子育て中こそ、「アップサイクル」の考え方を活用しよう
「アップサイクル」という言葉をご存じですか? 捨てる予定だった廃物に手を加え、別の何かにつくり替えて再利用するといった感じの意味です。小学館の辞書『大辞泉』には「古布や廃材を用いてしゃれた小物をつくる」といった例も書かれています。
子育て中のパパ・ママこそ実は暮らしに取り入れたい考え方が、このアップサイクルです。子ども用の衣類はサイズアウトしてすぐに使えなくなってしまいますよね。
着用期間が短くきれいな子ども服を誰かに「お下がり」であげるにしても限度がありますし、捨ててしまってはもったいないです。別の何かにつくり変えて再利用できれば、思い出も残りお財布にも優しいわけです。
日本一小さな村・富山県舟橋村の子育てママたちによるハンドメイドチーム「funacco」の中本礼(ゆき)さんに、子ども服をつくりかえるアップサイクルのアイデアを今回は教えてもらいました。
難易度別に3つの制作例を紹介します。皆さんの親しみやすい範囲でまねしたり、参考にしたりしてみてくださいね。
アイデアその1:Tシャツクッションカバー(初心者向け)
最初のアイデアは超簡単。ミシンも針・糸も用意せずに、ハサミさえあれば誰でもまねできる「Tシャツクッションカバー」です。
子どものサイズアウトしたTシャツを探します。子ども用のTシャツは色柄のバリエーションも豊富です。子ども部屋やリビングのインテリアとしてふさわしいTシャツをピックアップしてください。
カバーをつくるクッションの大きさにTシャツの前身ごろ(衣服の袖・襟などを除いた胴体の部分の布)と後ろ見ごろを切り、切り取った2枚の四角い布の四辺に大胆に切り込みを入れます。
2枚の布の切り込みを最後は結び合わせるだけ。簡単ですよね。
アイデアその2:重ね着風シャツ(中級者向け)
丈の短くなったシャツを「重ね着風シャツ」としてよみがえらせるテクニックを次は紹介します。
小さい子どもは身長がぐんぐん上へ伸びます。骨格の成長が一方でまだまだだと、丈だけが短いつんつるてんのシャツになってしまうケースが多いですよね。
そんな時に試したいテクニックが重ね着風シャツづくりです。発想自体は簡単です。サイズアウトしたシャツを1枚選んで(A)、すそをイカリングのように切ります(例えが悪いですが)。丈が短くなった別のシャツ(B)のすその内側にその「イカリング」を縫い付けます。以上で出来上がりですね。
道具としてミシンが必要になるので、ちょっと手間と難易度が上がるかもしれません。ミシンを持っていない人は手縫いになるのでさらに面倒に感じるかもしれません。
しかし重ね着風のシャツを自分で、しかも子どものサイズアウトした服でつくれるのですから画期的なアイデアですよね。
アイデアその3:どこでもポーチ(上級者向け)
アップサイクル・プロジェクトの一環で「funacco」も手掛ける「どこでもポーチ」を最後に紹介します。園や学校へ持っていくハンカチ・ティッシュを入れられる便利な「移動ポケット」です。
ズボンやスカートに取り付けるクリップ付きポーチにサイズアウトした子ども服をつくり変える手順は大まかに4つ。
1.必要な布を子ども服から裁断して切り出す
2.クリップを引っ掛けるひもをつくる
3.ポケットティッシュ入れをつくり、本体に縫い付ける
4.本体を完成させる
言葉だけで解説すると理解できないかもしれないので、「funacco」の皆さんも参考にしたというYouTubeチャンネルのURLを念のため掲載しておきます。
さらに説明すると次のような感じ。
1.必要な布を子ども服から裁断して切り出す
- ・横長の長方形の生地×1(横17cm・縦4cmなど)・・・クリップを引っ掛けるひも
- ・表地×1・裏地×1(それぞれ横17cm・縦21cmなど)・・・ポケットティッシュ部分
- ・表地×1・裏地×1(それぞれ横17cm・縦31cmなど)・・・本体部分
2.クリップを引っ掛けるひもをつくる
- ・長方形の生地(横17cm・縦4cmなど)を横長に置き、中心線に向かって上下の端を四つ折りにする。最後に開いた端をミシンで閉じる
- ・事前に切り出した本体部分の表地(A)の上端近く(端から2.5cmなど)に縫い付ける
3.ポケットティッシュ入れをつくり、本体の表地に縫う
- ・表地×1・裏地×1(横17cm・縦21cmなど)を中表にして(それぞれの布の表が内側になるように重ね合わせて)長さの短い2辺を縫う
- ・縫い合わせた生地(a)を裏返して(表にして)先ほど縫った2辺をあらためて縫う
- ・縫った生地(a)と本体の表地(A)をそれぞれ縦長に向けて、中表にして(a)を上に重ねる(ひもを縫い付けた2の部分とは逆側)
- ・フラップ(ポケットのふた)のように(a)の上下の端を折り重ね、重ねた状態のまま本体部分の表地(A)に縫い付ける
(ポケットティッシュケース部分は完成)
4.本体を完成させる
- ・表地×1(A)・裏地×1(B)を縦長に置き、中心線に向かってそれぞれの布を中表になるように2つ折りにする。左右の2辺をそれぞれ縫う。裏地(B)については、返し口(袋状に布を縫い合わせる時、縫わずにあけておく部分)を5cmほどあけて縫う
- ・表地(A)・裏地(B)にマチを縫う
- ・裏地(B)を表にひっくり返して、裏返したままの表地(A)の中へ中表で入れる
- ・裏地(B)と表地(A)の中心を合わせる
- ・縫い代1cmなどで口の部分をぐるりと縫う
- ・返し口から表地(A)と裏地(B)を裏返す
- ・裏地(B)の返し口を縫い閉じる
- ・裏地(B)を表地(A)の中へ戻して、縫い代0.5cmなどで口をぐるりと一周ミシンをかける
- ・口にプラスナップをつける
- ・本体部分に事前に縫い付けた2のひもにクリップを取り付ける
以上で完成です。ハードルが急に上がりましたね。文章を読みながら「さすがにポーチは…」と感じる人もいるかもしれません。
初級編や中級編など簡単なアップサイクルは自分でチャレンジし、「どこでもポーチ」などハードルが高い上級者向けのアップサイクルは、子育て応援ハンドメイドチーム「funacco」のようなプロにお願いしてもいいかもしれません。
いずれにせよ子ども服を簡単に捨てずにアップサイクルする親の姿は、物を大切にする生き方をわが子に伝えられるはずです。
持続可能な未来の社会づくりを中心になって担う子どもたちに、大切な価値を教えるためにも、アップサイクルに家庭内でぜひチャレンジしてみてくださいね。
【取材協力】
funacco・・・富山県舟橋村の子育て支援センター「ぶらんこ」の利用者の中で、ハンドメイドに取り組むママたちが結成したグループ。サイズアウトしたアウトドアウエアを回収して、日用品につくり変えてお返しするアップサイクル・プロジェクト「matane.」を展開する。費用は1,800~4,500円。
アップサイクルの依頼はウェブサイト「ふなはしBAZARオンライン」から。
取材・文/坂本 正敬