頭の良さは遺伝?それとも環境? 地頭の良さを育てるための親の工夫と心掛けとは

「地頭」と漢字を見れば、ほとんどのパパ・ママが真っ先に「じあたま」と読むと思います。「じとう」と読む人は、かなりの日本史好き。やはり子どもを育て始めると、あるいは子育てスタートが見えてくると、わが子の地頭(じあたま)が気になりますよね。そこで今回はパパ・ママが気になる地頭について、基礎的な知識をまとめてみました。

地頭の良さは遺伝するのか?

そもそも地頭(じあたま)とは、何なのでしょうか? 辞書を調べると、

<大学などでの教育で与えられたのでない、その人本来の頭のよさ。一般に知識の多寡でなく、論理的思考力やコミュニケーション能力などをいう>(小学館『大辞泉』より引用)

とあります。要するに、知能、賢さ、頭の回転の速さなどを意味する言葉ですね。知能については、

<単に学習で覚えた知識や学力ではなく、様々な状況や環境に合理的に対処していくための土台となる能力を知能>(厚生労働省『e-ヘルスネット』より引用)

と定義がされています。地頭とは、知能とほぼ同じ意味と考えても良さそうです。

遺伝と頭の良さ(知能)の関係

この地頭の良さ、頭の良さ、知能の高さは、どこからやってくるのでしょうか?  先ほど引用した辞書の意味には、「その人本来の頭の良さ」と書かれています。そう考えると、生まれながらの頭の良さ=「遺伝がすべて」と考えてしまうかもしれません。

この点については、これまで世界でいろいろな研究が行われてきた様子。その歴史を振り返って、米国立衛生研究所は、公式ホームページで以下のように総括しています。

現状で具体的にどの遺伝子が頭の良さに大きな影響を与えるのか、特定が盛んに進んでいるものの、まだ確実には分かっていない。むしろ、かなり広範囲の遺伝子が関係している

つまり、何か特定の遺伝子が親子で受け継がれ、それが子どもの頭の良さを決定付けるわけではないのですね。

頭の良さは遺伝の影響が約5割と言われる

ただ、頭の良さに遺伝が関係している点については否定されていません。米国立衛生研究所によれば、頭の良さは、遺伝と環境がおよそ半々で影響すると言えそうです。

一族そろって名門大学を出ているだとか、一族そろって社会で素晴らしい偉業を残しているだとかの場合、遺伝した知能が影響するとともに、そのような成人に育つ生活環境が身近にあるため、とも考えられます。

頭の良さは父親と母親のどちらに似る?

頭の良さは、およそ50%が遺伝、およそ50%が環境で受け継がれると言いました。この点について、日本のテレビなどでは一部、「知能は母親から遺伝する」という説がまことしやかに語られています。この母親から遺伝するという話は、本当なのでしょうか?。

「知能は母親から遺伝する」は本当?

母親の知能が子どもに遺伝するという話は、国内のメディアのみならず、信ぴょう性の高そうな海外メディア(例えば英インデペンデント紙、英ザ・サン紙など)でも、報じられています。英インディペンデント紙の記事は2019年、英サン紙の記事は2018年に出ていますから、比較的最近の話です。

しかし、どちらの記事も情報の出所が、論文ではなく同じブログメディアになっています。

その出典元のブログメディアでは、母親の知能が子どもに遺伝するという話の根拠である「英グラスゴー大学に拠点を置く英国医学研究会議(MRC)のSocial and Public Health Sciences Unitが1994年までに毎年行った、被験者12,686人の若者に対する調査」の出典が示されていません。ブログメディアに書かれている文章の範囲内で、論文の内容を推察すると、同調査では、肌の色・教育・親の経済力などよりも、母親のIQが子どものIQに大きな影響を与えていると語られているそうです。

ただ、母親のIQの高さと子どものIQの高さに関係があると分かっただけで、その原因が遺伝のせいだとは書かれていません。Social and Public Health Sciences Unit調査の行われた1994年までは、まだ女性の社会進出が十分ではなく、母親が主に子どもを育てる時代だったとも予想されます。子どもが長く時間をすごす母親が賢い人であれば、自然と子どもが賢くなるような環境を与えていただけだとも考えられます。

また、英インデペンデント紙や英ザ・サン紙が参考にしたブログメディアには、X染色体の話も出ています。X染色体とは、

<Y染色体の役割は、主に男性を決定することにしかありませんが、X染色体には性に関係なく生存に重要な遺伝子が沢山あります>(北海道総合研究調査会『しゃりばり』より引用)

というように、知能の遺伝に大きく関係しています。

同ブログメディアには、男性とは異なり、女性にX染色体が2つあるため、女性は知能に関する特徴を子どもに2倍近く、遺伝情報で伝えられる可能性があるとも書かれています。このX染色体の話と、先ほどのSocial and Public Health Sciences Unitの調査結果を組み合わせ、「母親の知能の高さが子どもに遺伝する」という文章に仕立てているのですね。

