「てんしる ちしる われしる ひとしる」ってどう書くの?
「てんしる ちしる われしる ひとしる」という言葉を聞いたことがありあすか? 「しる」だらけのこの言葉。いろんなお汁の種類かと思いきや…。
意味を確認するには、漢字表記をチェックするのが近道です。
「てんしる ちしる われしる ひとしる」、ちゃんと漢字で書けますか? 頭の中で「てんしる ちしる われしる ひとしる」を漢字で書きとりしてみましょう。
「てんしる ちしる われしる ひとしる」の意味
漢字で書くとおのずから意味が伝わってきますね。
誰も知るまいと思っても天も地も知っており、私もあなたもそれを知っている。知るまいと思われることでも必ず誰かが知っている。不正・悪事はいつかは必ず露顕するものだ。
『小学館 ことわざを知る辞典』より
なかなか深い意味の言葉ですね。さて、意味がわかったところで、それではこのことわざ、どんな場面で使われるのでしょうか。
それは、この言葉が生まれた故事に遡るとよくわかります。
中国、後漢の楊震が王密から金十斤をおくられ、「誰も知っている者はいませんから」といわれたのに対して答えたことば。
『小学館 ことわざを知る辞典』より
つまりこれは、賄賂のやりとりがされそうになった場面で生まれた言葉なのです。
楊震という政治家のおかげで昇進した王密という役人が、そのときの返礼と、おそらくはさらなる引き立てを期待してのことでしょうか、楊震に金品を渡そうとしたときにこんな会話がなされたと伝えられています。
楊震「私はあなたがどういう人かよく覚えているというのに(その学識を知っていたから役人として引き立てたというのに)、あなたは私がどういう人間か忘れてしまったのですか」
王密「いえいえ、もう夜も遅いですし、誰にも知られませんから…」
楊震「天は知っているし、神様も知っているし、私も、あなたも知っているではないか。誰も知らないなどとよくも言えますな」
王密「……(ガーン)汗」
結局、金十斤を楊震は受け取らず、王密は恥じてすごすごと引き下がったということです。
誘惑に負けない呪文
人は誰でも、よくないとわかっていても、つい誘惑に屈してしまうことがありますね。そんなときこの「天知る、地知る、我知る、人知る」は、まさに魔法の呪文のように、私たちの良心を呼び覚ましてくれます。いざというときのために、胸にしまっておきたい言葉ですね。
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古くから現代に伝えられた言葉には、人間心理を見透かし、私たちが犯しやすい過ちを諫めてくれる力があります。ほかにも多くの気づきを与えてくれることわざ・故事成語がありますので、興味がある方はチェックしてみてください。
構成/HugKum編集部
協力/小学館 辞書編集部
イラスト/谷山彩子
小学館 ことわざを知る辞典
編/北村孝一 定価/1900円+税
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