【親子で学ぶSDGs】肥料・農薬・耕す必要ナシの「協生農法」。生態系を仕組みを生かすことで命を学ぶ

SDGsとは、Sustainable(サスティナブル)・Development(デベロップメント)・Goals(ゴールズ)の略で、「持続可能な開発目標」という意味。地球の暮らしを守るため、2030年までに解決したい17の課題目標が2015年に定められました。「親子で学ぶSDGs」では、今、全世界が取り組んでいる持続可能な循環型社会のための「新しい社会と暮らし」の実践例を紹介していきます。ナビゲーターは、武蔵野大学環境システム学科のオサム先生こと明石修准教授です。

農薬も肥料も使わず、土を耕すこともなく、循環する生態系の仕組みをじょうずに活用しながら植物を育てる「協生農法」。気候変動などによる食糧危機に対する問題解決策としてだけでなく、その実践には次世代を担う子どもたちに引き継ぎたい大切なエッセンスが詰まっています。武蔵野大学環境システム学科のオサム先生(明石修准教授)と明石ラボの学生が、ソニーコンピュータサイエンス研究所の舩橋真俊さんを訪ねました。

東京・六本木のビルの屋上にある「協生農園」。虫や鳥が集まる小さな生態系が生まれました

大都会、東京・六本木のビルの屋上に小さな畑があります。一見すると、いろいろな草が生えている自然の野原のように見えますが、これが「協生農園」。ソニーコンピュータサイエンス研究所のリサーチャーである舩橋真俊さんが、10年以上にわたり研究を続けている「協生農法」の実証実験の場です。

―――「協生農法」とは、どのような農法なのか簡単に教えてください。

舩橋さん 循環する生態系の仕組みをうまく活用し、肥料も農薬も耕すことも必要としない農法です。この六本木の畑は2019年から始めたのですが、当初は数種類しか作物が生えていない場所でした。樹木と苗を植えて数十種類のタネをまき、その後、多様な作物がひしめくように成長して、枯れ草が重なり菌類が増殖し、虫や鳥が集まり、小さな生態系が誕生し、土壌が育ち、様々な収穫がありました。

東京・六本木の屋上庭園で実践されている、「協生農法」のコンテナと畑。中心に1本の果樹を植樹し、周りに野菜や花の苗を植え、タネをまく。生態系が生まれ、循環が始まる。

生態系の仕組みを知って活用することで命を思いやることを学ぶ

―――六本木のビルの屋上が発祥の地になるのですか?

舩橋さん いえ、もとは三重県の桜自然塾で大塚隆さんが行っていた農法です。それを学術的に研究して協生農法として構築しました。現在は、日本各地だけでなく、アフリカやヨーロッパでプロジェクトが進められています。

――― どうして、この研究を始めたのですか?

舩橋さん 私は、日本とヨーロッパでさまざまな分野の学問や研究を見てきましたが、次世代の子どもたちに渡せる持続可能な社会を支える方法論が構築できていないことに危機感を抱き、試行錯誤の末にたどり着いたのが、協生農法でした。環境、食糧危機、健康、教育など、現代の我々が直面している問題解決には、生態系をベースとしたアプローチが必要で、地球で暮らす上でのリテラシーを培うことが重要だと考えています。ここでいうリテラシーとは、生態系の仕組みを知って活用しながら多くの命を思いやることで、ひいては他者を思いやることにつながります。

100種類以上のタネをまき、そこから環境に適した植物が協生しながら育っていく。舩橋さんの研究の実践班を担当する一般社団法人シネコカルチャーの福田桂さん(写真右)とオサム先生。

生物多様性を損なわないフードシステムへの転換を見据えて

―――単純に生産性を上げることを目的とした農法ではないのですか?

舩橋さん はい。短期的な生産性を上げるための肥料や農薬、単一作物の農場は、生態系破壊の要因であり、食の安全と健康に大きなリスクをはらんでいます。社会の持続可能性という課題を突き詰めると、生物多様性を損なわないフードシステムへの転換が必要であることに行き着きます。

――― 今回、教えていただいた「協生理論学習キット」(下:「プランターでも大丈夫!協生理論を体験しよう!」参照)の目的はなんですか?

