いんげんの基礎知識
いんげんを漢字で書くと「隠元」です。江戸時代に中国から来日した、隠元和尚が持ち込んだことから、その名前がついたそうですよ。定番はいんげんの胡麻和え。どんな特徴を持つ野菜なのでしょうか。
いんげんの旬
いんげんの旬は夏ですが、年に3回も収獲できることから「三度豆」とも呼ばれます。若い莢(さや)ごと食べるので栄養が豊富です。
特に注目すべきは、人間の体内で作ることのできないアミノ酸が多く含まれる点です。例えばアスパラギン酸なら、疲労の元となる乳酸の分解を促進させ、栄養ドリンクにも含まれている栄養素ですね。他にも、抗酸化作用のあるβ‐カロテン、ビタミンC・Eも含むことから、スーパーフードともいわれます。
いんげんの種類
いんげんは数百種類の品種がありますが、一般的に流通している「どじょういんげん」は、丸い莢が特徴です。生のままで天ぷらや、塩ゆでしてから胡麻和えやおひたしにします。
長く平べったい形が特徴のモロッコいんげんも、いんげんの仲間です。さやいんげんよりも甘みが強く、シャキシャキとした食感が楽しめますよ。薄切りにして食べやすい大きさに切ると、食べやすくなります。
一方、いんげん豆はさやいんげんの中身が成熟したものです。乾燥させて大豆のように貯蔵することもできるので、世界中で古代から保存食として食べられてきた歴史があります。
ただし、莢ごと食べるさやいんげんとは品種が異なります。
「生いんげん」の保存方法
いんげんを上手に保存する時は、どんな点に注意をすればおいしく長持ちするのでしょうか。詳しくみていきます。
生のまま冷蔵保存する
いんげんは収穫後も呼吸をしています。乾燥もしやすいので、濡らしたキッチンペーパーで包んでからポリ袋に入れます。そして冷蔵庫の野菜室で保存してください。いんげんの適温は5℃ですから、常温では劣化が早まります。
できれば成長期と同じように、へたを上向きにして立てておくのが長持ちのコツ。グラスや切ったペットボトルを使うと安定します。このまま野菜室へ入れて保存します。
保存期限
生いんげんの冷蔵保存は10日間を目安にしてください。野菜は収穫後が一番おいしいので、できるだけ早くいただくようにしてくださいね。
「茹でいんげん」の保存方法
いんげんは茹でてから保存もできます。下ごしらえの手順と、茹でるポイント、そして保存方法をみていきましょう。
筋取り
いんげんの下ごしらえで最初に大切なのは、ヘタと筋を取る作業です。
ヘタの部分を折り取って、筋を取っていきます。ヘタの部分をよく観察して、カーブしている側を折ってください。折った後も筋が繋がっているので、バナナの皮をむく要領でむいていきます。ゆっくり進むと、最後まで切れずに取りのぞけます。
筋は両側に2本あるので、次は先端からもむいていきます。針のように細い先を折り取って、先程とは反対側の筋をむきます。
この筋取りは、お子さんの小さな手でやさしくむくと筋が切れにくく、お手伝いにはピッタリです。おしゃべりをしながら、楽しく作業ができるので、ぜひ頼んでみてくださいね。
また、筋がないいんげんもあります。これはもともと筋が柔らかいので筋取りの必要はありません。ヘタだけ包丁で切り落としてください。
下茹でする
次に、3~4センチに切り分けて、塩ゆでをします。お湯1リットルに対して、小さじ2の割合で塩を入れ、固めに茹でてください。
茹で上がったいんげんは、よくお湯を切った後、氷水で急冷します。色も鮮やかで食感が良くなり、おいしいいんげんに仕上がりますよ。
冷蔵保存のポイント
水をよく払った後、タッパーなどに入れて保存します。このいんげんがあれば、和え物やおひたしがいつでも作れて、食卓の彩りも良くなります。ちょっとした一品があると嬉しいものですよね。
保存期限
茹でたいんげんは、3日間から5日間を目安に食べるようにしてください。
作り置きができる保存食
マヨネーズで和える時は、茹でたいんげんの熱が冷めてからがポイントです。熱でマヨネーズが分離するのを防ぎ、まろやかに食べられます。
オリーブオイル、にんにく、塩で和えるマリネもおすすめ。こちらは逆に、茹でたての熱々で和えるのが、冷める過程で味が染み込むテクニックです。チーズを添えて大人のおつまみにいかがでしょうか。
