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「世界点字デー」ってどんな日?
みなさんは「世界点字デー」をご存じでしょうか? 点字の重要性を世界中に広めるために国連が定めた国際的な記念日のひとつです。英語表記は「World Braille Day」。日本語では「世界点字の日」「国際点字デー」とも表記されます。
点字の役割について
そもそも点字とは、どのようなものなのでしょう? 点字は、視覚に障がいを持つ人が指先を使って読む触読文字のことです。縦3つ・横2つ、合計6つの凸点を組み合わせて、文字を表現しています。「6点式点字」と呼ばれます。
日本語の場合、私たちは、漢字・ひらがな・カタカナ・数字、さらにはアルファベットなどを使って、情報や知識を得ていますが、視覚障がい者は、点字に触れることで、情報や知識を得ています。
ただし、点字は、文字を縦3つ・横2つの点を使って表すため、表すことのできる文字は、6つの点のあり/なしの組み合わせで、最大64個(2の6乗)に限られます。つまり、日本語で使われる基本的な音である、かな、濁音、半濁音、さらには数字、アルファベットなどを64個の点字で表さなければなりません。
そのため、濁音や半濁音を表すときは、濁音符、半濁音符と呼ばれる、いわば印を置きます。アルファベットも同様です。
また、点字は漢字とひらがな、カタカナの区別がないので、文章を理解しやすいように言葉と言葉の間に空白を入れる「分かち書き」を行います。
2021年の「世界点字デー」はいつ?
「世界点字デー」は、国連が定める国際デーのひとつなのですが、その存在をご存知ない方もおられるでしょう。そもそも、世界点字デーはいつなのでしょうか? 日付を確認しましょう。
2022年の「世界点字デー」は1月4日火曜日
「世界点字デー」は毎年1月4日に定められています。2022年は火曜日にあたります。過去3年間、今後3年間の曜日は以下の通りです。
2019年1月4日金曜日
2020年1月4日土曜日
2021年1月4日月曜日
2023年1月4日水曜日
2024年1月4日木曜日
2025年1月4日土曜日
「世界点字デー」とは?
「世界点字デー」が制定された目的・歴史・由来を見ていきましょう。
目的
視覚障がい者にとって、きわめて重要な点字。その重要性を世界の人々に訴え、認識を高めることが「世界点字デー」が制定された目的です。
「世界点字デー」が1月4日に制定されたのは、現在の6つの点を使った点字を完成させたフランス人ルイ・ブライユ氏の誕生日にちなんでいます。点字は、英語やフランス語で「braille(ブライユ)」と呼びますが、これもブライユ氏の名前がもとになっています。
歴史
点字の起源は1670年、イタリアの発明家フランチェスコ・ラナ・デ・テルツィ氏が、点と線を組み合わせて、アルファベットを表記する方法を考えたことが始まりと言われています。
その後1819年には12個の点を使って、軍事に関する命令を伝えるための「夜間読字」をフランス軍の将校シャルル・バルビエ・ド・ラ・セール氏が考案。その後、パリ盲学校で採用されます。
1824年(1825年とする説もあり)、パリ盲学校の生徒だったルイ・ブライユ氏が、夜間読字を改良。6つの点でアルファベットなどを表記する現在の点字を完成させました。
1854年、ブライユ氏が改良した点字がパリ盲学校で正式に採用され、これ以降、ブライユ式点字として、世界中に広がっていきました。
それから130年後の1984年、視覚障がい者の権利を守ることを目的とした「世界盲人連合」が設立。2000年に開催された「世界盲人連合総会」で、「世界点字デー」の制定が採択されました。この流れを受け2018年、国連が「世界点字デー」を国際デーとして承認したのです。
由来
現在の点字表記を完成させたフランス人のルイ・ブライユ氏。1809年に生まれた彼は、視覚障がい者の世界を変えた人物といわれています。
5歳で両目の視力を失ったブライユ氏は、その才能を認められ、世界初の視覚障がい者学校であるパリ盲学校に10歳で入学。軍事用に開発された夜間読字を改良し、わずか15歳でブライユ式点字をつくりだしました。
