国家公務員になるには? 受験資格・試験の種類・試験対策のポイント【職業資格について学ぼう】

「子どもが学校に通い始めたら、雇用が安定している国家公務員として社会復帰したい」と考える人もいるのではないでしょうか。子育て中でも受験できるのか、どのような試験があるのか、社会人からの採用枠や試験の種類などを解説します。

国家公務員とは

公務員は、採用先により、大きく「国家公務員」と「地方公務員」に分けられます。

国家公務員は中央省庁など国の機関に採用され、国の業務に従事する職員です。広くは大臣や国会議員なども含みますが、ここでは受験して採用される側の人について紹介します。

国の機関で公の仕事に携わる者

国家公務員の業務は、国の財政運営・産業振興から、医療・教育など暮らしに直結する分野まで多岐にわたります。国家公務員の総数は2021年現在、約58.8万人で、割合は地方公務員も含めた全公務員の17.7%です。

そのうち、大臣・防衛省職員といった特別職を除く約半数が、各省庁の職員などの「国家一般職」にあたります。勤務先は、1府12省庁・国会・税務署等の国家機関で、各分野のスペシャリストともいえるでしょう。

霞が関官庁街(東京都千代田区)。手前が警視庁本部庁舎、その後ろ側が警察庁、国家公安委員会、総務省、国土交通省などが入る霞が関中央合同庁舎第2号館。

 

参考:国家公務員の数と種類

総合職と一般職の違い

国家一般職は、「総合職」と「一般職」に大別されます。どちらも各省庁から内定を得て職員になりますが、仕事内容や勤務地が異なります。

「総合職」は、いわゆる中央省庁の官僚として、政策立案や予算編成などに携わる仕事です。基本は霞が関(東京)に勤務しますが、省庁によっては数年間隔で地方へ出向します。

一方、「一般職」は企画立案を支える立場で、事務処理等の定型的な業務を主に行います。省庁採用の場合、基本的に勤務地は東京です。

地方出先機関で採用された場合は、関東甲信越地域などのブロック単位で勤務します。転勤も、採用されたブロック内に限る場合がほとんどです。

国家公務員になるためには

受験資格を満たしたうえで、国家公務員試験に合格しなければいけません。

試験に臨む前に、受験の流れを知っておきましょう。押さえておくべき国家公務員の受験資格や試験内容を解説します。

受験資格を確認

国家公務員試験の受験資格は、年齢・学歴などにより異なります。年齢は「21歳以上30歳未満」の場合が多いですが、試験によっては、その基準より高くても受験可能です。

例えば、法務教官(社会人)の年齢上限は40歳です。特殊な職務内容で、社会人経験が必要なことから、年齢上限が高く設定されています。

なお、地方公務員は国家公務員よりも年齢上限が高めの傾向にあります。

国家公務員採用試験は、国の行政機関である「人事院」が国家公務員法に基づいて実施しています。希望する職種の要件を満たしているか、勉強前に人事院のホームページで受験資格をチェックしましょう。

参考:試験情報|国家公務員試験採用情報NAVI

国家公務員試験を受ける

国家公務員は、筆記による「第1次試験」と、面接などの「第2次試験」を経て選ばれます。「総合職」や「一般職」など複数の種類がありますが、試験の難易度は総じて高めです。

特に、総合職試験の偏差値は75以上と、非常に難しい現状があります。一般職でも偏差値は60台前半~半ばなので、どちらも難関といってよいでしょう。

合格率で見ても、総合職は5%程度、一般職は7%程度とかなりの高倍率です。

国家公務員は安定しているイメージがあり、人気も高止まりしています。国家公務員試験に合格するのは、簡単ではないのです。

官庁訪問と人物試験後に採用決定

第1次試験に合格したら、希望する省庁に官庁訪問を行います。そこで各省庁のスタッフから、人物試験の詳細や業務に関する説明を受けます。

官庁訪問後に第2次試験が行われ、採用者が決定されます。第2次試験は、集団面接・集団討論・個別面接・プレゼンテーションなど、形式はさまざまです。

面接では、志望動機や目標などを、事前にまとめておくことが重要です。また、集団討論では協調性やリーダーシップを見られるため、アピールできるよう準備しておきましょう。

厚生労働省、環境省などが入る中央合同庁舎第5号館(東京都千代田区)。

国家公務員試験は4種類

国家公務員試験は、学歴や業務内容、採用する機関によって種類が異なります。選択肢が多いため、どれを受験したらいいか迷う人もいるでしょう。

業務内容や必要な専門知識などを基に、試験を大きく4種類に分けて説明します。

政策の企画立案能力「総合職試験」

主に政策の企画・立案や、技術・経験を必要とする職員の採用試験です。国家総合職は「キャリア組」の通称で呼ばれることもあり、中央官庁の幹部候補生でもあります。

最終学歴によって試験が分かれており、受験資格は下記の通りです。

≪院卒者試験≫

  1. 30歳未満で大学院・専門職大学院を修了および修了見込みの人(法務区分は、司法試験合格者等が対象)
  2. 人事院が1と同等の資格があると認める人

≪大卒程度試験≫

  1. 21歳以上30歳未満の人(教養区分については20歳も受験可)
  2. 大学卒業および卒業見込みの人、また人事院が同等の資格があると認める人(短大卒は除く)

