1~3歳ごろの子どもたちは、大人が思いもよらない行動をとることが多いため、「危ない!」とヒヤリとした経験がある人も多いのでは? 実際にどんな事故が起きているのか、事故防止のためにどんな対策をすればよいのかを、東京消防庁の方にうかがいました。
救急車を呼んだ事故の7割が家の中で発生
東京消防庁管内では、毎年9000人から1万人の0〜5歳の子どもたちが日常生活における事故により救急車で病院に運ばれています。年齢別にみると、1歳児が最も多く、次いで2歳児です(平成30年)。
事故の約7割は家の中で起きていて、夕食や入浴で慌ただしい17時から20 時ごろの事故が多い傾向に。やけどや転落などさまざまな事故がありますが、なかでもお風呂などでおぼれる事故は重症度が高く、入院が必要になるケースが多いため特に注意が必要です。
子どもの成長に応じた対策をすることが大切
事故のほとんどは、おうちの方の不注意によるものではなく、注意していたにもかかわらず一瞬のすきに起きています。
この年代の子どもは「できること」が次々と増えていくものです。歩き始めたばかりの1歳と、行動範囲が広がる3歳とでは、その年齢で起こりやすい事故を防ぐために注意すべきポイントも異なります。
一度、安全対策をしたからといって安心せずに、子どもの成長に合わせて、身近なところに危険がないかを見直していきましょう。
年齢別|多くみられる事故の特徴
0歳 寝返りやハイハイができるようになりなんでも口に入れてしまう
よくある搬送事例
■ベッドやソファなどから落ちる
■包みや袋、たばこ、おもちゃなどを誤って飲み込む
■ 授乳後にゲップをさせずに寝かせ、ミルクが気管に詰まって窒息する
1歳 手でいろいろなものをつかみ始め ひとり歩きをして転ぶことも多い
よくある搬送事例
■階段やイス、ベッドなどから落ちる
■家具につまずいて転ぶ、ぶつかる
■ドアに体(特に手足)をはさむ
■たばこや薬、おもちゃなどを誤って飲み込む
■熱い飲料をこぼしてやけどをする
2歳 運動機能が発達して自由に動き回れるようになる
よくある搬送事例
■家具につまずいて転ぶ、ぶつかる
■階段やイス、自転車の補助イスから落ちる
■ドアに体(特に手足)をはさむ
■歯ブラシが口の中に刺さる
■おもちゃや薬などを誤って飲み込む
3~5歳 高所に上る、ジャンプするなどさまざまな行動をとるようになる
よくある搬送事例
■階段で転ぶ、階段やすべり台などから落ちる
■家具につまずいて転ぶ、ぶつかる
■自転車の補助イスから落ちる
■アメ玉やおもちゃなどを誤って飲み込む
119番通報事故から学ぶ! 子どもを守るためのポイント
実際にどんな事故が起きているかを知り、同じような事故が起こらないように対策をすれば、子どもを危険から守ることができます。東京消防庁管内で起きた事故の実例をもとに、事故予防のポイントをみていきましょう。
やけど
食事中にみそ汁やスープをこぼす
熱いみそ汁やスープをこぼし、手などにかかってやけどをした。テーブルクロスをひっぱってお椀ごとひっくり返したケースも。
電気ポットのコードを子どもがひっぱり、お湯がかかる
机や棚に置いてある電気ポットのコードをひっぱって落とし、体に熱湯がかかってやけどを負った。
対処&予防策
やけどは1歳代までに特に多く見られます。熱いものは必ず冷ましてから与えましょう。電気ポットはチャイルドロックがついているものを選んでください。子どもは皮膚が薄くて重症化しやすいため、やけどをしたときはすぐに流水で冷やして、早めに病院へ。
手や足をはさむ
家のドアに指をはさむ
大人がドアを閉めたときに、ドアの蝶番(ドアと柱などをつなぐ金具の部分)側に子どもの手がはさまり、指を切断した。
電車の戸袋に手が引き込まれる
電車のドアが開くとき、ドアに触れていた手が戸袋に引き込まれた。大人が抱っこしていた子どもの手が引き込まれたことも。
対処&予防策
平成28〜30年の3年間で、東京消防庁管内では19人の子ども(5歳以下)がドアなどにはさまれて指を切断する事故にあっています。家のドアの蝶番側は、指はさみ防止グッズなどでカバーしましょう。子どもの手や足は、せまい隙間にも入ってしまうので、電車の戸袋、クローゼットや自動車のドア・窓などの開け閉めにも十分に注意を。
棒状のものが刺さる
歯ブラシをくわえたまま歩いて転ぶ
歯ブラシをくわえたまま歩いていて転び、口と鼻から出血した。
耳かきを奥に入れすぎる
自分で耳かきを奥まで入れすぎてケガをした。おうちの方に耳かきをしてもらっている間に、きょうだいやペットがぶつかってケガをしたケースも。
対処&予防策
