火焚祭とは何?
火焚祭(ひたきさい)は、収穫への感謝を示すため冬に行われる祭りです。長い歴史を持つ火焚祭の由来や、どのような祭りなのかを解説します。
冬に行われる火祭り
火焚祭とは神社の前でお焚き上げを行う火祭りのことで、「お火焚き」とも呼ばれています。秋の実りに感謝するだけでなく、厄除けや家内安全などさまざまな御利益があるのが特徴です。
元々は旧暦の11月に行われており、旧暦の日程に合わせて現在の暦で12月中旬に行う地域もあります。しかし、そのまま新暦の11月中旬に行うことも珍しくないため、見に行く計画を立てる際には注意しましょう。
江戸時代には、主に京都の神社で行われる祭りとして有名でしたが、現在では日本全国の神社で火焚祭が催されています。冬の空に上がる炎と煙を見ることで、清らかな気持ちになれるはずです。
由来は諸説あり
火焚祭の由来にはいくつかの説があり、宮中祭祀として行われていた新嘗祭(にいなめさい)が広まったともいわれています。新嘗祭はその年の収穫を祝い、天皇が新穀を口にするのが特徴です。
また、かまどなどの道具に感謝を捧げる行事が由来になったという説もあります。火を扱う職人たちが旧暦の11月8日に行う鞴(ふいご)祭りとは、お焚き上げで感謝を伝える点が共通しているのです。
火焚祭が行われる冬至の時期は、一年の中で最も日が短くなる時期でもあります。そのため、太陽の力が復活することを願って催される祭りとも考えられているようです。
火焚祭で行われることは?
火焚祭で行われる内容は、神社によって微妙に異なっています。基本的な内容やそれぞれの神社ならではの儀式をチェックしましょう。
神社によって異なる
行事としての火焚祭の内容は、それぞれの神社によって多岐にわたっています。参拝者の願いが書かれた護摩木を焚き上げたり、神楽舞を行ったりと見どころはさまざまです。
神社で行われる祭祀と同様、火焚祭でも祝詞の奏上や御祓いをするのが基本の内容です。熱湯を使って吉凶を占う、湯立神事(ゆだてしんじ)を見られる神社もあります。
京都では火焚祭の時期が近付くと、「お火焚き饅頭」という菓子を食べる習慣があります。各地の祭りを体験したいなら、神社を巡って内容を比べてみるのも楽しみ方の一つでしょう。
京都で火焚祭を行う神社は?
火焚祭は全国各地で催されていますが、京都には伝統的に祭りを行っている神社が数多く存在します。火焚祭で知られる代表的な神社を見ていきましょう。
伏見稲荷大社
京都市にある伏見稲荷神社は、日本各地で「お稲荷さん」と呼ばれる神社の総本山としても有名です。1年を通して行われる祭礼の一つとして、11月には火焚祭が催されています。
伏見稲荷神社の火焚祭は、全国から集められた数十万本もの火焚串を使ったスケールの大きさが魅力です。巨大な炎の前でのお焚き上げとともに、宮司も参拝者も大祓詞を奉唱し、祈りを捧げます。
夕方には本殿の前で御神楽(みかぐら)が行われるなど、日本の伝統を感じさせるイベントです。神社ならではの厳粛な雰囲気を味わってみたい人にも適しているでしょう。
車折神社
車折(くるまざき)神社は、儒学者として知られる清原頼業(きよはらのよりなり)公を祀っています。学業や試験に関する御利益はもちろん、「約束を違えない」御利益があることでも有名です。
車折神社では、火焚祭に使われる火焚串をかまどの形に組み上げてお焚き上げを行います。本殿前の受付所で申し込みを行うことで、願いごとを書いた火焚串を奉納することが可能です。
2024年は、11月23日(土)の開催が予定されています。奉納の申し込みは7月から祭りの開始直前まで受け付けているため、お焚き上げをして厄除けの体験をしてみましょう。
花山稲荷神社
花山稲荷神社は、名刀小狐丸を作った刀工・三條小鍛冶宗近(さんじょうこかじむねちか)ゆかりの神社です。一条天皇に命じられて刀を作ることになった宗近が、よく参詣していたお稲荷さんの助けを借りたというエピソードが残っています。
花山稲荷神社の火焚祭では、お焚き上げが終わった後にお供えとしてみかんを投げ込むのが特徴です。火に触れたみかんには御利益があるとされ、焼きみかんを食べるとその年は健康になるといわれています。
小狐丸を作ったエピソードにちなんで、火焚串は鍛冶屋で使われる鞴の形に組み上げられるのが特徴です。「ものづくりの心」を伝えることを目的にしているのも、花山稲荷ならではの魅力といえます。
京都ゑびす神社
京都ゑびす神社は「えべっさん」の愛称で親しまれ、日本三大えびすの一つに数えられています。商売繁盛の御利益があるとされており、禅の祖といわれる栄西が建立したことでも有名です。
京都ゑびす神社の火焚祭では、釜で沸かした熱湯を使う湯立神楽が行われます。湯をまくことで、人や場所の邪気を祓う効果があると考えられており、神聖な気分を味わえる儀式です。
片木という護摩木のお焚き上げは、ゑびす神の石像の前で行われます。家内安全や健康だけでなく、商売繁盛の御利益を求めている人にもぴったりです。
火焚祭で厄除け祈願を行ってみよう
火焚祭は五穀豊穣に感謝するための祭りで、お火焚きとも呼ばれています。厄除けや家内安全などの御利益があるとされており、神社によって祭りの内容はさまざまです。
火焚祭の由来ははっきりしておらず、宮中行事であった新嘗祭がもとになったという説があります。また、火にまつわる道具に感謝を捧げる鞴祭りも、火焚祭のもとになったといわれる行事の一つです。
火焚祭は11月中旬の行事ですが、旧暦の11月にあたる12月に開催する神社もあります。日程や祭りの内容をよく確認して、火焚祭に参加してみましょう。
こちらの記事もおすすめ
構成・文/HugKum編集部