新生姜とひね生姜の違いは
みずみずしくて清涼感があり、甘酢漬けにすると優しいピンク色に染まる新生姜。まずは、普通の生姜との違いをご紹介します。
新生姜とは
収穫されてすぐの、水分量が多い生姜が新生姜です。そのため、いつでも手に入るわけではありません。主に出回るのは6月から8月です。本来の収穫時期は秋ですが、その爽やかさが夏場の食材と相性が良いことから、ハウス栽培の技術が発達し、収穫時期の前倒しが主流となりました。夏に見かけるのは、こうした理由があるからです。
その他の生姜
植え付けた「種生姜」から新しい葉と共に成長したのが新生姜で、これを乾燥させたものが「ひね生姜」です。また、地中に植えられた「種生姜」もその後に収穫され、流通します。そのため呼び名が混在し、本来の生姜の旬がいつなのか、わかりづらくなっているのが現状です。以下の名称がすべてわかるという方は、生姜博士かもしれませんよ。
「葉生姜」は、地下茎を葉つきで収穫したもの。漬物は「はじかみ」です。
「新生姜」は、収穫したてのみずみずしい生姜のこと。
「ひね生姜」「根生姜」「古根」「土生姜」、これらはすべて同じものを指します。もとは「新生姜」や「種生姜」だったものを、収穫後に寝かせると名前が変わるんですね。長期の貯蔵ができることから、こちらは一年中手に入れることができます。「ひね生姜」とは漢字で書くと「古生姜」です。
「根生姜」「古根」は農家や出荷先で使われる名称で、「土生姜」はスーパーなどの売り場で使われているのを目にします。
最後に「種生姜」とは、植え付けるための生姜ですが、食用にもなります。「根生姜」の中から、ふさわしいものが選別されて、次の年に植え付けられます。
「新生姜」と「ひね生姜」の使い分け
新生姜は柔らかくて辛味が少ないため、薄くスライスすればそのままで食べることもできます。
一方のひね生姜は、乾燥して繊維が固くなり辛味が増すので、すりおろしたり刻んだりしたものが薬味として少量添えられます。その他は、炒め物や、炊きものとして加熱料理に使うことが一般的です。
新玉ねぎと普通の玉ねぎのような関係が、新生姜とひね生姜にも当てはまるんですね。
新生姜の保存方法
基本的に新生姜はひね生姜の保存と同じです。水分量が多いためにカビが発生しやすいですが、その原因は、冷やし過ぎかもしれません。
常温
生姜は熱帯の暑い気候が原産の植物で、冷蔵庫のような寒い場所は苦手ですから、常温保存が基本です。
15℃以上の気温でそのまま置いておくと、乾燥してきます。気温が高いと芽が出て成長する可能性もありますが、食べて問題があるものではありません。
使いかけでも、同じ保存を続けてかまいません。
生姜は収穫後も呼吸をしているので、買ってきた袋の中に水がつくことがあります。だからといって冷蔵庫へ入れてしまうと、かえってカビの原因となってしまいます。植物の生理現象と理解して、常温保存を続けながら使ってください。
冷蔵はNG
農家の方が長期貯蔵する環境は室温15℃、90%の湿度です。冷蔵庫はこれよりも低い温度で乾燥もしており、真逆の環境です。冷やし過ぎはカビのもとになるので、冷蔵保存は避けます。
冷凍
新生姜をそのまま冷凍すると、5〜10分程度常温に置くだけで、切ったりすりおろしたりできます。丸ごとのまま、キッチンペーパーなどに包み、冷凍用保存袋に入れて冷凍庫へ入れます。
保存期間
新生姜は、専門の農家では1年間貯蔵しています。ご家庭でその環境を再現するには無理がありますが、上手に乾燥が進めば、数か月保存しても問題はありません。もしもカビが生えてしまっても、大きく切り取って、きれいな部分を使えば大丈夫ですよ。
冷凍したものは冷凍焼けの心配があることから、1か月をめどに使うようにしてください。
漬物にして保存
新生姜を漬物にすると、かわいらしいピンク色に発色するところが、かわいらしいですね。
甘酢漬け
混ぜご飯や鯖寿司の添え物に、自家製のガリはいかがでしょうか。タルタルソースにピクルスの代用として入れられます。
材料
新生姜 250g
塩 小さじ1/2
【A】
酢 250cc
砂糖 90g
作り方
【1】新生姜の下処理をします。スプーンを使って皮をきれいにこそげ落とします。スライサーを使い、繊維に沿ってできるだけ薄くスライスしてください。
【2】次はアクを抜く作業です。鍋にたっぷり湯を沸かし、新生姜を軽く茹でたあとザルに上げ、塩を全体になじませます。このまま冷めるまで待つと、下ごしらえは完了です。
【3】甘酢を作ります。【A】の調味料を鍋に入れ、砂糖が溶け出したら火を止め、冷まします。
【4】【2】の水気をしっかりと絞り、容器に入れて【3】を注ぎ漬けます。一日寝かせば食べられます。
梅酢なら紅生姜になりますし、らっきょう酢や市販の漬物用調味料でも同じ手順で漬けられます。残ったつけ汁でピクルスを作ると、引き続き楽しめます。
保存期間
煮沸した清潔な保存容器で保存すると半年ほど食べることができます。
岩下の新生姜
TV番組でも取り上げられたことから人気の商品で、優しい甘味です。漬け汁のほか、紅生姜などもあり、種類が豊富です。
佃煮にして保存
ひね生姜と違い、辛味がやさしい新生姜は佃煮にしてもおいしいですよ。
新生姜の佃煮
おじゃこや鰹節を一緒に炊いてもおいしいです。ご飯のお供に。
材料
新生姜 250g
醤油 50cc
酒、みりん 各10cc
砂糖 80g
作り方
【1】鍋にスライスした新生姜と材料をすべて入れ、中火で10分ほど煮ます。落し蓋をしてさらに20分煮ます。
【2】落とし蓋をとり、しっとりと水分が残る程度のところで火を止めれば完成です。
新生姜を使った保存食レシピ
作り置きの際にも、生姜の殺菌作用は嬉しい効果ですね。以下は生姜のレシピですが、新生姜で作ると爽やかな仕上がりに。
ゆで鶏ご飯
鶏もものうま味と油がご飯に染みておいしい、子どもに大人気の一品。しょうがを効かせて、免疫力も強化!
