【今も心に響く佐々木正美さんの教え】親子の信頼関係が深まる叱り方「14の心得」

子どもの育ちを半世紀以上見続けてきた児童精神科医・佐々木正美先生。ご逝去から1年以上経った今も、先生の残された子育ての著作や言葉はママたちの支えとなっています。お母さん方は一般に、しつけをしっかりしなければいい子に育たないと思いがちですが、佐々木先生によれば、赤ちゃんのころからたっぷりかわいがり、甘えさせてあげた子どもほど、人のことを思いやるいい子に育ち、コミュニケーション能力も抜群で人生を幸せに生きていけるそうです。「叱る」をテーマに子育ての14の心得を伺った記事を『めばえ』から再録でご紹介します。

1子どもの自尊心を傷つけないことが大切です

お母さんが子どもを叱るのは、いい子になってほしいからです。だから、「そういうことはしてはいけないよ」「これはこうしようね」と、子どもがしたことに対して注意をしたり、マナーを伝えたりすることは必要なことです。

しかし、子どもの自尊心を傷つけるような叱り方は問題です。たとえば「お前なんかいらない」「バカじゃない」というように、子ども自身の存在を否定する言葉を言って叱ることはいけません。また、怒鳴ったり、暴力をふるって叱ったりすることも禁物です。悪いことをしたから叱るのであって、悪い子だから叱るのではないからです。

 

2周囲の大人から大切にされることで自尊心は身につきます

自尊心は生まれてからお母さんやお父さんなど、周囲の大人たちに愛されて、大事にされることで徐々に身につきます。お母さんに抱っこをしてもらったり、いっしょに遊んでもらったりして、毎日の生活の中で大切に世話をされ、かわいがられることで、子どもは自分自身に自信を持ち、自尊心を持つようになるのです。

この自信を心理学の世界では「基本的信頼感」と呼んでいますが、この信頼感が育まれることで、子どもは他者に対しても信頼感を持ち、人とスムーズにコミュニケーションができるようになります。反対にこの信頼感が乏しいと、自分に自信が持てないため、いつまでも自立ができずに、社会の中でうまく生きていくことが難しくなります。

 

3たくさん甘えさせてあげましょう

保護者の皆さんは、甘やかすとわがままな子どもになると思っている方が多いですね。でも、幼いころにたくさん甘えた子どもほど、いい子に育ちます。ありのままの自分を受容された子どもは、自分に自信を持つと同時に、人を思いやることができるようになるからです。だから、お母さんに無理なことは決して要求しません。お母さんに甘えさせてもらっていない子どもほど、心の渇きを埋めるために無理な要求をするのです。

4先に母性をたっぷりと父性はあとからちょっぴり

子どものありのままを受け入れるのが母性です。基本的信頼感は、この母性を乳幼児期からたっぷり与えることで大きく育まれます。そして、父性というのは一般に社会的規範を教えること。いわゆる「しつけ」です。父性は、母性をたっぷり与えたあとに少しだけ教えればいいものです。愛情をたくさん与えられ、願いを叶えてもらった子どもほど、他者に共感を持ち、人の言うことをよく聞いてくれるようになるからです。

5何を叱るか決めましょう

「叱る」ということで、ほかに気をつけてほしいのは、一貫性のある叱り方をすることです。同じことをしたにも関わらず、親の気分でお目こぼしをしたり、虫のいどころが悪くて叱るようなことがあると、子どもは戸惑います。

また、お母さんやお父さんが何に対していちばん大切な気持ちを持っているかを伝えることも重要です。

たとえば、わが家では「弱い者いじめ」と「盗み」には厳しく対処しました。私には3人の息子がいますが、幼いころひとりの子どもが、ほかの子の分のぶどうを2、3粒食べてしまったときなど、ささいなことでもしっかり叱りました。その反対に、不注意や失敗には寛容に対応して、「今度から気をつけようね」と言って簡単な注意に留めていました。

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6叱り過ぎたら子どもに謝りましょう

「子どもを冷静に注意したい」と日ごろから思っていても、ときにはお母さんの気持ちに余裕がなく、子どもを叱り過ぎてしまい、後悔することもあるでしょう。そんなときには、「さっきは叱り過ぎた。ごめんね」と言って、子どもにきちんと謝りましょう。プライドがあるから謝れないと思うお母さんは、自分に自信がないからです。子どもはお母さんの姿を通して、社会の規範を学びます。間違ったときに謝ることの大切さを、お母さん自らが子どもに示すことが大事です。

社会の規範を伝えるうえでは、人への感謝を示すことの重要性を教えることも必要です。

子どもが何かしてくれたら、「ありがとう」と欠かさず言いましょう。

子どもがいい行いをしたとき、きちんとほめることは叱ることより大切です。

 

7なんでもないときに「あなたが大切」と伝えましょう

親子のあいだで、基本的信頼感が日ごろから築かれていれば、多少叱り過ぎてしまっても、子どもが深く傷つくことはありません。心配なら、ふだん親子で何気なく過ごしているときに「お母さんが叱るのは、あなたを大切に思っているからなんだよ」と、さりげなく言ってみるのもいいと思います。お母さんのそうした言葉は、子どもがいくつであっても心の奥に刻まれて、安心すると思います。

