化政文化とは、どんな文化? その特徴や学問の発展について徹底解説【親子で歴史を学ぶ】

PR

化政文化(かせいぶんか)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?  日本史の授業に登場する言葉ですが、聞いたことはあっても、具体的な内容は覚えていない人も多いかもしれません。化政文化の特徴や、その時代の芸術・学問の発展について解説します。

化政文化とは

化政文化とは、どのような文化なのでしょうか?  化政文化の概要や時代背景について解説します。

江戸後期を中心に栄えた町人文化

化政文化は、江戸時代後期に栄えた町人文化です。「化政」は当時の元号の「文化」と「文政」の略で、1804~30年が中心となります。

江戸時代前期には、上方(かみがた)の豪商を中心として、派手な「元禄(げんろく)文化」が栄えましたが、化政文化は江戸の町人を中心に全国的に広がりました。「しゃれ」や「通(つう)」が好まれ、退廃的で刹那的な面があるとともに、政治的・批判的な要素を含んでいるのが特徴です。

旧来、江戸時代の文化は、元禄文化と化政文化に大別されていましたが、近年では、江戸時代中後期の18世紀後半、田沼意次(たぬまおきつぐ)が側用人(そばようにん)、あるいは老中だった時代を、「宝暦天明(ほうれきてんめい)文化」(1751~89)と分類しています。

江戸時代に流行した浮世草子とは|内容や代表作家の井原西鶴を紹介【親子で歴史を学ぶ】
「浮世草子(うきよぞうし)」は、江戸時代の「元禄(げんろく)文化」を代表する文学です。戦国の世が終わり、平和で豊かな暮らしを享受する人々の心...

化政文化が栄えた時代背景

化政文化が栄えたのは、寛政(かんせい)の改革から天保(てんぽう)の改革までの間で、11代将軍・徳川家斉(いえなり)の治世にあたります。老中・松平定信(まつだいらさだのぶ)が主導した寛政の改革では、幕府の財政を立て直すため、徹底的な倹約策が実施されました。

かなり厳しい政策が敷かれたため、家斉からの反発は非常に強かったといわれています。また庶民に対しても倹約を命じ、彼らにも大きな不満がつのりました。

その後、家斉との対立から松平定信は失脚します。寛政の改革の反動ともいえる形で、家斉は豪奢(ごうしゃ)な生活を送るようになりました。この政治的背景が化政文化が栄えた理由の一つです。

寛政の改革について知ろう|具体的な内容から関わりの深い人物まで【親子で歴史を学ぶ】
江戸時代には「寛政(かんせい)の改革」を含め、覚えておくべき大きな政治改革が3回行われています。改革には、さまざまな方法がありますが、寛政の...

化政文化の特徴

化政文化には、どのような特徴があるのでしょうか?  文学・美術・芸能、それぞれにおける特徴を紹介します。

文学

文学面では、「滑稽本・黄表紙(きびょうし)・人情本」が流行しました。滑稽本は、会話文を中心に笑いを取る物語で、十返舎一九(じっぺんしゃいっく)の「東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)」や、式亭三馬(しきていさんば)の「浮世風呂(うきよぶろ)」などがあります。

弥次さん喜多さんの銅像(静岡市葵区)。駿府城公園、東御門の手前にある。ちなみに、作者の十返舎一九は、静岡出身である。

 

黄表紙は、成人向けの絵入り小説で、その名の通り表紙が萌葱色(もえぎいろ)をしていたため、黄表紙と呼ばれました。恋川春町(こいかわはるまち)の「金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)」などが代表作に挙げられます。

人情本は、いわゆる恋物語が多く、読者の対象は女性でした。代表的な作家は、為永春水(ためながしゅんすい)で、「春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)」が有名です。

美術

美術面で化政文化の代表といえるのは、「浮世絵」です。特に有名なものに、葛飾北斎(かつしかほくさい)の描いた風景画「冨嶽(ふがく)三十六景」が挙げられます。

江戸時代初期から浮世絵は存在していましたが、美人画や役者絵などの人物画が主流でした。化政文化になり、葛飾北斎によって名所画が確立されたといえます。

歌川広重(うたがわひろしげ)の「東海道五拾三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)も、化政文化の代表的な作品です。歌川広重の絵は、青の色使いが美しく、「ヒロシゲブルー」と称されています。葛飾北斎や歌川広重は海外での評価も高く、西洋美術にも大きな影響を与えました。

七里の渡しの大鳥居(名古屋市熱田区)。宮宿と桑名宿を結ぶ東海道唯一の海路。その距離が七里(約27.5㎞)であったことから名付けられた。順調に行って、4~6時間の旅だったという。

芸能

芸能面では、庶民の娯楽として「歌舞伎」がブームとなっており、中村座・市村座・森田座の三つが「江戸三座」と呼ばれてにぎわいました。

歌舞伎の作家としては、四代目・鶴屋南北(つるやなんぼく)が有名で、毒殺された妻・お岩の復讐物語「東海道四谷怪談」が代表作です。人気役者も多数登場しましたが、特に注目を集めたのは七代目・市川團十郎(だんじゅうろう)で、歌舞伎の代表的な演目ともいえる「勧進帳(かんじんちょう)」を演じています。