舩橋さん 1㎡ほどのプランターのような小さな面積でも、協生農法の理論を学び、生態系を観察することが可能です。先入観のない子ども時代の感性で、目の前の農園に息づく循環、生態系の仕組みを体験してもらい、生き生きとした生命観を養ってほしいという思いからスタートしました。

―――子どもたちには、その体験からどんなことを学んでほしいと思っていますか?

舩橋さん 個体はそれぞれが関わり合いながら、ひとつにまとまり、生態系としての命を営んでいます。その生態系の中で生きる命には、多様な価値があります。そんな命に関わる基本的なことを自分の内側から理解することができれば、あとはその子が好きなことを追求していくことが、素晴らしい社会の体現になると思います。そのためには、教育が果たす役割が大きく、この春からはアフリカのサブサハラ地域で、協生農法が教育カリキュラムに取り入れられる予定になっています。ぜひ、いろいろな種類の苗を植え、好きなタネをまいて、豊かな生態系にアクセスしてみてください。

植木鉢やプランターでも大丈夫!「協生理論」を体験しよう!

協生理論を実際に植木鉢やコンテナなどで確かめてみましょう。小さな面積でも観察は可能です。一日4時間の日照、水と空気、土と植物があれば、どこでも、いつでも、誰でも確かめられます。https://www.sonycsl.co.jp/tokyo/9337/ から詳しい手引きもダウンロードできます。

用意するもの
土、果樹、野菜や花の苗とタネ、球根、イモ類、シダ類、コケ類、腐葉土、刈り草など

1: 土を盛り上げ、中心に果樹を植える。プランターを使う場合はなるべく大きなものを使おう。

2: 果樹の周りに、野菜や花の苗を植え、球根やイモも埋める。

3: 苗の間にコケやシダなどを置く。

4: 最後にタネをまく。10種類くらいのタネを交ぜてみよう。土の表面は腐葉土や刈り草で薄く覆うといい。

5: これで小さな生態系ができた。周囲との関係ができれば、虫などもやってくるかもしれない。

あとは、この小さな畑を観察しよう。
収穫したり、枯れたりして地面が空いたら、別の苗を植えたり、タネをまくのもいい。

教えてくれたのは

 

ソニーコンピュータサイエンス研究所
舩橋真俊さん

1979年生まれ。東京大学獣医学課程卒業。同大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻修士課程修了。フランスのエコール ポリテクニーク大学院で物理学博士(Ph.D)取得。2010年よりソニーコンピュータサイエンス研究所リサーチャー。生物多様性に基づく協生農法(Synecoculture™)を学術的に構築し、人間社会と生態系の双方向的な回復と発展を目指す。一般社団法人シネコカルチャー代表理事。2021年4月より株式会社SynecO代表取締役社長

記事監修

明石修准教授(オサム先生)

武蔵野大学環境システム学科准教授。主宰する「明石ラボ」では、人と自然が共生したサステナブルで循環型の社会はどのように実現できるのか、について日々、学生たちと研究と実践を行っている。専門分野は、自然エネルギーや持続可能な食と農(パーマカルチャー)、モノの消費と循環経済など。 https://akashi-lab.com/

「親子で学ぶSDGs」は『小学一年生』別冊HugKumにて連載中です。

1925年創刊の児童学習雑誌『小学一年生』。コンセプトは「未来をつくる“好き”を育む」。毎号、各界の第一線で活躍する有識者・クリエイターとともに、子ども達各々が自身の無限の可能性を伸ばす誌面作りを心掛けています。時代に即した上質な知育学習記事・付録を掲載し、HugKumの監修もつとめています。

『小学一年生』2021年3月号 撮影/本間 寛 構成・文/神﨑典子 イラスト提供・取材協力/一般社団法人シネコカルチャー https://synecoculture.org

今回の記事で取り組んだのはコレ!

  • 9 産業と技術革新の基礎を作ろう
  • 15 陸の豊かさも守ろう

SDGsとは?

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