【千葉県・和光保育園】言われなくても自分から動く子どもに育つ環境とは?【子供の未来を支える場所4】

日本の保育実践を研究する東洋大学ライフデザイン学部准教授の高山静子先生が案内する、豊かな保育環境の世界。

「乳幼児期の子どもは、環境に働きかけ、遊びという形で、何ども同じ行為を繰り返すことによって、環境の性質を理解し、環境に合わせて能力を獲得します。そのため、幼稚園・保育園・認定子ども園では、子どもたちが自発的に環境とかかわりをもち、豊かな学びを得ることができるように環境を構成します」(高山静子先生)

子供たちの学びを支える環境づくりに取り組む、先進的な保育園、幼稚園、こども園をご紹介します!

和光保育園(千葉・富津市)

子供たちの「自律」する力を引き出す3つの環境

自分で考え、選択し、行動する。そんな子供たちの「自律」する力を引き出すためには、時間的環境、人的環境、物的環境の3つの要素が必要になります。

時間的環境

まず、時間的環境で大切なことは、ゆったりとした時間が流れているかどうか。余裕のないスケジュールを組んでいると、それをこなすことで頭がいっぱいになり、子供に指示ばかり出してしまう可能性があります。

人的環境

次に人的環境では、子供との信頼関係が重要です。保育者が子どもを信頼し、まずはまかせて様子を見るなどして、見守ることができれば、子どもは安心して自律的に動くことができます。

物的環境

そして物的環境は、子供が自発的に動きやすいように、ちょっとした仕掛けを保育者が準備しておきます。

和光保育園には、この3つの要素が揃っています。驚くのは、2歳児クラスに上がったばかりの⼦供が、毎日のくりかえしで積み上げてきた生活リズムの中に身をおいて、⾷事の準備に自ら参加をし始め、食事をとり、着替え、布団を敷き、午睡へと向いていく様子です。その間、保育者はめだつ声かけもなく、⽣活が進んでいきます。

幼児期に育むべき能力が育てば、小学校以降も役立つ

「こんなに自由にさせて小学校で大丈夫?」と心配する人がいるかもしれません。けれど、小学校以降で求められる能力は、課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力、主体的に行動する能力で、これらが学力として評価される時代になってきています。

つまり、幼児期に育むべき能力は、先生にいわれるとおりに行動する力ではなく、自分で状況をとらえ行動する能力なのです。

「保育者が子ども一人ひとりをよく見て、その子の力がわかっていれば、信頼してまかせることができます。お互いをわかり合いながら、生活の中で関係性を積み上げていくことが大切」(鈴木眞廣園長先生)

子どもが主役の生活を意識すれば、子どもの自律を促す環境の在り方が見えてきます。

子どもが主体的に動ける環境のちょっとした工夫とは

食事の準備も子供たちが担当

台所(調理室)の窓口は、子供とやりとりがしやすい高さになっています。ワゴンの高さも子供たちに合わせているので、子どもたちだけで昼食を運びます。

 

 

イスが収納されている引き出しを保育者が出しておくと、子供たちが自分でイスを取り出し、好きな場所にセットします。

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そうじの時間も楽しそう!

時間がくると誰からともなく、廊下の雑巾がけを始めます。保育者の指示する声は聞こえません。

雑巾がけをする子供もいれば、テーブルセッティングをする子供もいます。

お昼寝など、日々の生活も自分たちで

午睡の布団は上の写真のように子供が扱いやすい場所に準備。こうしておけば、2歳児でも自分たちで布団を敷くことができます。

子供の手の届く高さに予備のトイレットペーパーを設置。個室のペーパーがきれたら、自分で補充します。

自分でできることを増やすには用品選びが大切。大きな引き出しなら1歳でも片づけやすいのでおすすめです。

 

お昼ご飯の配膳も子供たちが行う

年中クラスではエプロン当番(任意)が配膳を担当。分量を話し合いながらお皿に盛りつけていきます。

卒園間近の子供たちは、お弁当箱にご飯を詰めリュックに入れ、園内の好きな場所でスペシャルランチをとることができます。

年少クラスでは、自分で食べられる分を自分でよそいます。

 

準備のできた人から好きな場所で「いただきます」

お天気がいいので外のテラスで食事することに決定。机をみんなで運びます。

時間内であれば、自分の決めたタイミングで食事をとることができます。おなかがすいている子供はご飯を食べ、遊び足りない子供は遊びを続けています。

一番気持ちの良い所を自分たちで選んで、昼食を食べる

和光保育園では、その日の一番気持ちの良い所を自分たちで選んで、昼食を食べることができます。食べ始める時間も(決められた範囲内で)自分で決めます。

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『幼稚園・保育園・認定こども園の環境構成 学びを支える保育環境づくり』

高山静子(たかやましずこ)
東洋大学 ライフデザイン学部 准教授
保育と子育て支援の現場を経験し、平成20年より保育者の養成と研究に専念。平成25年4月より現職。九州大学大学院人間環境学府単位取得満期退学。教育学(博士)。研究テーマは、保育者の専門性とその獲得過程。著書に『環境構成の理論と実践』(エイデル研究所)『子育て支援ひだまり通信』(チャイルド社)他。

撮影/藤田修平 構成/神崎典子

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