『まんが親』の吉田戦車先生に聞いた!小4娘&漫画家の妻とのリアル日常とは!?

漫画家ってどんな生活をしているの?

普通のサラリーマンとは違う変わった職業のパパは、どのように育児参加をしているのでしょうか。勤務時間に縛られない職業の場合は、子どもと一緒にいられる時間が通常の会社員よりも長いかもしれません。第一回のプロレスラー編はこちら

今回は、『伝染るんです。』『ぷりぷり県』というような不条理まんがで世を席巻した漫画家吉田戦車先生に、育児にまつわる話をお聞きしました。吉田先生は、近年『まんが親』『出かけ親』というエッセイまんがで、ご自身の娘さん(現在小学4年生)との日々を綴られています。

著書の『まんが親』を前に。吉田戦車先生。

吉田先生が”ごはん係”を担当

私の妻も漫画家(伊藤理佐さん)なんですが、子どもが生まれてからは、子どもに合わせるようになってきて、今は5時半起きですね。

僕がごはん係を担当しているので、朝ご飯を作り子供に食べさせて、学校に送り出しています。それから、僕もかみさんも仕事に入るという形です。家の中が職場で、2階に妻の仕事場があって、1階に僕の仕事場があります。

うちは生まれてすぐは、僕がメインで家事をやっていました。妻も仕事に復帰して、二人だけでは無理だっていう話になって、ベビーシッターさん頼んで週5日くらい来てもらっていたので、日中も仕事ができました。

育児分担も、母乳だったのでほぼ妻任せでしたね。たまにおむつを取り替えたりはしていました。台所仕事は最初、妻73位の割合でした。3年くらい前に、「自分がやろうか」って言いだしたら、妻が反対するかと思ったら「やって」と乗ってきて。僕がやるようになったら、「止められた困る」って言われました(笑)

晩ご飯時にスケジュールのやり取りを

日中と朝晩ごはんが一緒なので、昼はとにかく別。僕は外で食べるようにしています。ごくたまに二人で飯もあるけど、日中は交渉しないようにする。できるだけお互いのテリトリーに近づかない。そういう距離の取り方をしつつ、晩御飯の時にスケジュールのやり取りを詰めてます。

逆に小学校になって忙しくなったけれど、子どもが幼稚園の頃よりも、口論とかはなくなりましたね。互いに対する「ここが嫌だ」っていうのが回避するすべを学んできたのか(笑)

妻はPTAの役員に関わるようになってしまって、そっちはやるからご飯つくってという流れですね。うちの学校はポイント制で、一人の子どもに関してポイントがあるので、3年生くらいから参加していますね。妻が、知り合いのお母さんがいるのもあって「よしやる」って報道係をやっています。小冊子の端っこにイラストを描いたり。学校では、僕らのことを知ってるご父兄があれば「あ~」みたいな(笑)

娘が漫画家になりたいと言ったら?

『まんが親』2巻より。娘とのユニークな日々が描かれている。©吉田戦車/小学館

娘は今小学校4年生ですが、まだ僕の作品は積極的には読ませていないです。でもさすがに(職業が漫画家であることを)知っていて、「なんで会社行かないの?」って言われたことはありますね(笑)。

自分の作品の中で、読ませていいような作品は娘に読ませたんです。すると、面白がって読んでいたんですが、プリキュアとは違うって気づいていますね(笑)あとお母さんの絵もプリキュアとは、なんか違うなって思っています。僕も奥さんも華やかな少女漫画ではないと、早々とわかったようです(笑)

漫画に描かれている記憶と自分の記憶を混同しないで欲しい

僕の実家とかに行くと、僕と伊藤の漫画が並んでいたりするんですよ。そうすると、知らないうちに引っ張り出して読んでいたりして、慌てて止めるんですけれど。『まんが親』を読みたがっているんですけど、僕と伊藤が止めているんです。

漫画に描かれている記憶と、自分の記憶と混同されては嫌だって思っています。自分の記憶はとっておいてほしい。漫画に描かれているのは、親が見た半ばフィクションが入った記憶だから。

両親は、僕がいきなり大学中退して漫画家になるって報告をしたので、とにかく大反対だったですね。

その場はなんとか収まって、様子見という事にしてくれて、それの3年後くらいにスピリッツで連載が始まって、「こんなメジャー雑誌でやるんだ」って、安心してくれたってところはありますね。

娘は漫画家に「なりたい」とは言ってないけど、隠しながらなにか描いていますね。キャラクターを作るのが好きで、女の子の顔を描いて名前を付けて「素敵でしょ」って妻に見せてくるんです。最近はそれが4コマみたいになってきています。

「漫画家になりたい」って、言い出すかもしれないし、一過性のものかもしれないし。でも、「なりたい」って言ってきたときの妻と僕の反応は決まっていて、「もう雑誌減ってるし、仕事も(描く)場所がないよ」っていう。身もふたもないことを聞かせて(笑)それでも描きたいって言ったら「コミケとかいろいろあるから」って言おうかな(笑)

派生して絵を描く方法があるから、いろんな道はあるよって言おうと思っています。

漫画家の両親が娘に読ませている漫画とは?