大学の専門課程で学ぶような内容が出題される「専門試験」に加え、「政策課題討議試験」もあるため、しっかりとした対策が必要です。

基礎能力と専門能力「一般職試験」

主に、定型的な事務に携わる職員を採用するための試験です。

≪社会人試験(係長級)≫

  1. 40歳未満の人
  2. 人事院が1に準ずると認める人

≪大卒程度試験≫

  1. 21歳以上30歳未満の人
  2. 20歳の人で大学・短大・高専を卒業および卒業見込みの人
  3. 人事院が2と同等の資格があると認める人

≪高卒者試験≫

  1. 高校または中学卒業見込みの人、および卒業後2年以内の人
  2. 人事院が1に準ずると認める人

一般職試験は、総合職試験と同様に「専門試験」がありますが、「政策課題討議試験」はありません。筆記試験の配点が高いため、ここで得点を稼げるよう準備することが大切です。

参考:2021年度国家公務員採用試験の施行計画

専門分野の知識量「専門職試験」

特定の行政分野に関わる専門知識があるかどうかを重視して選考する採用試験です。「外務省専門職員採用試験」や「国税専門官採用試験」など、多くの種類があります。

受験資格は各採用試験によって異なりますが、深い専門知識を持っているかが問われます。例えば、「外務省専門職員採用試験」なら、第1次試験・第2次試験とも外国語試験が課されます。

前職の専門分野を生かせる専門職試験がないか、チェックしてみましょう。

参考:外務省専門職員採用試験|外務省

実務経験者が目指す「経験者採用試験」

主に、民間企業などで実務経験のある人が対象の試験です。受験資格は「係長級(事務)」「その他」によって違います。

≪係長級(事務)≫

大学等を卒業した日、または大学院の課程等を修了した日のうち、もっとも古い日から2年(※1)が経過した人
(※1)第1次試験が行われる年度の4月1日における経過年数で数える

≪その他≫

大学卒業後、一定の年数(※2)が経過している人
(※2)応募する職務により年数は異なる。

特定の資格を持つことが要件になっている試験もありますし、年齢や経験によっては、一般職試験の受験資格も同時に満たしている場合があります。

募集要項や試験の特徴を理解して、自分にとってより有利な方を選びましょう。

参考:経験者採用試験(係長級(事務))|国家公務員試験採用情報NAVI

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国家公務員試験対策のポイント

国家公務員試験は種類も多く、出題内容も膨大です。競争率も高いため、惰性で勉強しても合格は難しいでしょう。

採用を勝ち取るための対策について解説します。

試験科目とスケジュールを把握

公務員試験に合格するには、800~1500時間の勉強時間が必要といわれています。

例えば、800時間勉強する場合、1日2時間なら13カ月以上かかる計算になります。余裕を持って勉強時間を確保したうえで、どの科目にどれくらい時間をかけるか、3カ月・1カ月・1週間の単位まで落とし込んで考えてみましょう。

国家公務員試験は、大学受験で、どの科目をどれだけ勉強してきたかや、大学の専攻などによっても勉強時間が大きく異なります。

また、子育てをしながらでは、思うように勉強が進まないことも考えられます。できるだけ余裕を持ったスケジュールを組んで、1日あたりの勉強量を把握しておきましょう。

予備校や通信講座の利用も

出題傾向をつかんで効率的に勉強をするためには、予備校や通信講座を利用するのがおすすめです。カリキュラムの作成などを任せることができ、不明点を質問して勉強に集中できるので心強いでしょう。

通信講座は、通学時間を短縮したい人や、コストを抑えたい人に向いています。質疑応答ができますし、自分の都合に合わせて勉強できるメリットがあるので、子育て中の人にもぴったりでしょう。

特に、初めて受験をするときは、効率的な対策も取りづらいものです。不安を残さず試験に取り組めるよう、予算や都合に合わせて学習サービスを検討しましょう。

予備校に通って、合格を目指そう

諦めない姿勢が難関試験突破の鍵

国家公務員の種類は幅広く、30歳以上で受けられる試験もあります。合格率は高くありませんが、地道に勉強すれば、子育てしながらの試験突破も夢ではありません。

ただし、効率的に合格を目指すなら、戦略的な対策が必要です。慣れが必要な科目や優先順位の高いものから、早めに取り組みましょう。

予備校などの利用も検討して、粘り強く挑戦することが試験突破の鍵(かぎ)になります。

構成・文/HugKum編集部

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