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小学1~6年生の子どもをもつ12組にオンライン取材
新型コロナウイルス対策の休校措置がスタートして早2ヶ月、さらには5月末まで休校延長が決まった地域も…。子どもを学童保育に預けていた筆者も、4月に入ってほぼ在宅となり小6男子との巣ごもり生活が始まりました。しかし、初心者ゆえに試行錯誤中です。みんなはどんなふうに過ごしている? うまくいったこと、うまくいかなかったことは?
そこで、小学1〜6年生の子どもをもつ12人のママたちにオンラインで緊急取材を行いました。
スッキリした笑顔で1日を過ごすためにしていることって?
今回のお題は、子どもたちがいかに楽しい時間を過ごせるか。
緊急事態宣言の延長から、長引く休校のガス抜きは急務でしょうか。今日から真似できることもたくさん。気持ちのいい笑顔のためにしている各家庭の秘策、ご参考に!
登場する家族
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ユキコさん/小5の男の子。
ヨウコさん/小5の男の子。中学生の姉2人。
サトコさん/在宅ワーク。小5の男の子。
アキさん/在宅ワーク。小1と小3の姉妹。
トモコさん/在宅ワーク。小2と中学生の姉妹。
ユカさん/出勤する日もあり。小6の男の子。中学生の姉。
筆者/夫婦で在宅ワーク。小6の男の子。
小学生の憩いの時間の作り方は?/ストレス発散編
勉強はもちろん大切だけど、子どもたちにとって自由なあそびの時間はもっと大切。こんな非常事態だからこそ、ストレスがたまらないようにしたい。
工作大会! 散らかし三昧でもOK!
1回目で「学校に行っている時と変わらないような生活を心がけています」と言っていたユキコさん。5年生の息子くんは、大の工作好きだ。
「厚紙などで、ロボットやら飛行機やらを作っています。あとは、室内でラジコンを使って動画を撮ったりしていますね。子どもが好きに過ごせる時間は大切にしたいなと思って。好きなことをできるので、精神的にはいいようです。その際、部屋を散らかしても怒らないようにしています」
部屋を散らかしても怒らない。なかなかの難題だが、そこはガマンだ。
カメやカニ、野菜…育てる楽しみはいろいろ
2回目で「おうちカラオケ&ダンス」をおすすめしてくれたヨウコさん。3回目では、中1のお姉ちゃんが料理好きになった話を紹介した。
末っ子の5年生の男の子はというと、「魚が大好きなんですが、マニアックでして川魚専門です(笑)」。
コロナ禍前はお父さんと毎週末、川へ行っていた。家には8つの水槽があり、父子が釣ったライギョも泳いでいる。釣った時は小さかったライギョがどんどん大きくなり、餌を捕るという目的もあった。また、それまでは網捕りだったが、最近釣り竿を使うことをお父さんから許され、張り切っていたところだった。
ところが、川釣りも自粛せざるを得なくなった。今は、冬眠から目覚めたカメの世話をしたり、餌用に捕ったカニなどの飼育をしている。
「メダカもいるので、今日は『お母さん、お母さん、メダカが交尾してる〜』と大きな声で叫んでいました。近所に響き渡っていたかも知れません(苦笑)」と、ヨウコさん。
コロナ自粛前から、ヨウコさんは庭でイチゴや大葉などを育てていた。それもあってか、子どもたちも植物や野菜作りに関心があるようだ。生き物がすくすくと育っていく様子は心を晴れやかにしてくれる。
「末っ子は種を蒔くまでが好き。どこに鉢を置いたらいいだろうとか熱心に考えています。中1の娘は、今年の誕生日には野菜の苗も欲しいというので、きゅうりやとうもろこしなどをプレゼントしました。芽が出て育っていくのがとても楽しみのようで、毎日しっかり水やりをしています」
「父子で初チャレンジ」も余裕ある自粛の今だからこそ
釣りが好きだから魚をさばいてみる
末っ子くんにとってやっぱり必要なのは「魚」成分。数日前、一気に補給できるようなことがあった。
「魚をさばかせたんです。『魚が釣れるようになったら、自分でさばけたほうがいいな』と話していたところだったので、やりたくなったようです」
さばきたいと最初に言い出したのは、お料理に目覚めたお姉ちゃん。しかし、先にさばく権利を譲ってくれた。
ヨウコさんのお母さんが鯛を用意し、お父さんがさばき方教室の先生になった。
「さばかせてもらえることになって、末っ子はテンションがダダ上がりでした!実際にやってみると、まるで解体ショーのようで、『ここが横隔膜や』『あ、ほんまや』と父子で楽しそうにさばいていました」
その日の夕食は鯛づくし。刺し身、湯引き、カマの塩焼きができあがった。刺身は、「花びらみたいに盛り付けたい」とこだわっていたそう。
手作りマスクに挑戦
時間はたっぷりある。初めてのことにチャレンジするいい機会だ。お父さんが活躍するケースをもうひとつ。
サトコさんには、体を動かすのが好きな5年生の男の子がいる。2回目で、羽根打ちを毎日200回やっていると紹介したソフトボール少年だ。彼がチャレンジしたのは、ミシンでマスク作り。
「作り方を教えたのは私じゃありません。夫です」
サトコさんの夫は、キャンプなどが好きなアウトドア派でもあり、裁縫男子でもあるそう。
「トートバッグなどをさぁーっと作ってしまいます。『売ったらいいのに』と思うくらいの出来です。今までは、夫がミシンで何か作っていても横で見ているだけだったんですが、今回マスクを作っているのを見て、『僕も作ろう』って言い出しました」。
5年生になると家庭科も始まるし、ミシンも使う。楽しい時間が予習にもなっているとは、お見事。
子どもは興味に合うものが見つかれば、とことん楽しむ
「ipod購入企画書」に夢中?
