工場のような作業場は物の配置がすごく考えられています。無駄な動きがその都度生まれないように、徹底して動線や物の位置が決められているわけです。
自宅のリビングや子ども部屋はどうでしょうか? 何となく見よう見まねの直感でレイアウトを決めている人がほとんどかもしれません。そこで今回は子どもの勉強がはかどるかもしれない、子ども部屋・リビングのレイアウトの見直しポイントをまとめてみました。
目次
子ども部屋のレイアウトで気をつけること
デスクはどこに置く?
子ども部屋に欠かせないデスクの配置から考えてみましょう。HugKumの記事「子供部屋作りに悩む人必見!レイアウト、部屋割り、収納などママ・パパの素敵アイディア集」によれば、多くのパパ・ママが学習机のレイアウトに困っているとのだとか。
どんな家の子ども部屋でも、
- 壁
- 穴(窓、ドア)
の2つの要素が絶対にあります。机の配置を考える上で、まずはこれらに向かい合うのか・向かい合わないのか、近付けるのか・近付けないのかをもれなく整理したいところ。
一方で学習家具の企画・開発・製造・販売を手掛けるコイズミファニテック株式会社の公式ホームページには、集中力の維持に影響を与える環境のポイントとして、以下が挙げられています。
- 明るさ・暗さ
- 視界に入る物の多さ・少なさ
- テリトリーを侵犯してくる存在の有無
明るさを考えるのならば採光を目的とした窓の近くが好ましいです。しかし窓には採光だけでなく視認の役割もありますから、窓と向き合う形で学習机を置いてしまうと、視界に入る情報が増えます。窓の外の景色によっては子どもの集中力が落ちるかもしれません。
明るさを確保しつつ視界に入る物の多さを減らそうと思ったら、窓の横や少し離れた場所の壁に向き合うように学習机を配置するアイデアが出てきます。
しかし正面に壁があると人は圧迫感を覚え、さらに見えない背後に広い空間があると、どうしても背後が気になってしまうともさまざまな場所で指摘されています。
特に背後に人の出入りが予想されるドアがあると、誰かが入ってくるかもしれないという意識が強く働くのだとか。確かに筆者が昔通っていた予備校の自習室も机の並びの背後に扉があり、扉が開くたびに振り返る学生が多かったと記憶しています。
さらにHugKumの過去記事によると、注意力が散漫にならない学習机の位置として、視界に入る情報が少ない「部屋の角」が好ましいともされています。以上の情報を整理すると、
- 窓の近く(明るさを求めて)
- 壁を背に(背後の空間を広くつくらない)
- 入り口の扉に向かい合った(ドアが視界に入っているので安心できる)
- 部屋の角(注意力が散漫にならない)
が理想的だと考えられます。ただしこの配置だと部屋全体を見渡す状態になるため、視界に入る物の多さは増えてしまいがち。
部屋の整理整とん・片付けが大切になってきます。家具や壁紙の色も主張が強いと視界の中で子どもの関心を邪魔します。自然色や素材で統一するなどして、目に入る情報を減らす工夫も併せて必要かもしれませんね。
ベッドはどこに置く?
子ども部屋に置かれがちな家具にはベッドもあります。ベッドは休息のための場所なので、安眠できる・生活リズムを維持できるかを重視して配置を決定します。
医学的にも、生活リズムの維持に朝陽の日光浴が大切だと指摘されています。体内時計をリセットできるからですね。その理屈に従って、自然に朝陽が子どもの枕元に差し込んでくるレイアウトでベッドを配置します。部屋の窓が東向きにない場合は、朝の明るさが感じられる窓の近くに枕元を近付ける配置が考えられます。
風水的にも枕を東に向けるといいみたいですね。
本棚はどこに置く?
学習机の配置では、視界に入る物の多さ・少なさで集中力に影響が出てくるという話をしました。その話が本当ならば、学習机に座った時に本棚が見える配置は好ましくないはずです。
例えば漫画本がたくさん本棚に並んでいて、学習机に座った時に魅力的なラインアップが目に留まる場合、子どもはつい手を伸ばしてしまうかもしれません。
別に漫画本が悪いわけではありません。学習机に座って今から勉強を始めようと思った時に、その手が止まってしまうと問題なわけです。
例えば壁を背に、ドアと向き合うような形で学習机を置いて、その背中側の壁に本棚を置くなど、視界に入らない工夫をしてみてはどうでしょうか。テレビ番組で取材を受ける学者の背後に本棚が並んでいる、あのイメージですね。ただし背の高い本棚を背後に置く場合は防災上の観点から転倒対策も忘れずに施したいです。
ひとつの部屋をきょうだいで分けるには?