しかし、「女性にX染色体が2つあるため、女性は知能に関する特徴を子どもに2倍近く、遺伝情報で伝えられる」という話の元となる論文は、1972年に書かれています。日進月歩で研究が進む世界において、50年近く前の話ですから、話題は古びています。

2015年に発表された医学新聞『Medical Tribune』のインタビューでも、東京大学大学院総合文化研究科の教授(分子生物学)によって、「母親の知能が息子に遺伝する」という都市伝説が、ばっさりと否定されています。

要するに、子どもの知能が母親から遺伝するというのは、はっきり証明されているとは言いがたい説なのですね。

子どもの知能は環境による影響が大きい

知的生活習慣が賢さの決め手

むしろ、同じ医学新聞『Medical Tribune』のインタビューでは、

<頭が良くなる遺伝子はなく、知能は遺伝子で決まるものではない>(医学新聞『Medical Tribune』より引用)

とまで言われています。

遺伝よりも生活習慣、つまり赤ちゃんから5~6歳までには栄養バランスのいい食事を与え、それ以降から10歳くらいまでは本の読み聞かせ、体をつかった外遊び、楽しい親子のコミュニケーションを楽しむといった、日常の環境づくりが極めて重要だとされています。

もちろん、医学新聞『Medical Tribune』のインタビューでも、遺伝の影響がゼロだとは言われていません。例えば虫取りを親子で一緒に好奇心をもって楽しむ、この気質の部分には、遺伝が大きくかかわっているとされています。

国立教育政策研究所の『親の所得・家庭環境と子どもの学力の関係:国際比較を考慮に入れて』では、社会的に地位が高く高収入の人ほど親自身が本を読むため、本を通じた子どもとのコミュニケーションが増える(環境の要因)とされています。いっぽう、親の知識欲や向学心は子どもにも受け継がれます(遺伝の要因)。その結果、子どもも自然と本を読むようになり、知能も高まるという関係が明らかにされています。

結局、遺伝と環境、どちらも大事という話です。親の好奇心を子どもが受け継ぐという遺伝の部分があり、手の届く場所に本があるという環境の部分がある、その両方が子どもの読書習慣を身に付けさせ、知能を深めさせているのですね。

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頭の良い子に育てるには

さまざまな日常体験を与え続ける

先ほど、東京大学大学院総合文化研究科の教授(分子生物学)の話として、5歳から10歳ぐらいまでは、さまざまな日常体験が大事になってくると紹介しました。

子どもの知能が育つ、地頭が良くなる知的な生活習慣としては、虫取りなどの外遊び、本を読む、星を見に出かけるなど、親子でいろいろな体験を積み重ねるという方法が見えてきます。

親子で楽しむ意識を持つ

さらにその体験を、親子で楽しくコミュニケーションをしながら続ける、親の気質も大事になってくると考えられます。

忙しい毎日、面倒に感じて子どもに「スマホ」を与えてしまう、テレビを長時間視聴させてしまうパパ・ママの場合は、この誘惑に負けない地道な踏ん張りが子どもの知能を育むカギとなりそうです。

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地頭の良さは親で決まる

以上、地頭の良さと遺伝の関係についてまとめました。頭の良さは半分が遺伝、半分が環境によって決まり、その場合の遺伝とは、向学心や好奇心など気質の部分を意味するとも分かりました。

<近年、ゲノムの解析技術が目覚ましく進歩し、ついに結論が出た。頭が良くなる遺伝子はなく、知能は遺伝子で決まるものではないことが分かったのだ>(医学新聞『Medical Tribune』より引用)

知能の高い親の持つ知的な好奇心が、親の過ごす環境を知的にする。その気質を受け継いだ子どもが、知的な環境で育つ。その結果として、子どもの知能が高くなり、地頭が良くなる。

遺伝と頭の良さの関係については、以上のような背景が考えられそうですね。

文・坂本正敬 写真・繁延あづさ

【参考】

Children inherit their intelligence from their mother not their father, say scientists – INDEPENDENT

GENE GENIUS Children inherit their intelligence from their mums, say scientists – but it’s not all down to genes – The Sun

A theory of X-linkage of major intellectual traits. – APA PsycNet

国立教育政策研究所『親の所得・家庭環境と子どもの学力の関係:国際比較を考慮に入れて』

母親の知能が息子に遺伝するってホント? 東大教授に聞く – Medical Tribune

Is intelligence determined by genetics? – MedlinePlus

知能指数 / IQ(ちのうしすう) – e-ヘルスネット

身体能力と遺伝(遺伝子多型) – e-ヘルスネット

Sorry dads, kids get intelligence from their mothers – The Queensland Times

眠る遺伝子 – しゃりばり

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