「寝る前に〇〇をするとよい」を徹底検証| 子どもの快眠を考える

大人にとってはもちろんですが、子どもにはなおさら、睡眠が大切です。にもかかわらず、子どもがなかなか眠らない、夜更かししているなど、パパ・ママとしては悩みが尽きないと思います。そこで今回は子どもの健やかな睡眠のポイントを紹介します。

良い眠りに就くための条件とは?

子どもが良く眠るためには、どのような条件が必要なのでしょうか。『キッズ・メディア安心百科 子ども医学館』(小学館)によると、子どもが夜に集中して本格的に眠るようになるためには、5~6歳まで成長を待たなければいけないと言いますが、小さいころから子どもに健やかな睡眠を与えるためには、どういった点に注意すればいいのでしょう?。

運動と睡眠の関係を知る

『キッズ・メディア安心百科 子ども医学館』(小学館)では、子どもが夜にぐっすりと眠るためにも、昼間にたっぷり遊ばせる、特に体を使って遊ばせる大切さが指摘されています。

過去に行われたHugKumの取材においても、同様の意見が専門家から出ています。助産師として活躍する小林いづみさんによれば、昼間にきっちりと体を動かして遊ぶ時間を与えると、子どもは自然に早く眠るとの話。

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厚生労働省の健康情報サイト『e-ヘルスネット』でも、習慣的な運動をする人には(あくまでも大人向けの情報ですが)不眠が少ないと書かれています。

同サイトによれば、夕方から夜、就寝の3時間くらい前の運動が睡眠には最も効果的だと言います。その意味で、サッカーや野球の習い事などの本格的な運動習慣でなくても、眠る前に親子で軽い運動を楽しめるといいのかもしれませんね。

食事と睡眠を規則正しく

同じく厚生労働省の健康情報サイト『e-ヘルスネット』によれば、食事も睡眠に大きな影響を与えると言います。

規則正しい食事習慣は一見すると、睡眠には関係ないようにも思えますよね。しかし、規則正しい食事は体内時計を調整する役割を果たしているといいます。マウスを使った研究では、不規則な食事スケジュールが、大脳や肝臓のサイクルを狂わせてしまうと明らかにされています。

また、就寝直前の食事は、体に消化活動を強います。その消化活動が、睡眠を妨げてしまうとも分かっています。子どもの健やかな育ちのためにも、規則正しい食事習慣を身に付けさせてあげたいですね。

子どもに最適な睡眠環境を用意する

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所によると、健やかな睡眠は、

・室内環境(部屋の温度と湿度、光と音の有無)
・寝床内環境(布団とマットレス、枕の硬さ・柔らかさ、重さ・軽さ、吸湿や透湿)

の2つで決まると言います。快適な室温と湿度を保ち、音、光をシャットアウトして、ベッドマットと敷布団を調整する。具体的には、腰と胸が沈みすぎない、かといって骨があたって痛くないアイテムを選びたいです。

先ほど紹介した助産師の小林いづみさんも、家電が待機状態を示すランプのような光源であっても、子どもの眠りには悪影響を及ぼすと指摘します。豆電球ももちろんNG。明るさ、音にはくれぐれも注意したいですね。

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入浴と睡眠の関係を知る

入浴と睡眠関係についても、独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所の見解が、厚生労働省の健康情報サイト『e-ヘルスネット』に書かれています。

深い睡眠のためには、就寝の2~3時間前にお風呂に入ると理想的だとされています。具体的な入浴の長さは、

<38度のぬるめのお湯で25-30分、42度の熱めのお湯なら5分程度>(厚生労働省のホームページより引用)

とされています。あくまでも大人に向けて書かれた情報ですが、小学生などある程度大きくなった子どもの子育てにも役立つはず。参考にしてみてくださいね。

寝る前にするといいこと

これまでに、さまざまな方面から子どもの快眠に取り入れたいポイントを整理してきました。食事と睡眠の関係では、体内時計という言葉も出てきましたね。この体内時計に注目すると、他にもすぐに始めたいノウハウが幾つもあります。

布団に入る時間を決める

布団に入る時刻が毎日ばらばらでは快眠が得られないと、厚生労働省の健康情報サイト『e-ヘルスネット』に、独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所の助言が掲載されています。

運動も、食事も、入浴も、理想的な時間をこれまでに示してきました。それらの時間から逆算して、現実的に続けられる範囲内で子どもを布団に入れる時間を設定したいです。

朝の太陽光が入る場所に子ども部屋を設ける

子どもの体内時計をリセットするためには、朝日を浴びるといいと言われています。子ども部屋に朝日が入らないようでは、起床直後の子どもに朝日を浴びさせる機会も減るはずです。放っておいても朝日が入り込むような位置に子ども部屋を設け、光の入り方をカーテンで調整したいですね。

屋外で遊ばせたり、屋外に散歩に出たりする

先ほどは、昼間の運動が夜の睡眠に役立つと紹介しました。体内時計の調整には、日光を浴びながらの昼の活動も、夜の睡眠には役立つと言われています。

子どもがサッカーなど屋外のスポーツの習い事をしたいと言えば、できる範囲でその願いをかなえてあげたいですし、普通に親子で遊ぶ場面でも、できれば外で太陽の光を浴びるような遊びを選びたいですね。

眠る前に過ごす部屋の照明を電球色にする

厚生労働省の健康情報サイト『e-ヘルスネット』に掲載された独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所の情報によれば、

<日本でよく用いられている白っぽい昼白色の蛍光灯は体内時計を遅らせる作用がある>(厚生労働省のホームページより引用)

