学習効率が上がるアダプティブラーニングとは? メリットや導入事例も

近年よく耳にする「アダプティブラーニング」とは、どのような学習方法なのでしょうか。保護者にとっては、子どもの勉強への影響や費用面なども気になるポイントです。アダプティブラーニングの特徴と、主な導入事例を紹介します。

話題のアダプティブラーニングとは?

子育て世代の人にとって、アダプティブラーニングに関するニュースに触れる機会は多いのではないでしょうか。アダプティブラーニングの意味と、話題になっている理由を見ていきましょう。

個々に合わせた学習内容を提供する仕組み

アダプティブラーニングとは、生徒一人一人の状況に最適化した学習プランを提供する仕組みのことです。

全員が一斉に同じ授業を受ける従来の仕組みでは、個人のレベルに合わせた柔軟な対応は困難です。授業についていけずに勉強が苦手になる子や、逆に簡単過ぎてつまらなく感じる子が出てくるでしょう。

アダプティブラーニングでは、ICT(情報通信技術)を活用して、生徒の学習データを個別に収集・分析します。そして分析結果を元に、本人に最適な学習プランを作成します。理解度が高い生徒にはより高レベルな内容を、弱点がある生徒には克服できるような内容を、自動で提案してくれるのです。

常に自分のレベルに合う内容を学べるため、学習効率が高まるとして注目されています。

文部科学省や経済産業省も積極的に推進

個々に最適化された学習の重要性は以前から指摘されており、パソコンを教育に活用する研究も進められてきました。インターネット回線やタブレット端末の普及によって、公平な学習環境を用意できるようになった時期からは、国も積極的に動き始めています。

2018年には、経済産業省が「未来の教室」と呼ばれる実証事業をスタートさせ、「学びの自律化・個別最適化」を柱の一つとして掲げました。文部科学省もアダプティブラーニングの推進を目的に、小・中学生に1人1台の学習用端末を用意する計画を打ち出しています。

今後はAI技術やICT技術の進歩に伴い、アダプティブラーニングもより発展していくと予想されます。

参考:
アダプティブラーニングによる知識・技能の習得| 未来の教室 ~learning innovation~
GIGAスクール構想の実現について:文部科学省

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導入にはどんなメリットがあるの?

アダプティブラーニングの導入は、保護者や子どもにとってどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを2点紹介します。

学習効率の向上

生徒にはそれぞれ、得意・不得意があります。例えば算数では、計算は得意なのに文章題が解けない子もいれば、解き方が分かっているのに計算ミスで誤答する子もいます。テストの点数が同じでも、どこでつまずいているのかは生徒によって違うのです。

文章題を間違えたからといって、解き方が分かっている子に文章題の解き方のコツを教えても、時間の無駄でしかありません。それよりも、時間内で落ち着いて計算する練習を重ねる方が効果的でしょう。

生徒によって苦手なポイントが違うにもかかわらず、同じ内容を一律で学習させるのは非効率です。アダプティブラーニングなら習熟度に合わせて学習する内容が変わるため、効率的に勉強を進められます。

教員の指導力に左右されない

従来の学校や塾では、担当の教員や講師が生徒の学習状況を把握し、適切な学習プランを提示していました。そのため、教員や講師の指導力によって学習の質が左右されるケースも多かったのです。塾はともかく、学校の教員を選ぶことはできません。クラスによって成績に差がつくようでは、保護者としても安心できないでしょう。

アダプティブラーニングでは客観的なデータを使用し、自動的に学習内容を最適化します。つまり、教える側の力量に関係なく、質の高い学習ができるのです。クラス替えや転校など環境の変化の影響を受けにくいことも、大きなメリットといえます。

デメリットや注意点

メリットの多いアダプティブラーニングですが、デメリットもあります。アダプティブラーニング導入における注意点を見ていきましょう。

教材費など一部が生徒負担になる可能性あり

アダプティブラーニングを導入するためには、学校や塾側がインターネット回線を整備し、教材を購入しなくてはなりません。教員や講師が教材の使い方や効果的な教え方を学ぶための、時間やコストもかかります。

そのため、アダプティブラーニング導入のために、教材購入費の一部を生徒負担にしたり、授業料を値上げしたりするケースもあります。アダプティブラーニングに魅力を感じて通わせる場合、家庭にもある程度の費用負担があることは覚えておきましょう。

実技の授業には向かない

アダプティブラーニングは蓄積されたデータを元に学習プログラムを作成するため、情報端末からデータを集められない分野の学習には不向きです。

例えば、理科の実験のように特別な道具を使って行う授業や、グループワーク・体育・音楽などの実技授業では、アダプティブラーニングの出番はありません。全てをアダプティブラーニングに頼るのではなく、学習内容に合わせて適切に使い分ける必要があります。

日本での取り組み事例

日本では既に多くの学校や塾が、アダプティブラーニング教材を活用した学習を取り入れています。主な教材と活用例を見ていきましょう。

自分専用カリキュラム「アタマプラス」

「アタマプラス」は、AIを使用した塾・予備校向けの教材です。AIは生徒の目標や学習習熟度、授業中の集中状況、つまずいているポイントなどを分析して、専用のカリキュラムを作成します。

授業中の生徒の情報は講師の端末にも共有され、適切な声がけをサポートします。質問の仕方が分からずにそのままにしてしまう子や、恥ずかしくて手を上げられない子などにもしっかりと目が届くので、保護者も安心です。

宿題や復習用として教材を自宅に持ち帰れるサービスもあり、家庭学習の面倒まで見てもらえます。AIと塾講師、家庭の連携で、学習効率の向上とモチベーション維持の効果が期待できます。

【公式】AI教材 atama+(アタマプラス)

AI型タブレット教材「Qubena」

「Qubena(キュビナ)」は全国の小中学校及び、中高生向けの塾で導入されているAI型タブレット教材です。

学校向けのサービスには、小中学校で習う5教科がセットになったタイプと、算数・数学に特化したタイプがあり、学校の方針によって選択可能です。

学習カリキュラムの最適化はもちろん、宿題・テストの配信や回収、採点もQubena上でできます。これらの機能で教員の負担を減らすとともに、学校教育の質の改善にも効果を発揮しています。

TOP – Qubena(株式会社COMPASS) – AI型教材

アダプティブラーニングを知ろう

国の推進策により、アダプティブラーニングを取り入れる教育機関は、順調に増えています。まだ体験していない人も、子どもが通う学校や学習塾で導入される日は近いかもしれません。

アダプティブラーニングの特徴をしっかりと理解して、子どもの学習に役立てましょう。

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文・構成/HugKum編集部

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