歯ブラシが口の中に刺さると、入院が必要なケガをすることもあり危険です。歯みがき中には歩かせない・走らせないように、おうちの方がそばに付き添いましょう。歯みがきや耳かきをするときは、きょうだいなどから離れた安全な場所を選ぶことも大切です。
熱中症
車内に閉じ込められる
大人が車内に鍵を残して先に車を降りた際に、子どもが中からロックしてしまった。日差しが強い日は冷房なしでは室温が急上昇し、10分もしないうちに熱中症に。
炎天下で長時間ベビーカーに乗っている
炎天下では地面に近いほど、地面から伝わる熱の影響で高温に。おうちの方がベビーカーを止めて立ち話をしていたら、ベビーカーに乗っている子どもが暑さでぐったりしていた。
対処&予防策
近年は9月以降も気温が高い日が多く、熱中症で救急搬送されるケースが発生しています。子どもは体温調節機能が未熟なので大人よりも暑さに弱く、こまめな休憩や水分補給が必要です。熱中症が疑われる場合は経口補水液を飲ませ、首・わきの下・足の付け根を冷やしましょう。
落ちる
自転車の補助イスから落ちる
子どもを自転車の補助イスに座らせたまま、大人が家の鍵を開けようとして離れたすきに、子どもがバランスを崩して落ちた。
階段から落ちる
自宅の階段で、足をすべらせて転落した。
ベランダから身を乗り出して転落する
ベランダに置いてあるエアコンの室外機の上に乗って遊んでいた子どもが、誤って手すりを乗り越えて転落した。
対処&予防策
窓やベランダからの転落は命にかかわるため、窓際やベランダには踏み台になるものを置かないようにしましょう。階段用のベビーゲートは、階段の上側には設置できないものもあります。取扱説明書をよく読んで正しく設置しましょう。子どもを自転車に乗せる際は必ずシートベルトを着用し、自転車を離れるときはまず子どもを降ろしましょう。
おぼれる
湯船に落ちておぼれる
大人が子ども2人と入浴し、脱衣場で上の子に服を着せていたとき、浴室内にいた下の子が浴槽内に落ちておぼれていた。
大人が洗髪しているときに湯船でおぼれる
入浴中、大人が髪を洗うために1分間ほど目を離したすきに、1歳の子どもが浴槽内にうつ伏せで浮かんでいた。浴槽内で首かけ式の浮き輪を使い、おぼれたケースも。
家庭用ビニールプールでおぼれる
ビニールプールで遊んでいて、大人が目を離したすきに、水の中に沈んでおぼれてしまった。
対処&予防策
子どもは水深10㎝程度でもおぼれることがあり、命にかかわるケースも少なくありません。浴室には勝手に入らないようにドアに鍵をつけ、一緒に入浴する際は子どもから目を離さないようにしましょう。万が一、おぼれて意識がないときはすぐに119番通報をして救急車を呼び、電話の指示に従い心肺蘇生を。
窒息・誤飲
バナナをつまらせる
バナナを1本まるごと与えたところ、大きなかたまりのまま飲み込んで、のどにつまらせてしまった。
たばこを食べる
床やテーブルに置いてあったたばこを取り出して食べてしまった。少量の場合は無症状のことが多いものの、大量に食べると嘔吐・顔面蒼白・けいれんなどの中毒症状が出ることも。
ビー玉を飲み込む
ビー玉で遊んでいたとき、口に入れて飲みこんでしまった。
対処&予防策
トイレットペーパーの芯(直径39㎜)を通るものは誤飲の危険があります。
のどにつまった場合、意識があれば「背部叩打法(子どもの頭を下げて胸の下を手で支え、背中を手のひらで何度も強くたたく)」か、1歳以上なら「腹部突き上げ法(子どもの背後から両腕を回し、みぞおちの下を拳で斜め上に圧迫する)」で吐き出させ、意識がなければ119番通報をして心肺蘇生を。また、ボタン電池、灯油、キャンドルオイルの誤飲は重症化の危険性が高いので、子どもの手が届かないところに保管しましょう。
もしものときは
意識や呼吸がない場合
■119番通報をして、「火事ですか、救急ですか」と聞かれたら「救急です」と答える
■「 住所(屋外なら目印になる建物など)」と「子どもの症状・年齢」などを伝える
■ 応急処置が必要な場合は、電話で具体的な指示があるので落ち着いて対処する
救急車を呼ぶか判断に迷う場合
一部の自治体では「#7119」に電話をすると、医師や看護師などに相談が可能(いざというときに備え、自治体のウェブサイトなどで緊急時の相談窓口の確認を)
お話をうかがったのは
鈴木博敦さん
東京消防庁 防災部 防災安全課に勤務。
※ ここで紹介する事故の傾向や実例は、東京消防庁管内(東京都のうち、稲城市、島しょ地区を除く地域)で救急搬送されたケースに基づき、編集部がまとめたものです。
※今回の取材は、東京消防庁 企画調整部 広報課の平田哲也さん、防災部 防災安全課の金子剛久さんにもご協力いただきました。
2020年10月号『ベビーブック』 イラスト/サタケシュンスケ デザイン/平野 晶 文/安永 美穂 構成/童夢