「一富士 二鷹 三茄子」の読み方
まずは「一富士 二鷹 三茄子」の読み方を確認しておきましょう。
ここは普通に、頭の数字は一「いち」、二「に」、三「さん」と読み、続く名詞は富士山の富士「ふじ」、鳥の鷹「たか」、最後の野菜の茄子は語呂のリズムから「なすび」と読みます。
つまり「いちふじ、にたか、さんなすび」と読むのが正解です。
「一富士 二鷹 三茄子」の意味
次に、「一富士 二鷹 三茄子」の意味の確認です。
夢に見ると縁起がよいものを順に三つならべたもの。特に初夢についていう。
『小学館 ことわざを知る辞典』
初夢に見ると吉とされるのが「富士山」「鷹」「茄子」なのですね。いわば夢占いのような意味合いのことわざです。
初夢に限らず、ふだんの夢でも縁起がいいとされていますが、昨今では特に初夢について言われることが多く、年賀状のモチーフになったりもしていますね。
「一富士 二鷹 三茄子」の由来
どうして「富士」と「鷹」と「茄子」なの?
富士山が吉とされるのは、日本人の感覚としてはなんとなくわかる気もしますが、続くのがなぜ鷹と茄子なのでしょうか。所説ありますが、ここでは以下の3つの説をご紹介します。
(一)駿河の名物を順に挙げたもの
(二)駿河の国で高いものを順に挙げたもので、一に富士、二に足高山、三に初茄子の値段のこと
(三)富士は高大、鷹はつかみ取る、茄子は成すの意で、縁起のよい物を順に挙げた『小学館 ことわざを知る辞典』
※駿河は現在の静岡県の中部。「駿河国(するがのくに)」
こうして見ると、駿河に由来するもの、それとは別に語感から縁起がよいとされるもの、といったいくつかの由来に分かれるようです。
江戸時代前期にはすでに「一富士 二鷹」までは用例がありますが、三番以降は定着していなかったとのこと。そのときどきで違うものを挙げてオリジナリティを競っていたようですね。
四と五はあるの?
さて、この「一富士 二鷹 三茄子」、四番以降にも続きがあるといわれています。
江戸時代の国語辞書『俚言集覧(りげんしゅうらん)』には、やはり駿河の名物からとったとして、「一富士 二鷹 三茄子 四扇(おうぎ) 五煙草(たばこ) 六座頭(ざとう)※」という表記があります。
※座頭は、江戸自体の盲人の職業階級。琵琶法師や按摩・鍼灸を職業とした人の意。
いっぽうそれとは別に、「四葬式 五雪隠(せっちん)」というバージョンの言い伝えもあります。「雪隠」とは今でいうお手洗い・トイレのことです。夢見で縁起がいいものがお葬式とお手洗いなんて、意外な気がしますね。これは「夢と逆のことが起こる」という逆夢(さかゆめ)の発想から来ているのかもしれません。
参考文献:『日本を知る事典』大島建彦 ほか・編(社会思想社)
初夢っていつ見る夢のこと?
さて、その初夢ですが、いつ見る夢を「初夢」とするかについても、以下のように所説あり、これといった正解はありません。
・大晦日の夜に見る夢
・元旦の夜から1月2日にかけて見る夢
・1月2日から3日にかけて見る夢
これら所説に分かれるのは、大晦日の夜は旧年と新年との境目であり、厳密には「新年初の夢」とはいえないことや、昔は(今も?)大晦日は夜通し起きていて元旦になってから初めて寝るからなど、根拠はさまざま。また「1月2日の夜」説は、元旦に売り出される七福神の宝船の絵を枕の下に敷いて寝る風習が室町~江戸時代にあったことが理由のようです。
皆さんの2022年の初夢はどんな感じでしょうか。HugKumファミリーにとって健やかな一年になりますように。
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