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「持続可能な食文化の日」ってどんな日?
国連(国際連合)が定めた「持続可能な食文化の日」をご存じでしょうか? 英語表記は「Sustainable Gastronomy Day」です。私たちの食文化や食生活にかかわる大切な国際デーのようですが、具体的に、どのようなことを記念した日なのでしょう?
持続可能な食文化とは
そもそも「持続可能な食文化」とは、どういう内容を表しているのでしょうか?まずは、持続可能な食文化・食生活とはなにか、その意味から解説していきます。
持続可能な食文化
まずここでは「持続可能」とは、私たちが地球環境を守りつつ、今後も豊かに暮らしていけることを表しています。
つまり「持続可能な食文化」とは、限りある資源を無駄にすることなく、地球環境や人々の健康に考慮したうえで、農業や漁業、酪農といった食料生産を維持していくことを言います。そして、世界中に存在する固有の食文化を守り、継承していくことを含んでいます。
サステナブル・ガストロノミー
「持続可能な食文化」といわれると、なにやら難しい印象があります。国連の「Sustainable Gastronomy Day」の説明文を参考に、もう少し、身近なところから考えてみましょう。
Gastronomy(ガストロノミー)は、日本語に訳すと「美食法」や「(地域に固有の)調理法」という意味になります。以前は前者の意味が強かったのですが、近年では後者の意味が強くなっており、その土地や地域の食べ物や料理を指すことが多くなっています。
つまり、Sustainable Gastronomy=持続可能なガストロノミーとは、食材がどこから来たのか、どのようにして作られたのか、そしてどのようにして市場に出まわり、最終的に私たちの食卓に届くのかを考えた料理を意味しています。
参考:Unided Nations | Sustainable Gastronomy Day 18 June
2023年の「持続可能な食文化の日」はいつ?
国際デーとして定められている「持続可能な食文化の日」は、毎年その日付が決まっています。ここでは、2023年の日付と曜日を確認します。
今年の「持続可能な食文化の日」は6月18日 日曜日
「持続可能な食文化の日」は、毎年、6月18日と定められています。今年は、日曜日になります。以下、過去3年、今後3年の曜日は以下になります。
・2020年6月18日木曜日
・2021年6月18日金曜日
・2022年6月18日土曜日
・2024年6月18日火曜日
・2025年6月18日水曜日
・2026年6月18日木曜日
「持続可能な食文化の日」とは?
国連が国際デーとして「持続可能な食文化の日」を定めた狙いは、どういうものなのでしょうか? ここからは「持続可能な食文化の日」の目的や歴史、由来を解説します。
目的
「持続可能な食文化の日」は、食料の開発や保全、食文化の継承や健康的な食生活を含む持続可能な食文化に対して、人々の意識を高めていくことが目的。
ほかにも、生物多様性の保全の促進、生活者と食料生産者とのパイプの強化、地球環境の保護、貧困の撲滅や資源の有効活用などへの貢献も掲げられています。
歴史
「持続可能な食文化の日」は、まだ新しい記念日で、2016年12月に国連総会で採択されたばかりです。
前年度にあたる2015年に国連は「持続可能な開発目標」いわゆる「SDGs(エスディージーズ)」を含んだ「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択しています。
SDGsは、最近よく耳にする言葉ですが、ひとつしかない地球を守り、持続可能な世界を実現するための国際的な目標のことです。
「持続可能な食文化の日」は、SDGsと深く結びついています。
由来
「持続可能な食文化の日」が採択された背景には、食料の供給力低下による食糧難やエネルギー不足、深刻な環境悪化など、近い将来、人類の存続を左右しかねない世界的な課題が浮上するという危機感があります。
また、1970年代頃から現在まで続くアフリカやアジアの一部地域などでの慢性的な貧困や飢餓も採択背景のひとつになっています。
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「持続可能な食文化の日」の取り組み
「持続可能な食文化の日」を制定した国連は、この日にどのような取り組みを行っているのでしょうか?
