ただ、何度も会ううちに、彼らの生活の謎具合も少し理由がわかってきたのです。

カザフスタンは教育状況もよくないし、政治情勢もいまいち。彼らは金銭的に余裕があることもあり、息子を世界のどこでも生きていけるようにいろんな言語と教育を息子に身に付けさせているようでした。

そして、彼らにカザフスタンの文化もいろいろ教えてもらったのです。

(↑自宅でごちそうになったマンティというカザフスタン料理。シュウマイのようなネパールのモモのような料理。コリアンダーの効いたトマトソースとヨーグルトソースをつけて食べる。世界のいろんな料理がまざっていて、カザフスタンさすが世界の中心!と思ったよ。味もおいしかった〜)

プレイデートとしては、子どもたちは毎回とても楽しそうだったけど、ママ友同士としては何の盛り上がりも見せなかったし仲も深まらず…。でも、異文化体験という意味ではかなりおもしろい体験をさせてもらいました。

アメリカ&イタリアハーフくんとのプレイデート

さて、最初は上のカザフスタン&北朝鮮の男の子とばかりプレイデートしてたのだけど、息子はだんだんと友達の輪を広げ、クラスのアメリカ&イタリアハーフくんのお宅でプレイデートしたこともありました。明るいアメリカ人ママから「息子がもっと遊びたいと言ってるの。プレイデートしましょう!」と誘ってもらったのです。

ちなみに、このママと初めて2人でメッセージのやりとりをしたとき、日本語でメッセージが来てビックリ。しかも日本語がビミョーに不思議でこんなかんじでした。

「やあ!こんにちは!それは◯◯(ママの名前)、学校からの◯◯(息子くんの名前)のお母さんです」

最初はなんじゃこれと思ったけど、はっと気づきました。

「ひょっとして、翻訳アプリを使ってくれたの?」

と英語で返したら

「あははははは!そうなの、試してみたの!日本語の翻訳アプリなんて初めて使ったわ!!超クールね!!」

と英語で返事が来ました。

(英語がヘタな私に気を使ってくれたんだな…、でもオイオイ、それくらいはいくら私でも英語で大丈夫だよ〜!!)とも思ったけど、そのママの性格上、100%の親切と300%の好奇心からやったのがよくわかったので素直に喜ぶことにしました。

そんなママとのやりとりを経て、ご自宅に遊びにいくプレイデートを決行。

アメリカ人らしく、DIYが趣味で、彼女自身が塗装したというオシャレ家具があちこちにあり、とてもセンスのいいステキな家でした。というか、マンション自体がかなりゴージャス。

 

 

上のようなホイップクリームゲームなどで遊んだりしながら、そのママといろんなことをおしゃべりしました。学校についても意見交換ができて、そっか、プレイデートって親にとっても情報収集の場として価値があるんだな〜なんて思ったりもしました。

ちなみに、話している途中、彼女が「日本料理の火鉢が大好きなの!」というから、(火鉢?火鉢で餅でも焼くこと?それとも囲炉裏で魚を焼くことを間違えてる?)と思って詳しく聞いたら、アメリカでは和風鉄板焼きのことが通称「HIBATI」と呼ばれているとのことでビックリしました。彼女に本物の火鉢の画像を見せてあげると、大ウケしていました。

結局、長々おじゃまして、夕飯までごちそうになったのだけど、そんなゴージャスなおうちでも、夕ごはんとしてでてきたのは冷凍ピザ1枚だったので、そんなところもアメリカンなかんじがして、いっそ清々しいぜ!!と思ったりもしました。

マレーシア、スウェーデン、中国…

そのほかにも、マレーシアの男の子、スウェーデン人の男の子、中国人の女の子、といろんな国籍の子と、公園で遊んだり、お互いの家を行き来したりのプレイデートをしました。

特に日本帰国直前はいろんな子に最後に遊びたいとリクエストをもらって、でも私は引越準備で忙しかったから、ドライバーのごとくいろんなうちに息子を送り迎えをしました。とくに、最初に紹介したカザフスタン&北朝鮮ボーイのうちには何度も泊まらせてもらい、「最初は誘いがかなり多くてつきあい面倒だな〜なんて思ったりしたこともあるけど…すいません!助かりまっす!!!」という気持ちになっていました。

 

さて先週末、その男の子と息子は動画電話アプリを使って久々に会話していました。

そのファミリーがそのときいたのは、カザフスタンじゃなくてドバイ。ドバイのゴージャスなホテルのプールが画面に映っていました。なんでも、いま彼はドバイのスクールに通っているらしく…。

あの…薄々感じていたのだけど、あなたたち、うちとはなんか階層が違うリッチピープルなんじゃ…?我が家、いまだに賃貸暮らしなんですが…!!いいの?わかってる?大丈夫?と思いつつ、ふたりの会話を横で見ていました。

でもその男の子は、なぜか猛烈に息子のことを愛してくれているし(ブリティッシュスクールに何年もいたのに、息子と会ったときに「やっと自分と合う子が来た!」と思ってくれたらしい)、必ずいつか日本にやってきそうな気がするのです。そのときは日本のどこかでプレイデートをするのかもしれません。

それにしても我が家、プレイデートで不思議な扉を開いてしまったのかもしれません…。カザフスタンと北朝鮮の事情に詳しい方、ご意見あればぜひお願いします。


ハラユキ
イラストレーター&コミックエッセイスト。夫の駐在赴任により、2017年6月より〜2019年7月までスペイン・バルセロナ在住。雑誌やWEBなどでイラストやマンガを描いたり、コミックエッセイ書籍を出版。「東京くらし防災」(東京都)のイラストも担当。「世界の家族の家事育児分担事情から知る、つかれない家族を作るヒント」や現地ごはん情報なども発信中。おいしいごはんと宴会と祭りとお風呂屋さんが大好き。7歳男児の母。家族をテーマにしたオンラインサロン「バル・ハラユキ」も主宰中。Twitterでは日々の生活や考えたこと、instagramでは主に食いしん坊メモを発信中。

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