◆材料
(3~4人分)
鶏もも肉 1枚
鶏胸肉 1枚
しょうが 1/2片
長ネギ(青い部分のみ) 1本
水 300ml
酒 大さじ1
塩 小さじ1/2
しょうが汁、しょう油 適量
雑穀米ご飯 150g程度
◆作り方
【1】大鍋に鶏もも肉、鶏胸肉を入れ、長ネギ、スライスしたしょうが、酒、塩、水を加えて火にかける。沸騰したら弱火にしてアクを取り、15分ほど煮る(鶏肉に竹串を刺して透明な汁が出てきたら火を止め、鶏肉を裏返して余熱で火を通す)。
【2】ご飯を皿に盛り付けて、薄くスライスした鶏肉とスライスしたきゅうり(分量外)を添える。しょう油にすりおろしたしょうがを加えてタレを作り、鶏肉にかける。
◆ポイント
長ネギとしょうが、塩を加えてゆっくりゆでることで、肉の臭みが抜けます。
教えてくれたのは
瀬戸口しおりさん
料理家。学生時代、東京・吉祥寺にあった『諸国空想料理店KuuKuu』のスタッフとして働き始め、その後、料理家・高山なおみ氏のアシスタントを経て独立。昔ながらの家庭料理や人気のエスニック料理をよりおいしく、おしゃれにレベルアップさせる独自のセンスに定評がある。
『めばえ』2017年9月号
鮭豆腐ハンバーグ
お肉の代わりに魚と豆腐であっさりと! 和風ソースをかけてヘルシーに
◆材料
(3人分)
鮭切り身 2切れ(200g)
木綿豆腐 1/2丁(150g)
玉ねぎ(みじん切り) 1/8個分(25g)
【A】
パン粉 10g
しょうが(すりおろす) 小さじ1/2
片栗粉 大さじ1
酒 小さじ2
塩 小さじ1/4
サラダ油 大さじ1/2
【B】
しょうゆ、みりん 各大さじ1
砂糖 大さじ1/2
片栗粉 1/3
ゆでたさやいんげん、プチトマト 各適量
◆作り方
【1】豆腐はキッチンペーパーに包んで重石をのせ、15分ほど置いて水切りする。鮭は骨、皮を除いて包丁で刻み、軽く粘りが出るまでたたく。
【2】ボウルに豆腐を入れて手でつぶし、鮭、玉ねぎ、【A】を加えて粘りが出るまで練り混ぜる。おおよそ3等分(子ども用はやや小さめ)にして厚さ1.5㎝ほどの大きい小判型にととのえる。
【3】フライパンにサラダ油を中火で熱し、【2】を並べる。2分ほど焼いてこんがりとしたら裏返し、蓋をして弱火で4分ほど蒸し焼きにし、器に盛る。
【4】【3】のフライパンをキッチンペーパーできれいにし、【B】を混ぜ入れて中火にかける。混ぜながら煮立たせ、軽くとろみがついたら【3】のハンバーグにかける。ゆでたさやいんげん、プチトマトを食べやすく切って添える。
教えてくれたのは
市瀬悦子さん
フードコーディネーター・料理研究家。「おいしくて、作りやすい家庭料理」をテーマに、書籍や雑誌、テレビ、イベント、企業のメニュー開発など幅広く活躍。NHK E テレで子どもの料理番組を監修・フードコーディネートするなど、キッズメニューも得意。
保存方法が知られていない新生姜
新生姜はお店で見かける時期はごく限られている貴重な食材です。保存の方法があまり知られていないため、見過ごされがちですが、一般的な生姜と扱い方は変わりません。作り慣れた豚の生姜焼きに使ってもよいので、試してみると新しい発見があるかもしれません。あまり難しく考えず、次に見かけた時はぜひ手にとってみてくださいね。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)