父親が朝晩ご飯を作る事で、コミュニケーションを取っているそう。

妻の方針「本には糸目をつけない」

娘には、「色鉛筆が欲しい」と言えば多色を買ってあげたり、お絵かきをして一瞬で消せるようなデジタルのものを与えたりはしています。また、本には糸目をつけないとう妻の方針があって、図鑑も揃えてあります。

ただ、僕らの蔵書から「これを読んでもいいよ」って貸しているものもあります。伊藤はね『キャンディキャンディ』。新刊がでていないので超ボロボロなんですが(笑)娘は、それを読んでいます

僕は、藤子・F・不二雄先生の漫画を、読ませています。あとは、僕が持っていた『エースをねらえ!』(山本鈴美香)と、『ストップ! ひばりくん』(江口寿史)。これは、男女の複雑さを学ぶのにいいんじゃないかな(笑)娘は、『ちはやふる』(末次由紀)に夢中ですかね。

昔からギャグ作家の漫画家は仲が良かったんです。僕は、『伝染るんです。』描いていた頃に、漫画家さんの知り合いも増えて良く集まったり飲んだりしていました。今も漫画家さん同士飲んだりしますね。

二ノ宮(二ノ宮 和子)や、安野(安野モヨコ)が妻の親友で、子どもが生まれた時に、監督(庵野 秀明)まで来ちゃったりして、楽しかったですよ。もっと中学高校になっても漫画が好きだったら、(自分の環境に)気づくんじゃないですか。凄い人に会っていたんだなって。萩尾望都先生に抱っこされたことがあるんだとか。後で思い知るがいいって(笑)

『まんが親』誕生の秘密

『出かけ親』1巻より。『まんが親』に登場していた娘の、成長した姿が見られる。©吉田戦車/小学館

育児漫画の「うまくいかなさ」は描かなきゃいけないと思った

作品作りで変わったことと言えば、エッセイ漫画を書くことに抵抗はなかったけれど、『まんが親』は決断がいりました。ちょうど『ビッグコミックオリジナル』の連載で、次は何をするって打ち合わせをしている時に、「奥さんが妊娠中で来年に出産するんです」っていう相談をするところから始まってます。子どもって、健康に育つという保証がないじゃないですか。それなのに、育児漫画の企画をスタートしてもいいのか不安だったんです。

エピソードはいっぱいあるし、描いてて楽しかった。その結果、今までとは違う読者層がついてきてくれました。サイン会に赤ちゃんを連れてきてくれたり。そういうのは嬉しかったです。

育児雑誌ではなく、『オリジナル』というお父さん向けの雑誌に描くわけですから、孫を見るような目でドタバタを見てもらえればというノリでした。育児に参加できて嬉しいというような漫画が多いので、育児の「うまくいかなさ」は描かなきゃいけないと思った。子育て漫画というよりは、子どもが生まれた家の漫画ですね。

漫画家同士の夫婦はいると思うんですけれど、両方が子育てエッセイまんがを描いているのはあまり聞いたことがないですね。お互いにネームを描いた段階で見せあって「ネタかぶっていない? 」とかチェックしていました。

対象が同じですから、かぶるときがあったり。「ここはちょっと違うんじゃない」とかやりとりはありました。「いいよ」ってなれば、お互い好きなように描いています。

娘を育児していて思うこと

「育児は大変だけれど、子どもは可愛い」とおっしゃる吉田先生。

「お前はお姫様ではない」一人っ子の娘を甘やかしすぎない

娘の習い事は、幼稚園の頃から水泳とピアノをやっています。あとは日本舞踊に、親子二人で行って習っています。妻が和服が好きでその延長。運動にもなるらしいです。習い事には、最近はもう子供一人で行けるようになってきた。でも、ハラハラしながら見守っています。

つねに妻と連動して、一人っ子だから甘えがちなので「お前はお姫様ではない」というような言い方はしています。対等とは言わないけどしっかりしなきゃダメだと意識するようにしています。

今後も、普通にその頃の年代の親子がすることやってきたいんです。休日遊びに行くにしても、「あと何回休日ってあるんだ?」「中学校になったらないかな」とか。出かけてはくれると思うけど、「どこまでプリキュア映画行けるかな」とか。

新生児育児で男性にできることは奥さんケア

世間でいう「イクメン」って言葉はいいんじゃないかな。本人から名乗るのはどうかって思うけど(笑)そういう存在を会社なりが認めて、休暇とかで便宜を図ってくれるのが当たり前になるのは、望ましいと思います。

新生児の頃に育児を手伝うのは、子供に対するメリットより奥さんケアですよね。いかに、旦那が育児を手伝わなくて、怒り狂ってる奥さんが多いかっていう(笑)

自分でご飯作ったり、おむつ取り替えるくらいのスキルは、男性には身に着けてほしいなって思う。子どもは面倒くさい部分もあるけれど、凄く可愛いですよ。

吉田戦車(よしだせんしゃ)

『ビッグコミックスピリッツ』『ビッグコミックオリジナル』などで活躍する漫画家。
第37回文藝春秋漫画賞受賞。『伝染るんです。』を始め、『忍風! 肉とめし』『出かけ親』など
著書多数。

 

 

吉田戦車小学館本体743円+税

実録!漫画家夫婦のリアル子育て奮闘漫画!
漫画家・吉田戦車&伊藤理佐、結婚して2年。待望の赤ちゃんが生まれた!出産に立ち会う、立ち会わない。妊娠中の妻の前で酒を飲む、飲まない。子育て論で大ゲンカ。子供の夜泣きに大苦戦……などを“イクメン”目線で描く子育て奮闘漫画!!読めば必ず育児が楽しくなるマストな1冊です!! 全5巻。

吉田戦車小学館本体780円+税

大ヒット育児漫画『まんが親』の次に吉田戦車が挑む、あらたなエッセイ漫画のテーマは…お出かけ!
昼呑みの誘惑に負け(つづけ)、一人で「のり弁」研究にいそしみ、駅弁大会に日参し、立ち食いうどんを愛でる――この出かけ、メシ・酒率やや高め!!
おもに一人で、たまに家族で。ご近所から異国まで食べ、呑み、あそび、大いにそぞろ歩く!
すこし成長した“ムスメ”、そして変わらず愉快すぎる大ボケを連発する“妻”伊藤理佐氏も、もちろん登場します!

 

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文・構成/池守りぜね

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