数ある絵本の中から、子どもが喜ぶ一冊を選ぶにはどうしたら良いのでしょうか?【前編】では、現役の保育士さんに、乳児さん幼児さんそれぞれがハマる絵本や読み聞かせのテクニックを教えてもらいました。
【後半】では、〝子どものやる気スイッチが入る絵本〟や、さすが保育士さん!とうなりたくなるような裏ワザで、寝る前に読んだら即寝落ちしてくれそうな〝寝かしつけ向き絵本〟まで伝授してくれました。こちらも、子育て中のみなさん必見の情報ばかりですので、ご紹介します。
【お話を伺った先生】
遊びにつながったり、子どものやる気スイッチが入る絵本は?
筆者の息子は、園で流行っているから!と急に「縄跳び」にハマり、上達したことがありました。聞けばブームの火付け役は絵本だったよう。こんな風に、子どものモチベーションを上げる絵本ってあるのでしょうか。
Q.遊びにつながったり、子どものやる気スイッチが入ったりする絵本はありますか?
梅沢先生:それでいうなら『パンダなりきりたいそう』はどうでしょう。タイトル通り、パンダになりきって一緒に体操でき盛り上がるんです! 0歳~5歳まで幅広く使えますよ。
筆者:かわいい絵本! 確かに、いきなり「体操するよ!」と先生に言われるより、読み聞かせ効果で自然と体操したくなりそうですね。
【1】『パンダなりきりたいそう』
【2】『へんしんトンネル』
大澤先生:言葉に興味津々の幼児さんには『へんしんトンネル』もいいですよ。
言葉がトンネルを通過すると、変身しちゃうお話。
例えば、「とけい」がトンネルを通ると「けいと」に変わったり、「りえちゃん」がトンネルを通ると「えりちゃん」に変わるという。
読んだ後は、身の回りの言葉をひっくり返して言葉遊びを楽しめます。変な言葉になっても、ゲラゲラ笑って大盛り上がりします。
筆者:この絵本を通して、言葉は一文字一文字でできていることに気が付いたり、一文字一文字を追っていくうちに、読書好きの第一歩に⁉
【3】『そらまめくんのはらっぱあそび-なつのいちにち-』
大澤先生:あと、草花の遊びがたくさん出てくる『そらまめくんのはらっぱあそび』。お散歩のときは、この絵本を持って行き「笹舟」を作るなどもしています。
筆者:自然の中で遊ぶ体験は、理科の世界への第一歩になりそうですね!
【4】『ほしじいたけ ほしばあたけ』
梅沢先生:『ほしじいたけ ほしばあけ』は、干しししいたけのおじいちゃんが水を含むことでみずみずしく若返るお話(笑)。これは、食育にもつながりますね。
筆者:今まで「干ししいたけ」を知らなかった子もこれなら惹きつけられるインパクトですね。
山根先生:あ、『やさいのおなか』って絵本は、乳児さんの食育にぴったりなんですよ!
野菜の断面が出てくるお話。七夕の時期にこの本を読んで、七夕飾りを園児たちと野菜スタンプを使って作りました。
筆者:子どもたちが野菜の断面をまじまじと見て、楽しく学べそうですね。
【5】『やさいのおなか』
裏ワザのような、寝かしつけ絵本は?
テンションが上がる絵本を聞いておきながら、こんな質問をするのも、なんですが……。正直、筆者は帰宅してから夕飯・お風呂とバタバタで、子どもに読み聞かせをする時間は寝る前しかない状況です。寝かしつけたいときは、どんな風に読み聞かせをしたら良いのか、裏ワザってあるのでしょうか。
Q.寝かしつけの時におすすめの本やテクニックを教えてください。
梅沢先生:私の園では、幼児さんの寝かしつけの際、絵を見せずに読み聞かせをしています。子どもたちは目を閉じ、思い思いに想像しながら聞いているうちに寝てしまうんですよ。
筆者:絵本なのに、絵を見せずに読み聞かせするアイデア! 思いつきませんでした。まさに、裏ワザのよう。
梅沢先生:私は、<365日の絵本シリーズ>から、毎日違うお話を読んでいます。
【1】『子どもが眠るまえに読んであげたい 365のみじかいお話』
山根先生:『おつきさまこんばんは』は、夜の情景と落ち着いたトーンで、寝かしつけに向いていますね。
【2】『おつきさまこんばんは』
増山先生:『おふとんかけたら』や『くらいくらい』も寝るシーンにぴったり。寝ることに関連するワードが出てきますので、「●●くんもおふとんかけようね」「電気を消そうね」と声かけができます。
【3】『おふとんかけたら』
【4】『くらいくらい』
筆者も号泣!子育て中のパパママに読んで欲しい本
最後に、どの質問にも属さなかったけれど、この絵本はぜひとも紹介したい!って持って来てくれた方はいらっしゃいますか。
Q.マイベスト絵本ってありますか?
大澤先生:はい! 私は自分で購入している絵本がたくさんあるのですが、中でも『しゅくだい』は別格。マイベスト絵本といっても過言ではないですね。
ストーリーは、もぐらのモグが学校で“だっこ”の宿題を出されるんですが、忙しそうなお母さんに言えないんです。
実は、この絵本、先日の4歳児クラスの保護者会で、保護者の方に(!)読み聞かせさせていただきました。
4歳児は、体が大きくなってきて抱っこの機会が減っていたり、下の子ができてちょっぴり我慢をしていたりする時期なので、子どもの気持ちを親御さんにこの絵本を通して伝えたくて。
読み聞かせ後、泣いてくださるお母さんもいました。
『しゅくだい』
大澤先生:そして、この絵本、別の日、子ども達にも読んであげました。すると、空気がぶわっと色めきたったんです。
盛り上がるともまた違う雰囲気で。そして、読んだ後に子ども達に〝だっこ〟の宿題を出しました。
そうしたら翌日、嬉しそうに宿題の報告を子どもたちがしてくれて。
筆者:(涙)いいお話ですね! 子ども達の嬉しそうな顔を想像するだけで泣けてくる……。今日はこの足で『しゅくだい』を買って帰り、我が子にも読み聞かせしたいと思います。
先生方、本日はありがとうございました!
筆者も「しゅくだい」を……
筆者は、絵本の読み聞かせとは、遊びや食育、子どもを大切に思う気持ちまで伝えられるコミュニケーションツールなんだ、と感じました。
そこで、「保育士座談会」の取材後、早速書店に立ち寄り『しゅくだい』を購入。寝かしつけの時に我が子に読み聞かせしてみました。
すると、4歳児はうれしそうに「もう1回読んで」と。6歳児は、「しゅくだいって嫌な言葉が出てくるな~」と照れながらも「今日は一緒に寝たい」と言って布団に入ってきました。(いつもは1人でベッドで寝ています)
子どもとの時間が満足に取れないお父さんやお母さんも、寝る前のほんのひととき、絵本を読むことで濃密なコミュニケーションを取ってみませんか。
文・構成/寒河江尚子 協力/小学館アカデミー保育園