三味線音楽も人気を博しており、なかでも長唄(ながうた)の四代目・杵屋六三郎(きねやろくさぶろう)がよく知られていました。

化政文化の学問

芸術だけでなく、学問も大きな発展を遂げました。当時有名になった学問と学者について紹介します。

国学

国学(こくがく)とは、古典研究から発展した学問です。日本は、儒教や仏教などからさまざまな影響を受けていますが、その影響を受ける以前の、日本独自の思想を明らかにしようする考えから生まれました。

江戸時代の国学の発展を担ったのは、荷田春満(かだのあずままろ)賀茂真淵(かものまぶち)本居宣長(もとおりのりなが)・平田篤胤(ひらたあつたね)です。この4人を「国学の四大人」と呼びます。

特に国学を大成させたとして知られているのが本居宣長で、代表的な著作は「古事記伝」です。

蘭学

蘭学(らんがく)は、オランダから入ってきた医学や天文学などの学問です。シーボルト鳴滝塾(なるたきじゅく)緒方洪庵(おがたこうあん)適塾(てきじゅく)などが開かれ、多くの人が蘭学を学びました。

なかでも有名な蘭学者といえるのが、杉田玄白(すぎたげんぱく)前野良沢(まえのりょうたく)です。この2人が協力して、オランダの「ターヘル・アナトミア」の翻訳本「解体新書」を執筆したことで知られています。人体の仕組みについて、よく知られていなかった日本において、解体新書の存在は貴重なものとなりました。

また、2人の弟子の大槻玄沢(おおつきげんたく)は、蘭学の入門書ともいえる「蘭学階梯(らんがくかいてい)」を著しています。

杉田玄白は何をした人?解体新書を完成させるまでの道のり【親子で歴史を学ぶ】
杉田玄白(すぎたげんぱく)は、日本の医学を大きく発展させた人物として知られています。その生い立ちや、解体新書(かいたいしんしょ)を出版するま...

教育

江戸時代には、多くの教育機関が生まれました。藩政改革によって造られたのが、藩士の子弟が儒学を学ぶための「藩校(はんこう)」です。また、学者や教育者によって全国に多くの私塾が開かれ、儒学だけでなく国学や蘭学などを学べるようになりました。

会津藩校「日新館」天文台跡(福島県会津若松市)。日新館の施設で、今に残る唯一の遺構(復元された体験型博物館が郊外に造られている)。日新館は1803年(享和3)、5年の歳月を費やして完成。ならぬことはならぬものです、でよく知られている「什の掟(じゅうのおきて)」を身に付けることが、会津藩士の基本になった。

 

庶民の教育の場となったのが「寺子屋(てらこや)」です。文化の発展に伴い、庶民でも読み書きが必要になってきたため、庶民の子どもが読み・書き・そろばんを学ぶ場として、全国に数多くの寺子屋が作られました。寺子屋は、明治に入ってから、小学校設立の母体となります。

おすすめの歴史アニメ10選|日本の幕末や戦時中など勉強にもなる人気作をご紹介
史実をベースにしたストーリー展開が多く、勉強にもなる「歴史アニメ」をピックアップしました。日本の幕末を舞台にした人気作や、アイヌの文化をリア...

さまざまな文化が発展した時期

化政文化期は、美術や芸能など、さまざまな文化が発展を遂げました。学問においても、国学や蘭学など、大きな動きがあった時期です。民の間に教育が広がったこともあり、化政文化は、日本の歴史において重要な意味を持つといえるでしょう。

この時代をもっと深く知るために

江戸時代の化政文化期について、その背景をもっと深く知りたい方のために参考図書をご紹介します。

小学館版  少年少女学習まんが 日本の歴史15「ゆきづまる幕府」

都市の町人を中心に栄えた化政文化の特色はもちろん、18世紀末からしばしば来航するようになった外国船対策、天保の大飢饉と永野忠邦による改革など、幕末の激動の前ぶれともいえる江戸時代後期をわかりやすく解説。学習まんがの決定版シリーズ15巻です。

小学館 全集日本の歴史  別巻「近世庶民文化 日本文化の原型」

こちらはパパママ向けの本格的な歴史解説書。日本独自の文化の源流を江戸時代に求めつつ、それ以前の古典や中国の文化との関連もひもときながら解説。俳諧・歌舞伎・浮世絵といった化政文化でも語られることの多い主要な江戸の文化芸術を、庶民の暮らしの様子とともに明らかにしていきます。

中央公論新社 マンガ日本の歴史38「野暮が咲かせた化政文化」


まんがで学ぶシリーズのなかでも、こちらは馬琴・一九・写楽・歌麿・北斎・広重・南北らといった個性豊かな才能にフォーカスし、江戸の庶民文化といわれる化政文化そのものを深く掘り下げた内容です。

河出書房新社ビジュアル入門 江戸時代の文化「江戸で花開いた化政文化」


錦絵、エレキテル、黄表紙、川柳、滑稽本、伊能図、食・ファッション……江戸で花開いた化政文化はいずれも、ビジュアルで鑑賞したいものばかり。イラストや図版をたっぷり配した本書は、ビジュアルイメージで化政文化を理解するアイテムとしておすすめです。

構成・文/HugKum編集部

太政大臣とは? 代表的な人物や、摂政・関白・左大臣との違いを解説【親子で歴史を学ぶ】
「太政大臣」とは、どのような役職? 「太政大臣(だいじょうだいじん)」という役職は、いつごろ設けられ、どのような人がその職に就いていたので...

編集部おすすめ

関連記事