【助産師監修】後産とは? 胎盤が出ない場合や後陣痛の原因・和らげる方法

出産というと、赤ちゃんが産まれたら終わりと思われるかもしませんが、赤ちゃんを産んだ後に、胎盤が排出される「後産(あとざん)」が待っています。ここでは、後産とはどんなものか、後産期に起こること、胎盤が出ない場合についてチェック。さらに後陣痛はいつからいつまで続くのか、痛みはどのくらいなのか、痛みの原因と症状、後陣痛を和らげる方法などもあわせてご紹介します。

後産とは

後産
後産とは、一体どんなことを指すのでしょうか?

 

赤ちゃんを出産した時には、ママはホッとひと安心することでしょう。でも、その後にもうひとつのお産「後産」を体験し、驚く方も少なくありません。

読み方

「後産」は「あとざん」と読み、「のちざん」「こうざん」と呼ぶこともあります。

意味

「後産」は、赤ちゃんが産まれた後に、子宮の中にある胎盤、卵膜、臍帯(さいたい、へその緒のこと)などが排出されることを言います。

分娩は、第1期(開口期)、第2期(娩出期)、第3期(後産期)の3つの段階に分けることができます。第1期は、規則的な陣痛が始まり子宮口が大きく開いていく段階で、個人差はありますが最終的には2~3分間隔で陣痛が来るようになります。

第2期は、子宮口が完全に開き赤ちゃんが産まれるまで。そして第3期は、赤ちゃんが産まれた後、胎盤が娩出されるまでの段階を指します。つまり、後産まで終わって分娩がすべて完了することになります。

では、後産について詳しく見ていきましょう。

後産期に起こること

赤ちゃんを産んだ後に続くのが「後産期」。では、後産期にはママの体にどんなことが起こるのでしょうか?

胎盤の排出

胎盤とは、妊娠によって子宮の内壁にできる器官で、母体と赤ちゃんをへその緒でつないでいます。胎盤は、へその緒の中の3本の血管を通して赤ちゃんに栄養や酸素を供給したり、老廃物を排出する役割があり、赤ちゃんの生命維持に非常に重要な役割を担います。そして赤ちゃんが産まれると、胎盤は自然と剥がれて、子宮口から膣内に下りてきます。この胎盤が、臍帯、卵膜と一緒に排出されます。

個人差はありますが、胎盤の大きさは直径20センチ、厚さ2センチ、重さは500g程度です。赤ちゃんを出産してから5~15分後くらいに排出されることが多く、初産婦さんでは30分程度の時間がかかることもあります。

後陣痛

妊娠すると、赤ちゃんの成長に伴って子宮は大きくなります。しかし分娩後、子宮は元の大きさに戻ろうとして収縮を始めます。このときに起こるのが「後陣痛(こうじんつう)」で、陣痛と似た痛みがあります。

出血

分娩を終えた後も、出血が起きます。後陣痛には、子宮からの出血を止める役割もあります。また出血は、分娩直後から6~8週間ほど続く「産褥期(さんじょくき)」にもあり、胎盤や卵膜が子宮から剥がれたときの血液や分泌物が主体で「悪露(おろ)」と呼びます。

後産期に胎盤が出ない場合は?

赤ちゃんを出産した後は、自然と胎盤などが排出されます。しかし胎盤の排出がうまくできないこともあります。その場合は、排出を促進するために子宮収縮剤を注射することもあります。

胎盤は食べることができるの?

哺乳類の動物は、出産後に胎盤を食べます。これは血などの匂いで他の動物から狙われることを防ぐほか、出産で使った体力を回復させる目的もあると考えられています。

それと同じように、出産後に排出された胎盤を食べる国や地域もあります。日本でも一部の助産院などでは、産後に胎盤を食べることができるところもあるようです。ただし感染症などにかかる衛生上のリスクが懸念事項として存在します。

後陣痛の原因と痛みの症状

後陣痛の原因と痛みの症状
後陣痛の原因と痛みの症状

 

妊婦さんにとって心配なのが、後陣痛でしょう。出産時の陣痛に耐えた後、さらに別の痛みがあることには驚かれるかもしれません。後陣痛の期間や痛みの程度などをお伝えします。

後陣痛はいつからいつまで続く?