1つの部屋をきょうだいで分ける場合、学習机・ベッドをどのように考えればいいのでしょう。
HugKumの記事によるときょうだいの学習机は、
- 横並び
- 別々
といった状況に整理できます。ベッドについても状況を整理すると、
- 2段ベッド
- 別々
といった配置が考えられます。
机を横並びに配置する場合であっても学習机のレイアウトの基本は変わりませんので、スペースの許す限り、
- 窓の近く(明るさを求めて)
- 壁を背に(背後の空間を広くつくらない)
- 入り口の扉に向かい合った(ドアが視界に入っているので安心できる)
- 部屋の角(注意力が散漫にならない)
に並べるといいはずです。
学習机を別々にする場合は、1つの部屋で子ども同士のパーソナルスペースを確保したい狙いがあるはずです。2段ベッドを仕切りにするアイデアも考えられます。ベッドの配置については枕元に朝陽の明るさが入り込む位置を意識しながら調整したいです。
ベッドも別々にしたい場合は部屋の中に仕切り壁を設けるアイデアも多くのパパ・ママが実践していいます。空間を2つに分けるにしても、それぞれの学習机・ベッドが上述した理想的な配置になるように工夫したいです。
スペースの関係でぜいたくを言えない場合は、ロフトベッドにして各々ベッドの下を勉強スペースにする工夫も多くの家庭で実践されているようですね。
子ども部屋の実例
ここまで子ども部屋における学習机とベッドの配置について基本的な考え方を学んできました。その基礎を踏まえて「理想的」なレイアウトを実行しているパパ・ママたちの取り組みをInstagramで探してみました。
集中できる学習机
背後にドアの入り口を置かないレイアウトです。窓からの採光も感じられます。1つの部屋を学習机と本棚で間仕切りしている点もアイデアですね。
また学習机を部屋の中央に配置しながらも、机の正面にパーテーションを兼ねた壁を設けているので、視界に余計な物が入らず集中力を高く維持できそうです。
部屋を見渡す位置に学習机を置いた「子ども」部屋
もともとお子さんが使っていた子ども部屋を大人用に使い直しているみたいなので、純粋に子ども部屋とは言えません。しかし机が壁ではなく部屋を見渡すように配置されていて、入り口の扉も視界に入っています。こんなレイアウトもありですね。
ベッドの枕元が窓の近くに配置されているため、朝の明るさが自然に届く工夫も感じられます。
枕元に朝陽が差し込む子ども部屋
ベッドの枕元が窓に向いているので、自然に朝の明るさが感じられる配置となっています。規則正しい生活リズムづくりが上手に維持できそうな空間です。
リビングのレイアウトで気をつけること
次は子育て中の家のリビングレイアウトについてまとめてみましょう。
赤ちゃんがいる場合
子ども部屋を与えられた児童を想定して、ここまで部屋のレイアウトを考えてきました。しかし子どもが乳幼児の場合、あるいは小学校低学年の児童の場合は子どもに個室を用意する必要もありません。むしろパパ・ママと一緒に過ごすリビングのレイアウトが大切になってきます。
HugKumが先輩パパ・ママに行ったアンケート調査によれば、
- ベビーサークル
- コーナーガード
- カラーマット
の組み合わせでリビングを赤ちゃん仕様に調整する人が多いと分かっています。
この結果を踏まえて、リビングの一角にカラーマットを敷き、その周りをベビーサークルで囲う際のレイアウトを考えます。さらにもう少し成長した小学校低学年の子の学習机をリビングに置く際のレイアウトを考えてみます。
ベビーサークルがあってもリビングを広く見せる工夫
リビングは広いとは言え、十分な広さを確保できない都市部のマンションではそれほどスペースはないはずです。そのリビングに学習机や、面積の広いベビーサークルを置いてしまうと圧迫感が出てしまいますよね。
同じ広さの部屋に同じ家具を並べるとしても、配置の工夫でなんとか広く見せたいところです。
具体的にはどのようにすればいいのでしょうか。この問題については、インテリアコーディネーターたちが書籍やインターネットなどで盛んに情報を発信してくれています。
それらの情報をまとめて読むと、幾つか共通するルールが分かってきます。例えば『今あるもので「あか抜けた」部屋になる。』(荒井詩万/サンクチュアリ出版)によると、部屋を広く見せる工夫として、
- 部屋の奥に背の低い家具を置く
- 床の余白は3分の2にする(リビングの3分の2は床に何も置かない)
といった技術が書かれています。学習机は背が低い家具なのでリビングの入り口から見て奥に置く、さらに窓際の壁に向き合うように置くと理想的かもしれません。
ベビーサークルもリビングの入り口から見て奥の方につくります。プラスして床の余白が3分の2は確保できる適当なサイズのベビーサークルを購入し、ベビーサークルを設置した後は極力他の物を置かずに床を見せる工夫が大事なのですね。
学習机をリビングに置く場合
子どもが大きくなって小学校1年生になったら、リビングに学習机を置く(予定の)家庭も少なくないと思います。
リビングは広いとはいえ、広さにも限度があります。ソファを置いて、センターテーブルを置いて、テレビ台を置いて、照明や観葉植物を置いてと空間を埋めていくと、意外に学習机の置き場所に困ってしまうかもしれません。
広さはあっても一方で制約もある中で、リビングに学習机を置く場合はどのようにレイアウトを考えればいいのでしょうか?