ここでは、世界的規模のキャンペーンや日本でも行われているイベントなど、代表的な活動内容をご紹介します。
参考:国際連合広報センター
ActNow FOOD CHALLENGE(サステナブルフード促進に関するキャンペーン)
持続可能な食文化や食生活を守るために、生産から流通、調理法まで、さまざまな配慮がなされた食品を「サステナブルフード」と呼びます。
「ActNow FOOD CHALLENGE(サステナブルフード促進に関するキャンペーン)は、人や環境に優しいサステナブルフードを通じて、世界的な気候変動対策の参画を人々に訴えるものです。
キャンペーンのリーダーには、全世界の著名なシェフが選ばれ、環境に配慮した食材から作られる創作料理とその取り組み、レシピなどを紹介しています。
日本でもイベント
ユネスコ(国連教育科学文化機関:UNESCO)の「食文化創造都市」に選ばれている山形県鶴岡市。
鶴岡市では「持続可能な食文化の日」にあわせて、2019年から「世界の課題と鶴岡の食文化を考えるSDGsパネル展」を開催しています。
世界中の食のさまざまな課題に焦点をあて、その解決の糸口となる日々の食文化に秘められた可能性を考えています。
持続可能な食文化・食生活についての世界の取り組み
持続可能な食文化を開発・保全し、世界に伝えていく取り組みは、6月18日だけにとどまりません。日頃から継続的に取り組まれている持続可能な食文化・食生活についての世界の取り組みをご紹介します。
参考:Unided Nations | Sustainable Gastronomy Day 18 June
参考:国際連合広報センター
ユネスコ(国連教育科学文化機関:UNESCO)の取り組み
教育・科学・文化の発展と推進を目的とした国連の専門機関であるユネスコ(国連教育科学文化機関:UNESCO)は、世界各国の都市を「美食の創造都市」に選んでいます。
また、調理に必要とされるエネルギーについては、クリーンエネルギーの使用を推進。さらに、テレビの料理番組や食のイベントなどを通じて、世界中の人々に持続可能な食文化の重要性を訴えています。
国際連合食糧農業機関(FAO)」の取り組み
国際連合食糧農業機関(FAO)は、世界の食糧生産と分配、生活向上を通じて、飢餓の撲滅を目的とする国連の専門機関です。
FAOは、食料生産における生物多様性の喪失に警鐘を鳴らし、伝統的な作物や、持続可能な食料生産と自然資源の管理の重要性を訴えています。
SDGメディア・コンパクト
SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、設立された国際的な枠組みが「SDGメディア・コンパクト」です。その目的は、世界中の報道機関とエンターテインメント企業に対して、SDGs達成への協力を促すこと。
2018年にスタートしたSDGメディア・コンパクトには、2020年までに、世界の主要な報道機関やエンターテインメント企業など、100社を超えるメディアが参画。食をはじめとするSDGsの課題や取り組みなどを発信し、SDGsの認知度向上、行動活性化の支援、そして最終的な目標達成を目指しています。
持続可能な食文化に対して、私たちができること
「持続可能な食文化」のために、日々の暮らしの中で私たちにもできることはたくさんあります。今日から実践できる環境に配慮した食文化・食生活についての取り組みを見ていきましょう。
参考:農林水産省 広報誌「aff」2020年10月号 食品ロスの現状を知る
食品ロスを出さない
世界では、毎年約13億トンの食料が廃棄されています。これは、食料生産量の1/3にあたる量です。日本でも1年間(2022年度)に、約522万トンもの食料が捨てられています。
このような食品ロスを出さないためにも、作りすぎや買いすぎ、食べ残しはやめましょう。また、食品の賞味期限や消費期限への過剰な反応も控えるようにしましょう。
省エネを心がける
2022年度の二酸化炭素(CO2)排出量は、世界で約338億トンにのぼります。日本は、世界で5番目に排出量が多く、国民ひとりあたりの排出量は約8.5トンです。
地球温暖化の原因と考えられているCO2排出の削減を各家庭や個人が意識し、省エネ対策を行えば、地球環境の保護、ひいては食文化の保全につながります。
SNSを使った情報発信やシェア
持続可能な食文化や食生活についての情報をSNSで発信したり、シェアすることができます。身近な食品ロスの問題や省エネ対策をはじめ、国連が掲げている持続可能な開発目標などを広く伝えることができます。
環境や健康によい食材やレシピ、食品の保存方法、リサイクル術やコスト削減手法なども広く共有できます。
持続可能な食文化を守るため、できる1歩から踏み出そう
食文化や食生活は、私たちが命をつないでいくために最も重要な要素といえます。持続可能な食文化を作り出し、守っていくためには、食にかかわる生産・流通・消費、そして廃棄まで、あらゆる過程を考える必要があります。
発展途上国や先進国を問わず、すべての人が健康かつ健全な生活を送ることができるように、食料の安定供給と安全を維持し、世界の食文化を守っていくことは大切なことです。
そのためにも、世界を見据えた広い視野を持ちながら、身近にできることから1歩ずつ、食文化についての意識を高めていきましょう。
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文・構成/HugKum編集部