後陣痛は、分娩後から痛みが始まり、3〜5日間ほど痛みを感じることが大半です。HugKumが出産経験のあるママに行ったアンケート結果では、後陣痛を感じた方の多くが、痛みが続いた期間は1~2週間程度だったと答えていました。また後陣痛がない方もいます。

原因

後陣痛が起こるのは、妊娠で大きくなった子宮が元の状態に戻ろうとするからです。これを「子宮復古」と言います。

後陣痛は、初産だった人に比べて、出産経験がある人の方が強くなる傾向があります。これは、出産経験がある経産婦は子宮の収縮スピードが早くなるためと言われています。

また、赤ちゃんに母乳をあげていると、子宮収縮を促すホルモンが分泌され、後陣痛が促進され痛みを感じやすくなります。帝王切開で出産した場合でも、子宮復古は起こるため、後陣痛は発生します。

痛みの症状

後陣痛は、生理痛に似た痛みを下腹部に感じます。痛みの度合は人により異なりますが、軽くチクチクする程度の人もいれば、陣痛のような激しい痛みを伴う人もいます。HugKumで行ったアンケートでは、「陣痛の初期段階みたいな感じ」「生理痛よりも嫌な感じの鈍痛」などの声がありました。

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後陣痛を和らげるには?

人によってひどい痛みを感じることもある後陣痛。産後の体をいたわるためにも、できるだけ痛みを和らげたいものです。痛みには個人差があるので、下記にあげた方法をいくつか試してみて、自分に合ったセルフケアを見つけてください。

後陣痛の看護ケア

後陣痛の痛みは、分娩後からその当日、そして数日の間に最も大きくなります。入院中であれば痛みがひどい場合は、痛み止めが処方されることもあります。

後陣痛のセルフケア1:楽な姿勢をとる

陣痛のときに、自分が楽に感じられる姿勢や体勢があったはずです。それと同じように、後陣痛を感じたら横向きや仰向け、膝を曲げたり伸ばしたり、さまざまな体勢をとってみて、痛みが緩和する姿勢を見つけてください。

後陣痛のセルフケア2:腰を温める

腰やお腹まわりを温めることも、後陣痛の痛みの軽減に役立つことがあります。腹巻きを巻いたり、カイロを腰に貼ったり、ひざ掛けを腰回りにかけたりして、子宮のまわりの血行が良くなるようにしてみてください。

後陣痛のセルフケア3:マッサージする

下腹部をやさしくマッサージすると、痛みが緩和することもあります。温かい手でやさしく撫でることで、血行がよくなります。家族にマッサージしてもらうと良いでしょう。

後陣痛のセルフケア4:アロマオイルを使う

リラックスして心が安らぐ香りを利用してみることもひとつの方法です。アロマオイルをお腹に塗ってみることも痛みの緩和につながります。好きな香りのアロマキャンドルやアロマをたくと、気持ちが落ち着くかもしれません。

受診の目安

以下の症状が見られる場合は、医師に相談しましょう。

・我慢できない下腹部痛
・血の塊がどんどん出る
・多量の出血が止まらない
・悪露から悪臭がする
・38℃以上の発熱がある

後産でお産が終わる

お産は赤ちゃんが産まれたら終わりではなく、胎盤の排出まで行って、ようやく完了します。このことを知らず、後産で驚かれる妊婦さんもおられます。事前に、お産はどんな流れて起こるのかを理解しておくと良いでしょう。後陣痛は、子宮が元の状態に戻る過程で起こる自然な痛みですが、出産に関して不安を感じたときは、自己判断せず医師や助産師に相談してください。

記事監修

Kawai
助産師・看護師・保育士
河井恵美

看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。様々な診療科を経験し、看護師教育や思春期教育にも関わる。青年海外協力隊として海外に赴任後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。現在はシンガポールの産婦人科に勤務、日本人の妊産婦をサポートをしている。また、助産師25年以上の経験を活かし、オンラインサービス「エミリオット助産院」を開設、様々な相談を受け付けている。

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文・構成/HugKum編集部

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