また、茹でいんげんを調理するときは、水分がでない工夫をすると、より長もちする常備野菜になります。胡麻の他にも、鰹節や海苔を入れることで水気を吸い取る役目にもなり、味や栄養のバランスもアップ。
いんげんは冷凍保存もできる
いんげんは冷凍保存しても食感があまり変わりません。たくさん茹でておけば使い勝手が良く、味の染み込みも良いのでおすすめです。手軽に使えるので、詳しくは下の記事をご参考にしてください。
常備できてお弁当にも役立つレシピをご紹介
いんげんは、作り置きして常備野菜にするのもむいています。まとめて作っておけば忙しい朝やお弁当のおかずに、なにかと便利なものです。苦味がないので彩りに使いやすく、ちょっと添えればお皿が華やかになりますよ。
鶏団子と卵のさっぱり煮
ひき肉を子どもが食べやすい鶏団子に。酢を使った甘辛い煮汁は、豆腐や麺類を煮てもおいしいので、リメイクレシピまでたっぷり味わえます。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
鶏ひき肉 200g
長ねぎ 15cm
ゆで卵 3個
いんげん 6本
【A】
だし汁 1と1/2カップ
みりん 1/2カップ
しょうゆ 1/2カップ
酒 1/4カップ
酢 1/4カップ
◆作り方
【1】長ねぎをみじん切りにして鶏ひき肉と合わせ、粘りが出るまで混ぜ、10個の団子に丸める。ゆで卵は殻をむく。
【2】鍋に【A】を入れて火にかけ、沸騰したら強火で3分煮て酸味をとばす。【1】を加え、弱めの中火で4~5分煮、いんげんを加えてサッと煮る。
*鶏のうま味が出た煮汁は、麺類のつけ汁にしても。または、豆腐などを煮てもおいしい。
教えてくれたのは
井澤由美子さん
旬の食材を使い、食べ合わせによる体への相乗効果を大切にしたレシピが人気。食育にも力を注ぐ。一女の母。
『めばえ』2014年9月号
うずらといんげんのピックサラダ
ホームパーティのときやお弁当のサラダは、ピックに刺してパクッと食べやすく♪ ソースはマスキングテープで留めれば見た目もかわいく、液もれの心配もありません。
◆材料
(8本分)
うずらの卵の水煮 4個
さやいんげん 8本
【A】
マヨネーズ 大さじ3
トマトケチャップ 大さじ1
塩 適量
◆作り方
【1】さやいんげんは塩ゆでして、3等分に切る。うずらの卵は半分に切り、いんげんとともにピックに刺す。
【2】【A】を混ぜ合わせ、ラップで巾着のように包み、マスキングテープで口を留め、ピックを添える(食べるときにピックでラップに穴をあけてかけ回す)。
カップコールスロー
シンプルなコールスローは、うずらの卵を飾り切りにして華やかさをプラス! 作り方も簡単で、お弁当や付け合わせに重宝します。
◆材料
(大人3~4人分)
キャベツ 1/4個
さやいんげん 10本
コーン(缶詰) 大さじ8
【A】
マヨネーズ 大さじ4~5
酢 大さじ1
砂糖 大さじ1/2
塩 適量
うずらの卵の水煮 適量
※大人1人分の分量は、子ども2人分ぐらいになっています。
◆作り方
【1】キャベツはせん切りにして塩でもみ、水けを絞る。
【2】さやいんげんは塩ゆでして輪切りにする。
【3】【1】、【2】 、コーン、【A】 を混ぜ合わせ、塩で味を調える。
【4】1人分ずつカップに盛り、飾り切りにしたうずらの卵をのせる。
教えてくれたのは
ほりえさちこさん
栄養士、フードコーディネーター、飾り巻き寿司インストラクター1級。男の子のママ。育児経験を生かした簡単で栄養バランスのとれた料理や、かわいいお弁当レシピが人気。
『めばえ』2013年10月号
ちょうちょピザ
ハート形で抜いたハムを羽にして。いろいろな絵柄にチャレンジしても楽しそう。
◆材料
(直径10cm×2枚分)
ピザ生地 基本の生地の1/6量
トマトソース 大さじ2
ピザ用チーズ 大さじ2
ハム 2枚
いんげん 2本
◆作り方
【1】ピザ生地を2等分して直径10cmほどにのばし、トマトソースを塗り、チーズを散らす。
【2】【1】に、ハート形に抜いたハム8切れと、ゆでて4cm長さに切ったいんげんをのせて蝶の形にし、いんげんの輪切りで目をつける。
【3】220℃に熱したオーブンまたはオーブントースターで10分ほど焼く。
◆ポイント
薄いクリスピータイプのピザ生地を発酵なしで簡単に!
