【幼児からの性教育、はじめの一歩】男の子、女の子の性差の違いは2歳頃から。正しい教え方は

最近ではLGBTQ(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダ・クエスチョニング)が知られることにより、男女の身体の区別だけでなく、さまざまな『性』がアイデンティティとして認められるようになりました。そんな中で幼少期の男の子や女の子を持つ親は、それぞれ何に気をつけて、わが子に「性」のことを教えていけばよいのでしょうか?性教育について詳しい藤原美保さんにお話しを伺いました。

男女の性差の違いを意識するのは2歳頃から

 

子どもは思いのほか幼少期から父親や母親など周囲の大人から性差の影響を受けています。ほとんどの2歳児は、男女の性別を見た目や行動、振る舞いから判断するようになります。親は生物学的な性別を元に、幼いわが子に対して、女の子なら髪の毛を伸ばしリボンをつけたり可愛らしいフリルのついたワンピースなどを着せたりします。そして、男の子なら短髪にしてズボンをはかせ、電車や車などのモチーフのものを与えたりします。その文化が与える価値観によって、子どもは4歳頃になると自分は男だ、女だと自覚し始めます。

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「男の子らしさ」「女の子らしさ」を押し付けていない?

見た目だけでなくジェンダーバイアスとして男の子は「強さ」「たくましさ」、女の子には「しとやかさ」「やさしさ」などが幼少期からすでに社会から求められている場合が多いものです。大人たちは何気なく「女の子(男の子)らしくしなさい」といいがちですが、それは本人の本来のジェンダーアイデンティティを無視したものになり、ジェンダーバイアスを押し付けることになります。私達大人はそのジェンダーバイアスを押し付けていないかを意識する必要があります。

 実際に自分のジェンダー・アイデンティティがはっきりしてくるのは思春期の頃なのですが、自分を含めさまざまなジェンダーを認められるように、幼少期から「男らしさ」「女らしさ」という文化的なジェンダーバイアスを押し付けないようにしていかなくてはなりません。

 

「性教育」は男女別に。共通で伝えたいことも

 それなら性別関係なく同じように「性についての教育」をしていけばよいかと言うとそれは違います。

男の子と女の子では生物学的に身体構造が違い、プライベートゾーン(水着で隠れる場所)も男女で違います。身体ケアの仕方や性被害リスク、性の尊厳、自分の身体の安全を守る方法に対しては、それぞれ幼いうちから将来のことを見据えて教えていただきたいです。

女の子にはプライベートゾーンを「見せない」「触らせない」と教える

女の子は性被害のリスクについて男の子より気をつける必要があります。例えば下着ひとつとってもリスクが違います。男の子はパンツ(下着)が見えていても特に問題になることはありませんが、女の子はパンツ(下着)が見えているのはNG。

下着やプライベートゾーンは、「子どもだから見えても大丈夫だろう」と思うのは間違いです。幼い頃からスカートの時はオーバーパンツを着用するなどの習慣づけが大切です。

また、普段から肌に直接衣類をつけるのではなく、プライベートゾーンは下着で覆うように肌着を着用させましょう。衣類(例えばパジャマなど)を脱いだときに、プライベートゾーンが丸見えになるのは問題です。プライベートゾーンは安易に「見せない」「触らせない」ことを幼いころから習慣にしましょう。バストが膨らみはじめたら、カップつきのインナーを身に付けさせたいですが、肌着を着る習慣がないと、下着をつけることを嫌がる場合があります。だから、幼いころからの習慣づけが大切です。

「見せない」「触らせない」ことは、自分の権利や性の尊厳を守るにために必要であることを、親子で一緒に考えてください。外のトイレやエレベーターなどは、常に狙われやすいということを意識し、幼少期は一人にしないようにする注意が必要です。