との話。例えばリビングや寝室など、子どもが眠る前に過ごす部屋の照明は、赤っぽい暖色系の蛍光灯や、電球色の照明に切り替えたいです。プラスして明るさも落とし、自然に子どもが眠くなるような工夫をしたいですね。

寝る前にしてはいけないこと

逆に親の何気ない行動が、快眠を妨げる例もあります。以下のような行動は、思わずしてしまいがち。今日から早速控えたいですね。

寝室に「スマホ」を持ち込む

「スマホ」を手放せない時代になりました。だからといって、「スマホ」は子どもの寝る環境に持ち込むべきではないようです。

先ほどから何度か出てきた助産師・小林いづみさんも言っていたように、「スマホ」のブルーライトは子どもの眠りを邪魔します。その上、「スマホ」が近くにあれば、子どもも触りたがるかもしれません。

今は「スマホ」で絵本の読み聞かせできる時代になりましたが、少なくとも眠る前の読み聞かせでは紙の本を使いたいです。

就寝直前の運動

体を使った遊び、運動が子どもの睡眠にいいと紹介しました。しかし、子どもを疲れさせようと眠る直前に布団やベッドの上で、子どもと激しく遊んでしまうと、かえって逆効果だと独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所は指摘します。その理由は、体を興奮させてしまうからなのだとか。

寝る時の○○はいいの? 気になるうわさのあれこれ

世の中には、快眠のためのテクニックとして、信ぴょう性が定かではないものの、「なんとなく良さそう」と取り入れられている習慣が幾つかります。こうした習慣は本当に効果があるのか、検証してみます。

寒い日には靴下を履いて寝てもいい?

冬に子どもを寝かせる際、靴下をはかせる場合もあるはずです。靴下を履いたまま眠ると、本当に寝付きは良くなるのでしょうか。それとも悪くなるのでしょうか? 結論から言うと、この点については専門家からも、さまざまな意見が出ているようです。

オランダ脳研究所(NIN)の研究者の論文「Skin temperature and sleep-onset latency: changes with age and insomnia」によれば、ソックスを履いて眠ると、被験者(成人)の寝入りまでの時間が早くなったという実験もあるそう。

しかし一方で、靴下を履いたまま眠ると手足から熱が逃げず、体温の調整が上手く行われなくなって、かえって睡眠の質が下がると指摘する専門家も居ます。

バーゼル大学の神経科クリニックの研究者たちによれば、人は手足の皮膚の下にある血管の拡大によって手足の温度を上げ、体から熱を放出して、眠りに就くと言います。確かに寝落ちしそうな赤ちゃんの手足は、握ると温かいですよね。

足が冷たすぎて、血管が収縮している(手足の温度が上がり熱の放出まで時間がかかる)と思われる場面では、

<湯たんぽや電気毛布などで就寝前にあらかじめ寝床内を暖めておく>(厚生労働省のホームページより引用)

といった工夫でもいいのかもしれませんね。

音楽を聞きながら布団に入ると眠りに就きやすい?

音楽を聞きながら布団に入ると、眠りやすいと言われています。しかし現実には、無音の時よりも音楽を聞きながらの方が眠りやすいという事実は、ないようです。

例えば、埼玉福祉保健医療専門学校の調査があります。普段は音楽を流していない幼稚園と保育所の午睡時に、子守歌を流す実験を行ったところ、子どもたちの入眠時間に変化は見られなかったと言います。むしろ、室内の明るさ、温度などの環境づくりのほうが大事なようです。

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風水的に寝る際の体の方角は睡眠に影響する?

風水では、眠る際の体の方角が睡眠に影響すると言われています。しかし現実には、体の方角がどちらを向いているかというよりも、寝返りの回数に注目したほうがいいようです。

厚生労働省の健康情報サイト『e-ヘルスネット』に掲載された独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所の情報によると、人間の体に最も負担の少ない寝方はあおむけだと言います。

もちろん、同じ部位の圧迫を避ける、体温を調整する、布団の中の温度や湿度を調整するといった意図が寝返りにはあると言いますが、快適な環境で寝ている場合、あおむけ状態が維持され、寝返りの数は自然に少なくなっていくのだとか。

子どもは小さいうち、寝ている間にあちらこちらに動きます。風水を考えて、どちらの方角に頭を向けて寝させようと思っても、非現実的です。

ただ、あまりにも寝返りの回数が多いと感じる場合も要注意。子どもにとって寝床の環境が好ましくない可能性があります。ベッドが柔らかすぎないか、硬すぎないか、布団の吸湿や透湿はどうかなど、あらためてチェックしたいですね。

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子どもの快眠はトータルで考える

以上、子どもに十分な睡眠を与えるためのポイントをまとめました。何か1つのテクニックを使えば全てが解決するといった話ではないと分かります。

子どもの睡眠で悩んでいる場合は、部屋の環境、運動習慣、食事の時間、生活サイクル、子ども部屋の位置など、暮らしをトータルで改善して、子どもの眠りを上手に導いてあげたいですね。

文/坂本正敬 写真/繁延あづさ

 

【参考】

※ 『キッズ・メディカ安心百科 子ども医学館』(小学館)

※ 健やかな睡眠と休養 – e-ヘルスネット

※ 健康づくりのための睡眠指針 2014 – 厚生労働省

※ Skin temperature and sleep-onset latency: changes with age and insomnia – National Library of Medicine

※ Warm feet promote the rapid onset of sleep – ResearchGate

※ 入眠時における子守唄の効果 -埼玉福祉保健医療専門学校

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