「初天神」の意味や、落語との関係は? 新年に訪れたい天満宮も紹介

初天神は、天神様を祭る「天満宮」が、御利益を期待する人々で大いににぎわう1日です。落語の演目にもなっており、古くから親しまれています。初天神の意味と天神様の御利益の内容、新年に訪れたい有名な天満宮を紹介します。
<上画像:太宰府天満宮・楼門>

初天神とは何のこと?

「初天神」。何となく聞いた覚えはあるけれど、詳しい意味は分からないという人もいるでしょう。初天神とは、何のことを指すのでしょうか。

その年初めての天神様の縁日

初天神は、その年初めて迎える「天神様の縁日」を指します。天神様とは、平安時代に実在した「菅原道真(すがわらのみちざね)」のことです。全国にある、天神様を祭る神社を天満宮と呼びます。

縁日は、寺社で祭られている神仏に特有の、この世との縁がある日をいいます。神仏によって毎月決まっており、天神様の場合は25日です。道真の誕生日が6月25日であり、亡くなった日が2月25日なので、毎月25日が縁日になりました。

初天神はその年の最初の縁日ですので、1月25日と決まっています。毎月の縁日よりも御利益を得られる日として知られ、各地の天満宮には多くの人が訪れます。

合格祈願でも有名な「天神様」。画像は大宰府天満宮(福岡県)

古典落語の演目の1つ

「初天神」は、古典落語の演目の一つでもあります。初天神に出かけた父と子の姿を、面白おかしく描いた名作です。父親は「あれを買ってこれを買って」と言わないことを条件に、子どもを初天神に連れて行きますが、子どもはたくさんの露店を見てあれこれとねだります。

ついに根負けして凧を買い与えた父親でしたが、その後思わぬ展開が待っています。お互いに、どうにかして相手を説得しようとする掛け合いが楽しく、にぎやかな初天神の様子も見どころです。絵本にもなっているので、機会があれば子どもと一緒に読んでみてもよいでしょう。

天神様(菅原道真)はどのような人物?

実在する人物の菅原道真が、なぜ天神様として祭られるようになったのか、疑問に思う人もいるでしょう。道真の人物像や、神様になるまでの流れを紹介します。

学問の神様として知られている

菅原道真は、平安時代に活躍した学者・政治家です。学問だけでなく和歌も得意とし、多くの人の尊敬を集めました。幼少期から才能を発揮し、若くして要職に就いた経歴を持ちます。

しかし出世の早さが災いしたのか、貴族たちの反感を買って九州に左遷させられた後、都に戻ることなく亡くなりました。道真の遺言には、遺骸を「牛に運ばせ止まったところに墓場を建ててほしい」とあり、牛が動かなくなったところに埋葬されたといわれています。

大宰府天満宮の御神牛

また亡くなった後、天皇の住まいの「清涼殿」が落雷の被害にあうなどしたため、朝廷は道真の祟りだと恐れ、天満宮を建立して祭ったと伝えられています。江戸時代以降は、道真の才能や人柄が慕われ、学問の神様として広く崇められるようになりました。

天神様の御利益は多岐にわたる

菅原道真の御利益は、学問だけではありません。道真を信仰することを「天神信仰」と呼び、さまざまな御利益を得られるとされています。

清涼殿に雷を落としたとされる道真は、雷神として恐れられていました。しかし雷は稲の成長を促すとされていたことから、やがて農業の神としても知られるようになります。

江戸時代の寺子屋では書道の神として崇められたほか、無実の罪を着せられた人物が北野天満宮に籠って難を逃れた逸話から、冤罪を晴らし災難から身を守ってくれる神ともいわれています。

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初天神で訪れたい各地の天満宮

菅原道真を祭る天満宮は、日本各地にあります。全国に数多く存在する天満宮の中でも、特に有名な場所を見ていきましょう。

京都府「北野天満宮」

京都市上京区に建つ北野天満宮は、全国に約1万2,000社ある、天満宮や天神社の総本社です。菅原道真にまつわる、多くの祭事が行われていることでも有名で、年間を通して多くの参拝客が集まります。

北野天満宮(京都市上京区)

1月25日の初天神と12月25日の終い天神(しまいてんじん)は特に盛大に行われ、例月よりも多くの露店が、境内や参道を埋め尽くすように並びます。例年、約15万人の人出があり、入試を控えた受験生やその保護者などが参拝する姿が多いのも、初天神ならではの光景です。

北野天満宮

大阪府「大阪天満宮」

大阪市北区天神橋にある「大阪天満宮」では、例年1月24日~25日に、「初天神梅花祭」が行われています。菅原道真の霊魂を慰めるため、梅の小枝を供えたことから、この名前が付けられました。

大阪天満宮(大阪市北区天神橋)

初天神梅花祭では例年、1年間についた嘘を誠に変える「鷽(うそ)替え神事」や、阪神タイガースとオリックス・バファローズの選手による「福玉まき」などの行事も行われています。夏の天神祭や、冬のえびす祭りなども有名です。

大阪天満宮

福岡県「太宰府天満宮」

太宰府天満宮は、菅原道真が左遷された福岡県太宰府市にあります。道真と縁が深い25という数字にこだわり、25年ごとに祭礼を行っています。

太宰府天満宮(福岡県太宰府市)

また、御神木の「飛梅(とびうめ)」も有名です。道真が都にいるときに住んでいた自宅の梅の木が、彼を慕って太宰府まで飛んできたという言い伝えがあります。

毎月25日には「25日祭」と呼ばれる天神様の縁日を執り行っており、よもぎを使った限定の「梅ヶ枝餅(うめがえもち)」が販売されます。

梅ヶ枝餅は、道真の境遇を憐れんだ老婆が、梅の枝に餅を付けて差し入れたことに由来するお菓子です。参道には梅ヶ枝餅を売る店が多くあり、太宰府の名物となっています。

大宰府名物の梅ヶ枝餅

太宰府天満宮|全国天満宮総本宮

ありがたい御利益がある初天神を参拝しよう

その年で最初の天神様の縁日・初天神は、例月よりも多くの露店が出て、御利益を期待する参拝客でにぎわいます。天神様として祭られる菅原道真は、大変優秀な人物だったと伝わります。

学問の神様として信仰され、受験生にも人気です。子どもを持つ親にとっても、ありがたい神様といえるでしょう。初天神が、親子のユーモラスな姿を描いた、落語の演目になっているのもうなずけます。天神様を祭る天満宮は全国各地にあるので、機会があれば家族で参拝してみるとよいでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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