最近、人気の習い事ランキングで「プログラミング」が上位に登場するようになりました。2020年に小学校でもプログラミングの授業が必修化されます。
文部科学省は、“教育の情報化”を推進。教科を超えた「学習の基盤となる資質・能力」を「言語能力や情報活用能力、問題発見・解決能力」と定め、「未来の学び」の実現を目指しています。
うーん、高い理想を掲げるのはいいけれど、現実はどうなの? と首を傾げる保護者のみなさんも多いかも。ほとんどの保護者が習ったこともないプログラミングを授業でやるって、子どもたちは大丈夫なのか? そもそも先生たちは教えられるのか?
でも、その“未来の学び”を実践している先生たちは、すでにいます。情報機器を活用し、プログラミングなども取り入れ、子どもたちの新たな学びのために、がんばっている先生たちは、あちこちにいて、だんだん増えてきています。
そんな先生たちが、何を考え、どんな授業をしているかをご紹介したいと思います。いろいろな取り組みを知ると、「未来の学び」ってそういうことか、悪くなさそう、と期待がふくらみます。
■新しい学びを提案する、iTeachers(アイ・ティーチャーズ)
“教育ICTを通じて「新しい学び」を提案する教育者チーム”として活動するiTeachers(アイティーチャーズ)と呼ばれる先生たちのグループがあります。ICTとは、Information and Communications Technology=情報通信技術)の略。
iTeachersは、教育現場でタブレットのアプリやインターネットなどを活用して、子どもたちがこれからの世界を生き抜くための力をつけるためにどうしたらいいかを、日々考えている小中高等学校、大学などの先生たちです。
■教育ICTを導入するのは、「子どもの学びを豊かにする」ため
今回ご紹介したいのは、その中の1人、新潟市立新潟小学校の片山敏郎先生。iTeachersの結成当初からのメンバーです。実は片山先生、2016年度まで在籍した前任校の新潟大学教育学部附属新潟小学校で、iPad1人1台をすでに実現してしまった、教育ICT活用の先駆け的存在でもあります。
そう聞くと、情報機器が大好きな少しオタクな先生を想像しますか? でも、片山先生にとって、教育ICTを導入する目的は「子どもの学びを豊かにする」こと。タブレット端末は、そのためのツールにすぎません。
片山先生の「総合的な学習の時間」でどんなことが行われているか、ちょっとのぞいてみたいと思います。例えば、3年生の「自然とのよりよい関わり方」がテーマの授業では、子どもたちによって「新潟の『潟』調査隊」が結成され、実際に新潟の3つの潟に行くことから授業が始まります。
■「マインドマップ」で、考える力をきたえる
現地では、iPadを使いながら画像や映像を撮ったり、わからないことを調べたり。学校に戻ったら、その内容について、思考ツール「マインドマップ」を使って考えます。
マインドマップとは、考えを図で整理する方法。キーワードを真ん中に書いて、関連情報を放射状に書き足していくあのやり方、見たことがある方もいるかもしれません。
マインドマップは、付箋などを使ってアナログで作る方法もありますが、片山先生はデータを変更、追加、保存したりできて便利な、iPad上のデジタル思考ツールも活用します。
この過程で、子どもたちは、新潟の潟が直面する様々な問題に自分で気づき、解決方法を調べたり考えたりします。その上で、今度は実際に専門家に会って話を聞き、最終的に、自分が潟という地元の重要な自然とどうつきあっていくかについて、考えをまとめて発表するのです。
■アナログとデジタルを組み合わせると、学びが深くなる
つまり、デジタルとアナログの手法をうまく組み合わせながら、子どもたちは深く学び、まさに「言語能力や情報活用能力、問題発見・解決能力」をみがいていくわけです。
調査の過程で、子どもたちは、学内外のいろんな人と出会い、リアルな、あるいはオンラインのコミュニケーションスキルを身につけます。そして、いろいろトライしながら、デジタルツールの使い方も覚えます。
やりたいことがはっきりしているので、子どもたちはすぐに使いこなせるようになります。「教育の情報化」は、はじめにツールありき、ではないのです。
片山先生は、「豊かな学び」のために、さらにいろいろな試みを続けています。たとえば、「介護」の問題をテーマに、AIロボットと交流してその可能性を考えたり、開発アプリのプログラミングに挑戦したり。また、iTeachers仲間の大学の先生を招いて、「ドローン」を使った“小大連携”の授業を展開するなど。
未来の学びのかたちは、子どもたちの将来にも密接に関わってきます。親としても注目していきたいですね。
(ライター/いしださなえ)
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