お父さんお母さんの得意なことや趣味に、子どもたちの興味が向けば、チャレンジの幅は広がりそうだ。
特別得意でなくても、できることはいろいろある。例えば、PC操作もそのひとつ。
我が家の6年男子は巣ごもり前から、「ipodが欲しい」と何かにつけては口にしていた。何度も言うため、「親を説得できるような企画書を作ってみたら」と言ったところ、楽しそうに始めた。すぐに商品写真を探し、最安値も調べていた。メリットやデメリット、「仮に持てたときのルール」も書き込んでいた。これなら、パワポの基本的な使い方を教えれば、シンプルでそれなりに見栄えのよいものも作ってしまいそうだ。タイピングもやりたいと言い出したので、「寿司打ちゲーム」などに取り組み始めている。
「興味」のヒントを探せる情報サイトがある
子どもの好きなことや興味にあわせて何か勧めてみたい。
そうは思っても探す時間がなかったり、なかなかいいものが見つからない場合はどうするか。
情報誌『公募ガイド』のHPを勧めてくれたのは、アキさん。1回目で見事なスケジューリングを教えてくれた、1年生と3年生の姉妹のいるママだ。
「長期休暇になるとチェックするのが、『公募ガイド』です。私自身が幼い頃、しょっちゅう写生大会とか絵画コンクールに応募していました。母親が絵が好きだったんです。それで長期休暇=絵を描く、って刷り込まれているのかも知れません。朝日小学生新聞を購読していますが、こちらでもコンクールの募集をよく見かけますよ」
公募ガイドのHPをのぞいてみると、休校対策用に「親子で作ろう!書こう!」というコーナーがあった。絵画や作文のほか、写真や俳句もあるし、ユニークなところでは創作漢字、パラパラ漫画などもある。ジャンル別に分かれているので、興味が持てそうなものを子どもと一緒に探してはどうだろうか。
「やってみたいリスト」から決めてみる
あふれる情報のなかにいる私たちはつい「親が何か探してあげなければ」と思いがちだが、答えは子どものなかにあったりもする。子どもたちの「やってみたい」をどうやって実現できるかを考えればいい。
「上の娘は自分で勝手に何でもできますが、小2の娘には、長いお休みになった時に、『やりたいことを考えよう』と話しました。
リストアップして決まったのが、ファッションショー、枕投げ、玉入れ、パンを作る、の4つでした」と言うのは、2年生と中学生の姉妹がいるトモコさん。
衣装の断捨離兼ねたファッションショー
ファッションショーは、それぞれが「一番イケてる服」のコーディネートを考えて、着ることに。参加者は、姉妹とトモコさん。ちょっとお化粧やマニキュアもした。音楽も流して、箱から出てくる演出もした。3人は、コーディネートのポイントを審査員のお父さんに向けてアピール。お父さんはスマホでドラムロールを流し、結果を発表した。
「ちょうど洋服の整理をしたかったんですよね。コーディネートを考えながら、『この服、要る?要らない?』と仕分けもできました。」
部屋の片づけしたのちに枕投げ
「枕投げをする時には、『投げても危なくないようにしよう』と伝えて、4日くらいかけて部屋を片付けました。たんすの上にも登れるほど、整理できました。まさか枕投げとは思いもしなかったですが、終わった後に、娘は『本当にすごい戦いをしたと思う』と満足していました(笑)」
子どもは楽しいし、部屋は片付く。さすがトモコさん、一石二鳥だ。
そのほかにも、新聞で見つけたというスパイごっこや、ダンボール箱を使ったホームシアターも楽しんだそう。そんなトモコさんが「低学年家庭におすすめのサイト」と紹介してくれたのが、「Hoicle(ほいくる)」。あそびのアイデアを見つけられそうだ。
親もストレスをためずに。AIスピーカーも大活躍
子どものストレス軽減を気にするあまり、親がストレスをためては元も子もない。一緒に笑って楽しめれば、上出来。そのくらいゆるく構えたほうがいい。
親がすべてに関わらなくたっていい。
こんな家庭もある。3回目で、お昼ごはんは子どもたちが自分で用意していると言っていたユカさんは、「わが家は(AIアシスタント)のアレクサにお世話になっています。テレビもつけない、ゲームもない家ですが、アレクサが情報をくれたり、音楽をかけてくれたり、6年生の息子のいいお友達です」と話している。
小学1〜6年の子どもを持つ12人のママたちに話を聞かせてもらった。失敗もあるし、悩みも尽きないが、家庭の数だけアイデアがあった。誰もが初めての経験をしているのだ。よその家庭のアイデアを少しずつ取り入れながら、トライアル&エラーも面白がって、1日1日を過ごしていけたらと思う。
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取材・文/須藤みか
ノンフィクションライター。長く暮らした中国上海から大阪に拠点を移し、ライターとして活動中。現在は、「子どもと本」「学童保育」など子どもの育みをテーマにしたものや、「大阪」「在日中国人」「がん患者の就労」について取材中。東洋経済オンラインなどに執筆している。著書に『上海ジャパニーズ』(講談社+α文庫)他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。地元の図書館や小学校で読み聞かせやブックトークも行っている。JPIC読書アドバイザー。小学生男子の母。