男の子にはプライベートとパブリックの違いを教える

幼少期の男の子は性器を触る子が少なからずいます。性器を触ることが安心につながっている場合があるのです。大人はつい辞めさせようと注意してしまいがちですが、実は自分の身体に興味が出てくる時期でもあり健全なことです。問題は触ることではなく「場面」と「場所」が適切かどうかです。なので、性器を触ってよい場所や場面について、プライベートなところとパブリックなところがあることを教えましょう。もし触ることが安心材料になっているようなら、パブリックな場では他に代替えできるものがあるならそれを持たせることなども有効です。

そして汚い手で性器を触ると雑菌が侵入して赤く腫れることがあるため、清潔な手で触るように教えることも大切です。また、ペニスを洗うときはむいて洗うことを教える必要もあります。将来、包茎になることを防ぐためにも正しい洗い方を教えましょう。デリケートな部分なので優しく洗うようにと教えてください。

また、自分の身体を大切にすることと同様に、女の子はもちろん他の男の子も、誰の身体であっても大切にしなければいけないことも伝えたいです。身体だけでなく心も傷つけることはよくないことも同時に伝えましょう。

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ジェンダーやアイデンティティを認めながら、身の安全や権利を守ることを教えましょう

男女共通に教えるのは、「同意」なしに他人に触れてはダメなこと

自分や相手の権利を守ることや性の尊厳を守ることは、男女を問わず、教えなくてはならないことです。実際の社会では緊急時を除いては「同意」なしに他人の身体に触れることは良くありません。スポーツの中でも人に触れる時は必ず「ルール」が存在します。普段の生活にも、触れ合い(タッチ)にはルールがあります。相手の身体に触れるときには常に「同意」が必要だと教えて下さい。

NO」と拒否されても触れ続けることは、相手の権利侵害にあたり、尊厳を傷つけることになります。また、「NO」とはっきり意思表示をしないことは、その後の結果に責任を追わなくてはいけない場合があることを、少しずつ教えて頂きたいのです。

特に男の子の多くは身体を攻撃したり、ぶつけあう遊びやゲームを好みます。そのとき、相手と自分との間に同意があるのか?そしてフェアなのかどうか?を意識して教えて頂きたいと思います。性加害、被害の防犯のためにも、相手に触れる際の「同意のルール」の意識づけは重要です。

そして幼い頃から伝える時には「ペニス」などの医学的用語を使うことをおすすめします。二次性徴の時に生殖や性器、仕組みを教えるときに繋げやすくなりますし、揶揄した表現にならず正しい情報として伝わりやすくなります。

性犯罪にあいやすい「入りやすくて見にくい場所 」には近づかない

小学生になったら性犯罪に遭いやすい、子どもが狙われやすい場所である「入りやすくて見にくい場所」を教えましょう。特に女の子は狙われやすいので、しっかり教えてください。

例えば自宅マンションのエレベーターにひとりで乗っている時に他人が乗ってきたときはどうしたら良いのか? また、公共施設内のトイレなど、性被害を想定した防犯教育は、子どもの頃から気をつける必要があります。

例えば、家の周辺ではどんな所が「入りやすくて見えにくい場所」なのか、親子で考えてみましょう。写真に撮って、防犯マップを一緒に作るのも効果的です。どこに行っても、こういう所が「入りやすくて見えにくい危険な場所である」ことを考えるベースが育ちます。

 幼い頃から、正しく「性教育」をしていくことが、男女ともに健やかな思春期を迎え、その後の人生も前向きに生きていくことへつながります。さまざまなジェンダーやアイデンティティを認めながら、男の子と女の子、それぞれの身体構造の違いによるケアとリスクを伝えてください。そして、自分の身の安全や権利を守ることが、将来の何に繋がるのかを親子で考えていただければと思います。

 

お話を伺ったのは

藤原美保さん

健康運動指導士、介護福祉士。株式会社スプレンドーレ代表。

発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目の当たりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げ現在に至る。著書に「発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール」(エッセンシャル出版)、「発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること」(PHP研究所)がある。

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