8叱るときには役割分担ができるのが理想です

母親が子どもを叱ったときには、父親があとから助け船を出してあげられるといいですね。わが家では、妻が子どもを叱ったとき、泣きべそをかいている子どもに「パパと何か食べに行こう」と言っては、子どもを外に連れ出して、みつまめやアイスクリームなどをおごってあげました。そうして帰宅したときは、妻も冷たくするのではなく、「今日はどんなおいしいものを食べてきたの」と話しかけたものです。そうすると、子どもの心が自然にんで、癒やされていたようです。

子どもを叱ったときには、このような「あうん」の呼吸で母親と父親が対応できるのが理想です。ただ、そうした役割分担は、祖父母や親の友人であってもいいと思います。親が信頼できる人ならば、子どもの心をやさしく受け止めて、癒やしてあげることができます。

9子育ては「待つ」ことが大切です

注意をしたのに同じことを繰り返す、そんなお子さんの面倒を毎日みるお母さんは、大変だと思います。しかし、「何度も繰り返し伝え、穏やかに子どもができるようになるのを待つこと」。それが子育ての基本です。小学生になっておもらしをする子がいないように、排泄や着替えなどは、どの子も遅かれ早かれできるようになります。親はゆったり構えて、できるようになるのを待ちましょう。そうすると、自分で適切な行動をする力、「自律性」が子どもに身につきます。

 

10 3歳前後の子供は同じことを繰り返します

3歳前後の子どもの場合、親が一度注意をしても、また同じことをしてしまうのがふつうです。また、ふだんから周囲の大人たちに大事に育てられている子どもほど、叱られてもあまり傷つかないため、してはいけないことを繰り返す傾向があります。

だから、もしあなたのお子さんが何度も注意すべきことをするようなら、それは順調に育っているだと思ってください。お子さんは信頼するお母さんの前だから、安心して「自分がしたいこと」をするのです。

11「私の子だから大丈夫」と思いましょう

「子どもが求める親になりたいという願い」と、「求めたとおりの子どもに育ってほしいという願い」。このふたつの気持ちのはざまで揺れながら、毎日子どもと接していく。それを繰り返していくなかで、親子関係は育まれていくのだと思います。大事なことは、子育ての理想と現実のあいだで生じる不備や不足を補う努力をしていくことです。「子育てはいつでもやり直しができる」。そう考えて、子どもと向き合っていてください。私は子育てに悩むお母さん方に「あなたの子だから大丈夫だと思いなさい」といつもアドバイスをしています。「人を信じて、自分を信じる」。それが、親子で幸せに生きていくことに何よりつながります。

12きょうだいゲンカはスポーツのようなもの。いいも悪いもありません

きょうだいゲンカは一種のスポーツで、強いほうが勝ち、弱いほうが負ける。それなのに何度でもやりたがります。

3人の男の子がいたわが家では、小競り合いやケンカをよくしました。そんなとき、私も妻もよほどひどいルール違反がない限り、どちらかの子どもが泣くまで黙って見ていました。そして、そのときが訪れたら「もう終わりなさい」と言って、ゲームの終了を宣言。そのうえで、「ご苦労様。こっちへ来てジュースを飲みなさい」とって、気持ちが切り替えられるようにしていました。どちらが悪いのか、いいのかという判断は、親は一切言わないことが大切です。そうした親の判断は、きょうだいや親子間の感情をこじらせる原因になります。

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13きょうだいがいたら上の子を優先にしましょう

お母さんやお父さんは、子どもが小さいうちほど、下の子のほうに手をかけてしまうものです。すると、それまで愛情を独占していた上の子は、何とも言えない淋しさを感じます。

できたら下の子が生まれた日から「上の子優先」で育てましょう。そうすると、「赤ちゃん返り」をせずに、上の子も安心して、下の子をかわいがるようになり、叱らなければならない場面も減ると思います。

 

14生きることは楽しいと子どもに思わせてください

子育てでもっとも大切なことは「根拠のない自信」を子どもの心にたっぷりと作ってあげることです。なぜなら、人はそうした自信を持つことで、失敗や挫折をしても、自分を見失わずに乗り越えていけるからです。また、自分に自信がある人は他者を信じる力も強いので、人とスムーズにふれあうことができ、楽しく生きていくことができます。

自分自身に対してのゆるぎないこうした自信は、人が幸せに生きていくために欠かせないものです。

お母さんは叱るより、お子さんをたっぷりとかわいがってあげてください。

乳幼児期に親や養育者に無条件に愛され、かわいがられるほど、「根拠のない自信」は大きく育ちます。子どもは皆、お母さんが大好きです。お母さんがお子さんの喜びを自分の喜びとして感じ、お子さんといっしょにいる時間を幸せに感じられたら、それは子どもにとっても大きな喜びとなり、ゆるぎない自信につながります。

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児童精神科医・佐々木正美

1935年、群馬県生まれ。新潟大学医学部卒業後、東京大学で精神医学を学び、ブリティッシュ・コロンビア大学で児童精神医学の臨床訓練を受ける。帰国後、国立秩父学園や東京女子医科大学などで多数の臨床に携わる傍ら、全国の保育園、幼稚園、学校、児童相談所などで勉強会、講演会を40年以上続けた。『子どもへのまなざし』(福音館書店)、『育てたように子は育つ——相田みつをいのちのことば』『ひとり親でも子どもは健全に育ちます』(小学館)など著書多数。2017年逝去。半世紀にわたる臨床経験から著したこれら数多くの育児書は、今も多くの母親たちの厚い信頼と支持を得ている。

 

 

掲載/『めばえ』 取材・文/山津京子 写真/繁延あづさ

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