障がいがある子も一緒に!多様性が尊重される環境 ながかみ保育園【子供の未来を支える場所2】

日本の保育実践を研究する東洋大学ライフデザイン学部准教授の高山静子先生が案内する、豊かな保育環境の世界。

「乳幼児期の子どもは、環境に働きかけ、遊びという形で、何ども同じ行為を繰り返すことによって、環境の性質を理解し、環境に合わせて能力を獲得します。そのため、幼稚園・保育園・認定子ども園では、子どもたちが自発的に環境とかかわりをもち、豊かな学びを得ることができるように環境を構成します」(高山静子先生)

子供たちの学びを支える環境づくりに取り組む、先進的な保育園、幼稚園、こども園をご紹介します!

ながかみ保育園(静岡・浜松市)

多様性を尊重する保育園

幼稚園、保育園、認定こども園の教育は、人が尊重される社会、平和な社会の形成者となる人間の育成を目指して行う必要があります。
誰もが、幸せに生きることが出来る社会をつくりたいと願うのであれば、教育の場もそういった場になる必要があるのではないでしょうか。
「誰が一番早いかな〜」「〇〇ちゃん、間違い〜」などといわれた子供たちは、遅い子供や人と違うことを悪いことだと考えるようになるかもしれません。差別や排除の姿勢を身につけてしまう可能性もあります。

ながかみ保育園は、自発的な活動を中心にし、自律的に子供が行動できる環境をつくっています。そのため心身の障がいがあることや、個性の強さは問題になりません。
保育者は、それぞれが自分の強みを生かしてコーナーや生活を担当し、子供たちの多様な個性や能力を伸ばすことができる活動を準備します。保育者から子供に提供する文化も本物を選び、意図をもち、時期を見計らって提供されます。
ゆったりとした時間は、大人も子どももそれぞれの人格と個性を大切にするゆとりを与えています。
自発的な活動とともに、集団の活動も発達に合わせて取り入れ、個と集団の活動のバランスも考えられています。
ながかみ保育園では、このようなホリスティックなアプローチによって、誰もが大切にされる園を実現しています。

子どもと大人、それぞれの人格と個性が大切にされる

子育て支援の親子も園児と一緒に遊ぶ

1か月に約800人の親子が参加する子育て支援広場。在園児と分け隔てなく遊べる環境です。

保育者の特技を生かした遊びのコーナー

保育者は自分の得意分野のコーナーを担当。この日は、泥だんごコーナー、毛糸遊びコーナー、粘土造形コーナーなどが開かれてました。

園庭の一角に設けられたファンタジーのコーナー

絵本や物語の世界を具現化したファンタジーのコーナー。葉っぱを何かに見立てたり、劇をしたり、物語の世界で遊びます。

保育者も一緒に参加する縄跳び月間

縄跳びカードに自分で目標を立てて縄跳びに挑戦。
たっぷりと挑戦する時間があるので、1000回跳べる子供もいます。

造形コーナーでは毛糸遊びがスタート

冬の定番、毛糸遊びがスタート。やりたいと思った子供は、自分で毛糸を家から持参して参加します。

 

多様な大人のまなざしに守られる

子育て支援を利用するママやパパも保育者のよう

子育て支援を利用している保護者も、在園幼児たちと話をしたり遊んだりしています。分断されていない環境だからこそ、子供は多様な大人とかかわる経験が得られるのです。

キッチンスタッフと戯れる子どもたち

保育者だけでなく、キッチンスタッフや事務スタッフなど園で働く大人全員が子供たちを見守り、それぞれ手が空いたときはかかわりを持つようにしています。

用務のスタッフと一緒にランチ

子供たちは各自が好きなテーブルで昼食を食べています。職員も同じ時間に、子供たちと一緒にランチをいただきます。

事務職員の「けいこさん」は園に欠かせない存在

子供たちだけでなく、保育者や子育て支援の利用者にも心配り、目配りをしている事務職員の「けいこさん」。大人からも子供からも頼られている存在です。

 

子供を信じて待つ

誰もが大切にされるあたたかい食事風景

ランチルームでの食事は、準備のできた子供が自分の意思でやってきます。障がいがある子も自分のペースで行動しています。

当番も大人も一緒に小さい子供の食事をサポート

誰に指図されることなく、てきぱきと動く当番の子供(年長児)。1歳の子供を尊重して、丁寧にかかわっている姿が印象的です。

席が空くのを待つ子供に語りかける食事当番

当番は「セリフ」が決まっているわけではありません。状況に応じて自分で柔軟に判断し行動しています。

自分のペースで寄り道しながら食堂へ向かう

ランチルームへ向かう途中、玄関の掲示物に興味を持ってしばらく動かない子供たち。けれども、保育者はむやみに声をかけることなく待っています。

障がいがあっても、なくても年長になると当番を担当する

食事の準備と同時に2階のホールでは、当番が昼寝用の布団を敷き始めます。終了後は円陣を組んで、自主的な反省会が行われました。

0歳児クラスの部屋のドアはオープン

0歳児クラスも子育て広場も、ドアは常にオープン。乳児さんはハイハイしながら、自由に動くことができます。

 

より詳しい内容が知りたければ、こちらの書籍で!

『幼稚園・保育園・認定こども園の環境構成 学びを支える保育環境づくり』

高山静子(たかやましずこ)
東洋大学 ライフデザイン学部 准教授
保育と子育て支援の現場を経験し、平成20年より保育者の養成と研究に専念。平成25年4月より現職。九州大学大学院人間環境学府単位取得満期退学。教育学(博士)。研究テーマは、保育者の専門性とその獲得過程。著書に『環境構成の理論と実践』(エイデル研究所)『子育て支援ひだまり通信』(チャイルド社)他。

 

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撮影/藤田修平 構成/神崎典子

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