上の章では、学習机のレイアウトで大切にしたいポイントを以下のように学びました。
- 窓の近く(明るさを求めて)
- 壁を背に(背後の空間を広くつくらない)
- 入り口の扉に向かい合った(ドアが視界に入っているので安心できる)
- 部屋の角(注意力が散漫にならない)
個室の子ども部屋と違ってリビングの場合は、そもそもがパーソナルスペースではなく共有スペースです。多くの人が座ってくつろぐ場所(sitting room)で、人の存在が前提としてあるので、3番目のテリトリーの侵犯はそれほど気にならないはずです。
むしろ部屋の中央に向けて机をレイアウトしてしまうと、リビングは人の動き・テレビの映像・各種のインテリアなどであふれていますから、集中力の維持が困難になるはずです。リビングに学習机を置く場合はむしろ
- 窓の近く(明るさを求めて)
- 部屋の角(注意力が散漫にならない)
だけを意識して、学習机を壁と向かい合った形で配置するといいと考えられます。窓の近くに設置できない場合は照明で補ってあげたいですね。
リビングのレイアウトの実例
リビングに学習机を置いたりベビーサークルをつくったりする際のルールを紹介しました。実際に似たような考えでリビングのレイアウトを実践している人たちをInstagramで探してみましょう。
窓の位置も意識したリビングの学習机
リビングか定かではないですが、リビングだとすれば壁に向かって机が置かれています。視界に邪魔な要素が入らないように工夫もされています。部屋の角ではないですが、写真左手から自然光を採光した窓の存在が感じられます。
壁に向かって机を置いた部屋
同じく壁に向かってシンプルなデスクを置いた例です。リビングの隅に机を設置し、壁に何も張っていないので集中力が長続きしそうなレイアウトに見えます。
ベビーサークルのサイズを考えたリビング
リビングの広さに対するベビーサークルの面積が計算されています。大きすぎるベビーサークルは圧迫感を生むため、部屋を広く見せたい場合はベビーサークルの大きさに注意したいですね。
レイアウトのシミュレーションができるアプリ
子ども部屋やリビングのレイアウトに関するアイデア・考え方を幾つか紹介してきました。ただ学習机を実際に移動したり部屋を模様替えしたりする作業は重労働です。ベビーサークルもマットを敷いてから一人で組み立てて設置するとなると、なかなか大変ですよね。
そこで実際に家具を動かす前に、レイアウトのシミュレーションができる便利な「スマホ」用のアプリを紹介します。
IKEA Place
最初のアプリは北欧家具メーカーのIKEAが出しているアプリです。北欧家具が大好き・IKEAが大好きという人は真っ先にダウンロードしたい無料アプリです。
「スマホ」のカメラ機能を使って子ども部屋やリビングを映しながら、画像上にIKEAの家具をバーチャルで当てはめられます。iOSとAndroidのどちらでも利用可能ですので真っ先に検討したいアプリですね。
AppStore でダウンロード / Uptodownでダウンロード
Amazonショッピングアプリ
このAmazonショッピングアプリにはさまざまな機能があります。その中にはAR(拡張現実)ビュー機能も。対応の商品であれば「スマホ」のカメラ機能を使って部屋を映し、Amazon商品をバーチャルで表示してレイアウトを試せます。
iOSまたはAndroidの端末で無料で使えます。
AppStoreでダウンロード \ Google Prayでダウンロード
RoomCo AR
複数メーカーの家具をAR(拡張現実)を使って自分の部屋に映し出し、レイアウトを考えられる「アプリ」もあります。その代表例がRoomCo ARです。
Franc franc・無印良品・ニトリなど人気ブランドの家具が登録されているので、それらのブランド家具を使って自分の部屋でレイアウト調整が可能になります。iOSとAndroid端末で使えます。ただし機種に制限がありますので、お手持ちの端末で使えるかどうか試してくださいね。
AppStoreでダウンロード \ Google Prayでダウンロード
子ども部屋とリビングのレイアウトまとめ
子ども部屋とリビングに学習机やベビーサークルを設置する際のポイントをまとめました。いきなりインスタで実例をたくさん見るよりも、ルールや基本を押さえてから実例をチェックしたほうが見る目は深まるかもしれません。
HugKumの関連記事、各種の書籍やネット情報などでレイアウトの基本やルールを押さえてからSNSで事例をチェックして自宅の模様替えに生かしてくださいね。
文/坂本正敬、写真/繁延あづさ
【参考】
※ 学習机は壁につけない方が集中力は高まる⁉学習環境の新常識
※ 荒井詩万『今あるもので「あか抜けた」部屋になる。』(サンクチュアリ出版)
※ 増田奏『住まいの解剖図鑑 心地よい住宅を設計する仕組み』(エクスナレッジ)