卒業後は、同校の教官として教鞭をとりながら、点字の改良に努めましたが、肺結核を患い、43歳で世を去りました。ブライユ氏の功績を称えて、誕生日の1月4日が「世界点字デー」に定められたことは前述したとおりです。
「世界点字デー」の日本の取り組み
ここでは「世界点字デー」にまつわる日本の取り組みを見ていきましょう。盲人福祉の増進を図る「日本盲人福祉委員会」の活動をはじめとするイベントやキャンペーン、そして日本で制定されている「点字記念日」を紹介します。
「日本盲人福祉委員会」の活動
「日本盲人福祉委員会」は、盲人団体や盲人福祉施設、全国の盲学校などへの情報提供や連絡調整などをおこない、盲人福祉の増進を図る社会福祉法人で、昭和31年(1956年)に設立されました。
世界盲人連合の日本代表でもあり、福祉助成金や支援研修会、国際音楽交流など、視覚障がい者の支援活動をおこなっています。
週刊点字新聞の発刊
毎日新聞社は1922年から、視覚障がい者向けの週刊点字新聞「点字毎日」を発刊しています。創刊前には収益が見込めないため反対の声もありましたが、視覚障がい者と社会を結ぶことや点字普及を目的に創刊。その後、約1世紀の間、発行を続けている国内唯一の点字新聞であり、世界的にも例がありません。
日本にもある点字の日
日本では「世界点字デー」とは別に、11月1日が「日本点字制定記念日」に定められています。これは、石川倉次氏が考案した点字が「日本点字」として採用された日にちなんだものです。2013年に「日本点字普及協会」が日本記念日協会へ記念日の制定を申請、承認されました。
「世界点字デー」の海外の取り組み
海外の取り組みも見ていきましょう。2020年からの世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、国連や各国では、新型コロナウイルスに関する情報提供や注意喚起が積極的におこなわれています。
点字によるコロナウイルスの情報提供
国連は、点字で新型コロナウイルスに関する情報提供や注意喚起をおこなう活動を展開しています。「国際連合児童基金(ユニセフ)」は、点字を含めた複数の言語で利用できるガイダンスノートを作成。
マラウイでは「国連開発計画」が新型コロナウイルスの認識と予防に関する点字資料を作成しています。エチオピアでは「国連人権高等弁務官事務所」がさまざまな資料を専門家に配布し、新型コロナウイルスに関する啓蒙情報の点字バージョンを作成しました。
「盲人のための国際シンボルマーク」の制定
世界盲人連合は、世界共通の「盲人のための国際シンボルマーク」を制定しています。視覚障がい者の安全やバリアフリーを考慮した建物や設備、機器などにつけられているものです。青地に白で右手に白杖を持って歩く視覚障がい者の姿がデザインされています。
「世界点字デー」に、わたしたちができること
1月4日の世界点字デーを迎えるにあたり、わたしたちにもできることがあります。ここからは、ひとりでもできる「世界点字デー」の支援・協力活動を紹介します。
SNSで啓発・広報活動
ツイッターやインスタグラムといったSNSを活用して「世界点字デー」の啓発・広報活動に協力することができます。1月4日の「世界点字デー」にあわせて、自分なりのメッセージを発信し、点字に関する情報をシェアすることも、わたしたちにできることのひとつです。
「愛盲シール運動」に参加
「愛盲シール」とは、視覚障がい者や日本盲人福祉委員会の活動を支える募金活動のシンボルとして作られたものです。募金をおこなうことで「愛盲シール運動」に参加し、送られてきた愛盲シールを使えば、いろいろな人の目に留まる啓発・広報活動にもなります。
点字は視覚障がい者と社会の架け橋
毎年1月4日は「世界点字デー」です。日本ではお正月の三が日の次の日にあたるので、覚えやすい日と言えます。点字の存在は、身近なものとは言えませんが、視覚に障がいを持つ人にとっては、とても重要なもの。さまざまな情報を得ることができる、社会との架け橋と言えます。
「世界点字デー」を機会に、点字の歴史や重要性を知ることも、視覚障がい者に対する理解を深める第一歩となるはずです。
文・構成/HugKum編集部