■材料(直径25㎝×2枚分)
強力粉 200g
塩 小さじ1
水 100㏄
オリーブ油 大さじ2
【1】混ぜる
ボウルに強力粉、塩、水を 入れ、箸などで混ぜ合わせる。
【2】こねる
【1】にオリーブ油を加えて、手でこねる。まとまったら、30分ほどおく。
【3】のばす
【2】を2等分し、めん棒(または手)でそれぞれ直径25 ㎝ぐらいにのばす。
*生地は【2】の状態で冷凍保存できる。ラップに包み、冷凍保存用袋に入れる
■どんな具にも合う定番中の定番!トマトソースの作り方
■材料(1と1/2カップ分)
【A】
トマト水煮(缶詰) 1缶
砂糖 大さじ1
塩 小さじ1
玉ねぎ 1/2個
にんにく 1片
オリーブ油 大さじ2
■作り方
【1】玉ねぎは粗みじん切りに、にんにくは みじん切りにする。
【2】鍋にオリーブ油を中火で熱し、【1】を炒める。薄茶色になったら【A】を加え、トマトを潰しながら加熱し、半量ほどになるまで煮詰める。
教えてくれたのは
鈴木 薫さん
シンプルで、おいしくて、センスのいいレシピが人気。双子の女の子、男の子の母。
『めばえ』2015年3月号
【1】蒸し煮インゲンとマッシュかぼちゃのサンドイッチ
食欲をそそる明るいビタミンカラーがポップでかわいい♪ 野菜は蒸し煮にすると甘みがアップしてグッとおいしくなります。パワー食材のインゲンで栄養バランスも◎!
◆材料
(大人2人+子ども1人分)
インゲン 100g(すじを取る)
塩 少々
かぼちゃ 200g
【A】
絹ごし豆腐(キッチンペーパーを4枚重ねて包み、水気を取る) 1/4丁
オリーブオイル 大さじ1
米酢 小さじ1
てんさい糖 小さじ1/3
マスタード 少々
塩 小さじ1/3くらい
サンドイッチ用パン 4枚
マーガリン 適量
◆作り方
【1】厚手の鍋に、インゲン、塩、水少々(分量外)を入れてフタをし、弱火にかける。インゲンが柔らかくなったら全体を混ぜてフタを取り、火を強めて水分を飛ばす。
【2】かぼちゃは皮をむき、乱切りにして鍋に入れ、水50ml(分量外)と塩少々(分量外)を加えて、インゲンと同様、弱火で蒸し煮にする。
【3】【2】をボウルに入れてつぶし、【A】をフードプロセッサー(またはミキサー)で混ぜ合わせて作った豆腐マヨネーズ※を混ぜる。
【4】パンの片面にマーガリンを塗る。パン→【3】→【1】→【3】→パンの順に重ねてサンドイッチを作り、食べやすい大きさに切る。
※通常のマヨネーズでも代用可。
◆ポイント
インゲンは、多様な栄養をバランス良く含む。
抗酸化作用の高いβ-カロテンをはじめ、ビタミンB群・C、食物繊維、ミネラル、必須アミノ酸…と、さまざまな栄養素をバランス良くとれるパワフル食材。
蒸し煮で甘みがUP!
野菜は最小限の水と塩を加えて蒸し煮することで、クセが消え、味が凝縮されて、甘みもUP。素材そのもののおいしさを楽しめます。
教えてくれたのは
カノウユミコさん
野菜料理研究家。鳥取県の専業農家に生まれ、生来の野菜好き。高校時代から自然食に興味を持ち、ベジタリアン料理・精進料理を研究。現在は鳥取に住み、自ら野菜を自然栽培。東京でも毎月、野菜料理教室を開催している。
『めばえ』2017年7月号
いんげんに秘められた栄養
いんげんは収穫期が長く、安価で保存もしやすい野菜です。疲労回復効果、美肌効果、抗酸化作用と、栄養の塊です。胡麻和えとの相性の良さや癖のなさから、普段から意識せずに口にしがちです。そんな、なにげない一品が持つ栄養に、私たちの健康は支えられているのですね。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)