※この記事は『「どうせ自分なんて」と思う君に、知っておいてほしいこと』(小学館クリエイティブ )の一部を引用・再構成しています。
自分で自分にひどい言葉をかけてない?
ぼくは心理カウンセラーという、人の心の悩みをきいていっしょに考える仕事をしています。だから「自信がない」「自分のことが好きになれない」と悩んでいる人と話す機会がたくさんあります。そんな人たちに共通するのが、「自分で自分にひどい言葉をかけている」ということです。
誰かと比べたり、何か失敗したりしたときに、「自分ってダメだな」「なんで自分はできないんだろう」と思ってしまうことは、誰にだってあります。でも、いつもそう思っているとしたら、それは少しやりすぎです。
自分の心の中に、こわい顔や暗い顔をしたもうひとりの自分がいると思ってみてください。その自分に「おまえはやっぱりダメだな!」と責められ続けたり、「ハァ~」と深いため息をつかれたりするところを想像してみたら、とてもつらい気持ちになると思います。
自分で自分にひどい言葉をかけながら、自分のことを好きになるなんて、とても難しいですよね。
以前はぼくの中にも、ひどい言葉をかけてくる自分がいました。もし、あなたの中にもそんな自分がいることに気がついたら、まずは「自分にひどいことを言うのはやめよう」と決めてみてほしいのです。
自分もまわりの人もどっちも大切にしたい
大学生のころ、成績がイマイチで、あがり症でもあったぼくは、「ぼくってダメなんだよね」という言葉が口ぐせでした。そんなぼくが、あるとき、学生1500 人くらいの前でスピーチをする役に、たまたま選ばれてしまいました。
友だちは「がんばってね!」「できるよ!」と声をかけてきます。でもぼくは、「えー、無理だよ」「ぼくの話はなしなんて、だれもききたくないよ」「どうせぼくは話すのが下手で、ダメだから」といったことを、グチグチと言い続けました。
すると、仲の良かった女の子の友だちが、とつぜん泣き出したのです。
「なんでそんなことばかり言うの⁉ あなたはダメなんかじゃないよ!」
と、なみだを流しながらうったえてきます。これには、ぼくもビックリしてしまい、オロオロするばかりでした。
その友だちは落ち着いてから、どうして泣いたのかを教えてくれました。
「あなたはわたしの大切な友だちなのに、自分のことを大切にしていない姿を見ていたら、なんだか悲しくなっちゃったんだ」
自分のことを「ダメだ、ダメだ」と攻撃して大切にしていないと、自分の大切な人のことまできずつけてしまうんだ。そんなことを初めて知った出来事です。
「自分の味方になる」ってどういうこと?
もし、あなたの大切な友だちや大好きな人が落ちこんで、「自分ってダメだな」と自信をなくしていたとしたら、どう接するといいと思いますか? はげましたり、笑わせようとしたりするのもいいと思いますが、まずはそばにいて、ゆっくりと話をきいてあげるのはどうでしょう。話をきいてもらえると、友だちも安心して少しずつ落ち着いていくと思います。
さて、どうしてこんな話をしたかというと、もし自分が「自分ってダメだな」と自信をなくすことがあったら、自分に対しても同じように接してあげてほしいからです。
「自分の心の中に大切な友だちがいる」とイメージしてみてください。もし、自分が失敗し落ちこんだりしても、そんな自分を攻撃しないで、寄りそってあげてほしいのです。
自分と一生いっしょにいるのは、自分だけです。だから、あなたが、あなたのいちばんの味方になってあげてください。
※ここまでは『「どうせ自分なんて」と思う君に、知っておいてほしいこと』(小学館クリエイティブ )の一部を引用・再構成しました。
そっと渡してあげたい1冊
ここまでの語りかけは、心理カウンセラーで自己肯定感を育てるプロフェッショナルでもある加藤隆行さんの著書から。
同書の監修者である精神科医の名越康文さんは、「自分を好きになれない」子どもたちに、以下のようなコメントで同書を推薦しています。
「お母さんは私のこときらいなのかも」
「生まれてこなければよかったのかな」
「どうせ自分なんて……」
もしかしたらあなたにも、これに似たようなモヤモヤとした思いがあるのかもしれませんね。
この本を書いた加藤隆行さんも、子どものころからずっと同じような思いをかかえていました。大人になってからもずっとです。
そんな彼が、周りの人にどう思われているのかが気になったり、「自分ってダメだな」と思ったりと、モヤモヤしながら生きてきた今までのことをふり返りながら書いたのがこの本です。どうしてそう思ってしまうのかを知るために学んで気がついたことや、やってみてよかったことなどもまとめています。
何か、あなたにとっての気づきになる言葉やヒントに出会えると思います。
ありのままの自分を受け入れ、その受容性が他人に対しても発揮され、物事や関係性を肯定的に捉えるようになる――。それが人として成長するうえでの理想かもしれません。そうは言っても、私たち大人でさえもなかなかクリアできない「自己肯定」というハードル。
子育てをするうえで、避けて通れないこの問題を自分自身のことと捉え直して、いま一度子どもと一緒に「自分を受け入れること」について考え直してみませんか。平易な言葉で書かれた子どもたちへの語りかけのなかに、すべての年齢の人に響く言葉がたくさん詰まっています。
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◆著者紹介
加藤隆行(かとう たかゆき)
1971年愛知県生まれ。心理カウンセラー。幼少より病弱だったこともあり、劣等感が強くコミュニケーションが苦手な子に育つ。大学院修了後、SEとしてNTTに入社。激務のなか、3度の休職と入退院をくり返し、しだいに自身のココロと向き合うようになる。2015年に退職し、心理カウンセラーとして独立。「自己肯定感を育てるプロフェッショナル」として活躍する。
●“ダメなところ”は“いいところ”でもある!?
●ガマンするより「助けて」と言えるほうが大事
●嫌いな友だちは嫌いなままでいい!?
自己肯定感の下がりやすい小学校4~6年生に。子どもが自分自身で自己肯定感を育んでいくためのヒントが詰まっています。自信をなくしている子どもに寄り添う1冊としておすすめです。
構成/HugKum編集部